ジョブローテーションとは?目的やメリット・デメリット、実施する際のポイントを解説
更新日: 2024.1.17
公開日: 2023.12.18
OHSUGI
ジョブローテーションとは、部署や職種の変更を意図的に繰り返すことで、従業員の能力開発を図ろうとする取り組みです。日本では、終身雇用時代から浸透している制度ですが、社員の適性判断や属人化の解消にも役立つことから、再び注目されています。
しかし、ジョブローテーションは目的やデメリットをよく知らないと、期待するような効果は得られません。なかには「どのようにして実施すればよいかわからない」と導入に悩む方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ジョブローテーションの概要や主な目的、メリット・デメリットを解説します。実施のポイントも紹介するため、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. ジョブローテーションとは
ジョブローテーションとは、部署の異動や職務の変更などの方法により、従業員の能力開発や人材育成を図る制度です。社員研修の一つであり、従業員はさまざまな部署・職務での経験を通して、知見やスキルを伸ばしていきます。
実施される期間は短いと6ヵ月、長くて5年と、企業の目的や狙う効果によって幅があります。
ジョブ型雇用制度が基本の海外では、ジョブローテーションを導入した事例はあまり多くありません。現在あるリソースを適所にあてがう日本の仕事観にマッチしていることから、民間企業を中心に導入されています。
1-1. ジョブローテーションと人事異動・社内公募の違い
同じ部署の異動や変更を指す言葉として使われる「人事異動」と「社内公募」は、ジョブローテーションと目的や方法が大きく違います。以下の順で2つの言葉との違いを確認し、ジョブローテーションへの理解を深めましょう。
- ジョブローテーションと人事異動の違い
- ジョブローテーションと社内公募の違い
1-2. ジョブローテーションと人事異動の違い
ジョブローテーションと人事異動の違いは、異動の目的にあります。
用語 | 目的 |
ジョブローテーション | 従業員の能力開発・育成 |
人事異動 | 部署や組織の改編、人員の拡充 |
人事異動は、部署や組織の改編、人員の拡充を目的としておこなわれる配置転換です。転勤をはじめ部署の異動や職種の変更、定年退職、さらには昇格・降格、解雇など会社側の都合でおこなわれることもあります。
人事異動と比べると、ジョブローテーションの戦略的な側面が一層強く感じられるでしょう。
1-3. ジョブローテーションと社内公募の違い
社内公募とジョブローテーションは、どちらも人事戦略の考え方の一つではあるものの、人選方法が異なります。
用語 | 人選方法 |
ジョブローテーション | 全社員を対象に人材を選ぶ |
社内公募 | 希望者を対象に人材を選ぶ |
社内公募は、特定のポストや職種で人員が不足している場合に、社内において人材を募集する制度です。会社側が公募する条件を提示し、条件に合う従業員が応募します。
従業員自らの自主的な選択によって異動可能であることが特徴です。従業員の主体性を尊重する点では、キャリア開発を支援する意味合いが強いといってもよいでしょう。
2. ジョブローテーションの主な目的
ジョブローテーションを実施する主な目的は以下の2つです。
- ジェネラリストの育成
- 業務の属人化防止
2-1. ジェネラリストの育成
ジョブローテーションは、複数の職務経験から企業全体を把握できるため、ジェネラリストの育成を目的に実施されることがあります。ジェネラリストとは、さまざまな分野のスキルや知識を持つ人材のことです。
日々多くの企業がせめぎ合う現代では、企業の全体を俯瞰して捉えられる人材を育て、自社の活性化を図ることが求められます。社員が部署や職種を横断した、多角的な視点を持つようになれば、将来の企業経営を担う幹部候補にもなり得るでしょう。
2-2. 業務の属人化防止
企業がジョブローテーションをおこなうもう1つの目的は、業務の属人化を防ぐことです。同じ部署に同じ社員が長く従事している状況では、特定の人しか業務内容を理解していない「属人化」が強まる傾向にあります。
