労使協定方式とは?均等均衡方式との違いや派遣労働者の賃金水準について解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

労使協定方式とは?均等均衡方式との違いや派遣労働者の賃金水準について解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

労使協定方式とは?均等均衡方式との違いや派遣労働者の賃金水準について解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

労使協定方式とは?均等均衡方式との違いや派遣労働者の賃金水準について解説

握手を求める様子

労使協定方式とは労働派遣をおこなう際に、労使協定を派遣元で締結し、それによって派遣先での待遇を決める方式を指します。厚生労働省では、派遣社員の格差を是正するために、待遇決定方式を決める必要があるとしています。

今回は労使協定方式の概要を始め、労使協定方式の内容やメリット、派遣労働者の賃金水準についてわかりやすく解説します。

関連記事:労使協定の基礎知識や届出が必要なケース・違反になるケースを解説

\法改正の内容も解説/
社会保険の手続きガイドを無料配布中!

社会保険料は従業員の給与から控除するため、ミスなく対応しなければなりません。

しかし、一定の加入条件があったり、従業員が入退社するたびに行う手続きには、申請期限や必要書類が細かく指示されており、大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。

さらに昨今では法改正によって適用範囲が変更されている背景もあり、対応に追われている労務担当者の方も多いのではないでしょうか。

当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、最新の法改正に対応した「社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。

ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「最新の法改正に対応した社会保険の手続きを確認しておきたい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。

社会保険ebook

1. 労使協定方式とは?

首をかしげる女性

労使協定方式は、派遣社員に適用される一種の労使協定を指します。正社員やアルバイト・パートとは異なり、就業先が転々とする派遣社員は待遇の差によって社員同士に格差が発生してしまいます。

そこで、派遣元の企業は、「労使協定方式」または「派遣先均等・均衡方式」のいずれかで、派遣社員の待遇を定めなければならないという決まりがあります。

厚生労働省が定める正式な規則なので、どちらも適用しないということは選択できません。

1-1. 派遣元の企業で定めた労使協定に基づいて待遇をとること

労使決定方式は、派遣元の企業で定めた労使協定に基づいて待遇をとることを指します。派遣元の水準で労使協定を結ぶため、派遣元の社員同士は同一の待遇を受けられるのがポイントです。

ただし、労使協定方式の適用には派遣元で労使協定がしっかり締結されている必要があります。労使協定を締結するには、事業場全ての労働者の過半数を代表する者、または労働組合と使用者との間で条件に合意し、書面上で締結を交わします。

仮に労使協定に不備があり、正式に発行されなかった場合は、その労使協定は無効となり派遣後も適用されません。従って、労使協定方式を適用するには、派遣元の企業で正式に労使協定が締結されている必要があります。

労使協定方式が適用されなかった場合は、もう一方の派遣先均等・均衡方式が適用されます。

2. 派遣先均等・均衡方式との違いとは

派遣先均等・均衡方式は、派遣先企業の待遇に合わせて派遣社員の待遇を決める方式です。均等・均衡という言葉が付いているのは、派遣先の社員と待遇をすり合わせるためです。

均等:同じ仕事に対しては、同じ待遇が受けられる

均衡:同じ仕事に対して違いを設けている場合は、格差に対して合理的な説明ができる

以上が均等と均衡の意味です。均等では、差別的な扱いを禁止し、均衡では不合理な待遇差を禁止しているのがポイントです。

労使協定方式では派遣元企業との労使間協議によって待遇が決まるのに対し、派遣先均等・均衡方式では派遣先企業の条件に基づいて待遇が決まるという大きな違いがあります。

ただし、労使協定方式、派遣先均等・均衡方式のどちらを選んでも、派遣先企業は他の社員の待遇情報を提供しなければなりません。また、労働条件の詳細説明(賞与・手当・昇給の有無など)と待遇差に関する説明も、両者ともに実施することが義務付けられています。

