給与支払報告書を電子申請する方法をわかりやすく解説
更新日: 2025.10.30 公開日: 2022.8.24 jinjer Blog 編集部

近年、多くの手続きが電子化されています。給与支払報告書もその一例で、前々年に提出する源泉徴収票が一定枚数以上の事業者については、eLTAXや光ディスク等による電子申請が義務化されています。本記事では、給与支払報告書をスムーズに申請するための電子申請方法をわかりやすく解説します。
目次
令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。
- 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
- 「アルバイトやパート、退職者に年末調整は必要?」
- 「年収の壁の引き上げで年末調整はどう変わった?」
このような疑問をお持ちの方に向けて、令和7年分の年末調整に必要な書類から対象者、計算の流れまで、年末調整に関する基本的な業務を図解でわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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1. 給与支払報告書は電子申請できる?


給与支払報告書は自治体の窓口や郵送による提出に加え、電子申請ができるようになりました。
電子申請では、eLTAX(地方税のポータルシステム)を使います。窓口に出向いたり、紙の書類を作成したりする手間がなく、スムーズな申請が可能です。
eLTAXでは、給与支払報告書と源泉徴収票を一括で作成し、提出することも可能です。給与支払報告書は各自治体に、源泉徴収票はe-Taxを経て管轄の税務署に提出されます。
ただし、この一括申請は一元化に対応している税務ソフトウェアを使用している場合に限り、より業務をシンプルにしたい場合は、ソフトウェアの見直しが必要です。
参考:給与・公的年金等の支払報告書及び源泉徴収票のeLTAXでの一括作成・提出(電子的提出の一元化)について|国税庁
1-1. 給与支払報告書の電子申請が義務化されている事業者
給与支払報告書は、前々年に一定枚数以上の給与所得の源泉徴収票を税務署に提出した場合、eLTAXまたは光ディスク等で提出することが義務化されています。
従来はこの基準が1,000枚以上となっていました。しかし、2021年(令和3年)1月以降に提出する給与支払報告書より「100枚以上」に基準が引き下げられています。
また、2027年(令和9年)1月以降に提出する給与支払報告書からは「30枚以上」に基準が引き下げられます。例えば、2025年に税務署へ提出した給与所得の源泉徴収票の枚数が40枚であった場合、2027年の給与支払報告書は、eLTAXまたは光ディスク等で提出しなくてはいけません。
電子申請の義務化は段階的に拡大されているため、自社が対象となる前に早めに電子化を進めることが推奨されます。
参考:給与支払報告書等のeLTAX又は光ディスク等による提出義務基準が引き下げられました!|eLTAX
参考:e-Tax等による法定調書の提出が義務化されています!|国税庁
関連記事:源泉徴収票は電子化しよう!義務基準やメリットをわかりやすく解説
2. 給与支払報告書を電子申請に必要な準備


eLTAXはさまざまな業務の手間を省ける大変便利なシステムです。しかし、初めてeLTAXを利用するにあたっては、事前に準備が必要となります。
ここでは、eLTAXを初めて利用する際におこなう利用届出の方法や、必要なソフトウェアのインストールについて解説します。
2-1. eLTAXの利用届出をおこなう
eLTAXを初めて利用する場合は、利用者IDが必要です。利用者IDの取得は、PCdeskでおこないます。
PCdeskはeLTAXに対応したソフトウェアで、各種電子申請に加えて、共通納税や各種届出などが可能です。
Web版・DL版・SP版の3種類がありますが、最初に利用届出をして利用者IDを取得する際には、Web版から「利用届(新規)」の手続きをおこなう必要があります。
利用届出が完了すると、送信後の画面に利用者IDが発行されます。
登録したe-mailアドレス宛に、手続きの完了通知が届きますが、このメールには利用者IDは記載されていません。
必ず送信後の画面で利用者IDを確認し、忘れないようにメモしておきましょう。
2-2. eLTAXに対応したソフトウェアを準備する
eLTAXに利用届出をしても、それだけでは給与支払報告書の電子申請はできません。申告をするには、作成・送信をおこなうeLTAXに対応したソフトウェアの準備が必要です。
eLTAXに対応したソフトウェアは、無料で利用できるPCdeskのほかにも、市販の税務・会計ソフトがあります。
すべての税務・会計ソフトウェアがeLTAXに対応しているわけではありません。現在使っているソフトウェアが未対応の場合は、別のシステムを導入するか、PCdeskを利用する必要があります。
PCdeskではWeb版・DL版・SP版によって使える機能に違いがあります。申告に関連する手続きはDL版でできますが、申請に関連する手続きはWeb版でのみできるなど、少し複雑な部分があるため、利用時には注意が必要です。
各PCdeskでできることはeLTAXの公式サイトで解説されているので、PCdeskを利用する際にチェックしておきましょう。
3. 給与支払報告書を電子申請する手順


