人材管理とは? 管理する項目や課題解決方法を解説
更新日: 2024.7.11
公開日: 2020.9.14
OHSUGI
近年は、人材管理をおこなうために、人材管理システムを導入する企業が増えています。人材管理システムはいろいろありますが、基本的なオンプレミス型システムとクラウド型システムの2つに大きく分類されます。
どちらも、最初からシステムが構築されているので、担当者の業務負担を大幅に減らすことが可能です。しかし、実際にシステムを導入したとしても、人材管理のための理論やフレームワークを知らなければ、システムをうまく使いこなせないでしょう。
本記事では、人材管理の課題やシステムの特徴、人材管理システムを利用することのメリットなどを解説していきます。
目次
1. 人材管理とは?人材を活用するための仕組み
人材管理とは、会社や組織が経済活動および事業展開をおこなうために、人材を効率的・効果的に活用していくための仕組みです。
会社や組織には、それぞれ掲げる目標や達成したい目的があるので、その実現に向けてパフォーマンスを最大化するために、人材資源をマネジメントすることになります。
しかし、人材は組織にとっての資源ではあるものの、それぞれが自律的な意志を持った存在でもあります。
そのため、人材のモチベーションによって発揮されるパフォーマンスは大きく変わるため、個人の意志を尊重したうえで組織としての整合性を取れるよう、人材管理には十分に注意しなければなりません。
2.人材管理の項目
人材管理は、経営戦略を人事の立場からサポートすることです。
そのため、ただ人事異動をしたり勤怠管理をしたりするのではなく、従業員に存在価値を発揮してもらうための管理をおこなうことに視点をおかなければなりません。適切な管理をおこなうには、項目をしっかり理解しておくことが重要です。
ここでは、人材管理の項目を解説していきます。
2-1.人材採用
人材採用は、ただ不足している部署に人材を充てるための面接ではありません。
どのような人材が必要なのか、何人必要なのかを正確に把握し、将来的に離職することも考慮して採用計画をたてることが重要です。また、経営戦略における人材確保や、定年による大量離職がないよう、長期的な視点で人材採用をおこなわなければなりません。
このような計画を踏まえたうえで、応募者の経験やスキル、モチベーションなどを吟味し、しっかり長期的に働いてくれるかをできるだけ正確に判断する必要があります。
2-2.人材配置
人材配置では、従業員の能力やスキルと部署が求める人材の適切なマッチングをおこないます。そのためには、ポートフォリオだけの情報では足りないので、横断的に情報を把握することが重要です。
さまざまな情報を収集、分析し、事業内容の変化や従業員自身の成長なども考慮しながら、柔軟性のある人材配置を実施しましょう。
2-3.人材育成
人材管理の項目の中で、もっとも重要となるのが人材育成です。
育成制度が充実していると、従業員のスキルが向上するだけでなく、成長することによるモチベーションのアップも期待できます。
育成方法は、集団研修やOJT、セミナーや資格取得などいろいろありますが、資格手当をつければ自主的な学習も促せるので、従業員が自ら学びたくなるような方法を取り入れましょう。
基本的には、短期間で成長させようとするのではなく、中長期的な視点で「いずれ必要になる人材」を逆算して、育成計画を立てるのがベストです。
2-4.人事評価
人事評価は、従業員のエンゲージメントやモチベーションに直接関わる大事な項目です。
「自分の仕事が公平に評価されているか」「待遇に反映されているか」というのは、従業員のやる気に影響するため、適切な評価制度の構築をおこなうことが重要です。
そのためには、昇進や給与アップが公平におこなわれる制度づくりや内容を説明し理解してもらうことが必要になります。また、的確に評価を反映させるためにも、管理する側が従業員の働きや努力、取り組みなどを把握できる仕組みもつくっておきましょう。
評価制度があっても、不公平感があったり評価内容が不透明だったりすると、逆に不満となってしまうので注意してください。
2-5.報酬設定
人は、お金だけで動くものではありませんが、報酬も従業員のモチベーションに関わる要素の1つです。
いくら業務内容や職場環境に満足していても、報酬に満足できていない場合は将来的に離職する可能性を高めてしまいます。最終的な決定は経営者の判断になりますが、人材管理では従業員が不満を感じないように、業務成績の反映基準の見直しをおこない公平な制度設計をすることが重要です。
すべてに満足できないとしても、従業員が納得できる報酬設定ができるように尽力しましょう。
3.人材管理の課題
人材管理は、採用や育成、評価制度や報酬制度の設定など業務の範囲が広いので、業務負担が大きいことが課題となっています。
しかし、「人材」というのはどのような業務にも関わるものなので、負担が大きいとして減らすことができません。さらに、意志や考えを持った「人」を適切に管理しなければいけないというのも課題となっています。