3. 労使協定方式のメリット・デメリット

メリット

労使協定方式にはさまざまなメリット・デメリットがあります。ここからは、派遣社員・派遣先・派遣元企業に分けて、メリット・デメリットを解説します。

3-1. 派遣社員のメリット・デメリット

メリット

派遣社員の立場からすると、労使協定方式、派遣先均等・均衡方式どちらもメリットの方が大きいのがポイントです。労使協定方式では一定水準以上の賃金を確保できる上に、労使協定で定めたルールが適用されるため、よりよい労働環境で働ける可能性があります。一方で派遣先均等・均衡方式でも、派遣先の社員と同じ待遇のもとで働けたり、派遣元企業の労使協定よりもさらに高い賃金を確保できる可能性もあります。

デメリット
ただしその反面で、派遣労働者にとっても一度決められた待遇が固定されてしまう傾向があり、柔軟に対応することが難しくなる場合があります。協定内容が適切でなければ派遣労働者にとって不利な条件が続くことになり、長期的には企業や労働者双方にとって不利益となる恐れがあります。さらに、受け入れている派遣社員と同じ業務に従事している派遣先企業の従業員との間で賃金格差が生じる可能性もあります。これにより、派遣労働者のモチベーションが低下し、結果として作業効率が悪化するリスクがあるのです。

3-2. 派遣先企業のメリット・デメリット

メリット

派遣先企業では、労使協定方式だと派遣元に提示する情報が少ないというメリットが発生します。派遣先均等・均衡方式では、派遣先企業は派遣元企業に社員の待遇に関する情報を提供しなければなりません。

デメリット
派遣先企業にとっては協定内容が自社のニーズに充分応えない場合がある点がデメリットとして挙げられます。派遣元企業との情報共有や調整が充分でないと、派遣労働者のスキルや経験が不足し、業務に支障をきたす可能性があります。また、労働条件の変更や見直しが必要な場合には、派遣元企業との再協議が必要となり時間がかかることもあります。さらに、派遣労働者の資質や能力に対する評価が派遣元企業の基準に依存するため、派遣先企業として外部的な要因に影響されやすいという側面も存在します。

3-3. 派遣元企業のメリット・デメリット

メリット

派遣元企業のメリットとしては、仕事内容や派遣先企業の地域に合わせて待遇を決定することができます。また、派遣先企業の待遇が全く関係しないので、よりよい労働条件で社員を働かせることができます。ただし、派遣先企業によっては、労使協定方式の方が待遇が悪くなる可能性もあるので注意が必要です。

デメリット
まず、協定内容を定期的に見直し、改定する必要があるため、時間と労力がかかります。また、労働者の意見を反映させる過程で労使の意見が対立することがあり、協議が長引けば企業の生産性に影響を及ぼす可能性があります。さらに、労使協定を適切に運用するためには、企業側の労務管理能力が高く求められ、事前の条件の確認や派遣元企業と派遣労働者側との合意に手間と時間がかかることが挙げられます。

以上の通り、労働条件や環境を定められる労使協定ですが、派遣の場合はメリット・デメリットの両方が混在します。

4. 労使協定方式による一般賃金の算出方法

お金をもらう様子

労使協定方式を採用する場合、派遣社員の賃金は一般賃金の同等以上の賃金を設定しなくてはいけません。そのため、派遣社員の賃金を決定する前に、一般賃金を算出しておく必要があります。

ここでは、3つの一般賃金「基本給や賞与等」「通勤費」「退職金」の計算方法の概要をそれぞれ解説します。

4-1. 基本給や賞与等の算出方法

基本給や賞与等は、「基準値 × 能力・経験調整指数 × 地域指数」の計算式を用いて金額を求めます。それぞれの指標の概要については以下の通りです。

指標 概要
基準値 厚生労働省が公表している「賃金構造基本統計調査」または「職業安定業務統計」を使って基準値を求めます。資料の使い分けに関しては、派遣社員が実際に従事する職種により近い方を選択するのがポイントです。
能力・経験調整指数 基準値に能力や経験値を加味した指標です。「賃金構造基本統計調査」または「職業安定業務統計」上において、基準値に能力・経験調整指数を乗じて算出した金額が掲載されているので、所定の年数に応じた金額を選択します。
年数を選択する際は、派遣社員の能力や経験が一般の労働者の勤続何年目に相当するかに配慮して選択しなくてはなりません。能力・経験調整指数の年数は、単純に勤続年数を表すものではない点に注意が必要です。
地域指数 派遣先の所在地を含む「都道府県別の指数」または「ハローワーク管轄地域別の指数」いずれかを選択することができます。ただし、どちらの指数は使うかは、労使間の協議によって決めなくてはいけません。

