就業規則の意見書とは?作成に必要な内容と書き方のポイント
更新日: 2023.3.15
公開日: 2021.10.27
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就業規則を届出る際は、従業員代表から聴取した意見をまとめた「意見書」の添付が必要です。意見書には、就業規則に対する意見の他に、従業員代表の選出方法や署名・捺印が必要です。
この記事では、就業規則の意見書概要と、作成に必要な内容、反対意見が出た際や、記入を拒否されたときの対処法を紹介します。
▼就業規則について1から理解したい方はこちら
就業規則とは?人事担当者が知っておくべき基礎知識
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1.就業規則の意見書とは?
就業規則の意見書とは、就業規則の内容に対して、労働者の代表から意見を聴取し書き記した書類のことです。
意見書は、就業規則を制定・変更し、管轄の労働者基準監督署へ届け出る際は添付が法律上義務付けられています。
また、就業規則に対する意見聴取をしなかった際の罰則規定も設けられています。
なお、就業規則の届出は、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に対して義務付けられています。[注1]
関連記事:就業規則の届出方法と具体的な手順を分かりやすく解説
1-1.労働者の代表とは
意見を聴取すべき“労働者の代表”とは、下記のいずれかを指します。
- 労働者の過半数で組織する労働組合
- 1がない場合は、民主的に選ばれた労働者の過半数を代表する者
2は、経営者に近い立場で業務を行う者(部長や課長など管理監督者)は選出されても代表となることはできません。そのため、一般職の労働者から、選挙や投票などの方法で選出することが求められます。
また、“労働者”とは、正社員のような正規雇用者、パート・アルバイトのような非正規雇用を問わず、該当の事業所で働く者全てを指します。
そのため、非正規雇用が加入していない労働組合の意見書では、「労働者の過半で組織する労働組合」として認められないケースもあるため注意しましょう。
1-2.労働者に意見を聴取する理由
なぜ就業規則の制定や変更の際に、労働者からの意見聴取が義務化されているかというと、労使トラブルの回避がその目的となります。
- 会社側は、労働者に不利なルールを勝手に作成・運用しないため
- 労働者側は、労働条件に関心を持ち、就業規則の内容を把握するため
このように、労働者に対して就業規則の内容を告知し、労使間の闘争を事前に防ぐ意味合いがあります。
2.就業規則の意見書に必要な内容
就業規則の意見書には、就業規則に対する意見や、労働者代表の氏名、労働者代表の選出方法などを記載します。
なお、就業規則の意見書に決まった様式はありませんが、労働基準監督署のホームページなどに掲載されているものを利用すれば、記載漏れを防げるでしょう。(※)
(※参考)厚生労働省:就業規則意見書
記載が必要な項目を解説します。
2-1.会社名及び代表取締役氏名
労働者から意見書を提出する相手は、“会社”となります。
そのため、下記のように会社名を正式名称で記載し、代表取締役氏名もフルネームで記載しましょう。
株式会社〇〇 代表取締役〇〇〇〇殿
2-2.話し合いをした日付
就業規則に対する意見を求められた日(話し合いをした日)を記載します。
2-3.就業規則に対する労働者代表の意見
話し合いで得られた、就業規則に対する労働者代表の意見を、代表者自身に記載してもらいます。
「特になし。」などでも問題ありません。
2-4.労働組合の名称又は労働者代表の職名と氏名
話し合いをした労働組合の名称、または労働者代表の氏名をフルネームで記載し押印します。職名は「一般職」などで問題ありません。
2-5.労働者の過半数代表者を選出した方法
労働者の過半数代表者を選んだ方法を記載します。「投票により選出」など、具体的に記載しましょう。
3.就業規則の意見書の書き方
就業規則の意見書に決まった書き方はありませんが、ここでは意見がなかったケースと、あったケースに分けて、記載例を紹介します。
3-1.就業規則に対し意見がなかった場合の記載例
- 特になし
- 特に異議はございません。
- 内容を確認しましたが、特に意見はありません。
意見がない場合は、そのことが分かるように記載していれば問題ありません。
3-2.就業規則に対し意見があった場合の記載例
就業規則に対し意見があった場合の記載例は、以下の通りです。
就業規則について、下記のとおり要望します。
第〇条 勤務時間は、7時間30分として頂きたい。
第〇条 時間単位の年次有給休暇制度を導入して頂きたい。
第〇条 慶弔休暇を新設して頂きたい。
以上。
上記のように、就業規則のどこをどのように変更して欲しいか、具体的に記載してもらいましょう。
4.就業規則の意見書作成のポイント
意見書を作成する上で、労働者代表から就業規則への同意が得られなかったり、意見書すら書いてもらえなかったりするケースもあるでしょう。
就業規則の意見書の注意点を解説します。
4-1.会社が従業員代表を指名して意見書を書かせることはできない
従業員代表の選出はあくまでも民主的に、従業員自らが行う必要があります。
そのため、会社側が勝手に代表者を決定し、意見書を記載してもらうことはできません。[注2]
4-2.就業規則に異議があっても同意書を添付すれば問題ない
同意書は労働者に対して意見を聞き、その内容をまとめたものであり、必ずしも同意が必要なわけではありません。
そのため、就業規則への反対意見があったとしても、労働基準監督署に届出を行う上では問題ありません。
また、従業員に対して周知をすれば、就業規則として効力も発揮します。ただし、就業規則を労働者に対して明らかに不利に変更した場合は、認められないケースもあります。
4-3.同意書の提出を拒否された場合「意見書不添付理由書」などが必要
労働者代表に就業規則の説明を行い、意見を聞いたものの、同意書の提出を拒否された場合は、別途「意見書不添付理由書」の作成が必要です。
なお、会社側としては、意見を聞いていることに変わりはないため、同意書を添付できなかったとしても、違反とはなりません。
「意見書不添付理由書」には、意見を聞いたが応じてもらえない経緯を記載しますが、詳しい記載方法は、管轄の労働基準監督署に確認しましょう。
また、法律上は問題がないとはいえ、話し合いさえ難しいなか、就業規則を強行すればさらに労使の溝が深まる可能性には十分留意しましょう。
4-4.労働者代表に意見を聞かずに意見書を作成した場合
労働者代表に意見を聞かずに、会社側で意見書を作成し提出した場合、労働基準法上の違反となり、最悪の場合30万円以下の罰金が科される恐れがあります。[注1]
とはいえ、就業規則は本来、会社側が一方的に作成・変更できるため、従業員に周知さえすれば、効力自体に影響はありません。
しかしながら、このような対応は労働紛争のきっかけともなりかねません。
必ず就業規則について、労働者代表と話し合いの場を設けるようにしましょう。
5.就業規則の届出には意見書の添付が必要
就業規則を届出る際は、意見書の添付が必要です。
意見書は、労働者代表から意見を聴取した事実があればよいため、内容は賛成・反対、どちらが記載されていても問題ありません。
もし、意見書の記載を拒否されたら「意見書不添付理由書」を添付すれば問題ありませんが、労使間の溝を埋めるためにも、話し合いの継続が求められます。
[注1]e-Gov法令検索:労働基準法
[注2]e-Gov法令検索:労働基準法施行規則
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