業務が属人化すると、業務の担当者が休職や退職をした場合に、業務内容やノウハウがきちんと引き継がれない可能性があるでしょう。場合によっては、ほかの従業員がカバーし切れず、会社全体の生産性を下げることにもつながりかねません。
ジョブローテーションが取り組みの一つとして浸透している企業なら、複数の従業員間で業務の内容やノウハウを共有できます。業務効率化や働き方改革が企業の課題に注目されるなか、ジョブローテーションも効果的な取り組みとして期待できるでしょう。
3. ジョブローテーションを実施することで得られる3つのメリット
ジョブローテーションを実施する主なメリットとして以下の3つがあります。
- 従業員の適性が判断しやすくなる
- 各部署と連携した社内ネットワークが構築できる
- 従業員のモチベーションアップを維持・向上できる
3-1. 従業員の適性が判断しやすくなる
ジョブローテーションの導入で得られる最も大きなメリットは、従業員の適性を判断しやすくなることです。あらゆる業務を担当してもらうことで、得意不得意がわかるでしょう。
ジョブローテーションで複数の業務経験を重ねることは、従業員が自身の適性やキャリアを考えるきっかけになります。従業員の意志や異動先である部署の意見も参考にして配置転換を考えれば、より適材適所への人材配置が可能になるでしょう。
3-2. 各部署と連携した社内ネットワークが構築できる
ジョブローテーションでは、部署をこえた新たな社内ネットワークを構築できます。ともに仕事を成し遂げた仲間が増えることで、部署間で連携しやすくなり、何か問題が起きたときも迅速に対応できるでしょう。
また、業務の悩みを相談したり教え合ったりできる存在が多いことは、キャリアアップを目指す社員にとって大きな強みになります。社内の雰囲気も和やかになり、より働きやすい環境を整えられるでしょう。
3-3. 従業員のモチベーションを維持・向上できる
効果的なジョブローテーションは、従業員のモチベーションを維持・向上させることにもつながります。新たなやりがいを見つけたり、さまざまな部署との交流で刺激を受けたりできることも、ジョブローテーションならではのよさです。
固定された業務内容で何年も働き続けると、人によってはもの足りなさやマンネリを感じる場合もあります。定期的に配置換えをおこなうことで、マンネリを解消しつつ、従業員の仕事に対する意欲の維持・向上が期待できるでしょう。
4. ジョブローテーションを実施することで懸念される3つのデメリット
ジョブローテーションは複数のメリットを享受できる一方で、以下のような3つのデメリットも存在します。
- スペシャリストを育てられない
- 異動時に生産性が低下する
- 教育にかかるコストが高い
ここからは、それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
4-1. スペシャリストを育てられない
ジョブローテーションのデメリットは、スペシャリストを育てられないことです。スペシャリストとはある分野において高度なスキルや知識を持つ人を指します。
ジョブローテーションは、半年から数年で部署や職種が変わるため、業務の専門性を身に付けにくいです。社員の専門性や技術力を磨きたい場合、幅広い経験を積むジョブローテーションは不向きといえるでしょう。
4-2. 異動時に生産性が低下する
ジョブローテーションでは、一時的ではあるものの部署内の生産性が低下します。部署が変わることで社員が異動のたびに新人同然となるためです。
本人が新しい仕事を覚えるまでは、ほかの社員でカバーしなければならず、指導や引き継ぎにも時間がかかるでしょう。ジョブローテーションの体制が整っていない状況では、人材の変動による生産性への影響が大きいです。
4-3. 教育にかかるコストが高い
異動ごとに教育が必要になるジョブローテーションでは、教育コストの高さがデメリットとして懸念されます。
例えば異動計画やマニュアルの作成、部署との交渉・調整など、人事担当者は異動のたびに多くの準備をしなければなりません。受け入れ側でも指導計画の作成や教育時間の確保が必要です。
体力的・時間的負担を背負うことが予想されるでしょう。
5. ジョブローテーションに向いている企業の3つの特徴
ジョブローテーションに向いている企業の特徴は次の3つです。
- 社内に複数の部署がある
- 新卒一括採用をおこなっている
- 一つのプロジェクトにかかる期間が短い
