労働者派遣法第30条の4第1項(労使協定方式)とは?その内容や注意点を解説 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

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労働者派遣法第30条の4第1項(労使協定方式)とは?その内容や注意点を解説

腕を組むビジネスマン

労働者派遣法第30条の4第1項に基づく「労使協定方式」は、同一労働同一賃金の実現に向け、派遣労働者の待遇を適切に確保するための重要な仕組みです。

派遣労働者の待遇を決定する方法の一つであり、同法第30条の3に基づく「派遣先均等・均衡方式」と対比して用いられます。本記事では、労使協定方式の基本的な仕組みやメリットをはじめ、派遣元事業主が押さえておきたい注意点まで詳しく解説します。

▼そもそも労働者派遣法とは?という方はこちらをお読みください。

労働者派遣法とは?内容や罰則が科されるケースについて解説

1. 労働者派遣法第30条の4第1項(労使協定方式)とは?

本

労働者派遣法第30条の4第1項とは、2020年4月1日に施行された規定で、派遣元事業主が「労使協定方式」によって派遣労働者の待遇を決定する場合のルールを定めたものです。

まずは、労働者派遣法第30条の4第1項の原文を確認してみましょう。

派遣元事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その雇用する派遣労働者の待遇(第四十条第二項の教育訓練、同条第三項の福利厚生施設その他の厚生労働省令で定めるものに係るものを除く。以下この項において同じ。)について、次に掲げる事項を定めたときは、前条の規定は、第一号に掲げる範囲に属する派遣労働者の待遇については適用しない。

引用:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)第30条の4第1項|e-Gov法令検索

この条文では、労使協定に定めるべき事項や協定を締結する相手方などが規定されています。つまり、労使協定方式では遣元事業主が労働者側と書面による協定を締結し、その協定で定めた基準に基づいて派遣労働者の待遇を決定します。

関連記事:労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定とは?

2. 労働者派遣法第30条の4第1項と第30条の3(派遣先均等・均衡方式)との関係

本を読んでいる様子

労働者派遣法第30条の3では「派遣先均等・均衡方式」が定められています。派遣元事業主は、派遣労働者の待遇を確保する方法として、「労使協定方式」または「派遣先均等・均衡方式」のいずれかを採用します。

両者は、派遣労働者の待遇を確保するための異なる仕組みです。それぞれの違いを、次の表にまとめます。

条文 第30条の4第1項 第30条の3
待遇決定方式 労使協定方式 派遣先均等・均衡方式
待遇を比較する対象 同種の業務に従事する一般の労働者 派遣先の通常の労働者
派遣先からの比較対象労働者の待遇情報の提供 不要 必要
雇い入れ時・派遣時の説明 労使協定方式でどのような措置を講じるか 派遣先均等・均衡方式によりどのような措置を講じるか

派遣先均等・均衡方式を採用する場合、派遣元は、派遣先から比較対象となる労働者の待遇情報の提供を受け、それを踏まえて派遣労働者の待遇を決定します。

一方、労使協定方式なら派遣先からの情報提供が一切不要というわけではありません。教育訓練や福利厚生施設の利用などに関して、派遣先から情報提供を受けたり、必要な配慮を求めたりする場面があります。

また、派遣元には、派遣労働者の待遇を確保するために講じる措置について、雇い入れ時や派遣時などに説明することが求められています。労使協定方式を採用する場合は、労使協定に基づいてどのように待遇を決定するのかなどを、派遣労働者にわかりやすく説明することが重要です。

関連記事:労使協定方式とは?均等均衡方式との違いや派遣労働者の賃金水準について解説

2-1. 労使協定方式の選択割合は80%を超えている

選択している待遇決定方式

引用:労使協定書における賃金等の記載状況(一部事業所の集計結果(令和7年度))等について|厚生労働省

厚生労働省は、労使協定書に記載された賃金や待遇などの内容を集計し、その実態を公表しています。令和7年度の集計では待遇決定方式として「労使協定方式」を選択している事業所が87.4%となりました。

一方、「派遣先均等・均衡方式」は9.9%、「両方式の併用」は2.6%でした。このことから、今回の集計対象となった事業所では、労使協定方式を採用しているケースが大半を占めていることがわかります。

3. 労働者派遣法第30条の4第1項のメリット

メリット

労働者派遣法第30条の4第1項に基づく「労使協定方式」は、多くの派遣元事業主に採用されています。ここでは、労使協定方式を採用するメリットについて解説します。

3-1. 派遣先から取得する情報を簡略化できる

労働者派遣法第30条の3に基づく「派遣先均等・均衡方式」では、派遣先の通常の労働者との均等・均衡を図る必要があります。そのため、派遣先ごとの情報確認や待遇検討など事務負担が生じやすいです。

一方、労働者派遣法第30条の4第1項に基づく「労使協定方式」を採用すれば、派遣労働者の待遇を派遣先の通常の労働者の待遇を基準として決定する必要がなくなります。

そのため、派遣先の通常の労働者の待遇に関する情報収集や比較・検討にかかる事務負担を軽減しやすくなるメリットがあります。

3-2. 派遣先の変更による賃金変動を抑えやすい

労働者派遣法第30条の4第1項に基づく「労使協定方式」では、労使協定に定めた賃金決定のルールに基づいて決定します。そのため、労使協定に定めた基準を満たしている限り、派遣先の変更だけを理由として賃金を変更する必要はありません。

