ストレスチェック後の産業医面談の内容とは?流れ・目的・拒否された場合の対応を解説
更新日: 2025.2.7
公開日: 2025.2.7
OHSUGI
「ストレスチェック後の産業医面談の内容を知りたい」
「ストレスチェック後から産業医面談までの流れを知りたい」
上記のようにお困りの方も多いでしょう。
ストレスチェック後の産業医面談は、ストレスチェック結果で高ストレス判定を受けた従業員の申し出で実施される医師による面接指導です。
ただし、ストレスチェックの実施者(産業医や保健師など)が面接指導を受ける必要があると認めた従業員のみに案内されます。
本記事の内容は、ストレスチェック後の産業医面談の概要や目的、内容や流れ、また会社と従業員それぞれの法的義務の有無についての解説です。
ストレスチェック後の産業医面談について従業員に拒否された場合の対応や、実施する際の注意点も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
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1. ストレスチェック後の産業医面談とは
ストレスチェック後の産業医面談とは、高ストレス判定を受けて産業医面談が必要とされる従業員に対して医師が実施する面接指導のことです。表に概要をまとめました。
実施責任主体 | 会社 |
費用の負担者 | 会社 |
費用の目安(30~60分程度の従業員一人あたりの面接指導) | 1万5,000円~4万円程度 |
対象者の選定者
(ストレスチェックの実施者) |
産業医・保健師など |
対象者 | ストレスチェック結果で高ストレス判定となった
従業員のなかで、実施者が面接指導を受ける必要があると認めた従業員 |
実施者 | 医師(産業医) |
実施時間 | 原則的に就業時間内 |
医師の面接指導では、医師が従業員との面接で以下のような事柄について聴取・確認し、主に職場で実施可能な対応について指導をおこないます。
- 心身状態
- 勤務状況
- ストレス要因(主に職場)
なお、ストレスチェックの結果は従業員への直接通知です。従業員への結果の通知後、従業員本人が会社への通知に同意した場合のみ、会社が結果を入手します。
産業医面談の対象者への案内についても、ストレスチェックの実施者から対象者への直接通知です。実施者は案内にて、従業員の自主的な面接指導への申し出をすすめます。
参考:医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル|厚生労働省
参考:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省
2. ストレスチェック後に産業医面談をおこなう目的
ストレスチェック後に産業医面談をおこなう目的は、従業員のメンタルヘルス不調の予防です。
また、従業員の状態を医師が確認し、従業員に助言できることがあるか確認する目的もあります。
ストレスチェック後の産業医面談は、2014年の労働安全衛生法の改正により誕生したストレスチェック制度の一環です。
制度の主な目的は従業員のメンタルヘルス不調の一次予防ですが、次のような目的も含まれています。
- 従業員が自身のストレス状態を知ることを促す
- 職場環境の改善につなげる
- 働きやすい職場づくりを促進する
つまり、従業員のメンタルヘルス不調予防のために、職場にも助言できることがあるか確認することも産業医面談の目的の一つです。
参考:医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル|厚生労働省
参考:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省
参考:改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について|厚生労働省
3. 法的義務があるストレスチェック後の産業医面談の内容
法的義務があるストレスチェック後の産業医面談では、従業員の以下の内容について医師が確認します。
勤務の状況 | ・前もって会社から入手した労働時間や業務内容に関する情報に基づき実施
・所属部署や職位の確認 ・ストレス要因になり得る職場の人間関係の確認 ・前回の検査から業務・役割に関して変化があったかどうかの確認 ・ほかの従業員からの支援状況についての確認など |
心理的負担の状況 | ・ストレスチェック結果に基づく抑うつ症状についての確認など
・必要に応じてうつ病に対する検査や面接を実施 |
心身の状況 | ・過去の健診結果の確認
・現在の生活状況の確認など ・必要に応じてうつ病や一般的なストレス関連疾患などを念頭においた確認を実施 |
ストレスチェック結果 | ・従業員の職場内での心理的負担の原因
・従業員の心理的負担による心身の自覚症状 ・職場内におけるほかの従業員からの従業員への支援 |
また、医学上の指導の内容は以下のとおりです。
保健指導 | ・ ストレス対処技術の指導
