近年の人事評価制度に見られるトレンドの特徴についての解説
更新日: 2024.10.25
公開日: 2022.4.28
YOSHIDA
人事評価制度にもトレンドがあり、従来の評価制度が見直され、最新の評価制度を導入して成功している企業も増えています。トレンドを意識した人事評価制度は、優秀な人材を確保するうえでも重要な要素です。
そこで今回は近年の人事評価制度のトレンドを解説します。人事評価の見直しを検討している方は、トレンドを知り、現代の考え方やビジネス内容に合った評価制度を見出しましょう。
関連記事:人事評価はなぜ必要?導入して考えられるメリットやデメリット
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
適切に評価制度を運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上し、最終的には企業全体の成長にもつながるため、企業経営においてとても重要な要素です。
しかし「自社にあった最適な人事評価制度を作りたいが、そもそもやり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。当サイトではそのような企業のご担当者に向けて「人事評価の手引き」を無料配布しています。
資料では、人事評価制度の基本となる種類の解説や、導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
目次
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
当サイトではそのような企業のご担当者に向けて「人事評価の手引き」を無料配布しています。
資料では、人事評価制度の基本となる種類の解説や、導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。自社の人事評価に課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 年功主義から能力主義への人事評価トレンド
日本では長らく、年功序列を重視し、勤続年数が長い人が賃金水準が高くなるという年功主義での人事評価を行ってきました。年功主義は日本の伝統的な評価制度とも言え、安定感があり、会社への帰属意識を高められる一方、「高い評価を得るために努力をする」「成果を出して昇進・昇級したい」といったモチベーションを引き出すことができなかったり、成果を出さないのに高賃金をもらっている人がいたりするなど、生産性にも影響が出ると考えられています。
1980年代以降、年功主義に代わってトレンドとなったのは、能力主義での人事評価です。能力主義とは、仕事を遂行する能力を評価することを意味しています。
仕事を遂行する能力とは、スキルや業務・専門分野への知識、業務に対する姿勢など幅広い能力のことです。結果を出すために長期的な視野が必要な職種では、成果を出すまでのプロセスも仕事を遂行する能力に分類されます。
1-1. 能力主義のメリット
能力主義のメリットは、スキルや能力がある人材を確保しやすいということです。従来の年功主義では、いくらスキルや能力がある人材がいても、年功序列が優先されて正当な評価が得られないため、その人材が不満を持ってしまうこともありました。その結果、優秀な人材が離職してしまうこともあったでしょう。
また、現在持っているスキルや能力を評価され、成果を出すまでのプロセスも考慮される能力主義は、新入社員などの育成にも最適です。また新たな挑戦をして新しいスキルを獲得したいと考えている従業員もそのプロセスを評価されますので、積極的にスキルを身につけてステップアップしたいと考える従業員が増える可能性もあるでしょう。
1-2. 能力主義のデメリット
能力主義は年功主義のように勤続年数というわかりやすい数値がありません。数値化しづらい能力やスキル、業務への姿勢を評価することになるので、評価が曖昧になりやすいというデメリットがあります。
また、数値化しづらいものを評価するということは、評価する人の主観で評価が左右されてしまうリスクも考えられ、そこから不満が生まれてしまうこともあるでしょう。能力主義を導入して公平性のある評価を行うためには、評価する側の育成や研修をしっかり行う必要があります。
2. 能力重視から結果重視への人事評価トレンド
従業員の持つスキルや能力、仕事への姿勢を評価する能力主義を導入する企業がある一方で、1990年代以降は明確な数値に基づいて評価できる結果を重視した人事評価を導入している企業が増えました。結果重視は、文字通り結果に基づいて人事評価を行うことです。
仕事で結果を出して初めて評価されるため、成果が上がらなければ給与がアップすることもありませんし、減給になってしまうこともあります。評価が曖昧になってしまう能力主義よりも、明確な評価ができる結果重視の方が評価される側の不公平感を払拭できるという利点があります。
