後継者育成とは?課題・成功事例・計画の進め方をわかりやすく解説
更新日: 2025.7.31 公開日: 2025.2.26 jinjer Blog 編集部

「後継者育成の概要や目的を知りたい」
「後継者育成計画の進め方について知りたい」
上記のようにお悩みの方も多いでしょう。
後継者育成とは、自社の将来を担う経営者候補を育成することです。少子高齢化や人材不足が進む現代では、事業の将来を担う後継者の育成が課題である企業も多いでしょう。
本記事では、後継者育成の概要や目的、課題や方法、後継者育成計画の進め方について解説しています。そのほかに、後継者育成の成功ポイントや成功事例の解説もしているため、ぜひ参考にしてください。
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1. 後継者育成とは


後継者育成とは、企業が自社の将来を担う経営者の候補者を育成することです。
ビジネス用語において後継者育成プログラム をサクセッションプランと言い換える場合もあります。また、教育以外に以下のような事柄を含むケースも少なくありません。
- 経営者候補の候補者の選定
- 後継者の指名後の定着
経営者には多岐にわたる知識や能力が必要とされるため、後継者育成は中長期的に実施される場合が多いです。先んじて後継者育成計画を策定し、経営者候補を十分に育成することで、後継者の指名後も順調な会社経営を期待できるでしょう。
上場企業の企業統治の原則や指針となるコーポレートガバナンス・コードにも、取締役会に後継者育成の必要性を示す記述があります。つまり、後継者育成は経営者の交代時の事業低迷や企業イメージ低下のリスクを避けるためにも必要です。
2. 後継者育成の目的


経済産業省も必要性を説く後継者育成の主な目的は、以下の確保のためです。
- 持続的な企業成長
- 中長期的な企業価値
引退や病気などで現経営者が交代する際、後継者育成を実施していない企業では事業が低迷したり会社が立ち行かなくなったりするリスクがあります。
後継者育成の実施企業では、経営者の交代時期に優れた後継者にスムーズに交代できる可能性が高いです。後継者育成により、後継者候補に自社の経営者に必要な資質を備えさせられるでしょう。
また、実施企業は一般的に将来的な成長戦略に取り組む企業だと認識されるため、株主や取引先などからの信頼を得やすい傾向にあります。
中長期におよぶ後継者育成期間を通じて、後継者候補が自社の経営者に相応しい人材かどうかを見極めることも目的の一つです。
参考:指名委員会・報酬委員会及び後継者計画の活用に関する指針|経済産業省
3. 後継者育成の課題


後継者育成の課題は、以下の3つです。
- 人材不足
- 人材選びの基準が不透明
- 後継者育成計画の策定
3-1. 人材不足
後継者育成の課題の一つは、候補者の確保です。終身雇用制の崩壊とともに人材の流動性が高まり、後継者育成の候補者となる人材の確保が難しくなっています。
キャリアアップ転職が一般的となった昨今では、候補者に予定していた従業員や育成中の候補者が転職するケースも少なくありません。
3-2. 人材選びの基準が不透明
候補者の選定も、後継者育成の課題の一つです。候補者を選定する際には、選定の客観性や透明性を示すために、以下のような事柄を明確にする必要があるでしょう。
- 自社の経営者の理想像
- 候補者の選定基準
- 各ポストの人材要件
- 各ポストの職務内容
経営者の理想像の明確化は、選定基準を策定する際にも大事な役割を果たします。
企業規模にもよりますが、候補者となる人材が属する階層や選定人数についても明確にしておきましょう。
3-3. 後継者育成が進みづらい企業体制
後継者候補を選定しても、その育成が滞る企業には共通する体制上の課題があります。候補者に経営視点を養うタフな業務を与えたくても、ポストの新設やプロジェクトへの抜擢を社内調整できず、実践機会を創り出せないケースがあるでしょう。また、ハードアサインメントの成果を公正に評価する仕組みが整っていないため、挑戦に見合う処遇やフィードバックを示せず、候補者のモチベーションが低下しがちです。
4. 後継者育成計画の進め方


後継者育成計画の進め方は、以下の流れです。
- 人材の要件を定義する
- 人材を選定する
- 後継者育成を進める
それぞれの工程について、詳しく解説します。
4-1. 人材の要件を定義する
後継者育成にあたり、最初に人材の要件を定義しましょう。人材の要件を定義する際は自社のミッションやビジョン、経営戦略を明確化することが大切です。具体的には次のような要件を定義します。
- 従業員をけん引するリーダーシップ
- 自ら考えて行動する主体性
- コミュニケーション能力
4-2. 人材を選定する
必要な人材の要件を定義したら、候補者をリスト化しながら選定を進めていきます。後継者に求められる要件をすべて満たす人材は稀でしょう。そのため、現在の成果と将来のポテンシャルを評価軸として、階層ごとに絞り込む方法が有効です。また、アセスメントや能力測定ツールを活用することで、客観的かつ戦略的な選定が可能になります。
4-3. 後継者育成を進める
後継者の候補となる人材を選定したら育成を進めていきましょう。具体的な育成プログラムとして以下が挙げられます。
- 社内での取り組み:複数部門や役職のローテーションにより、全社的視点と現場感覚を養う、現経営者による1on1やフィードバックの実施
- 社外での取り組み:ビジネススクールや社外セミナーへの参加、他社や関連子会社への出向
上記のような育成プログラムと育成スケジュールや評価基準をあらかじめ定めておくことで、後継者育成を着実に進めることができます。
5. 後継者育成の方法


