就業規則がない会社はどうなる?ない場合の違法性や法律上のリスクを解説
更新日: 2026.3.31 公開日: 2021.10.26 jinjer Blog 編集部

就業規則は、「常時10人以上の従業員を使用する事業所」にのみ作成が法律で義務付けられています。そのため、上記の要件に該当しなければ、なくても違法ではありません。
しかし、就業規則がなければ従業員の勤怠管理が難しいだけでなく、ルールが不明確であるために従業員とのトラブルなどのリスクが発生します。
この記事では就業規則がないことの違法性やリスク、周知義務について解説します。
▼就業規則について1から理解したい方はこちら
就業規則とは?人事担当者が知っておくべき基礎知識
目次
労務管理をおこなう上で、就業規則の「作成、届出・変更、さらには周知において」——正しく理解できていますか?
記載すべき項目のミスや、変更する際のルールの見落としは、法令違反や労基署からの指導といった深刻なトラブルを招きかねません。就業規則の管理ミスは企業リスクに直結するため、人事労務担当者であれば、必要な労働基準法を正しく理解しておくべきです。
当サイトでは、就業規則におけるルールをはじめ、労務管理の要となる「労働時間・休憩・休日・年次有給休暇」に関しても法的基準をわかりやすく解説した資料を無料配布しています。
実務で見落としがちな法改正のポイントや、陥りやすい落とし穴も解説していますので、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、労務管理にお役立てください。
1. 就業規則がない会社はどうなる?違法性は?


就業規則は「ないと違法になるケース」と「なくても違法にならないケース」の2つがあります。
どのようなケースで違法になるのか正しく理解し、同時に就業規則の必要性も把握しておきましょう。
1-1. 違法にならないケース(従業員が10人未満)
就業規則がない企業でも、直ちに違法になるとは限りません。
就業規則の作成が義務付けられているのは、常時10人以上の従業員を雇用している事業場です。そのため、10人未満の少人数で運営している会社や事務所の場合は、就業規則を作成していなくても罰則が科されることはありません。
しかし、就業規則は労使間のトラブルを防ぎ、従業員が安心して働ける環境づくりに欠かせないものです。作成することが望ましいものであることを覚えておきましょう。
1-2. 違法になるケース(従業員が10人以上)
労働基準法第89条「常時10人以上の従業員を使用する使用者」では就業規則の作成が義務付けられているので、上記の要件に該当する事業所で就業規則がない場合は違法となり、30万円以下の罰金が科されます。
では、「常時10人以上の従業員がいる企業や事務所」とはどのような状態を指すのでしょうか。
「従業員を数える範囲」や「常時」と捉える範囲を知り、就業規則の作成義務があるか確認しておきましょう。
従業員の数え方
従業員は正社員だけでなく、契約社員やパート・アルバイト従業員も含みます。そのため、正社員が2名、アルバイト従業員が9名の事業所では、全従業員数は11名と考えます。
「常時10人」の数え方
「常時」とは、シフト勤務などを含め常に雇用されている従業員のことを指します。例えば、普段は従業員が1名のみの事業所で、繫忙期の数ヵ月のみ従業員が11名となる場合は、「常時」には該当しません。
「常時10人以上の従業員」とは、会社全体ではなく、各事業所単位で考えます。そのため、会社全体で10名を超えるからといって、直ちに就業規則が必要な訳ではありません。
例えば、A事業所は8名、B事業所は4名の全社合計12名の場合、法的な作成・届出義務は生じません。就業規則は不要です。しかし、A事業所は11名、B事業所は1名の全社合計12名の場合、A事業所では就業規則が必要になるので注意しましょう。
2. 就業規則は作成後、周知が必須となる会社の義務


就業規則は作成さえすればよいわけではなく、従業員に周知して初めて効力を発揮します。また、周知は任意ではなく義務となっており、下記のように定められています。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示・備え付ける