4-2. 通勤費の算出方法

実費支給であれば、支給した金額を一般通勤手当と同等以上としてみなすことが可能です。

もし、上限を設けている場合には、通勤手当の最低額以上を支給しなくてはならず、労働1時間あたり71円と同等以上に設定する必要があります。なお、通勤手当の最低額は毎年変動するため、上限を設ける際には注意しましょう。

4-3. 退職金の算出方法

退職金に関しては、次の表にある3つの方法から選択することが可能です。

退職金の算出方法 概要
退職金前払いの方法 基本給・賞与等の6%以上に相当する額を、退職金として毎月の給与に上乗せして前払いする方法です。この6%という値は局長通達で決められており、これを下回ることはできません。
中小企業退職金共済制度に
加入の方法
基本給・賞与等の6%以上に相当する額を毎月掛金として積み立てていき、派遣社員が退職した際に中小企業退職金共済から退職金が支払われるシステムです。国による非課税適用などのメリットが得られます。
退職制度の方法 派遣元であらかじめ設定している退職制度を派遣社員にも適用させる方法です。この場合は、局長通達で公表されている一般退職金に関する資料等を用い、最低勤続年数及び支給月数の相場と照らし合わせて、基準が上回っているようであれば適用させることができます。

4-4. 賃金テーブルの設定

労使協定方式を採用した場合は、以上の手順に従って派遣社員の賃金を設定していきましょう。派遣元企業は派遣社員からの求めに応じて、賃金に関する説明をおこなう義務を負っています。そのため、いつでも説明がおこなえるように、賃金テーブルも合せて用意しておくのが望ましいでしょう。

5. 労使協定方式におけて派遣元企業が対応すべき3つのポイント

調査する人
それでは基礎知識の解説を進めてきましたが、ここからは実際に労使協定方式を導入するとなった際に、派遣元企業側が押さえておくべき労使協定方式のポイントを紹介します。

5-1. 派遣社員の賃金を確認する

派遣元企業が最初に行うべきことは、派遣社員の賃金を正確に確認することです。労使協定方式を採用する場合、賃金は労働市場の平均や法定最低賃金などを参考にしつつ、企業独自の基準を設けることが求められます。また、労働者代表との協議を通じて納得のいく賃金設定を行い、公正かつ透明性の高い方法で賃金を決定します。これには、労働者のスキルや経験、職務内容などを考慮することが重要です。

まず、派遣社員の基本給だけでなく、賞与、通勤手当、退職金等の支給についても詳細に確認する必要があります。これにより、派遣社員に対して適切かつ公平な報酬を提供することができます。

5-2. 労使協定案を作成する

労使協定案とは、労働者(派遣社員)と使用者(派遣元企業)とで取り交わされた、労働条件などが書面で記載されている労使協定の草案を指します。厚生労働省が作成した雛形を活用すると、漏れがなく、迅速に労使協定案を作成することが可能です。労使協定案を通じて、派遣労働者に対する公正な賃金や待遇が確保されることが求められます。

記載事項が網羅されていることを確認する

労使協定方式において派遣元企業が対応すべきポイントとして、記載事項が網羅されていることを確認することが重要です。労使協定の対象となる派遣対象者の範囲、賃金や待遇の決定方法、評価方法、労使協定の有効期間などは、派遣法および派遣法施行規則により定められた項目です。これらの項目を適切に記載し、派遣社員とのトラブルを未然に防ぐためにも、正しく、分かりやすく記載することが求められます。

派遣先企業に待遇の内容を確認する

労使協定方式において派遣元企業が対応すべきポイントとして、派遣先企業に待遇の内容を確認することが重要です。派遣先企業が提供する福利厚生施設や教育訓練の内容を詳細に把握することで、派遣労働者に対する待遇条件を公正に設定することができます。利用できる福利厚生施設や教育訓練の情報を収集し、これを労使協定に反映させることで、派遣労働者が派遣先企業で受けられる待遇と同等の条件が保証されます。適切な待遇条件を設定することで、派遣労働者の労働環境の向上や安心して働ける環境の提供が実現し、ひいてはモチベーション向上や定着率の改善にも繋がります。派遣元企業は派遣先企業の待遇情報を丹念に確認し、労使協定に反映させることが求められます。