年功主義の人事評価から結果重視の人事評価にシフトした企業も多いです。この移行はバブル崩壊と、勤続年数の長い社員が増えたことによって人件費が膨れ上がったことが背景にあります。
2-1. 結果重視のメリット
結果重視のメリットは、結果が正当に評価されるため、仕事に対するモチベーションが維持しやすいことです。さらにいい結果を出そうと個々がスキルアップを図るため、個人の能力はもちろん、部署の能力も向上し、企業の業績アップにつながります。
また結果を基準として評価するので、公平な評価がしやすいのもメリットです。数値化した結果によって誰にでもわかりやすい評価がなされます。プロセスや勤続年数よりも結果を重視するため、経験値の高い社員や能力のある若手社員などが不公平感を感じにくいでしょう。
2-2. 結果重視のデメリット
結果重視の場合、個人の出した成果や業績が評価の対象となります。そのためここの従業員が「高く評価されたい」と個人プレーに走ってしまうリスクもあるでしょう。
同じチーム内でも「自分が高く評価されたい」と無意識に感じてしまうので、協力しなくなったり、足を引っ張りあったりしてしまいます。その結果、チームワークの悪い部署・企業となってしまい、社内環境は悪化してしまうかもしれません。
また結果重視の場合、突出して成果を残す従業員がいる一方で、全く成果を出せない従業員も出てきます。先ほどお話ししたように「自分が高く評価されたい」と個人主義に走る従業員は、成果を出せない従業員をサポートするようなことはありません。その結果、成果を残す従業員と出せない従業員の間に大きな差が生まれてしまいます。
「成果を出さなくては」と強いプレッシャーを感じることで、ストレスを強く感じ、メンタルヘルスに影響が出てしまう社員も出てきてしまうのです。職場環境におけるメンタルヘルスの問題は、近年大きな問題として扱われています。
3. 結果重視から役割主義への人事評価トレンド
結果重視は個人が正当に評価され、個々がモチベーション高く働ける一方で、社内環境を悪化させたり、従業員の間に差を作ってしまい、メンタルヘルスに悪影響を受ける社員も出てしまいます。そこで2000年代以降主流となりつつある人事評価トレンドが、役割主義です。
役割主義とは従業員がそれぞれ持つ役割に基づく行動を評価する制度のことです。結果重視の人事評価では、従業員が残した結果によって評価がなされてきました。しかし役割主義では、企業から期待される役割に基づいて、どういった行動をするかが評価されます。
3-1. 役割主義のメリット
役割主義のメリットは、企業が従業員に何を求めているかを明確に周知し、それぞれの自発的な行動を促せることです。求められていることに従って自分で考えて目標を決めて行動をするので、モチベーション高く業務に従事できます。
また行動によって合理的に評価されるため、評価への不公平感が生まれにくいのも特徴です。役割の難易度や重要度によって給与が決まり、公平な報酬を得られます。
とはいえ、従業員を正しく評価するには評価の基準やマニュアルが必要です。この基準やマニュアルをどのように作成するかが分からなず、お困りの方も多いのではないでしょうか。
当サイトでは、公正な人事評価制度を作るための手順や、実際の評価を従業員に伝える際の注意点等を解説したガイドブックをお配りしています。こちらから無料でダウンロードできますので、人事評価制度の作成や改善が適切に行えているのか、照らし合わせてご活用ください。
3-2. 役割主義のデメリット
役割主義のデメリットは、企業風土や業務におけるノウハウが構築されていないと運用しづらい点です。また求める役割は提示しますが、従業員が主体的に動かない限り機能しません。
4. 2023年版|人事評価制度のトレンド
先述のとおり、現在の人事評価トレンドは「役割主義」です。あわせて、従業員の働き方の多様化や生産性、社内調和を重視する傾向にあります。
そのため、現在の人事評価制度についても、「会社から期待されている役割」や「会社(チーム)への貢献」に重点が置かれているのです。
最新の人事評価制度として以下のものがあります。
- ノーレイティング
- 360度評価
- バリュー評価
- ピアボーナス
- リアルタイムフィードバック
- OKR
- コンピテンシー評価
- チェックイン(Check-in)
- パフォーマンス・デベロップメント
それぞれ詳しく解説します。
ノーレイティング
ノーレイティングとは、特定の指標を用いて評価しない人事評価制度のことです。会社やチームへの貢献度や日々のコミュニケーション、業務への取り組み方などから総合的に評価するため、指標では評価しにくい部分を反映させることができます。その反面、印象評価につながりやすく公平な人事評価であることを証明することは困難です。評価の背景を丁寧に綱えなければ、従業員の不満につながるおそれもあります。
