リモートハラスメント(リモハラ)とは?具体的な事例や原因・対策を解説
更新日: 2025.6.13 公開日: 2025.2.1 jinjer Blog 編集部

リモートハラスメント(リモハラ)とは、ネット環境下でのリモートワークに付随して発生するハラスメントを指します。放置すれば企業の信用問題に発展する可能性があるため、迅速な対処が必要です。
本記事は、リモートハラスメントの内容を、具体的な事例をまじえつつ紹介します。リモートハラスメントが発生する原因と対策もあわせて解説するので、ぜひ企業運営の健全化にお役立てください。
目次
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1. リモートハラスメント(リモハラ)とは?


リモートハラスメント(リモハラ)とは、在宅勤務などのリモートワーク中に発生する、オンライン上でのハラスメント行為を指します。ネット環境を介しておこなわれるため、対面の職場環境とは異なる特有の問題が生じやすいのが特徴です。
例えば、リモート下では相手との距離感がつかみにくく、無意識のうちに過剰な干渉や監視をしてしまうケースがあります。また、リモートハラスメントは自宅や出先からの業務中に限らず、ビデオ会議、チャット、SNS、電子メールなど、ネット環境下でおこなわれるハラスメント全般を含む広い概念として使われることもあります。
リモートワークでは、社員が物理的に会社から離れた場所で勤務しているため、管理の目が届きにくく、問題が見過ごされがちで、結果としてハラスメントがエスカレートしやすい傾向も見られます。
1-1. リモートハラスメントの実態調査
東京大学の調査によると、在宅勤務の経験がある人のうち、「業務時間外にメールや電話などへの対応を求められた」と回答した人は21.1%、「就業時間中に上司から過度な監視を受けた」と回答した人は13.8%と、いずれも比較的高い割合を示しています。
また、パワーハラスメント(パワハラ)を受けた人は5.9%、セクシュアルハラスメント(セクハラ)を受けた人は4.8%という結果も出ており、リモート環境下であってもハラスメントのリスクがあることについて明らかになっています。
このような実態を踏まえ、リモートワーク特有のハラスメントの傾向を理解し、その原因を分析したうえで、適切な対策を講じることが、健全な組織運営には不可欠です。
参考:コロナ禍で在宅勤務を経験した労働者が、リモート環境下でのハラスメント(リモハラ)を経験した割合とその内容|東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野/精神看護学分野
2. リモートハラスメントの具体的な事例


リモートハラスメントは、主に「パワハラ型」「セクハラ型」「モラハラ型」の3つの形態に分類できます。ここでは、それぞれの形態におけるリモートハラスメントの具体的な事例を紹介します。
2-1. パワハラ型
パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場において優越的な立場にある人が、適正な業務範囲を超えて、身体的・精神的な苦痛を与えることや就業環境を害することをいいます。パワハラ型のリモートハラスメントの具体的な事例は、次の通りです。
- 部下にPCのカメラを常時オンにさせ、行動を過度に監視する
- 業務の進捗を頻繁かつ執拗にチェックする
- 業務時間外にも作業指示を出し、即時対応を強要する
リモートワークの普及に伴い、オンライン上でのパワハラも新たな形で発生しています。リモートワークでは、対面でのやり取りが少ないことから、上司が部下の業務状況を把握しにくくなる一方で、過剰な管理・監視に走るケースも少なくありません。
2-2. セクハラ型
セクハラ(セクシャルハラスメント)とは、職場で性的嫌がらせをすることで、労働者に不利益を与えたり、就労環境が害されたりすることです。セクハラ型のリモートハラスメントの具体的な事例は、次の通りです。
- 服装や化粧など、容姿に関して不必要に言及する
- 自宅の部屋の様子に触れたり、部屋全体を映すよう要求したりする
- Web会議システムやチャットツールで私的な連絡をおこなう
リモート環境下では、職場とプライベートの境界が曖昧になりやすく、公私の線引きが難しくなることがあります。そのため、加害者側に悪意がなくても、無意識のうちにセクハラにつながる言動をしてしまうリスクがあります。
2-3. モラハラ型
モラハラ(モラルハラスメント)とは、道徳や倫理に反する言動によって、人格・尊厳を傷つけたり、身体的・精神的な嫌がらせをしたりすることです。モラハラ型のリモートハラスメントの具体的な事例は、次の通りです。
- 目的もなく1on1ミーティングを頻繁に開催する
- 故意にチャットのメッセージに返信しない
- 業務時間内では終わらない量の仕事を押し付ける
- オンライン飲み会を開催し、半ば強制的に参加を求める
リモートワークでは、物理的に他者と離れて働くことから、孤立感を覚えやすく、また第三者の目が届きにくいという特性があります。このような環境下では、加害者がその状況を悪用し、非道徳的な対応に及ぶケースも見られます。
関連記事:ハラスメントの定義は?予防するための対策や研修を解説
3. リモートハラスメントの放置で企業が被る被害