- 書面で交付する
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に従業員が当該記録の内容を常時確認できるような機器を設置する
また、パソコンで就業規則を閲覧できるようにする場合、従業員全員が閲覧できること、格納場所や共有場所を理解している必要があります。
企業は、「就業規則がどこにあるのかわからない」といった従業員がいないよう、いつでも従業員が閲覧できる状態にしておくことが重要です。なお、就業規則の周知義務を怠った場合、30万円以下の罰金が科される恐れがあるため、就業規則を定めた際や変更した際は速やかに周知しましょう。
関連記事:就業規則の閲覧を求められたらどうする?正しい対応方法を紹介
3. 就業規則がないメリット


就業規則がないことは、多くの場合リスクとされますが、企業側から見ると、短期的にはメリットと感じられることがあるのも事実です。特に少人数の企業や設立間もない会社では、制度整備よりも事業運営を優先せざるを得ない場面もあります。
ここでは、就業規則がないメリットを解説します。
3-1. 社内ルールを柔軟に運用しやすい
就業規則がない場合、勤務時間や休暇、働き方など状況に応じた柔軟な対応がしやすいというメリットがあります。書面上のルールに縛られないため、個別事情に配慮した判断ができることから、必要な場面ですぐに社内ルールを変えることが可能です。
特に少人数の組織では、経営者と従業員の距離が近く、暗黙の了解で物事が進むことも多いため、制度化の必要性を感じにくい傾向があります。
ただし、メリットとなる「柔軟性」は担当者や経営者の判断に依存する側面が強いため、組織が拡大するとルールの徹底が難しくなる点に注意が必要です。
3-2. 作成・見直しにかかる手間やコストを抑えられる
就業規則を作成・改定するには、内容の検討や専門家への相談、労働基準監督署への届出など、一定の手間とコストが発生します。就業規則がない状態であれば、これらの負担を一時的に回避できるのでメリットとなるでしょう。
特に経営資源が限られている企業では、優先順位の関係で「義務がないなら作成しなくてもよい」と判断をしてしまうのが実情です。
ただし、整備を先送りにした結果、後からトラブル対応や是正対応により、より大きな負担が生じる可能性があることを念頭に置いておきましょう。
4. 就業規則がないことで起こりうるリスク


就業規則がないことにはメリットもありますが、作成しないせいで起こりうるリスクは少なくありません。特に、就業規則に記載していないことで労働問題が起こった際は、会社側が不利になるケースが多い点に注意が必要です。
ここでは、就業規則がないことで起こりうるリスクを解説します。
4-1. 服務規律や社内ルールを明確にできない
就業規則がない場合、会社の服務規律を明確にすることができず、従業員に対してルールを徹底することが難しくなります。服務規律とは従業員が勤務時に守るべき会社のルールで、下記のようなものが挙げられます。
- セクハラやパワハラの禁止
- 営業秘密や個人情報の正しい取扱い
- リベートの受け取り禁止
- 通勤時の車両使用許可
- 就業時の身だしなみ
- タイムカードの正確な打刻
これらは一見当たり前のように思えることですが、規則として明確に定めなければ、従業員がルールを違反しても適切な対応が取れないリスクがあります。従業員全員に共通認識とするためには、就業規則によって服務規律を具体的かつ詳細に記載し、法的にも適用可能な形で定めることが重要です。
4-2. 遅刻・欠勤・早退が発生した際に対応できない
就業規則がない場合でも、遅刻や欠勤が発生した際に、事実確認や注意指導といった対応自体が不可能になるわけではありません。しかし、遅刻・欠勤に伴う賃金控除や懲戒処分については、就業規則に明確な根拠がなければ、法的に認められない、または無効と判断されるリスクが高くなります。
労働基準法第24条では賃金の全額払いが原則とされており、遅刻控除をおこなう場合も、あらかじめ就業規則等で定めておくことが重要です。就業規則がないまま減額対応をおこなうと、不当な賃金カットとして労使トラブルに発展するおそれがあります。
