3ヵ月の試用期間とは?導入するメリットや終了後の対応を解説
更新日: 2025.7.9 公開日: 2025.7.9 jinjer Blog 編集部
「試用期間は自由に定めてよい?」
「試用期間を導入するメリットは?」
上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。
従業員の適性を見極め、雇用のミスマッチを防ぐ手段として、多くの企業で「試用期間」が導入されています。試用期間は、本採用前に従業員の勤務態度や能力を見極めるための期間であり、企業・従業員の双方にとって適性を確認するための重要なプロセスです。
法的には労働契約として成立しているため、企業は適切に設定・運用しなければなりません。
本記事では、3ヵ月の試用期間を導入するメリット・デメリット、終了後の対応や解雇時の注意点について解説します。適切な試用期間を設定し、人材定着率の向上と組織の安定を目指しましょう。
雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
いざという時に慌てないためにも、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 試用期間は3ヵ月とするのが一般的


一般的に、試用期間は「3ヵ月」とするケースが多く見られます。従業員が業務に慣れ、適性を客観的に判断できるまでの期間として適正と考えられているためです。
とはいえ、試用期間の長さは法律で明確に定められていません。自社の判断で期間を自由に設定できますが、長くても6ヵ月以内とされるのが一般的です。
また、試用期間中でも労働契約は成立しており、労働基準法が適用されることを理解しておく必要があります。
「まだ本採用前だから」などの理由で、一方的な解雇はできません。解雇するためには、客観的な理由と社会的な相当性が求められます。
2. 3ヵ月の試用期間を導入するメリット


3ヵ月の試用期間を導入するメリットは、以下のとおりです。
- 採用ミスマッチを未然に防げる
- 教育や指導のタイミングを明確化できる
- 適材適所の人材配置ができる
2-1. 採用ミスマッチを未然に防げる
3ヵ月の試用期間を設けることで、採用ミスマッチを未然に防げます。
書類選考や面接の採用プロセスでは、応募者のスキルや人柄をある程度見極められますが、実際の勤務態度や業務遂行能力までは把握しきれないことも少なくありません。
試用期間を通じて、日々の業務に取り組む姿勢や指示の理解力、課題への取り組み方など、実務に基づいた客観的な評価ができます。また、企業文化への適応力やチーム内での協調性など、面接では見えにくい要素も観察できるでしょう。
2-2. 教育や指導のタイミングを明確化できる
3ヵ月の試用期間を設けることで、教育や指導のタイミングを計画的かつ明確に設定できます。
例えば「試用期間=指導・育成強化期間」とあらかじめ位置づけておけば、企業側は計画的に指導体制を整えられるでしょう。従業員も、「どのようなスキルや態度が求められているのか」を明確に把握した上で業務に取り組めます。
また、試用期間終了時にフィードバック面談の機会を設ければ、課題と成果を明確にできるため、従業員の成長意欲を高めるきっかけにもなるでしょう。
2-3. 適材適所の人材配置ができる
3ヵ月の試用期間を設けることで、適材適所の人材配置がしやすくなります。選考時の情報だけでは把握しきれないスキルや性格、業務への理解度を、実際の業務を通じて把握できるためです。
試用期間中は、業務内容や配属先の微調整も柔軟に対応しやすく、組織全体のパフォーマンス向上にもつなげられます。
本採用後に大幅な配置転換をおこなうと、従業員・企業双方の負担が大きくなりがちです。試用期間中に最適なポジションを見極めておくことで、スムーズな戦力化が期待できるでしょう。
3. 3ヵ月の試用期間を導入するデメリット


3ヵ月の試用期間を導入するデメリットは、以下のとおりです。
- 採用コストが無駄になる可能性がある
- 本採用辞退のリスクがある
3-1. 採用コストが無駄になる可能性がある
採用コストが無駄になる可能性があることが、試用期間を導入するデメリットの一つです。試用期間を経て従業員が退職に至った場合、採用コストはすべて「回収できない投資」となります。
採用活動には、求人媒体への掲載費、選考にかかる人件費、入社後の研修・教育コストなど、さまざまな経費が発生するでしょう。
試用期間を設ける場合、採用段階での見極め精度の向上や、定着支援の強化が重要なポイントとなります。
3-2. 本採用辞退のリスクがある
試用期間を導入することで、本採用を辞退されるリスクがあることもデメリットの一つです。従業員にとって、試用期間中は不安やプレッシャーを感じやすい時期でもあります。
不安定な心理状態が長く続くと、モチベーションの低下や職場への不信感につながる可能性があり、結果として試用期間終了後に辞退されるリスクが高まるでしょう。
リスクを回避するためには、試用期間中におけるOJTの充実や定期的なフィードバック機会の確保が重要です。
従業員が「評価されている」と実感できる環境を整えることで、本採用への安心感と意欲の向上につながり、早期離職の防止にも寄与します。
4. 試用期間中の労働契約


