人的資源管理(HRM)とは?5つの機能や人材管理との違いを簡単に解説
公開日: 2024.4.3 OHSUGI
人的資源管理(HRM)とは、経営戦略を達成するために、人材を有効活用する仕組みを運営することです。
「人的資源管理の5つの機能を詳しく知りたい」、「人的資源管理の事例はあるの?」など疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、人的資源管理の5つの機能や人材管理との違い、事例などを解説します。最後まで読むと、人的資源管理の具体的な手法や、自社で活かせる事例を把握できるでしょう。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 人的資源管理(HRM)とは
人的資源管理とは、経営目標や戦略を達成するため、人材を有効活用する仕組みを運営することです。英語では「Human Resource Management」と表記し、頭文字からHRMと略される場合もあります。
人的資源管理では、人材採用や人事異動、人事評価など幅広い人事領域の仕組みの整備が必要です。
2. 人的資源管理と人材管理の違い
人的資源管理と混同されやすい言葉に人材管理がありますが、2つの違いは以下のとおりです。
人的資源管理 | 経営目標や戦略を達成するため、人材を有効活用する仕組みを設計し運用する |
人材管理 | ビジョンの実現のため、人材の採用や配置・育成を管理する |
人的資源管理は、人材を経営資源と捉え、一人ひとりがパフォーマンス力を発揮できる仕組みを運用することです。一方で人材管理では、社員の適性からふさわしい部署への配置をおこない、組織で生産性を向上させてビションを実現します。
そのため人的資源管理の方が、より個人に焦点が当てられているといえるでしょう。
3. 人的資源管理の4つの目的
人的資源管理には、以下の4つの目的があります。
経営的な短期目標 | 成果により経営戦略を達成し、企業への貢献を高める |
経営的な長期目標 | 戦略の構築に向けて能力を向上する |
個人的な短期目標 | 公平かつ情報開示に基づいた評価と処遇を提供する |
個人的な長期目標 | キャリアアップを通じた人間としての発達や成長をサポートする |
人的資源管理では、経営的な目標だけでなく個人の目標も掲げ、短期・長期と複合的な視点で捉える必要があります。
4. 人的資源管理の5つの機能・モデル
人的資源管理には、以下の5つの機能・モデルがあります。
- ミシガンモデル
- ハーバードモデル
- 高業績HRM(AMO理論)
- 高業績HRM(PIRK理論)
- タレントマネジメント
4-1. ミシガンモデル
ミシガンモデルとは、1980年代におこなわれたミシガン大学などでの研究をベースにしたモデルです。ミシガンモデルでは、以下の4つの機能を経営戦略に落とし込み、パフォーマンス力を向上させます。
- 採用と選抜
- 人材の評価
- 人材の開発
- 報酬
個人に限らず、組織と個人の両方でパフォーマンスを高める点が特徴です。
4-2. ハーバードモデル
ハーバードモデルとは、1980年代におこなわれたハーバード大学での研究をベースにしたモデルです。ハーバードモデルでは、以下の4つで人的資源管理の領域が構成されると定義しています。
- 社員の影響
- 人的資源のフロー
- 報酬システム
- 職務システム
ミシガンモデルとの違いは、人的資源管理の領域を幅広く捉え、従業員の心理状態にも意識を向けている点です。
4-3. 高業績HRM(AMO理論)
高業績HRMのAMO理論とは、従業員の能力やモチベーション、機会を向上させることで組織の競争優位性を高めるモデルです。
- Ability(能力)
- Motivation(やる気)
- Opportunity(機会)
高業績企業が導入している人的資源管理は幅広くありますが、まとめて「高業績HRM」と呼ばれています。
AMO理論は高業績HRMの1つで、従業員のモチベーションを向上させる方に作用しやすい点が特徴です。
4-4. 高業績HRM(PIRK理論)
高業績HRMのPIRK理論とは、以下の4つで構成されるモデルです。
- Power(権限の委譲)
- Information(情報の共有)
- Reward(公平な報酬)
- Knowledge(従業員に帰属する知識)