後継者育成の方法は、大別すると以下の2種類です。
- 社内
- 社外
それぞれの育成方法を見ていきましょう。
5-1. 社内での育成方法
社内の後継者育成の代表的な方法は、以下の3つです。
- 経営に関わる部門での勤務
- 複数部門・役職のジョブローテーション
- 現経営者からの直接指導
社内における育成方法では、会社や経営者がもつ、後継者育成に関する知識や経験を活かしながら候補者を育成できます。後継者の指名後も関わるであろう、社内の人材と関わりながら候補者が成長できる点が魅力です。
5-2. 社外での育成方法
代表的な社外の後継者育成の方法は、以下の3つです。
- 社外セミナーやビジネススクールへの参加
- 他社での勤務
- 関連会社・子会社への出向
社外における育成方法では、社内では経験できない体験や知識を得ながら候補者が成長できます。社外での客観的な評価を聞ける点も魅力でしょう。
6. 後継者育成の成功ポイント


後継者育成の成功ポイントは、以下の3つです。
- 早期開始
- 経験の提供
- 計画の見直し
- 経営者による直接指導
- 後継者補佐も育成
各成功ポイントを詳しく見ていきましょう。
6-1. 早期開始
後継者育成の成功ポイントの一つは、早期開始です。後継者育成の全体像や運営方法を決め、できる限り早いタイミングで後継者育成を開始しましょう。
経済産業省によると、基本的には新たな経営者の就任のタイミングで、次の経営者の後継者育成計画への着手が望ましいとされています。
6-2. 経験の提供
後継者育成のなかで、候補者に経営判断を担う経験や厳しい状況の経験を提供することも、後継者育成の成功ポイントです。
経験を通じて候補者は潜在能力が引き出されるため、飛躍的な成長促進を期待できます。また経験が候補者の自信となり、指名後の業務でも経験を活かせるでしょう。
後継者育成期間に候補者へ提供する経験として、以下があります。
- 子会社の社長としての経験
- タフアサインメントの経験
タフアサインメントとは、不振事業や新興市場など、候補者に困難・難易度の高い課題を与えて成長を促すマネジメント手法の一つです。
組織の全体像の把握やマネジメント力を磨くために、後継者育成において候補者の事業部門を超えたジョブローテーションを実施する企業もあります。
6-3. 計画の見直し
後継者育成の成功ポイントとして、必要に応じた後継者育成計画の見直しが挙げられます。
一般的に後継者育成計画は中長期的な計画が多いため、実施中に計画にずれが生じるケースも少なくありません。時代や業界の変化により、自社の経営者の理想像が変わる可能性もあります。
そのため、必要に応じて各候補者の後継者育成計画や育成方法を見直したり、後継者育成の方針自体を見直したりしましょう。
参考:指名委員会・報酬委員会及び後継者計画の活用に関する指針|経済産業省
6-4. 経営者による直接指導
候補者を育成するには、現経営者による直接指導も有効です。経営者だけが持っているスキルや知識、経営の考え方などがあります。経営者ならではの考え方を後継者に直接伝えることで、後継者に経営権が移行したあともスムーズに経営が進んでいくでしょう。
現経営者が候補者に直接指導する際は、重要な経営判断や交渉の場に同席させるのも有効です。
6-5. 後継者補佐も育成
経営者候補を育成する際は、後継者を補佐するポジションの育成もポイントです。経営者は他の従業員に相談できない悩みや不安を抱えやすい役職です。そのため、孤独を感じかねません。経営者が悩みを抱えたままでは、経営判断にも影響を及ぼす恐れがあります。
経営者が適切に経営判断を下すためにも、相談できる補佐役の育成も進めていきましょう。
7. 後継者育成の成功事例


後継者育成の成功事例として、次の2社の事例を紹介します。
- 自動車製造業
- 食品製造業
各社の成功事例を見ていきましょう。
7-1. 自動車製造業
自動車製造業のなかには、長年経営に携わってきた社長の後継者育成のために、従来の副社長のポジションを廃止した企業があります。副社長のポジションを廃止し、経営に必要な機能を執行役員が担う体制に変更しています。
また、将来的に経営幹部や重要な役職に就くことが予想されている従業員に対して、子会社での社長や役員を経験させるといった幹部人材育成にも注力しています。
7-2. 食品製造業
食品製造業者で次世代経営者育成に取り組んでいる企業もあります。同企業は重要なポジションがどのような人材を求めているのか、人材要件を明確化し公開しています。また、役員に対する社内研修をより厳格化して、役員としての資質があるのかチェックしています。
8. 後継者育成について理解を深めよう


後継者育成とは、持続的な企業成長や中長期的な企業価値のために自社の経営者候補を育成することです。
社内だけでなく社外でおこなう後継者育成方法もあります。どちらの場合も、企業が理想とする経営者と候補者との差が埋まるような育成方法を選びましょう。
中長期的な計画・実施となる後継者育成の成功には、早期開始や必要に応じた計画の見直しがかかせません。また、候補者の自信につながる経験を提供することも大事です。
本記事で紹介している後継者育成計画の進め方なども参考にしながら、ぜひ後継者育成について理解を深めてください。



人事労務担当者の実務の中で、従業員情報の管理は入退社をはじめスムーズな情報の回収・更新が求められる一方で、管理する書類が多くミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
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