配置転換とは?メリットや具体的な方法を詳しく解説
更新日: 2024.10.7
公開日: 2024.2.29
OHSUGI
適切に配置転換を実施すれば、人員構成の最適化やパフォーマンスの向上につながります。正しい配置転換の方法を、チェックしておくことが重要です。
一方で「配置転換は本当に必要?」「配置転換の方法がわからない」など、疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。配置転換によってデメリットが発生する恐れもあるため、慎重に実施する必要があります。
本記事では、配置転換のメリット・デメリットをまとめました。配置転換の方法や実施する際の注意点、人事異動の種類とあわせて解説するので、ぜひ参考にしてください。
HR NOTE CONFERENCE 2024
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。多くの企業が組織課題の解決及び組織強化に向けて、様々な取り組みを始めているのを目にします。
そのような中で、自社組織に漠然と”停滞感”を感じ、
「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」
といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、組織への不安や悩みとして聞かれることの多い組織課題として、
「①社員パフォーマンス向上」「②イノベーションが生まれる環境作り」「③人手不足解消」の3点を取り上げます。
そして、HR領域の有識者の皆様に、これらの組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。
強い組織を育む企業が実践している事例には、
組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。
ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。
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目次
1. 配置転換とは
配置転換とは、同一の企業・組織内で長期間にわたり業務内容を変更することです。勤務地や職種のポジションの変更を含むケースもあります。
就業規則の範囲内であれば、企業は従業員に対して「配置転換命令」の行使が可能です。適切に実施するために、基本的な知識や詳しい方法をチェックしておきましょう。
2. 配置転換の目的
配置転換を実施する目的には以下のようなものが考えられます。
- 適材適所の人材配置
- 組織の変化
- 社内ネットワークの構築
- 新しい適性の発見
- 人材の育成
- パフォーマンスの向上
配置転換の目的は企業によって異なります。なぜ実施するのか理由を明確にしたうえで、おこなうことが重要です。
2-1. 適材適所の人材配置
配置転換によって従業員それぞれのスキルに応じた適材適所の人材配置が可能です。配置転換によって適材適所の人材配置を実現できれば、それぞれの生産性向上が期待できるでしょう。
2-2. 組織の変化
同じ部署にずっと所属していると、業務の一部がルーチンワーク化してしまいます。その結果、従業員のモチベーションが低下する可能性があるでしょう。このようなモチベーション低下を防止するために定期的な配置転換が大切です。
2-3. 社内ネットワークの構築
社内ネットワークを構築するためにも配置転換は有効です。配置転換によって従業員がさまざまな部署と交流することによって、社内ネットワークが構築され、さまざまな調整がスムーズに進むようになるでしょう。
2-4. 新しい適性の発見
定期的な配置転換によって、従業員の新しい適性が発見できる可能性があります。ひとつの部署や業務だけ担っているだけでは、従業員の新しい適正に気付かない可能性があるでしょう。しかし、配置転換を実施することで新しい適正の発見につながるかもしれません。
2-5. 人材の育成
人材の育成にも配置転換は有効です。配置転換によって苦手としていたスキルの引き延ばしにつながります。反対に従業員が得意とするスキルをより高めることも可能です。
2-6. パフォーマンスの向上
配置転換によって適材適所のマネジメントができれば、従業員のパフォーマンス向上が期待できるでしょう。従業員のパフォーマンスが向上すれば組織としての生産性向上も期待できます。
3. 配置転換の時期