就業規則に、遅刻や欠勤をした際にはどのようなルールで減額をするのかきちんと明記しておくことで従業員とのトラブルを避けることができます。
4-3. 年次有給休暇の付与・取得ルールが管理できない
年次有給休暇は労働基準法第39条に基づく法定の権利であり、就業規則の有無にかかわらず、従業員は取得することができます。一方で、取得方法や申請期限について就業規則で定めていない場合、運用ルールが曖昧になり、現場対応が属人的になりやすい点は注意が必要です。
従業員が事前の予告なしに勝手に有給休暇を取ったとしても、就業規則がなければ、有給休暇の取得を認めざるを得ないなど、運用上さまざまな問題点が出てくるリスクがあります。
事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は時季変更権を行使することができますが、就業規則がない状態では、その判断基準や手続きについて説明が難しく、結果として労使トラブルにつながるリスクが高まります。
4-4. 懲戒処分や懲戒解雇の根拠を示せない
懲戒処分は、その種類や内容をあらかじめ就業規則に定めていなければ、おこなうことはできません。そのため、就業規則のない会社では、懲戒解雇や減給、出勤停止といった処分をおこなうことは原則として認められません。
ただし、就業規則がない場合であっても、民法および労働契約法に基づく「普通解雇」まで一切できなくなるわけではありません。しかし、解雇の有効性は厳格に判断されるため、懲戒処分を想定するのであれば、就業規則の整備は不可欠といえます。
従業員が問題行動を起こしたとしても、それを理由とした処分はできません。
4-5. 減給や降格などの人事措置が無効と判断される
成績不良を理由として従業員の賃金を一方的に減額することは、就業規則に根拠規定がなければ認められません。特に、制裁としての減給は労働基準法第91条の制限を受けるため、就業規則への明記が必須です。
人事評価に基づく降格によって結果的に賃金が下がる場合であっても、その基準や手続きが就業規則等で明確になっていなければ、無効と判断される可能性があります。そのため、業績に見合った成果を上げられない従業員についても適切な給与調整ができず、会社の経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
4-6. 定年退職や雇用終了に関する取り扱いを定められない
就業規則を策定しない中小企業にとって、定年退職の制度を適用できないことは大きなリスクとなります。
雇用契約書で定年を定めることは可能ですが、具体的な記載がない場合が多いため、その際に就業規則が存在しないと定年のない雇用契約が成立します。
この状況では、高齢になり就業が難しくなった従業員でも、彼らから退職の申し出がない限り、企業は雇用を継続せざるを得ません。結果として、労働生産性が低下し、更には企業自体の成長や競争力に悪影響を及ぼす可能性があります。
4-7. 病気休職・私傷病対応の判断基準が持てない
就業規則がない中小企業は、病気休職や私傷病への対応について重大なリスクを抱えることになります。病気休職・私傷病の期間や復職の条件が明示されていない場合、従業員が病気になった際の対応が不確定となり、結果として従業員と企業の間でトラブルが生じる可能性が高まります。
多くの企業では、就業規則で病気休職の条件や期間を明確にし、復職が不可能な場合の退職についても詳細に規定しています。このような規則がないと、従業員の意見や不満が増し、企業の信頼性が低下する恐れがあります。
4-8. 助成金申請時に要件不備として不利になる
助成金の制度は頻繁に変更されるため、中小企業がそれらを効果的に活用するには、就業規則を求められることが多くあります。
例えば、中途採用の拡大に対して支給される中途採用等支援助成金「中途採用拡大コース」や、契約社員やパート社員を正社員雇用に転換し賃金を増額した際に利用できる「キャリアアップ助成金」などがあります。
しかし、これらの助成金を受け取るためには、具体的に就業規則が整備されていることが事実上の条件です。就業規則が未整備の企業では、これらの助成金を活用することが困難となり、結果として大きな経済的な機会損失が生じます。