360度評価
360度評価とは、人事評価を上司だけでなく、同僚や後輩からもおこなう評価制度のことを言います。会社によっては他部署の人からも評価をもらう場合もあり、より客観的に判断できるでしょう。その反面、評価に時間がかかることから効率的な評価方法とはいえません。また、匿名で評価する場合も評価コメントから評価者が割れてしまう可能性もあります。社内不和を恐れて率直な意見が集まらない可能性も考慮する必要があるでしょう。
バリュー評価
多くの企業にはバリュー(会社が掲げる価値観)があり、従業員はバリューに基づいて行動することが求められています。バリュー評価とは、この「会社のバリューに基づいた行動」ができているか否かで評価する方法です。従業員の行動指針や理念を合わせられますが、その反面、評価軸が定まっていなければ捉え方次第となってうまく機能しないおそれもあります。
ピアボーナス
ピアボーナスとは、インセンティブを従業員同士の評価で与える仕組みのことです。従来の業績に応じたインセンティブでは、特定の部門のみで評価されてしまい、事務職や企画職の従業員には与えられない会社も少なくありません。ピアボーナスであれば、従業員同士の感謝の気持ちからインセンティブが発生するため、全ての従業員に公平に機会が与えられます。日々の業務の感謝から発生するため、仕事のやりがいやモチベーションアップにつながるでしょう。
リアルタイムフィードバック
リアルタイムフィードバックとは、その名のとおり、部下の行動に対して、上司がすぐにフィードバックをおこなうことを言います。良い点も悪い点もすぐに振り返ることができるため、従業員の業務に対する自信や成長につながるでしょう。その反面、頻度を調整しなければ、フィードバックの時間や準備によって日々の業務を圧迫することになりかねません。
社内制度として回数の規定をおこなうなどの対策が必要でしょう。
OKR
OKRとは、「Objectives and Key Results」の略で、「達成目標」とその達成度を測る「主要な成果」を設定することによって、企業やチーム、個人が、同じ重要課題に取り組むための評価制度です。KPIは100%達成を目標にするのに対し、OKRの達成目標は「難しいが頑張れば達成できる」といった高い目標を設定します。そのため、70%程度の達成で評価対象となるでしょう。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、「企業が掲げる優秀な社員像」に近づいている度合いをもとに評価する人事評価制度です。全従業員において評価軸が同じになるため、より公平で分かりやすい評価制度と言えるでしょう。その反面、優秀な社員像やその分析が誤っていた場合のリスクや、従業員の個性や多様性が失われるなどの課題もあります。企業の中長期的な成長を見越した制度設計が必要でしょう。
チェックイン
チェックイン制度は、1on1などの面談を頻繁におこない、評価者と被評価者の間でフィードバックしあう仕組みのことです。特定の評価軸は設定されていないため、面談や日々の業務への取り組み方をそのまま報酬に反映させることができます。そのため、評価にかかる時間や手間を大幅に削減でき、評価者にとっても、日々の業務のフィードバックを常に得られるため、PDCAサイクルを回すスピードが大幅に上がるでしょう。その反面、長期的な評価が難しく、向いている職種と向いていない職種があることを念頭に置く必要があります。
パフォーマンス・デベロップメント
パフォーマンス・デベロップメントとは、従業員の業績ではなく「成長」に対して評価する人事評価の制度です。評価者も従業員の成長を促すためのマネジメントが中心となり、評価者の満足度や成長意欲を高めることにつながります。会社としても、今後活躍してくれる社員が増えることに対する期待も高まるでしょう。その反面、今の業績に目が向けられず、会社を支えられなくなる恐れがあるため、注意が必要です。
いずれの人事評価制度においても、メリットとデメリットが存在します。会社全体の人事評価の方針を立てるだけでなく、従業員の年度や適性に合わせて柔軟に対応する必要があるでしょう。
5. トレンドを踏まえて組織を強くする人事評価制度を考えよう
人事評価制度のトレンドは年功主義→能力主義→結果重視と変遷を遂げ、現在は役割主義が主流となりつつあります。有能な人材を確保するためにも、人材を育てるためにも人事制度は重要です。トレンドを踏まえて見直すことは企業の強みとなります。トレンドを踏まえて人事評価制度を見直して、組織を強化していきましょう。
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