とはいえ、「しょうがない」で済ませてしまうと、人材管理をする人材が離職してしまうリスクもあるので、課題にはしっかり向き合うことが重要です。
ここでは、人材管理をおこなううで、もっともよくある課題を紹介します。
3-1.手作業による管理
人材管理は、システムを導入していない場合、すべてを手作業でおこなわなければなりません。
前述していますが、人材管理では採用や配置、育成、評価、勤怠管理などさまざまな業務があり、それぞれの情報をデータとして管理するため、膨大な手作業をおこないます。
また、企業によっては給与計算などもおこなうため、パソコン入力だけで1日が終わってしまうこともあるでしょう。
これだけの管理を手作業でおこなうと、人的ミスがおこる可能性もあるので、早急な解決策が必要です。
3-2.適材適所が難しい
人材管理をしていれば、従業員それぞれの情報を把握することができます。
しかし、実際に働く現場を見ているわけではないので、適材適所に配置するのはとても難しいのが実情です。昇進や昇格はもちろん、配属やプロジェクトのチーム編成なども、情報だけで判断してしまうと間違えてしまうことがあります。
間違った人材配置は、従業員の不満を招くだけでなく、人材を有効活用できず生産性にも影響を与えてしまいます。
また、採用や育成にかけた時間も無駄になってしまうため、経営戦略のサポートにも役立たないという結果になるので早急な解決が求められます。
3-3.管理をする時間がない
手作業で管理をおこなっている場合、作業に時間をとられてしまうため、実際に「情報を管理する時間がない」というのも課題です。
本来であれば、情報を管理して分析し、人材配置や評価、報酬設定などをおこなうのが人材管理の業務です。
しかし、あらゆる情報を入力したり区分けしたり、変更したりする作業がメインとなってしまうので、管理に手がまわらないというのが人事部の現状ではないでしょうか。
これでは管理できていないのと同じで、データベースも活用できないので、従業員の満足度の低下や生産性のダウンなどのリスクが高まります。
4.人材管理の課題を解決するには
人材管理の課題を解決するには、人材管理システムの導入が有効です。
人材管理システムは製品によって機能が異なりますが、主に下記の管理を包括的におこなうことが可能です。
- 勤怠管理
- 人事評価
- 人材採用
- 給与計算
- 労務管理
システムによっては、従業員のスキル・能力のデータ保管や従業員満足度の分析をおこなう機能もあります。また、多くの人材情報を管理できるので、データに基づいた的確な人材育成や人材配置も可能です。
人材管理の業務をシステム上で一元管理できるので、担当者の業務負担を大幅に減らすのはもちろん、人的ミスを防ぐこともできます。
人材管理システムには導入費用やランニングコストがかかりますが、もっとも難しい「人」の管理を適切にサポートしてくれるので、課題解決に大きく役立ってくれるでしょう。
5. 人材管理システムは大きく2つに分類される
人材管理をおこなうためには社内の人材に対するデータを管理しなければなりませんが、人材管理システムを利用することで効率的な管理が可能になります。
人材管理システムにはいくつもの種類がありますが、大きくは「オンプレミス型システム」と「クラウド型システム」の2つに分類されます。
ここでは、それぞれのシステムの特徴やメリット・デメリットについて説明します。
5-1. オンプレミス型システム
オンプレミス型システムは、社内に独自のネットワーク環境を構築して運用するシステムで、システム自体を最初から構築するため、自社の要件定義に沿ったシステムを築くことができます。
手探りで導入・運用を始めるような場合は、運用開始後に現場の意見を取り入れて適宜改善できるような仕様にしておくなど、柔軟な設計・運用が可能です。
また、社内独自のネットワーク内での利用となるので外部に接続する必要がなく、セキュリティ面でも安心というのは大きなメリットと言えるでしょう。
ただ、システムをゼロから設計・構築する必要があるため導入のイニシャルコストは高くなりがちで、導入するまでに長い時間を要する可能性が高いのはデメリットと考えられます。
また、システムを実際に運用したり、要件が変わった際に修正やバージョンアップをおこなったりするためのランニングコストがかなり必要であることもデメリットになるかもしれません。
そのため、社員数がかなり多かったり要件定義が特殊だったりすることで、パッケージ型の人材管理システムを使いにくいというような企業におすすめのシステムと言えるでしょう。
5-2. クラウド型システム
クラウド型システムは、自社でシステムを構築せずにクラウド上で利用するタイプのシステムです。課金をおこなうことでストレージの追加も容易なので、急な環境の変化に対しても柔軟に対応できます。
ネットにつないで利用することになるので、社内だけでなく必要に応じて社外でも人材情報を確認できるというのは大きなメリットです。
ただし、インターネットに接続して利用するという性質上、インターネットの接続障害が発生するとまったく利用できなくなってしまうのがデメリットです。