試用期間中の労働契約は、以下のとおりです。
- 試用期間中は「解約権留保付労働契約」
- 処遇や労働条件
4-1. 試用期間中は「解約権留保付労働契約」
試用期間中は「解約権留保付労働契約」とされています。企業が試用期間中に従業員の適格性を判断し、不適格と判断した場合に解雇できる可能性を留保している契約形態です。
ただし「解雇権」はあくまで例外的に認められるものであり、客観的合理性と社会的相当性がなければ無効とされます。
なお、試用期間中の契約書の交付は義務ではありません。とはいえ、後のトラブルを防ぐためにも雇用契約書の締結や就業規則の提示は必須といえるでしょう。
試用期間の位置づけや評価基準、処遇などを明確にしておくことで、企業と従業員の双方が安心して働ける環境を整備できます。
4-2. 処遇や労働条件
試用期間中は、本採用後と異なる労働条件を設定可能です。給与については、最低賃金を下回らない範囲であれば、企業の裁量で設定できます。
ただし昨今の人材採用市場では、試用期間中の待遇が悪いと応募のハードルが高くなる傾向があるでしょう。そのため、試用期間中も本採用後と同様の給与・労働条件を設定している企業が大多数です。
処遇面で不安を与えるのではなく、安定した雇用関係を前提に育成・適性判断をおこなう姿勢が、結果として人材の定着につながります。
5. 試用期間終了後の対応


試用期間終了後の対応は、以下の3つに分かれます。
| 対応 | 内容 |
| 本採用 | ・正社員として採用
・通知は文書でおこなうのが一般的 |
| 解雇 | ・適性が不十分と判断した場合に解雇できる
・合理的理由と社会通念上の相当性がなければならない |
| 試用期間の延長 | ・本採用・解雇の判断がつかない場合に延長可能
・延長する場合は就業規則や雇用契約における根拠が必要 ・本人の同意なしには延長不可 |
試用期間を延長する場合、合理的な範囲内で設定しなければなりません。一般的に、1~3ヵ月程度にとどめるのが妥当です。
6. 試用期間終了後に解雇する際の注意点


試用期間終了後に解雇する際の注意点は、以下のとおりです。
- 客観的合理性がなければ解雇できない
- 30日前に解雇予告をしなければならない
6-1. 客観的合理性がなければ解雇できない
客観的合理性があり、社会通念上相当と認められなければ試用期間終了後に解雇できません。
解雇が認められる具体例は、以下のとおりです。
- 重大な学歴・経歴詐称が判明した
- 健康上の理由により業務遂行が困難である
- 正当な理由のない遅刻・欠勤など労働義務の不履行がある
- 勤務態度が著しく悪く指導や教育を受けても態度を改めない
- 私生活で重大な罪を犯した
一方で、単なる能力不足を理由とする解雇は、試用期間中であっても極めて慎重に判断されます。なぜなら、試用期間は本来「教育・育成」と「適性を見極める期間」であり、途中での解雇は育成の機会を放棄したものとみなされる恐れがあるためです。
重大かつ明確な理由がない限り、試用期間途中での解雇は極力避けることが望ましいでしょう。
6-2. 30日前に解雇予告をしなければならない
労働基準法に基づき、試用期間中であっても「解雇予告制度」が適用されます。
具体的には、入社日から14日を超えて雇用されている従業員を解雇する場合、以下のいずれかの対応が必要です。
| 対応内容 | 詳細 |
| 30日前までに解雇予告をおこなう | 解雇予定日の30日前までに予告が必要 |
| 解雇予告手当を支払う | 30日前までに予告できなかった場合、不足日数分に相当する平均賃金を支払う |
なお、入社後14日以内の従業員を解雇する場合は解雇予告の規定が適用されません。即時解雇が可能ですが、合理性が求められる点には注意が必要です。
7. 3ヵ月の試用期間を適切に運用しミスマッチを防ごう


3ヵ月の試用期間は、従業員の業務適性や職場への適応力を見極める上で、バランスの取れた期間といえます。
企業は、試用期間の目的や評価基準の設定、業務指導、定期的なフィードバックなどを丁寧におこなうことが重要です。適切な運用をすることで、従業員の成長を促進し、早期離職の防止や定着率の向上につなげられます。
また、不採用と判断する場合は慎重な対応をしなければなりません。不当解雇と見なされないよう、判断基準や対応フローを明確化し、社内マニュアルとして整備しておきましょう。



雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
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◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
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