配置転換を実施する時期には決まりがありません。組織の状況や個人のキャリアによって異なりますが、一般的には以下のタイミングが考えられます。
- 決算時期
- 半年や1年など一定の周囲
- ジョブローテーション
ジョブローテーションとは、職務経験を積ませるために実施する定期的な配置転換のことです。制度によって期間は異なり、1ヵ月の短いものから3~5年の長いものまであります。
配置転換の効果を高めるためには、適切なタイミングで実施することが重要です。自社の状況や対象となる従業員のキャリアをチェックしたうえで、適切な時期を見極めましょう。
関連記事:ジョブローテーションとは?目的やメリット・デメリット、実施する際のポイントを解説
4. 配置転換の5つのメリット
配置転換のメリットは下記の5つです。
- 適材適所の人員配置
- 人員構成の最適化
- 人材の育成
- マンネリ解消によるモチベーションの向上
- 職場環境の改善
なぜ配置転換を実施すべきなのか、具体的なメリットをチェックしておきましょう。
4-1. 適材適所の人員配置
従業員のスキルや適正にあわせて配置転換を実施すれば、適材適所の人員配置が可能です。採用時の情報だけでは適性を判断するのは難しく、業務を通してわかるケースは少なくありません。
適正にそった適材適所の人材配置を実現すれば、一人ひとりが能力を発揮できるようになります。業務の効率化により、組織全体の生産性アップにもつながるでしょう。
4-2. 人員構成の最適化
配置転換を実施することで人員構成を最適化できます。入社や求職、退職などによる人員構成の変化に対して、柔軟な対応が可能です。
市場の変化で特定の部署が忙しくなったり、新規事業への人材の補充が必要になったりするケースもあります。人員構成の見直しでバランスを整えることが重要です。
4-3. 人材の育成
配置転換で多くの業務に関わる機会を設けることは、人材の育成に効果的です。さまざまな知識や経験を蓄積でき、幅広い業務に対応できる人材を育てられるでしょう。
経験が豊富な従業員が増え、それぞれが新しい視点で業務に取り組めます。複数の部署や業務で得た知見はマネジメントに活用できるため、次世代のリーダー育成にも役立つでしょう。
4-4. マンネリ解消によるモチベーションの向上
配置転換によって新しい業務に取り組むことで、モチベーションのアップが期待できます。同じ業務や部署で働き続けると、惰性のルーチンワークになりがちです。
異なる環境と業務が刺激となり、新しい気持ちで働けるようになります。マンネリを解消してモチベーションが高まれば、組織全体の活性化にもつながるでしょう。
4-5. 職場環境の改善
従業員の事情に考慮した配置転換によって、職場環境の改善が可能です。例えば人間関係のトラブルが発生した場合、当事者同士を離すことで解決をはかれます。
快適に働ける職場環境の提供によって、従業員の心を健康に保てるでしょう。パフォーマンスの向上を期待でき、人材の定着率も高められます。
5. 配置転換の3つのデメリット
配置転換のデメリットは下記の3つです。
- 一時的に生産力が低下する
- 専門性を高められない
- 不満によってモチベーションが低下する
企業にとってマイナスにならないように、あらかじめ確認しておくことが大事です。
5-1. 一時的に生産力が低下する
配置転換の直後は一時的な生産力の低下を招きます。新しい環境で一から業務を覚える必要があり、従業員の負担となるケースも多いでしょう。
新しい仕事に慣れるまで一定の期間が必要になるため、想定したうえで配置転換することが重要です。環境を整えておく、スムーズに引き継ぎできるように工夫するなど、準備をしておきましょう。
5-2. 専門性を高められない
配置転換によって業務を大きく変更すると、専門性は高められない可能性があります。専門的なスキルの習得には、長期的な学習や経験が必要なケースが多いでしょう。
スキルを獲得できない状態で配置転換することは、企業や従業員にとってマイナスになります。専門性の高い業務であれば、配置転換を避けることを検討してください。
5-3. 不満によってモチベーションが低下する
従業員が配置転換に不満を感じている場合、モチベーションの低下につながります。今までと異なる環境や業務が負担となるケースも多いので、注意が必要です。
配置転換に納得してもらうためには、早めの通知と丁寧な説明が求められるでしょう。配置転換のあとは、指導やフォローを徹底することが重要です。
6. 配置転換が違法になるケースは?
