復職時に診断書は必要?意見書との違いや判断基準を解説
更新日: 2025.2.7
公開日: 2025.2.7
OHSUGI
「従業員の復職時に診断書は必要?」
「診断書と意見書の違いは?」
上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。企業は、従業員の復職を適切にサポートするために、診断書や意見書をどのように取り扱うべきか理解しておかなければなりません。
復職時に診断書が必要かどうかは企業によるものの、従業員の回復状態の判断材料として有効であるため、提出してもらうことが望ましいでしょう。
本記事では、復職時の診断書の必要性や意見書との違い、復職時の判断基準を解説します。復職時の対応方法や注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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1. 復職時の診断書が必要かどうかは企業による
復職時の診断書が必要かどうかは、企業の就業規則によって異なります。休職制度は企業ごとに定める制度であり、法律で明確に定められていないためです。
とはいえ、厚生労働省は復職時に診断書を提出することを推奨しています。診断書は、従業員が業務に復帰するための健康状態が回復しているかどうかを、適切に判断する材料となるためです。
診断書があることで客観的な判断ができ、復職後のトラブル防止にもつながります。
2. 診断書と意見書の違い
診断書と意見書の違いは、以下のとおりです。
診断書 | 意見書 | |
作成者 | 医師(主治医) | 産業医 |
目的 | 病気やケガの診察・診断・治療 | 労働衛生に関する指導・助言 |
診断内容 | ・治療によって日常生活を送れる程度に回復しているか
・休職者が復職できる状態か |
・企業で求められる能力が回復しているか
・復職後も問題なく働けるか |
主治医の診断書は、医療機関で発行される公的な文書で、休職者の職場復帰の可能性を判断したものです。具体的には、病名や症状、復職の可否などが記載されています。
しかし、業務に必要な能力まで回復しているかどうかは、基本的に判断されません。
そこで重要となるのが、産業医の意見書です。産業医は医師の診断書をもとに、企業が求める能力が回復しているかどうか精査します。
とくに、復職後の業務内容に配慮が必要なケースでは、産業医の意見書が役立つでしょう。
診断書も意見書も必須ではありませんが、復職時の重要な判断材料になるため、企業によっては双方の提出を求める場合があります。
3. 復職の判断基準
復職の可否を決定する際の、明確な判断基準はありません。最終判断は、診断書や意見書をもとに企業が下すため、企業内で明確な基準を設けておくことが求められます。
復職の判断基準の例は、以下のとおりです。
- 従業員が復職する意思を示している
- 主治医に復職可能と診断されている
- 復職者の生活リズムが整っており、ある程度の期間維持されている
- 通勤時間に一人で安全に通勤できる
- 身体面・精神面ともに就業可能な健康状態に回復している
- 業務遂行能力が回復している
復職の可否については、身体面・精神面の状態だけではなく、生活リズムが整っているかどうかなど総合的な判断が必要です。復職者とコミュニケーションを取りながら、適切な判断をしましょう。
4. 従業員から復職の申し出があった際の対応方法
従業員から復職の申し出があった際は、以下の手順で対応します。
- 診断書と意見書の提出を依頼
- 面談の実施
- 復職プランの設計
- 復職可否の決定
4-1. 診断書と意見書の提出を依頼
ます、医師の診断書と産業医の意見書を提出してもらいます。両者は、復職の可否を決定するために重要な判断材料となるためです。
企業は、診断書や意見書をもとに復職が適切であるかどうかを検討します。
4-2. 面談の実施
診断書・意見書を確認したら、休職者と面談をおこないます。産業医を設置している場合は、産業医面談を先におこなうのが一般的です。
産業医面談に問題がなければ、人事担当や管理監督者(休職者の上司など)と面談をおこない、現場の状況や今後の働き方について話し合います。
4-3. 職場復帰支援プランの設計