リモートハラスメントをそのまま放置していると、企業にさまざまなリスクが生じます。ここでは、リモートハラスメントを放置した場合に企業が直面する具体的なリスクについて詳しく説明します。
3-1. パワハラ防止法に抵触して社会的信用が低下する
パワーハラスメント防止法(労働施策総合推進法)では、職場におけるパワハラを未然に防止し、発生時には適切に対応するための体制整備が、企業に義務付けられています。
リモート環境下でも、上司がその権限を悪用し、部下を精神的・身体的に追い込むようなハラスメントが発生するケースも見受けられます。このようなリモートハラスメントを放置していると、パワーハラスメント防止法第33条に基づき、厚生労働大臣からの指導・勧告を受ける可能性があります。
また、企業が適切な措置を講じていないと判断された場合、その企業名が公表されることもあり得ます。「リモハラが蔓延する会社」として公になれば、社会的信用の低下を招く恐れがあるので注意が必要です。
(助言、指導及び勧告並びに公表)
第三十三条 厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができる。
2 厚生労働大臣は、第三十条の二第一項及び第二項(第三十条の五第二項及び第三十条の六第二項において準用する場合を含む。第三十五条及び第三十六条第一項において同じ。)の規定に違反している事業主に対し、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
引用:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(パワーハラスメント防止法)第33条|e-Gov法令検索
3-2. 従業員のモチベーションが下がる
リモートハラスメントを放置すると、被害を受けた従業員は不眠や不安感、抑うつなどのメンタルヘルス不調を引き起こす可能性があります。これにより、心身の健康が損なわれ、業務への集中力や意欲も低下してしまいます。
さらに、職場内の人間関係が悪化し、チームの連携が乱れることで、全体の仕事の効率やモチベーションに悪影響を及ぼし、結果として労働生産性の低下につながるリスクもあるでしょう。そのため、リモートハラスメントが疑われる事案が発覚した場合は、迅速かつ適切に対応することが極めて重要です。
3-3. 経営存続の危機に陥る
リモートハラスメントを放置すると、その悪影響は個人だけでなく、組織全体にも広がります。従業員の満足度が低下し、企業イメージが損なわれることで、優秀な人材の離職や採用難、さらには取引先との関係悪化といった経営上のリスクが高まります。
また、ハラスメントを受けた従業員が法的措置に踏み切る可能性も否定できません。訴訟に発展すれば、企業は社会的信用を失うだけでなく、多大な時間・コスト・労力を要することになります。このような事態に陥る前に、リモートハラスメントを未然に防ぐ体制づくりと、発生時の迅速な対応体制の整備が不可欠です。
4. リモートハラスメントが発生する背景や原因


