労働者派遣法に違反する行為とは?知っておくべき罰則規定
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.11.25
YOSHIDA
派遣労働者を守るために制定された労働者派遣法は、派遣元事業主が遵守すべき法律の1つです。
しかし法改正が頻繁に行われ、次々と新しい条文が追加されるため、うっかり失念して違反してしまうケースもあるかもしれません。労働者派遣法に違反した場合、罰則を科される恐れもあるため、あらかじめ正しい対策を取っておく必要があります。
今回は、労働者派遣法の違反になる行為と罰則、その対策を解説します。
▼そもそも労働者派遣法とは?という方はこちらをお読みください。
労働者派遣法とは?その内容や改正の歴史を詳しく紹介
1.労働者派遣法に違反する行為とは?
2021年に法改正が行われたばかりの労働者派遣法。新しく追加された項目や修正もあるため、ついうっかり違反してしまうかもしれません。
ここでは、最新の労働者派遣法で違反になる行為を紹介します。犯しがちな行為を解説するので、違反しないように確認しておきましょう。
1-1.二重派遣
二重派遣とは、派遣労働者は派遣元事業主以外の事業者から労働者派遣の役務を受けることです。
通常の労働者派遣では、派遣元事業主が派遣労働者を派遣先事業主へ派遣します。派遣労働者は、派遣先事業者で労働する仕組みです。
しかし二重派遣では、派遣労働者は派遣先事業主から、さらに別の派遣先へ派遣されます。このような再派遣は二重派遣と呼ばれ、労働者派遣法第24条の2で禁止されています。
二重派遣違反の罰則は労働基準法第6条に定められており、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられるため、違反には注意しましょう。[注1]
1-2.労使協定を締結したのに報告しない行為
締結した労使協定の書面を労働基準監督署へ提出しなかった場合も、労働者派遣法の違反行為にあたります。
労使協定とは、労働者と事業主との間で取り決める協定です。労働基準法第36条で定められており、労働組合または代表者が賃金や処遇に関する取り決めをします。
労使協定を締結した場合は、毎年6月30日までに労働基準監督署へ書面の複写を事業報告書と一緒に提出しなくてはなりません。
違反した場合は、虚偽報告あるいは報告しなかったとみなされ、罰則の対象になります。
1-3.同じ派遣先に3年を超えて派遣する行為
労働者派遣法では、同じ派遣先事業主に3年を超えて派遣を継続するのは違反行為です。同じ派遣労働者、3年を超えて同じ派遣先への派遣はできません。
一見、派遣労働者に不利な項目ですが、派遣労働から直接雇用への切り替えを促すための法律です。しかし、派遣元事業主にとっては期間の定めがあることで、派遣労働者を長期間同じ派遣先に派遣しにくいデメリットがあります。
うっかり3年を超えて派遣してしまうケースも考えられるので、派遣労働者の管理は大切です。
関連記事:労働者派遣法第40条の2第4項に定められた期間制限について解説
1-4.派遣労働者へ就業条件等を説明しない行為
派遣元事業主は、派遣労働者へ就業条件等の説明をする義務があります。労働者派遣法第34条で定められている事項で、派遣労働に関与する事柄を事前に明示しなくてはいけません。
「忙しくて説明する暇がなかった」「書類を渡し忘れた」などの理由で違反しないように、派遣労働者への派遣労働の詳細説明義務を忘れないようにしましょう。
2.労働者派遣法に違反したときの罰則規定
1986年に施行された労働者派遣法は、以降複数回に渡って改正されています。最近の改正は2021年4月1日です。
2021年にもいくつかの追加条文や変更があるため、故意でなくても労働者派遣法に違反してしまう可能性もあります。労働者派遣法に違反すると厳しい罰則があるため、改定内容をきちんと理解しておく必要があるでしょう。
ここでは、労働者派遣法で犯しやすい違反と、その罰則規定を解説します。
参照:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 | e-Gov法令検索
3.労働者派遣法に違反しないための対策
故意でなくても、改正された労働者派遣法にうっかり違反してしまえば罰則を科せられてしまいます。労働者派遣法の改正ポイントを把握しておくことはもちろん、うっかり違反してしまいがちな行為の対策を取っておくのも重要です。
最後に、労働者派遣法に違反しないために取りたい対策を解説します。
3-1.3年ルールへの対策
前述のとおり、派遣元事業主は同一の派遣労働者を同じ派遣先へ3年を超えて派遣できません。違反しても改善しなかった場合は罰則があるため、あらかじめ以下の対策を立てておくとよいでしょう。
- 派遣労働者を別の者に交代させる
- 同じ派遣先でも部署を異動させる
- 派遣元事業主で無期雇用する
3年ルールはあくまでも同じ派遣労働者が、同じ派遣先(部署)へ3年を超えて派遣した場合のルールです。そのため、派遣する派遣労働者を交代したり、派遣先の部署を変えたりすれば罰則には値しません。
また、3年ルールの適用の例外として、派遣元事業主が無期雇用契約を結んだ場合も、ルールは適用しない仕組みです。
同じ派遣先に同じ派遣労働者を派遣したい場合は、上記の対策で対応するとよいでしょう。
3-2.紛争解決の求めに対する対応
労働者派遣法第47条の5によると、派遣労働者からの苦情に対し、派遣元事業主は解決を図るように努めなくてはなりません。
また第47条の7では、派遣労働者が紛争の援助を求めたことを理由に、該当労働者に不利益な扱いをしてはいけないと定められています。
そのため、派遣元事業主は派遣労働者と派遣先事業主の両方から迅速に情報を入手しなくてはなりません。定期的に派遣先を訪問し、派遣労働者と面談するなど普段からコミュニケーションを取っておくことが大切です。
4.労働者派遣法のポイントを押さえて対策を講じよう
労働者派遣法で違反しやすい行為は、次のとおりです。
- 二重派遣
- 労使協定の未報告や虚偽報告
- 同じ派遣先に3年を超えて派遣する行為
- 派遣労働者へ就業条件等を説明しない行為
上記に違反すると、労働基準監督署から行政処分や罰則を受ける可能性もあるため、以下のような対策を取っておくとよいでしょう。
- 3年ルールは無期雇用あるいは派遣労働者の交代で対応
- 日頃から派遣先や派遣労働者とコミュニケーションを取っておく
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