5-3. 労使協定を締結・周知する

労使協定方式において、まず従業員の過半数を組織する組合がない場合は、派遣労働者から代表者を選出します。その後、選出された代表者と派遣元企業の間で協議を行い、法令に定められた内容に基づく労使協定を結びます。

締結した労使協定は派遣社員に周知する必要があります。労使協定が対象となる派遣社員の範囲、賃金の決定方法、有効期間などの詳細については、書面交付などの方法でしっかりと伝えましょう。これにより、派遣労働者が自身の待遇についてしっかり理解し、安心して働くことができる環境を整えることができます。

6. 労使協定方式におけて派遣先企業が対応すべき3つのポイント

ポイントと記載された積み木

派遣元が労使協定方式を採用していた場合、派遣先にとっては情報開示する項目が少ないというメリットがあるものの、いくつが留意しなくてはいけないポイントがあります。

ここでは、派遣先が特に押さえておくべき3つのポイントについてご紹介します。

6-1. 派遣料金に関する対応

派遣先企業は、同一労働同一賃金に基づく待遇が確保できるように、派遣料金に関して配慮することが労働者派遣法第26条第11項によって義務付けられています。

そのため、派遣元から派遣料金に関する改善の求めを受けた際に、これに応じないことは行政指導の対象となる可能性があります。特に一般賃金が改訂された際は、労使協定方式では一般賃金の同等額以上の賃金を支給する必要があることから、派遣料金の見直し依頼に対して誠実に対応する必要があるでしょう。

6-2. 福利厚生や教育訓練に関する対応

労使協定方式を適用する場合、賃金以外の待遇は派遣先の社員と同じように定めなければなりません。賃金以外の待遇とは、福利厚生施設の使用などが該当します。これに伴い、派遣先企業は派遣前に「教育訓練」と「福利厚生施設」の情報を提供しなければなりません。

教育訓練は名前の通り、労働に必要な技術や知識を得るために実施する訓練のことです。一方、福利厚生施設はロッカールームや更衣室、休憩室、食堂など、労働時に利用する施設のことを指します。

労使協定方式は全ての項目を派遣元が決められるわけではなく、教育訓練、福利厚生施設は事前に派遣先から情報を得て労使協定で定める必要があるので、注意が必要です。

6-3. 情報開示への対応

労使協定方式、派遣先均等・均衡方式どちらを採用していたとしても、派遣元への情報開示は必要です。労使協定方式では福利厚生施設や教育訓練に関する情報、派遣先均等・均衡方式では職務内容や配置変更の範囲など待遇に関する情報を、派遣元が採用している方式に合わせて情報開示をおこないましょう。

7. 労使協定方式を正しく理解して働きやすい環境をつくろう

職場

労使協定方式とは、派遣路同社の待遇を派遣元企業と締結した労使協定に基づいて決定することです。一方で、派遣先企業の社員と比較し、平等に賃金を決定するのが派遣先均等・均衡方式です。厚生労働省では派遣社員の格差を懸念して、このどちらかの方法を適用しなければならないと定めています。

労使協定方式は一定の賃金を確保できるという利点もあるのがポイントで、社員同士の格差が少なくなります。

ただし、労使協定方式は派遣元の企業でしっかり締結されていることが大切。協定としてふさわしくなければ、無効となり、労使協定方式は適用されないので注意が必要です。

関連記事:労使協定の確認方法や周知する義務について解説

\法改正の内容も解説/
社会保険の手続きガイドを無料配布中!

社会保険料は従業員の給与から控除するため、ミスなく対応しなければなりません。

しかし、一定の加入条件があったり、従業員が入退社するたびに行う手続きには、申請期限や必要書類が細かく指示されており、大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。

さらに昨今では法改正によって適用範囲が変更されている背景もあり、対応に追われている労務担当者の方も多いのではないでしょうか。

当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、最新の法改正に対応した「社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。

ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「最新の法改正に対応した社会保険の手続きを確認しておきたい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。

社会保険ebook

人事・労務管理のピックアップ

新着記事