最終的に復職を決定する前段階として、職場復帰支援プランを設計します。職場復帰支援プランの設計は、安全で円滑な職場復帰を支援するために欠かせないステップです。
基本的に、産業医を中心として管理監督者と休職者本人が共同して進めます。具体的なプラン設計の内容は、以下のとおりです。
項目 | 内容 |
職場復帰日 | ・いつから職場復帰するか |
就業上の企業側の配慮 | ・段階的な復職への配慮
・業務サポートの内容 ・業務量の調整 |
人事労務管理上の対応 | ・異動の必要性
・勤務制度変更の必要性 |
産業医の意見 | ・安全配慮義務に関する助言 |
復職後のフォローアップ | ・フォローアップの方法
・フォローアップが不要となる時期の見通し |
その他 | ・試し勤務制度の活用 |
従業員の健康状態をもとに、個々に合わせたプランを設計することが大切です。
4-4. 復職可否の決定
3つのステップを踏んだ後は、最終的な復職可否の決定をおこない、従業員に通知します。復職可能と判断した場合は、診断書や意見書にもとづき、業務環境や仕事内容に必要な配慮を検討しましょう。
復職する従業員の疑問点や、不安に感じていることについて耳を傾けることも重要です。
5. 復職時の診断書の料金
復職時の診断書は、健康保険適用外のため医療機関によって異なりますが、3,000円~1万円程度が相場です。特殊な内容や、記載内容が細かい場合は料金が高くなる傾向にあります。
また、診断書にかかる費用は、従業員が負担することが一般的です。従業員には、労務提供義務があり、自身が就業できることを企業に示す責任があります。
休職中でも企業との雇用契約は継続しているため、診断書の提出は従業員の義務といえるでしょう。
6. 従業員を復職させる際の注意点
従業員を復職させる際の注意点は、以下のとおりです。
- 復職の判断基準を明確にしておく
- 再休職予防のために段階的に復職させる
6-1. 復職の判断基準を明確にしておく
従業員を復職させる際は、復職の判断基準を明確にしておくことが重要です。明確な判断基準がなければ、担当者や部署によって対応が変わるため、不必要なトラブルが発生しやすくなります。
復職の判断基準が曖昧なことによって発生しやすいトラブルは、以下のとおりです。
- 企業としての統制がとれない
- 人事担当者の管理や手間が煩雑になる
- 休職中の従業員から企業に対する不信感や不公平感が増す
- 復職しても再休職するリスクが高まる
トラブルを避けるためにも、企業内で共通のガイドラインを作成しておくことが重要です。産業医や人事部と連携して、明確な基準を設定しましょう。
決定した内容はすべての従業員に共有し、透明性を確保しておく必要があります。判断基準を明確にすることで、休職者が職場復帰しやすい環境を整えられるでしょう。
6-2. 再休職予防のために段階的に復職させる
再休職予防のために、段階的に復職させることも大切です。初めからフルタイムで出勤させると、復職した従業員の業務の負担が大きくなり、再度体調を崩すリスクがあります。
また、休職期間が長いと、職場の環境や業務内容に変化が生じている場合もあるでしょう。段階的な復職をさせることで、従業員は業務に慣れつつ、新しい環境に適応しやすくなります。
段階的に復職させる方法として、試し出勤制度を検討してもよいでしょう。試し出勤制度とは、通勤訓練を実施したり、試験的に一定期間継続して出勤させたりする制度のことを指します。
試し出勤制度は、従業員の精神的な負担を軽減し、スムーズに職場に適応させるための有効な手段です。復職する従業員本人が職場の状況を確認しながら、復帰に向けて準備をおこなえます。
段階的な復職を実施することで、上司や同僚が復職者をサポートする時間や余裕も生まれ、業務を円滑に進められるでしょう。
7. 従業員の復職時には診断書や意見書を参考に判断しよう
従業員の復職にあたって、診断書や意見書は非常に重要な判断材料です。企業は、診断書や意見書をもとに適切な復職判断をおこない、従業員が安心して働ける環境を整えることが求められます。
診断書や意見書を参考に、従業員と企業双方にとって最善となる選択をしましょう。
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