法定三帳簿とは何?記載事項や保存期間・作成しない場合の罰則を解説
更新日: 2025.2.15
公開日: 2025.2.15
OHSUGI
「法定三帳簿って何?」
「作成する際の記載内容や保存期間は?」
「作成しない場合の罰則はある?」
法定三帳簿について上記の疑問をお持ちではありませんか。
法定三帳簿とは、従業員を雇う企業であれば備え置くべき重要な帳簿です。
本記事では、法定三帳簿の概要や記載事項、保存期間について重要なポイントをお伝えします。法定三帳簿について理解を深めたい方はぜひ最後までお読みください。
タイムカードや出勤簿などで勤怠管理をしてる場合、以下のような課題はないでしょうか。
- 打刻漏れの確認や労働時間の集計だけで数日かかってしまう
- 有給休暇の残日数確認の問い合わせ対応が業務を圧迫している
- シフトの収集や作成に時間がかかって他の業務ができない
そのようなお悩みをお持ちの方におすすめなのが、勤怠管理システムの導入です。システムであれば打刻漏れを減らせるほか、労働時間は自動集計されるため、ミスと工数を減らすことが可能です。 このほかにも便利な機能で勤怠管理の工数削減ができるため、勤怠管理システムで何ができるか気になる方は、こちらからクラウド型勤怠管理システム「ジンジャー勤怠」の紹介資料をご覧ください。

1. 法定三帳簿とは
法定三帳簿とは、法律に基づき作成と保存の義務がある以下の3つの帳簿を指します。
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
事業の大小に関係なく、従業員が一人でもいる場合には法定三帳簿を揃えなければなりません。
労働基準監督署から提出を求められることもあるため、日頃から記録しておくことが求められます。作成や保存を怠ると、罰則が科される場合があるため注意が必要です。
以下では、それぞれの帳簿について詳しく解説します。
1-1. 労働者名簿
労働者名簿とは、労働者ごとの個人情報や仕事に関する情報などを記した帳簿のことを指します。労働基準法第107条に基づき作成が義務付けられている名簿です。
必須記載事項としては以下となります。
- 労働者の氏名
- 生年月日
- 履歴
- 性別
- 住所
- 従事する業務の種類
- 雇入年月日
- 退職や死亡年月日、その理由や原因
労働者ごとに名簿を作成しなければならないため、正社員だけでなくパートやアルバイトの分も作成が必要です。例外として日雇い労働者は、名簿作成の取り扱い対象ではありません。
なお「社員名簿」など違う名称で管理していても、記載事項が揃っていれば労働者名簿として取り扱われます。
1-2. 賃金台帳
賃金台帳とは、労働者ごとの給与や労働時間などを記載した帳簿のことです。労働基準法第108条で備え置かなければならないと規定があります。
以下項目の記載が必要です。
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働の労働時間数
- 休日労働の労働時間数
- 深夜労働の労働時間数
- 基本給や手当などの種類とその額
- 控除項目とその金額
従業員の雇用があれば作成が必須であり、正社員やアルバイトなど雇用形態に関係なく全員分を作成します。また、日雇い労働者も対象です。労働者名簿とは対象範囲が異なる点に注意しましょう。
給与明細と混同されることがありますが、役割が異なります。給与明細は従業員に税金や控除額を通知する書類で、賃金台帳は賃金額やその計算根拠となる労働時間を記録する帳簿です。フォーマットや必要となる記載事項にも違いがあるため、区別しましょう。
1-3. 出勤簿
出勤簿とは、従業員の労働時間を記録するための帳簿です。労働基準法には出勤簿の作成に関する明確な規定はありません。
ただし第109条には労務管理に関する重要な書類の保存義務が定められています。その重要書類の中に出勤簿が含まれると厚生労働省のガイドラインに記載があるのです。
そのため、出勤簿は作成が必要な書類として、法定三帳簿の一つに数えられています。出勤簿に記載すべき項目は次の通りです。
- 出勤簿やタイムレコーダーなどの記録
- 使用者が自分で始業・終業時刻を記録した書類
- 残業命令書およびその報告書
- 労働者が記録した労働時間報告書など
出勤簿は雇用している従業員全員分を作成しなければなりません。労働者名簿とは異なり、日雇い労働者も対象です。
参考:労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
2. 法定三帳簿の作成方法
法定三帳簿には決まったフォーマットはありません。上記で述べた必須事項を記録できていれば形式は自由です。
近年では、人事労務管理ツールを導入している企業も増えています。こうしたツールを使って出力した帳簿でも問題ありません。自社にとって管理しやすい方法で作成してください。
ただしフォーマットが自由だと、作成に戸惑う場合もあるでしょう。厚生労働省のホームページなどで提供されているテンプレートを利用するのがおすすめです。
自社で作成する際の参考になるほか、ダウンロードしてそのまま使うこともできます。