配置転換が違法になるケースもあります。例えばうつ病などの持病を抱えている従業員を、持病が悪化するような業務に配置転換する場合は違法もしくは無効として扱われる可能性があります。ほかにも次のようなケースは配置転換が認められない可能性があるでしょう。特に、配置転換が業務上必要かが疑わしい、配置転換の経緯から不当な目的が考えられる場合は認められない可能性が高まります。
- 育児中で夜勤が難しいという従業員に対して他の候補者がいるにも関わらず夜勤のある部署に配置転換する
- 有資格者として採用したにも関わらず、資格を活かせない部署に配置転換する
ほかにも組合や思想、性別を理由にした不当な配置転換は認められません。自社で予定している配置転換が違法や無効にならないように適切な対応を義務としましょう。配置転換に正当な理由がなければ従業員に拒否される可能性もあります。
7. 配置転換の方法・手順
配置転換の手順は以下の通りです。
- 候補者を絞り込む
- 対象者に内示する
- 正式に辞令を交付する
- 配置転換とフォローを実施する
正しい方法をチェックして、スムーズに配置転換を実施しましょう。
7-1. 候補者を絞り込む
配置転換の対象となる従業員をリストアップします。以下の項目を判断基準としてください。
- 本人の希望
- 業務経験・業績
- 希望のキャリア
- 適性
- 健康状態
- 育児・介護の状況
人事データを一人ひとり精査して、適切な従業員をピックアップしましょう。本人にあらかじめ打診しておき、配置転換が困難な事情がないか確認しておくと安心です。
7-2. 対象者に内示する
対象となる従業員に配置転換を告知します。第三者に知られない場を用意して、内々に詳細や意義を伝えましょう。
引き継ぎなどさまざまな準備が必要であるため、2週間前までには内示してください。転居が必要な場合は、3~6ヵ月前には告知しておくことが大事です。
7-3. 正式に辞令を交付する
決定通知として辞令を正式に交付します。メールや社内報、社内連絡ツール、社内ポータルサイトを使用して、全社に公表することが一般的です。
引き継ぎなど周囲の人にも影響があるため、ある程度余裕をもって辞令を出しましょう。確実性を高めるために文書にして、詳細を明確に記載してください。
7-4. 配置転換とフォローを実施する
配置転換を実施した後は、継続してフォローアップをおこないます。業務や環境に慣れるまでは丁寧なサポートが必要です。
例えば面談期間を設けたり、ストレスチェックで精神状態を確認したりといった方法が考えられます。配置転換によるトラブルを防ぐために、フォローを徹底してください。
8. 配置転換を実施する際の2つの注意点
配置転換を実施する際の注意点は下記の2つです。
- 労働契約上の根拠が必要
- 権利の濫用がある場合は無効
トラブルを防ぐために、あらかじめ注意点を確認してください。
8-1. 労働契約上の根拠が必要
配置転換命令を行使するためには労働契約上における根拠が必要です。就業規則や労働協約で「配置転換を命じられる」と規定されていることが、根拠となります。
根拠がある限り従業員は原則として拒否できませんが、規定がない場合は本人の同意がなければ配置転換を実施できません。さらに労働契約で地域や職種に限定して契約がなされているケースでは、行使はその範囲内に限定されます。
8-2. 権利の濫用がある場合は無効
配置転換命令を行使できる場合でも、権利の濫用に該当するケースでは無効とされます。以下のポイントが、権利の濫用に該当するかの判断基準です。
業務上の必要性 | 適正配置や能力開発、業務運営の円滑化など業務上の必要性があるか |
動機・目的の正当性 | 嫌がらせや報復を目的とした配置転換でないか |
著しい不利益の有無 | 介護が困難になるなど私生活に著しい不利益が発生するかどうか |
参照:個別Q&A9-(1)使用者の配転命令とその限界 – 福島県ホームページ
9. 配置転換以外の人事異動
配置転換以外にも人事異動にはさまざまな種類があります。それぞれの言葉の意味について確認しておきましょう。
昇進 | 社内での職位・役職が上がること |
昇格 | 職能資格制度に準拠して等級が上がること |
降職 | 社内での職位・役職が下がること |
降格 | 職能資格制度に準拠して等級が下がること |
転勤 | 転居を伴う勤務地の変更のこと |
出向 | 雇用関係を結んだままグループ会社や子会社に異動すること |
転籍 | 雇用契約を解除してグループ会社などの転籍先に所属を移すこと |
解雇 | 企業側によって一方的に雇用契約を解除すること |
退職 | 本人の都合や定年によって雇用契約を終了すること |
10. 適材適所な配置転換で企業を活性化しよう
配置転換には、人員構成の最適化や人材の育成などのメリットがあります。一方で一時的な生産力低下やモチベーションの低下など、デメリットが発生することも考えられるでしょう。
配置転換の効果を最大化するためには、正しい方法や注意点を把握することが重要です。適材適所な配置転換を実施して、企業の活性化につなげてください。
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