4-9. 副業や兼業を把握できず不利益を被る可能性がある
副業をする従業員が増加する一方で、就業規則がない場合、会社はその管理が困難になります。
副業に長時間従事することで本業の勤務がおろそかになる可能性があり、従業員のパフォーマンス低下や体調不良が懸念されます。また、競合他社での副業により機密情報が漏洩するリスクもあるため、会社にとって深刻な問題となります。
このような問題を防ぐためには、就業規則で副業を許可制にし、従業員がどのような副業をおこなうか、どの程度の時間を費やすかを確認できる仕組みを設けることが重要です。これにより、リスク管理が徹底され、会社の安全性と生産性が確保されます。
就業規則がなければ、副業のルールが存在しないため、従業員は自由に副業を始めることが可能となり、会社側は状況を把握する手立てを失います。
5. その他の就業規則や賃金規程がない場合の違法性


正社員以外にも、パート・非正規社員用の就業規則や賃金規定がない場合、事業主は法的義務に違反している可能性があります。
ここでは、どのようなケースが違法性に該当するのか解説します。
5-1. パート・非正規社員用就業規則がないケース
常時10人以上の従業員を擁する事業場では、その全従業員に適用される就業規則の作成が法律上の義務となります。もし、既存の就業規則が「この就業規則は正社員に適用する。」と限定されている場合、パート社員に適用されるべき就業規則が存在しないことになります。
このような状況では、パート社員用の就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません。これを怠ると正社員の就業規則の内容が適用されることになり、思わぬトラブルに発展することがあります。また、パート社員への就業規則の整備は、働きやすい環境を提供し、企業の信頼性を高めるためにも重要です。
5-2. テレワーク就業規則がないケース
会社と従業員の合意がある限りにおいては、テレワーク就業規則がないこと自体は法令違反になりません。
しかしテレワーク就業規則の作成が企業にとって重要である理由は、特に「労働時間の管理方法」や「費用負担」の明確性が欠けると、企業側も従業員側もトラブルに発展する可能性があるためです。
特に注意したいのは、従業員の個別の同意を得ずにテレワークを実施する状況です。例えば、会社が感染防止を理由に従業員全員にテレワークを命じる場合、就業規則の変更が欠かせません。
多くの雇用契約では、就業場所が会社と明記されています。この制約条件を変更するには、労働契約法第9条に基づいて就業規則の変更をおこなう必要があります。特に、従業員の同意なしに労働条件を変更する場合、合理的な理由が求められ、変更内容の周知を徹底することが必要です。
参考:労働契約法|厚生労働省
5-3. 賃金規程がないケース
賃金規程がなくても、就業規則に賃金に関する項目が詳細に記載されていれば特に問題はありません。
しかし、就業規則に賃金の決定や計算及び支払の方法、締切り及び支払の時期、並びに昇給に関する事項が記載されていない場合は、労働基準法第89条2号に違反することになります。この法的義務を無視することは、労働基準監督署からの指導や、従業員からの法的リスクを引き起こす可能性があります。
6. 就業規則のない会社によくある質問


ここでは、就業規則がない会社からよく出やすい質問をまとめています。ケースごとにどのように対応すべきか解説しているので、参考にしてください。
6-1. 就業規則を作成したのに提出していない場合はどうなる?
就業規則を作成したのに労働基準監督署に提出していない場合、労働基準法違反となります。
労働基準法第89条は、常時10人以上の従業員を使用する事業場において、就業規則を作成し、それを労働基準監督署に届け出ることを義務付けています。
この規定に違反すると、罰金が科される可能性があります。しかし、労働基準監督署に届け出ていない就業規則であっても、社内で適切に周知されているならば、法律違反であるものの、就業規則としての効力を認められることがあります。
6-2. 退職の手続きはどうする?