給与支払報告書をeLTAXで電子申請する手順は次のとおりです。
なお、eLTAXの利用届出・利用者IDの取得と、対応するソフトウェアの準備は終わっているものとします。
3-1. eLTAXの操作
eLTAXのメインメニューで「申告に関する手続き」を選びます。続いて「申請データの作成」を選び、表示される利用者情報ファイルのダウンロードを許可してください。
3-2. ポータルセンタにログイン
ログインが済んでいない場合は、ここでポータルセンタへのログイン画面が表示されます。eLTAXの利用者IDとパスワードを入力し、利用者情報を確認してから先へ進みます。
3-3. 入力画面まで進む
税目選択では「個人住民税」、申告区分選択では「給与支払報告書・源泉徴収票及び合計票」を選びます。
「特別徴収義務者/源泉徴収義務者情報登録」が表示されるため、そこに必要な情報を入力してください。
3-4. 特別徴収税額通知の受け取り方法を指定する
特別徴収税額通知の受け取り方法を指定します。
選択した方法によっては、e-mailアドレスに送られてくる確認コードの入力が必要です。画面の指示に従って進めてください。
3-5. 給与支払報告書を作成する
給与支払報告書の作成は、次の2つの方法でできます。
【1件ずつ手入力する場合】
作成方法選択で「手入力による作成」を選び、作成区分を指定します。必要な情報を入力し、個人別明細を作成してください。
複数人の給与支払報告書を続けて作成する場合は「次項」を選んで、空白の給与支払報告書が表示されてから新しく入力していきます。
【CSVファイルを取り込む場合】
作成方法選択で「CSV取込による作成」を選び、必要な情報を入力してください。
ダイアログが表示されたら取り込みたいCSVファイルを選択し、開けば取り込みが始まります。
利用届出が未提出の提出先地方公共団体がデータに含まれていた場合は、「利用届出提出先追加(未提出分)」から提出先を追加します。
また、「地方税・国税」「国税」に係るデータが含まれる場合は、「源泉徴収票合計表」の作成が必要です。
登録がすべて終わると、内容を確認するダイアログが表示されます。問題ない場合は給与支払報告書の作成は完了です。
3-6. 電子署名をしてポータルセンタに送信する
給与支払報告書を作成したら、メインメニューに戻って「申告に関する手続き」→「申告データの電子署名」と進みます。
作成済みのデータが表示されるため、申告したいデータの「署名付与」をクリックします。
「証明書選択」の画面で、利用している電子証明書のタイプを選んで内容を確認します。
3-7. 最終確認をして送信
「申告データ一覧(送信)」に送信できる状態のデータが表示されます。間違っていないか確認し、送信ボタンを押してデータを送信してください。
3-8. 手続きの状態を確認する
正常に送信されたかを確認したい場合は、メインメニューから「メッセージ照会メニュー」→「メッセージ照会(本人)」と進みます。
「申告受付完了通知」で取り扱い日や受付日時を確認することが可能です。
4. 給与支払報告書を電子申請するときの注意点