また、あらかじめパッケージが決まっているため、カスタマイズ性が低いものが多いことやインターネットにつながっているがゆえのセキュリティ面での不安といった点もデメリットとして考えられるでしょう。
6. 人材管理システムを利用する5つのメリット
人材管理は、上述したようなシステムを利用しなくてもおこなうことは可能ですが、システムを用いることには多くのメリットがあります。
システムを導入するとコストがかかりますが、メリットを理解すれば会社によっては費用対効果以上のものを得られるかもしれません。
ここでは、人材管理システムを利用するメリットを5つ紹介していきます。
6-1. 従業員に対してあらゆる角度から評価がおこなえる
人材管理は基本的に人事部やそれぞれの部・課の責任者がおこないますが、人材管理システムでは人材情報の利用・閲覧の権限を細かく設定することが可能です。
そのため、同僚や部下などからの評価を人事異動に反映することもできるようになっています。
上の立場の人間からの見え方だけでなく、立場が近い人間や社歴の浅い人間からの見え方も加味することで、より公平で納得感のある判断がおこなえるでしょう。
6-2. 適材適所の人員配置がおこなえる
人材管理システムの中には、各社員の情報や社内の人材配置が視覚的に分かりやすく表示されているものもあります。
そういったUIのシステムであれば、どのように人員配置をおこなえば組織のパフォーマンスを最大化できるかが感覚的に分かりやすいので、適材適所の人員配置を実施できます。
システムがなくても、各社員としっかり話し合いをおこなってスキルや適性を把握すれば、適材適所の人員配置は可能です。しかし、システムを利用すればより効率的におこなえるので、担当者の業務負担を減らせるメリットもあります。
ただし、この場合の「適材適所」はあくまでも会社の視点からの判断であり、社員の視点からは適材適所と判断されない可能性があることは、念頭に置いておかなければなりません。
6-3. 人材育成に活用できる
人材管理システムでは、社員育成のためにe-ラーニングシステムやレポート提出機能がセットになっていることもあります。
e-ラーニングの受講は社員の意識改革につながる可能性があるので人材育成の一助になりますし、社員それぞれが好きなタイミングで受講できるのはメリットです。
また、それぞれの社員の能力やスキルを判断して、独自にカスタマイズした課題を課すようにできるシステムもあります。
業務負荷的な観点から実際には課題を課さないという選択肢もありえますが、その課題の内容を踏まえて今後の育成方針を決めることもできるでしょう。
6-4. 社内に眠る人材の発掘がおこなえる
人材管理システムでは上司だけでなく同僚や部下からの評価も反映することができますが、その結果今までは把握できていなかった社内人材を発掘できる可能性もあります。
リーダーシップや決断力は経営者や管理職にとって重要な素養ですが、上司からの視点による評価ではそういった部分が得てして軽視されがちです。
上司よりも近い距離で働いている同僚や、実際に指示を受けている部下からの評価・判断を考慮することで、社内に眠る次期経営者や管理職候補を効率的に選出できるでしょう。
6-5. 従業員のモチベーション維持・向上につながる
人材管理システムによって、自身に対する評価を多角的に判断してもらえたり、適材適所の人員配置がおこなわれたりすれば、社員の働きがいは確実に向上します。
社員の働きがいやモチベーションにはもちろん金銭的な側面もありますが、「自分のやりたい仕事ができている」「仕事の中で自分の成長が感じられる」といった実感を得られることも重要なポイントです。
終身雇用という考え方がほぼ崩壊してきており、よりよいキャリアを求めて転職するという選択肢がごく一般的になってきている現在において、社員のモチベーションを維持・向上させることの重要性はますます高くなってきています。
すべての社員が100%満足するような人員配置を実施することはなかなか難しいですが、人材管理システムによって適切に評価がされているということ自体が、社員の働きがいを向上させる一助となるでしょう。
7. 人材管理の課題改善にはシステムを活用しよう
人材管理システムを選ぶ場合は、自社の人事において重要とされる指標をモニタリングできるものを選ぶことが重要です。
オンプレミス型の人事システムを利用する場合は、自社の事情に沿った設計にするため、その点に関しては問題ありません。クラウド型のシステムでも最近はカスタマイズできるものが増えてきているので、よい意味で自社にとっての優劣を決めにくくなっていることがあります。
そういった場合は、イニシャルコストおよびランニングコストのトータルコストや、不具合があったときなどのサポート体制によってどのシステムを選ぶべきかを決めるこt。
特にクラウド型の管理システムの場合、管理する社員が増えるとランニングコストもどんどん増えていくことになるため、採用強化中の会社はその点に気を付けて、自社に適したシステムを選びましょう。
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