5-1. 社内に複数の部署がある
ジョブローテーションに向いている企業の特徴として、社内に複数の部署や職種があることが挙げられます。部署を横断して幅広い業務を経験する機会にできるためです。
例えば営業部や企画部がある企業では、部署間の異動により顧客にサービスを提案するノウハウと顧客ニーズの両方を把握できます。
部署が多いほど事業経営の理解に深みが増すでしょう。ジョブローテーションを導入する際は、まず自社の部署数や規模を確認することをおすすめします。
5-2. 新卒一括採用をおこなっている
新卒の一括採用をおこなっている企業も、ジョブローテーションに向いているといえます。新卒一括採用を基本とする企業の場合、在籍している社員数が多く、ゆとりのある人員でジョブローテーショを実施できるためです。
また、未経験者を中長期で育成する体制が整っていることや、異動による業務への支障が少ないことも理由として挙げられます。
新しい人材を受け入れられる体力のある企業なら、ジョブローテーションで社内の配置をより効率化することにも向いているでしょう。
5-3. 一つのプロジェクトにかかる期間が短い
異動時に生産性が下がることや取引先への影響を考えると、一つのプロジェクト期間が短い企業・職種であることが望まれます。長期的なプロジェクトの場合、完結しないまま異動する可能性があり、十分な能力の習得が困難であるためです。
プロジェクトの期間は、半年~4年程度が目安となります。期間が短ければ、プロジェクトを遂行したタイミングでジョブローテーションを実施しやすいでしょう。
6. ジョブローテーションを実施する際に注意すべき3つのポイント
ジョブローテーションを実施する際は、次の3つのポイントに注意しましょう。
- 実施する目的・期間を明確にする
- 従業員のキャリアや希望に沿った配置をする
- サポート体制を整える
ここからは、それぞれのポイントを詳しく解説していきます。
6-1. 実施する目的・期間を明確にする
ジョブローテーションの導入が決まったら、まずは実施する目的や期間を明確に設定することが肝心です。ジョブローテーションを導入・活用して、どのような効果を得たいのか、どのような従業員を育てたいのかを検討し、計画していきましょう。
また、ジョブローテーションを実行に移すためには、従業員本人の同意が必要です。会社と本人との間で認識のずれが生じないよう、実施の目的や期間をはっきりと伝えましょう。
6-2. 従業員のキャリアや希望に沿った配置をする
効果的なジョブローテーションに導くためには、従業員のキャリアや希望に沿った配置をすることが大切です。会社都合で一方的に配置を決めた場合、本人の意欲のみならず、ジョブローテーションならではのメリットまで失われます。
配置を決める際は、従業員本人のキャリアに対するビジョンや希望を聞き、性格やスキルを把握したうえで異動先を決めましょう。
6-3. サポート体制を整える
ジョブローテーションを実行する前に、企業としてのサポート体制を整えることも忘れてはなりません。
異動先では、スムーズに業務が開始できるよう部署内の人員配置を検討するほか、マニュアルや計画書を作成する必要があります。異動する社員への配慮としては、転居を伴う場合に手当てを支給することや、早めに内示を出すことなどが挙げられるでしょう。
また、企業側のサポート体制が整っていることで、効率的な実施だけでなく、生産性の低下を最小限に抑える効果も期待できます。従業員の家族構成や健康面にも配慮をして、適切な教育環境を用意しておきましょう。
7. 効果的なジョブローテーションで人材育成を図ろう
ジョブローテーションは、部署数や従業員数が多く、ジェネラリストを育てたい企業には向いている制度です。ただし、導入する際は、実施の目的や人員の配置をよく考え、従業員が安心して従事できる環境を整える必要があります。
まずは自社がジョブローテーションに向いているかどうか、社内状況や事業内容を細かく分析し検討してみましょう。
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人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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