給与支払報告書は、一定の要件を満たしている場合に電子申請での報告が義務化されているため、注意しなくてはいけません。
また、電子申請を導入する際にも、手間や時間がかかることをあらかじめ想定しておき、前もって準備を進めておかなくてはなりません。意識すべき注意点を見ていきましょう。
4-1. 導入時に手間や時間がかかる場合がある
給与支払報告書を電子申請するときに注意したいことは、ソフトウェアの入れ替えや新規導入が必要なケースがある点です。
現在使っている税務・会計ソフトがeLTAXに対応していれば問題ありません。しかし、対応していない場合は別のソフトウェアに入れ替えるか、PCdeskを利用する必要があります。
その場合、データの移行や、慣れないソフトウェアの取り扱いなど、想定以上に時間がかかるかもしれません。初めて電子申請をおこなう際は、必ず事前に必要な準備を確認し、余裕をもって取り掛かりましょう。
4-2. 電子証明書の有効期限を確認する
電子証明書には有効期限があるため、期限切れになる前に差し替えをおこなう必要があります。eLTAXのメインメニューから「利用者情報に関する手続き」を選択し、「電子証明書の登録・差替え」をクリックして手続きを進めます。
画面に表示される利用者情報を確認したうえで、差し替えが必要な提出先を選び、新しい電子証明書を指定して電子署名を付与し、送信します。差し替えが完了すると、ポータルセンタから受付完了通知が送信されます。
なお、転居や証明機関の変更をおこなった場合も、電子証明書の差し替えが必要となる点に注意してください。
4-3. オフピーク申告を意識しよう
eLTAXを利用する際は、利用者が増える時期をずらすようにしましょう。
給与支払報告書の提出期限は1月末です。そのため、1月中旬頃からeLTAXポータルセンタが混み合い始め、下旬にはピークを迎えます。
この時期はスムーズな手続きができなくなる可能性があるので、少し余裕をもって準備しピークを避けて申請するようにしましょう。特に提出期限の前日ギリギリに申請して、なにかしらのトラブルに見舞われた場合、期日を超過する可能性もあります。
これはeLTAXからもお願いとして通達されているため、できるだけ協力することが望ましいです。
参考:最繁忙期におけるeLTAX利用可能時間のお知らせ(ヘルプデスク対応時間について追記)及び給与支払報告書等の早期提出・オフピーク申告のお願い|eLTAX
5. 給与支払報告書の電子申請に関連するよくある質問


ここでは、給与支払報告書の電子申請に関連するよくある質問への回答を紹介します。
5-1. 給与支払報告書は電子申請後に訂正できる?
eLTAXを用いた電子申請で提出した給与支払報告書に誤りがあった場合、訂正後の内容で作成した個人別明細と総括表を併せて送信することで訂正できます。
一方、eLTAXを使って給与所得の源泉徴収票を訂正する場合は手続きが少し異なるので注意が必要です。まず、訂正前の内容で「取消分」の源泉徴収票を作成し、合計表と併せて送信します。その後、訂正後の内容で「訂正分」の源泉徴収票を作成し、合計表と併せて送信することで訂正が完了します。
参考:法定調書・給与支払報告書の訂正パターン表|eLTAX
参考:提出済の「給与所得の源泉徴収票(個人別明細)」を「訂正」する場合の手順(PCdesk)|eLTAX
5-2. 普通徴収対象者も電子申請できる?
eLTAXの「普通徴収」欄に必要事項を入力することで、住民税の納付方法を「普通徴収」に指定できます。この場合「摘要」欄に普通徴収を希望する理由の記載が必須です。普通徴収の適用可否や記入方法は自治体ごとに異なる可能性もあるため、事前に各自治体のマニュアルやホームページで確認しておくと安心です。
なお、住民税の納付方法には、勤務先が代わりに納付する「特別徴収」と、従業員自身が納付する「普通徴収」の2種類があります。原則として特別徴収が適用され、特別徴収が困難な事情がある場合に限り普通徴収を選択できます。
参考:給与支払報告書提出マニュアル|eLTAX
参考:個人住民税と特別徴収について|東京都
6. 給与支払報告書の電子化を進めて効率的で間違いのない申請をおこなおう


給与支払報告書は電子申請ができるようになりました。
しかし、各種申請の電子申請はまだまだ導入されたばかりで、未対応な部分や複雑な部分も多いです。そのため、電子申請に切り替えたことで、逆に時間がかかってしまうケースも少なくありません。
そのような事態を回避するために、管理システムや新しいソフトウェアの導入をプロに任せる方法があります。
よりスムーズに、人事業務を電子化させたい場合はぜひご検討ください。



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