また、労使協定方式では、派遣元が労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結し、その協定に定めた基準に沿って待遇を決定します。

待遇を決定するルールが明確になることで、派遣労働者に対して待遇の考え方を説明しやすくなり、待遇の透明性を確保しやすくなる点もメリットです。

4. 労働者派遣法第30条の4第1項に関する注意点

ビックリマーク

労使協定方式を採用する場合、労働者派遣法第30条の4第1項に基づく労使協定を適切に締結し、協定で定めた事項を遵守して運用することが重要です。

協定の内容が法定要件を満たしていない場合や、協定で定めた事項を遵守していない場合には、労使協定方式を適用できず、労働者派遣法第30条の3に基づく派遣先均等・均衡方式が適用されます。ここでは、労使協定方式を適用する際の注意点を紹介します。

4-1. 適正な過半数代表者を選出する

労使協定方式を採用する場合、派遣元は過半数労働組合があればその組合と、なければ過半数代表者と労使協定を締結します。

過半数代表者を選出する場合は、管理監督者ではないことに加え、労使協定を締結する者を選出することを明らかにしたうえで、投票や挙手など、労働者の意思を反映する方法で選出する必要があります。

会社が一方的に代表者を指名したり、会社の意向に基づいて選出したりすると、適正な過半数代表者の選出とは認められない可能性があります。

また、全労働者にメールで通知し、返信がない者を信任したものとみなす方法は、必ずしも労働者の過半数が選任を支持していることを明確に確認できず一般的に適切とはいえないので注意しましょう。

参考:過半数代表者の適切な選出手続きを~選出するにあたっての5つのポイントをご紹介します~|厚生労働省

4-2. 法定事項を満たした労使協定を締結する

労使協定方式を利用するには、派遣労働者の待遇を適切に確保するため、労働者派遣法で定められた事項を盛り込んだ労使協定を締結する必要があります。具体的には、次の事項を定めます。

  1. 協定対象派遣労働者の範囲
  2. 賃金の決定方法
  3. 賃金を決定する際の公正な評価
  4. 賃金以外の待遇の決定方法
  5. 教育訓練の実施
  6. 有効期間などのその他の事項

参考:労働者派遣法第30条の4第1項|e-Gov法令検索

また、労使協定を締結した場合、派遣元はその協定を雇用する労働者に周知する必要があります。周知方法は次のいずれかです。

  1. 書面を交付する方法
  2. 労働者が希望した場合に次のいずれかの方法で送信する方法
  3. ファクシミリを利用して送信する方法
  4. 電子メールなどを利用して送信する方法
  5. 電子計算機に備えられたファイルや磁気ディスクなどに記録し、労働者がその内容を常時確認できる状態にする方法
  6. 派遣元の各事業所の見やすい場所に掲示または備え付ける方法

参考:労働者派遣法第30条の4第2項|e-Gov法令検索

参考:労働者派遣法施行規則第25条の11|e-Gov法令検索

なお、派遣元は労使協定方式に関する労使協定について、その有効期間が終了した日から起算して3年間保存する必要があります。

参考:労働者派遣法施行規則第25条の12|e-Gov法令検索

労使協定に法定の事項が記載されていなかったり、賃金の決定方法などが法令上の要件を満たしていなかったりすると、労使協定方式による待遇確保の要件を満たせない可能性があります。

実際の協定を作成する際は、厚生労働省が公開している「労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定」のイメージなども参考にするとよいでしょう。

参考:(イメージ)労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定|厚生労働省

4-3. 労働者派遣事業報告書に労使協定を添付して提出する

労働者派遣事業報告書は、原則として毎年6月30日までに事業主管轄労働局へ提出する必要があります。労使協定方式を採用している場合は、6月1日時点で有効期間中のすべての労使協定を添付して提出します。

また、労使協定を更新した場合は、報告時に添付する協定が適切なものになっているか確認することが重要です。労働者派遣事業報告書を作成する際は、協定の有効期間や内容を確認し、提出漏れや誤った協定の添付を防ぎましょう。

参考:労使協定方式を選択する派遣元事業主の皆さまへ「労働者派遣事業報告書」~「労使協定」添付のポイント~|厚生労働省

5. 労働者派遣法第30条の4第1項を適切に運用して派遣労働者の待遇を確保しよう

職場

労働者派遣法第30条の4第1項は、一般労働者と派遣労働者に不公平が生じないよう、同一労働同一賃金を目的として施行されました。賃金や処遇を一般労働者と同等以上に設定することで派遣労働者を守る、というのがこの法律の主旨なので、しっかりと遵守しなければなりません。

そのため、派遣元事業主は労働組合あるいは労働者の過半数を代表する者との労使協定を締結し、事業報告書と一緒に提出することが義務付けられているのです。担当者の方は大変かもしれませんが、労働力を必要な時に提供してくれる派遣労働者のためにも、労使協定を締結して職場環境を整えておきましょう。

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