裁量権を与え、貢献度から適した報酬を設定することでモチベーションが高まり、従業員に公平感覚が生まれます。帰属意識やモチベーションが向上すれば、離職率の低下にもつながるでしょう。
4-5. タレントマネジメント
タレントマネジメントは、人材の素質や能力を積極的に活用するためにおこなうマネジメント手法です。人材採用や人材配置、育成など多岐にわたってマネジメントします。
従業員一人ひとりの能力やスキルを把握し最大限に活用することで、生産性の向上につながり、経営戦略の実現に近づくでしょう。
5. 人的資源管理の3つの課題
人的資源管理の課題は、以下の3つです。
- 企業と従業員で対等な立場を築きにくい
- 管理の範囲や程度の判断が難しい
- 従業員一人ひとりへの適切なマネジメントの実施が難しい
5-1. 企業と従業員で対等な立場を築きにくい
人的資源管理は、企業と従業員で対等な立場を築きにくい課題があります。人的資源管理は、組織の経営戦略の達成やビジョンの実現のために人材の管理が実施されるためです。
企業が上位の立場にあると、人材配置や報酬に対する不満など、従業員が意見を言い出しにくい状況が生まれる可能性があります。
不満が溜まりパフォーマンス力が上がらなくなると、人的資源管理の効果を得られない場合もあるでしょう。
5-2. 管理の範囲や程度の判断が難しい
人的資源管理は、管理する範囲や度合いの決め方が難しい点が課題です。もともと人的資源管理には答えがなく、企業と従業員にとっての最適解を導くことが難しい特徴があります。
例えば、あらゆる面から管理しすぎると、従業員の裁量権に影響を及ぼし、主体性が失われる場合もあるでしょう。
従業員がパフォーマンス力を十分に発揮し、生産性の向上につなげられるように管理の範囲や程度には注意が必要です。
5-3. 従業員一人ひとりへの適切なマネジメントの実施が難しい
人的資源管理では、従業員一人ひとりに対する適切なマネジメントの実施が難しい課題があります。従業員は一人ひとり価値観や考え方が異なり、感情のあるヒトを管理することは容易ではないためです。
従業員同士の衝突が起こる可能性もゼロとは言い切れません。
そのため、一人ひとりの能力を把握し、意思を尊重しながら臨機応変にマネジメントする必要があります。
6. 人的資源管理の3つの事例
以下の3つの人的資源管理の事例を紹介します。
- 人材のスキルや経験を可視化し育成に活用
- 組織戦略に向けた人材活用
- 一人ひとりが能力を発揮できる環境の実現
6-1. 人材のスキルや経験を可視化し育成に活用
エンジニアリング事業などを幅広く展開しているA社では、科学的根拠のない人事異動や後継者の育成に課題を抱えていました。
A社は課題解決のため、タレントマネジメントを導入し、従業員の特性や経験を可視化できるようにしたのです。
導入後には、従業員の育成施策への活用も実現しました。
6-2. 組織戦略に向けた人材活用
情報・通信システムの企画や設計などをおこなっているB社では、人事情報の管理方法に課題を抱えていました。
B社は課題解決のため、タレントマネジメントを導入し、評価の履歴や業務経験などの一元管理を実現しています。
導入後は、データを活用した人材配置も可能になりました。
6-3. 一人ひとりが能力を発揮できる環境の実現
国内外で高いシェアを獲得しているメーカーのC社は、一人ひとりが最大限の能力を発揮し活躍できる環境の実現を目指しています。
従業員のキャリアビジョンをもとに、個に寄り添った細やかな人材育成をおこなっているのです。
面談やフィードバックを通し、従業員が納得できる公平な評価制度の実現に取り組み続けています。
7. 人的資源管理で適切に目標を達成しよう
人的資源管理を実施すると、従業員が能力を発揮しやすくなり、パフォーマンス力の向上が期待できます。また、従業員のエンゲージメントの向上にもつながるでしょう。
経営戦略や目標を実現するためには、一人ひとりの適性に合わせ、納得して働ける環境を作ることが重要です。
人的資源管理を適切に活かせば、従業員の能力を最大化でき、より経営目標の達成に近づけます。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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