労働基準法第89条3号では、退職に関する事項は就業規則に必ず定めなければならない項目とされており、絶対的必要記載事項と呼ばれます。
しかし、就業規則のない会社では、退職手続きは民法に基づいておこなわれます。具体的には、正社員はいつでも退職の申し出が可能であり、会社がその退職を承諾したとき、または退職の申し出から2週間後が経過したときに退職が成立することとなります(民法第627条1項)。
参考:労働政策審議会労働条件分科会 第49回資料|厚生労働省
6-3. 有給休暇の取得はできる?
有給休暇は、労働基準法第39条に基づき、企業が従業員に与えることが義務付けられています。そのため、就業規則がない場合でも、法律に従い有給休暇を取得する権利は守られます。
通常、有給休暇の申請手続きや何日前に申請すべきかといった詳細は就業規則で定められますが、就業規則のない会社である場合には、前日までに申請すれば原則として有給休暇を取得できることが会社の義務となります。
このように就業規則がないと休暇についての透明性や明確性が欠けるため、トラブルを回避するためにも就業規則を整備することが重要です。
6-4. 退職金を支払わないことはできる?
会社は退職金を支給しないことも可能ですが、退職金について規定を設ける場合は、就業規則に必ず定めなければなりません(労働基準法第89条3の2号 )。そのため、就業規則がない会社において、退職金を支払う慣行がなければ、退職金の支払いの義務があるわけではありません。
6-5. 時差出勤は許可するべき?
従業員が10人未満の企業では、就業規則の作成は法律上の義務ではありません。
しかし、規模が小さくても、個別の契約や内規で労働条件を明確にしておくことは推奨されます。就業規則があることで、労働関係上のトラブルを防ぎやすくなり、会社と従業員双方にとってのメリットが大きいのが実情です。小規模でも一定のルールがあれば運営がスムーズになり、迅速な問題解決が可能となります。
就業規則がない場合、従業員から時差出勤の許可を求められることがあります。この場合、時差出勤の採否は会社の判断によります。つまり、従業員の希望を必ずしも認める必要はありません。しかし、時差出勤を許可することで従業員のワークライフバランスが改善される可能性があり、結果として業務効率の向上や従業員満足度の向上に繋がることもあります。
そのため、就業規則に始業及び終業の時刻を明記することが重要であり、これによって柔軟な労働環境を提供できる場合があります。
6-6. 法定休日や残業代の取り扱いはどうする?
休日には法定休日と法定外休日があります。労働基準法第35条では、「毎週少なくとも一回の休日」または「四週間を通じ四日以上の休日」を与えることを義務付けており、この休日は法定休日と呼ばれます。週休2日制の場合は、法定休日のほかにもう1日休日があり、これを法外休日と呼びます。
法定休日に従業員を就業させた場合は、休日割増賃金(35%以上)の対象になりますが、法外休日に従業員を就業させた場合は1日8時間か週40時間を超えている場合には時間外割増賃金(25%以上)の対象です。そのため、週休2日制の場合は就業規則で法定休日をどちらにするかを定めることが重要です。
就業規則のない会社は、休日に従業員を就業させた場合にどの賃金割増が適用されるかが不明確になるという問題があるため、就業規則は会社にとって必要です。
7. 就業規則がない会社が新しく就業規則を作る手順


会社が新しく就業規則を作成する際には、法的義務として就業規則に定めるべき項目を整理して作成することが重要です。
ここでは、就業規則の作成手順を紹介します。
7-1. 始業・終業・休憩の時間や休日を決定する
正社員用の就業規則を新たに作成するにあたって、まず決めるべきは「始業時刻」「終業時刻」「休憩時間」そして「休日」です。
これらの項目は、労働基準法によって1日8時間、週40時間を超えないように設定する必要があります(労働基準法第32条)。例えば、始業時刻を午前9時、終業時刻を午後6時、休憩時間を1時間とすると、所定労働時間は1日8時間になります。これに加えて休日を土日と定めることで、週40時間の基準を満たすことができます。