・ 気づきとセルフケアの指導 |
受診指導(※ 必要に応じて実施) | ・専門機関や専門医の受診の勧奨および紹介 |
産業医面談の結果、医師が従業員に対する就業上の配慮が必要だと判断した場合には、従業員の同意を得た上で会社に必要な情報を伝達します。
参考:医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル|厚生労働省
参考:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省
4. ストレスチェック後から産業医面談までの流れ
ストレスチェック後から産業医面談までの流れは、以下のとおりです。
- 実施者から従業員へのストレスチェック結果の直接通知および相談窓口の情報提供
- 実施者から対象者に対する産業医面談の申し出の勧奨
- 従業員から会社への産業医面談の申し出
- 会社から医師への産業医面談の実施依頼
- 医師による面接指導の実施
- 必要に応じて医師から従業員に対する相談機関や専門医の紹介
産業医面談後には、会社による医師からの意見聴取が実施され、従業員の時間外労働の制限や作業の転換などに関する意見を聴取します。
会社は医者からの意見聴取に基づき、必要に応じて従業員に対する以下のような就業上の措置を検討・実施しましょう。
- 就業場所の変更
- 作業の転換
- 労働時間の短縮
- 深夜業の回数の減少
なお、面接指導結果に基づく従業員に対する不利益な取扱いは禁止されています。
参考:医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル|厚生労働省
参考:改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について|厚生労働省
5. 法的義務がないため従業員は産業医面談を拒否できる
法的義務がないため、従業員は産業医面談を拒否できます。
ストレスチェックの実施者から対象者に対し、産業医面談の申し出の勧奨がありますが、あくまでもよいことだとすすめているのみで強制力はありません。
一方、会社には法的義務があります。労働安全衛生法により、従業員から申し出があった場合、会社は産業医面談を実施しなければなりません。
なお、産業医面談を申し出た従業員に対する不利益な取扱いは禁止されています。
参考:改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について|厚生労働省
6. ストレスチェック後の産業医面談を従業員に拒否された場合の対応
ストレスチェック後の産業医面談を従業員に拒否された場合の対応は、拒否理由の聴取や面談の意義・目的の説明などです。
しかし、従業員にもさまざまな事情があるため、できる限り直接的な介入は控えましょう。
常日頃から会社で以下のような取組みを実施し、従業員が産業医面談の申し出をしやすい環境を整えることが大事です。
- 申込手続きの簡略化
- プライバシー保護への配慮
- メンタルヘルス教育の実施
- メンタルヘルスに関する相談窓口の設置
また、従業員の申し出に不安が生じないように、産業医面談の詳細内容や個人情報の取扱方法などについて周知徹底しておきましょう。
7. ストレスチェック後の産業医面談を実施する際の注意点
ストレスチェック後の産業医面談を実施する際の注意点は、プライバシーの保護と不利益取扱いの防止です。
面接指導における個人情報の取扱者である、医者と医者の補助者には法律による守秘義務が課されます。違反した場合は刑罰の対象です。
また、会社に提供された面接指導結果などの個人情報は適切に管理しなければなりません。
従業員が産業医面談の申し出をする・しないことについて、また産業医面談の結果に対して、会社から従業員に対する以下のような行為を禁じています。
- 解雇
- 雇い止め
- 退職勧奨
- 不当な動機や目的での配置転換や職位変更
従業員から申し出があった場合、すみやかに産業医面談をおこなうことも大事です。目安として、従業員の申し出から1ヵ月以内の実施を目安にしましょう。
8. ストレスチェック後の産業医面談を円滑に進めよう
ストレスチェック後の産業医面談は、ストレスチェック結果で高ストレス判定を受けた従業員の申し出により実施される医師による面接指導です。
従業員の状態を医師が把握し、従業員のメンタルヘルスの不調の予防のために、従業員や会社に助言できることがあるか確認する目的で実施されます。
また、従業員の勤務・心理的負担・心身の状況などを確認し、ストレス対処技術やセルフケアなどの医学上の指導をおこなう内容です。
ただし、会社には実施義務がありますが、従業員には法的な義務がないため拒否できます。
従業員のメンタルヘルス不調を予防するためにも、従業員が産業医面談の申し出をしやすい環境作りに励みましょう。
本記事で紹介した実施時の注意点も留意しつつ、ぜひストレスチェック後の産業医面談を滞りなく進行させてください。
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