リモートハラスメントが発生する背景を理解することで、効果的な対策を講じやすくなります。ここでは、リモートハラスメントが生じる理由や原因について詳しく解説します。
4-1. 公私混同が起こりやすい
リモートハラスメントが発生する大きな原因として、リモート下では公私混同が起こりやすいことが挙げられます。
自宅をはじめとした私的な空間で業務に携わる場合、ときに仕事とプライベートをはっきり区切るのが困難です。オンとオフの切り替えがつきにくくなることで、どこまで仕事なのかが曖昧になり、相手に対して過剰な要求をしてしまう可能性があります。
また、オンオフの線引きがつけられないと、長時間労働にもつながりやすいでしょう。
さらに、部屋の様子や家族がカメラに映りこむことでプライベートに踏み込み、プライバシーの侵害につながる場合もあります。
4-2. メンバーの業務管理がしにくい
リモートワーク中のメンバーの業務管理のしにくさからも、リモートハラスメントが発生するケースがあります。
リモートワーク中、管理職側はメンバーの仕事ぶりがつかみにくく、管理を困難に感じるものです。このような背景から、リモートワーク中に過度な監視や干渉を試みる場合があります。
とくにリモートワーク中の運用体制やルールが明確化されていない場合には、どこまで相手に踏み込んでよいかがわからないため、その兆候が顕著です。
また、運用体制が整備されていない場合、ハラスメントを感じたメンバー側もどこへ相談すべきかわかりません。結果、後戻りが難しくなるほど問題が大きくなるまで顕在化しない可能性があります。
4-3. リモートワークに対してストレスがある
リモートワークに対するストレスも、リモートハラスメントにつながる要因です。
リモート環境下では、リアルな環境とコミュニケーション方法が異なります。例えば、社内であれば隣の席に話しかけることは容易ですが、リモート下ではチャットやメールでやり取りしなければなりません。
直接やり取りしないことで真意が伝わりにくくなり、相手との軋轢が生じる可能性もあります。
不慣れな環境によるストレスや、他者とのコミュニケーションの希薄さにより、ハラスメントに発展することもあるでしょう。
4-4. リモートハラスメントに対して理解不足がある
リモートハラスメントは理解不足からも発生します。
リモートハラスメントに関する理解が曖昧だと、前述の要因などから、悪意のないままつい踏み込んだ対応を取ってしまうこともあるものです。
加害者・被害者の双方に問題意識がないままやり取りが続いてしまうと、早期に気づいて軌道修正することが難しくなり、結果としてトラブルが深刻化する恐れがあります。
5. リモートハラスメントへの対策方法


リモートハラスメントを防止するためには、事前に対策を講じることが非常に重要です。ここでは、リモートハラスメントへの具体的な対策方法について詳しく紹介します。
5-1. リモートハラスメントに対する社内研修を実施する
リモートハラスメントに対する社内研修の実施を検討しましょう。リモートハラスメントに対する理解が進んでいないと、意図せずハラスメントをおこなってしまう場合があります。
意図的にハラスメントをしていないケースでも、厳しいペナルティがあることを把握しておけば思いとどまるきっかけになるでしょう。定期的にすり合わせの場を設けることで、リモートワーク中のコミュニケーション不足の解消にも役立ちます。
公私混同しないような意識づくりに関しても、社内教育の場で共通認識を作っておくとよいでしょう。
5-2. リモートワークに関するルールづくりをおこなう
リモートワークに関するルールづくりも大切です。ルールに沿った対応を心がけることで、意図せず起こるリモートハラスメントが抑止できます。
リモート作業中の勤怠管理や進捗管理の方法と頻度、連絡手段、業務中の服装、PCカメラの設定などを詳細に取り決めておきましょう。
関連記事:在宅勤務導入時に就業規則は変更する?在宅勤務規程は作る?
5-3. 相談窓口を開設する
相談窓口の開設も、リモートハラスメントの防止につながります。社内教育やルールづくりをおこなうだけでは、完全にハラスメントを防止するのは困難です。窓口が存在すれば、ハラスメントが起こった際の情報収集や処置がスムーズに進行し、問題にすみやかに対処できます。
また、相談窓口があることで、ハラスメントの抑止にもつながるでしょう。リモートハラスメントはほかのハラスメントとの関連性もあります。社内で起こるハラスメント全般の総合窓口の設置もおすすめです。
6. リモートハラスメントを防止し健全な企業運営に努めよう


リモートハラスメントは、ネット環境下でのリモートワーク時に発生するハラスメントです。放置すれば、企業運営に悪影響を及ぼしかねません。
リモートワークに関する明確なルールを整備し、従業員一人ひとりがその内容を正しく理解することで、リモートハラスメントの発生は一定程度防ぐことが可能です。また、相談窓口や通報体制を整えることで、問題が発生した際にも迅速かつ適切な対応が取れるようになります。
企業として、リモートハラスメントの予防と早期対応に取り組むことは、従業員の安心・安全な就労環境を守るとともに、健全な企業運営と社会的信頼の維持につながります。全社一丸となって、ハラスメントのない職場づくりを目指しましょう。



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