ただし、これらの労働時間や休日の設定はただの形式的なものではなく、法的な義務を満たさない場合には違法となるリスクがあります。このようにして、労働基準法のルールに従い、慎重に「始業時刻」「終業時刻」「休憩時間」「休日」を設定してください。
7-2. 就業規則のひな形を入手する
就業規則がない会社が新しく就業規則を作成する際には、まず就業規則のひな形を入手することが重要です。厚生労働省が公表しているモデル就業規則は、信頼性が高く、多くの中小企業が参考にしています。
ただし、モデル就業規則には割増賃金の率が法律上必要な割増率よりも高く設定されている場合や、休暇に関する規定が法律上は必須でないものも含まれていることがあるため、慎重に見直し必要に応じて修正する必要があります。
このように、モデル就業規則を効果的に活用することで、法的義務を果たしつつ、自社に最適な就業規則を作成できます。
7-3. 自社独自の就業規則案に作成する
自社独自の就業規則案を作成する際は、自社の労務環境に合わせて修正を加える必要があります。ただし、修正の際には「修正してよい部分」と「修正してはいけない部分」を注意深く見極めることが重要です。
例えば、有給休暇や労災補償、解雇予告に関する規定など、法律上義務付けられている部分については修正不可です。これらを誤って変更すると、違法な就業規則となってしまうリスクがあります。そのため、自主的な修正は避け、法的な適合性を確保するために、弁護士や社会保険労務士のサポートを受けることが賢明でしょう。
修正可能な部分としては、自社独自の福利厚生制度や勤務時間、休暇制度など、より具体的な就業環境に合った内容を追記することが考えられます。こうして、法律を遵守しつつ、自社の実情に即したオリジナルの就業規則を作り上げることが求められます。
7-4. 過半数代表の意見を聴取する
就業規則を新たに作成する際には、従業員の過半数代表の意見を聴取することが重要です(労働基準法第90条)。
まず、過半数代表を選出し、その代表からの意見を聴取します。この意見聴取は単なる形式的なものではなく、具体的なフィードバックを得るためのものです。
得られた意見を基に、就業規則案を見直し、必要に応じて修正をおこないます。このプロセスにより、従業員の理解と協力を得ることができ、就業規則の適用がスムーズになります。その結果、従業員との信頼関係を築くとともに、法的リスクを軽減することができます。
中小企業の経営者や人事担当者にとって、これらの手順を経ることで就業規則の信頼性と実効性が高まります。
参考:労働基準法|文部科学省
7-5. 労働基準監督署に届出・社内で周知する
就業規則が完成したら、その内容を労働基準監督署に届け出て、従業員に周知することが重要です。労働基準法第106条に基づき、企業は就業規則を正式に提出する義務があります。
まず、労働基準監督署に届出をおこない、内容が法的にも適正であることを確認します。その後、社内で電子掲示板や配布資料、全従業員に対し周知してください。これにより、従業員は自分の労働条件や義務を明確に理解し、不必要な誤解や労働トラブルを未然に防ぐことができます。
就業規則の作成から届出、そして周知までの一連の手順を確実に遂行することが、企業の法的リスクを最小限に抑え、健全な労働環境を構築する鍵となります。
8. 就業規則がない会社は法律上のリスクを理解してすぐに作成を!


就業規則は、常時10人以上の従業員を使用する事業所のみ、作成が法律で義務付けられています。常時10人未満の事業所なら、就業規則がなくとも違法とはなりませんが、人事管理など、会社を円滑に運用するためには無くてはならないものです。
労使間のトラブルを回避し会社を円滑に運用するためにも、就業規則は事業規模にかかわらず、作成するようにしましょう。
労務管理をおこなう上で、就業規則の「作成、届出・変更、さらには周知において」——正しく理解できていますか?
記載すべき項目のミスや、変更する際のルールの見落としは、法令違反や労基署からの指導といった深刻なトラブルを招きかねません。就業規則の管理ミスは企業リスクに直結するため、人事労務担当者であれば、必要な労働基準法を正しく理解しておくべきです。
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