参考:労働関係法令上の帳簿等の種類と保存期間について(簡易版)|厚生労働省
3. 法定三帳簿の保存期間・方法
法定三帳簿の保存期間は法律で5年間(当分の間は3年間)と定められています。
2020年の法改正で保存期間が3年から5年に変更されましたが、経過措置により2025年1月現在は3年でも問題ありません。ただし将来に備え5年間保存する運用を始めておくと安心です。
また、それぞれ保存期間の起算日が定められています。起算日は以下の通りです。
労働者名簿 | 労働者の退職日もしくは死亡日から |
賃金台帳 | 最後に記入した日
※賃金支払日が最後に記入した日より遅い場合はその日 |
出勤簿 | 出勤簿が完結した日
※賃金支払日が完結した日より遅い場合はその日 |
保存方法としては紙での管理はもちろん、ExcelなどWebで管理しても問題ありません。
4. 法定三帳簿を作成しない場合の罰則・リスク
法定三帳簿を備え置かない場合のリスクは以下4つです。
- 労働基準違反となり罰則が適用される可能性がある
- 労働基準監督署による指導・是正勧告の対象となる
- 助成金申請ができない
- 会社の状況把握ができない
それぞれ詳しく解説します。
4-1. 労働基準法違反となり罰則が適用される可能性がある
法定三帳簿の作成を怠ると罰則が科される場合があるため注意しましょう。労働基準法第120条では「30万円以下の罰金」と明記されています。
単なる不備では済まず、刑事罰の対象となる点に十分ご注意ください。
4-2. 労働基準監督署による指導・是正勧告の対象となる
法定三帳簿を備え置かないことは、労働基準監督署による指導や是正勧告の対象です。一度指導や是正勧告を受けると、改善が確認されるまで対応が続きます。
過去分も遡って作成が必要なため、相当な手間や負担がかかるでしょう。こうした事態を避けるためにも、日頃から適切に整備しておくことが重要です。
4-3. 助成金申請ができない
助成金申請をおこなう際に法定三帳簿が整っていない場合、申請ができず不支給となるリスクがあります。
助成金は適正な労務管理がおこなわれていることが条件になる場合が多いです。申請時に法定三帳簿の提出を求められるケースもあります。
助成金が必要なときにもらえず、帳簿をゼロから整理することになると、会社にとって大きな負担ではないでしょうか。日頃から適切に整備しておくことが重要です。
4-4. 会社の状況把握ができない
法定三帳簿がないと会社の現状を把握できず、適切な労務管理が難しくなります。例えば、従業員の勤務時間や給料の支払い状況がわからなければ、人件費の見直しもできません。
また、法定三帳簿は会社の問題点や改善点を見つける重要な資料です。整備が不十分だと、課題発見の機会を逃します。
経営を良い方向に導くためにも、日頃から整備しておくことが欠かせません。
5. 法定三帳簿の注意点
法定三帳簿における注意点は以下の2つです。
-
- 役員でも対象となる場合がある
- 事業場ごとに備え置かなければならない
それぞれ詳しくお伝えします。
5-1. 役員でも対象となる場合がある
原則、役員は労働基準法における「労働者」には該当しません。ただし、役員であっても労働契約を結び、従業員として業務をおこない賃金が支払われている場合は例外的に対象となります。
名目上の役職ではなく、その職務内容など実態が判断基準です。役員でも作成対象に含まれる場合がある点を押さえておきましょう。
5-2. 事業場ごとに備え置かなければならない
法定三帳簿は事業場ごとに備え置かなければなりません。
複数の事業場がある場合、会社全体で1つだけでは不十分です。事業場とは企業が労働者を雇用し事業活動をおこなう、以下のような場所を指します。
- 支社
- 工場
- 店舗事務所
- 営業所
最適な勤務状況や労務管理をおこなうためにも、各事業場で帳簿をきちんと整備しましょう。
6. 法定三帳簿を作成して労務管理の土台を整備しよう
法定三帳簿は労働基準法に基づき、事業場ごとに備え置くべき帳簿です。未作成の場合、罰則や指導の対象となる可能性があります。
また、正確な記録を残すことで、労働者の勤務状況や賃金の支払い状況の把握が可能です。これにより、労務管理を見直す際や改善点を発見する際の参考資料として活用できます。法定三帳簿をしっかり整備し、労務管理の土台を築きましょう。
タイムカードや出勤簿などで勤怠管理をしてる場合、以下のような課題はないでしょうか。
- 打刻漏れの確認や労働時間の集計だけで数日かかってしまう
- 有給休暇の残日数確認の問い合わせ対応が業務を圧迫している
- シフトの収集や作成に時間がかかって他の業務ができない
そのようなお悩みをお持ちの方におすすめなのが、勤怠管理システムの導入です。システムであれば打刻漏れを減らせるほか、労働時間は自動集計されるため、ミスと工数を減らすことが可能です。 このほかにも便利な機能で勤怠管理の工数削減ができるため、勤怠管理システムで何ができるか気になる方は、こちらからクラウド型勤怠管理システム「ジンジャー勤怠」の紹介資料をご覧ください。



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