労働者派遣法とは?内容や罰則が科されるケースについて解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.11.25
YOSHIDA
労働者派遣法を施行当時と現在のものとで比較すると、大きな変化を遂げています。
とくに最近では、派遣労働者保護のための規制強化が主な目的となっており、適切な人事を行うためには、労働者派遣法の改正点をしっかり抑えて対応していくことが重要です。
この記事では労働者派遣法が改正されていった経緯や改正のポイント、違反した場合にどうなるのかなどといったことについて説明します。
1.労働者派遣法とは?
労働者派遣法とは正式には「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」といいます。1986年に施行された当時は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」と呼ばれていました。
この法律が成立するまで人材派遣は禁止されていましたが、これ以降は人材派遣が認められるようになり、派遣労働という形が急速に広がっていくことになります。
施行当初は人材派遣の基盤を整備するのが、労働者派遣法の主な目的でしたが、2012年の改正以降は派遣労働者を保護する色彩が強くなってきました。労働者派遣法が改正されていった流れとしては「人材派遣解禁→規制緩和→規制強化」というものになっています。
2.労働者派遣法の変遷・ポイント
労働者派遣法は1986年の施行以来、数々の改正を経てきました。ここでは主な改正点について説明していきます。
2-1.1986年
まず施行時の状態について説明します。法律ができたときに人材派遣が認められた業務は13業務で、施行と同時に16業務になりました。派遣期間の上限は1年です。
2-2.1996~2007年
1996年に対象業務が26業務へ拡大されました。これらの業務は政令26業務と呼ばれています。
そして1999年に対象業務が原則自由化され、派遣期間の上限は政令26業務が3年、それ以外のものは1年とされました。
2000年には直接雇用を前提とする「紹介予定派遣」が解禁。2004年には要望の多かった製造業への派遣が解禁されました。また派遣期間の上限について、政令26業務が無期限に、1999年に解禁されたものは3年に緩和。1999年の改正と2004年の改正により人材派遣は一気に加速していきます。
2006年には一部の医療業務が解禁。翌2007年には製造業の派遣期間上限が3年に緩和されました。
2-3.2012年
2012年は大きな改正がなされた年でした。
まず法律名が現在のものに変更され、派遣労働者の保護が強く謳われるようになりました。
それまでの緩和路線から規制路線へと流れが変わった理由は、リーマン・ショック後の派遣切りや雇い止めが社会問題化したためです。主な改正点について説明します。
離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることの禁止
直接雇用だった従業員を派遣労働者に切り替えて人件費を削減する手口が散見されました。そういったやり方を防ぐために作られた規制です。
日雇い派遣の原則禁止
30日以内の日雇い派遣が原則として禁止されました。日雇い派遣は労働条件が不安定で、ワーキングプアが急増した要因の一つと考えられたからです。
しかしソフトウェア開発や機械設計など政令で定める業務、60歳以上の人や主たる生計者でない人など一部では例外が認められています。
グループ企業に対する派遣規制
グループ内に派遣会社を作り、そこからグループ内企業へ派遣労働者を送り、正社員の代替として人件費を減らす事例が見られたことから、グループ企業への派遣は8割以下にするように規制がかけられました。
2-4.2015年
2015年の改正では、さらなる労働者保護のための改正が行われています。
届出制を廃止して許可制のみに
それまでの派遣事業者は許可制の一般労働者派遣事業と届出制の特定労働者派遣事業の2種類がありましたが、この改正で届出制は廃止されました。これは許可のいらない特定労働者派遣事業を装って、実際には一般労働者派遣事業を行っていた事業者が存在するなどしていたためです。
派遣期間の上限を一律3年に
2004年の改正で、政令26業務の派遣期間上限は無期限になりましたが、この上限を再び3年とすることになりました。その理由は政令26業務の判断が複雑であったことや、この制度を悪用して半永久的に派遣社員として雇い続ける事業者へ対抗する必要などがあったからです。
しかしこの改正は、政令26業務の派遣労働者が一斉に雇い止めになる可能性をはらんだ、2018年問題の要因になってしまいました。
労働契約の申込みみなし制度
労働契約の申込みみなし制度とは、違法と知りながら派遣労働者を受け入れたら、派遣会社と同一の労働条件とする契約申し込みをしたとみなすことです。つまり違法に派遣労働者を受け入れたら、派遣ではなく直接雇用義務が発生するというものです。
雇用安定措置
派遣元は労働者の雇用継続についての措置を講ずることを義務付けられました。派遣期間の終了とともに、雇い止めになるケースが多く発生したことが理由です。措置としては「派遣先への直接雇用の依頼」「新たな派遣先の提供」「派遣元での無期雇用」が挙げられます。
2-5.2020年
2018年に施行された「働き方改革関連法」に基づき労働者派遣法も改正されました。これまでの大きな問題だった派遣労働者と直接雇用労働者の待遇差を埋めるべく「同一労働同一賃金」が謳われています。同一賃金とは単純に賃金だけを指すのではなく、福利厚生や教育機会なども含むものです。主な改正点を2つ紹介します。
公正な待遇確保
公正な待遇を確保するための賃金決定方式として、派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の2つが定められました。
派遣先均等・均衡方式は派遣先の労働者と比較して待遇が均等・均衡になるようにすることです。一方の労使協定方式は派遣会社と労働者代表との労使協定で賃金が決められる方式です。この賃金は「一般労働者の平均的な賃金」以上が支払われなくてはなりません。多くの派遣事業者は労使協定方式を選んでいます。
派遣労働者への説明義務
待遇に関する情報について「派遣労働者を雇い入れた時」「派遣した時」「派遣労働者から求めがあった場合」にそれぞれ説明をする義務が課せられました。
3.労働者派遣法を違反した場合
労働者派遣法に違反した場合はどのような処分を受けるのでしょうか。違反をした際にはいくつかのケースが考えられます。労働局の調査の際に軽度の違反事項が見つかった場合、まず行われるのは口頭指導や文書指導です。
これにより改善されれば追加の処分はありませんが、改められなければ改善命令が出されます。
口頭指導や文書指導との違いは、改善がなされるまで労働局により指導監督があることです。
重大な違反があったり、違反を繰り返したりした場合は、事業停止命令が出されることがあります。これにより新たな人材派遣ができなくなりますが、すでに派遣している労働者はそのまま労働可能です。改善命令や事業停止命令に違反するほか、許可の取消事由に当たることをしてしまうと、派遣事業許可が取り消されます。
このほかに悪質な違反は刑事告発されることもあり、この場合に立件されて有罪になると刑事罰も受けることになります。
関連記事:労働者派遣法に違反する行為とは?知っておくべき罰則規定
4.労働者派遣法を理解して時代に対応していこう
かつて人材派遣は通常の雇用よりもコストをかけずに労働力を確保できる手段とされていましたが、昨今では同一労働同一賃金が謳われ、そういった安直な手法を取ることは許されなくなりつつあります。労働者派遣法をしっかり学ぶことで、時代の変化に対応していきましょう。
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