【2024年4月】労働条件明示のルール改正の内容は?企業の対応や注意点を解説
更新日: 2025.9.12 公開日: 2023.10.27 jinjer Blog 編集部

2024年の4月に「労働条件明示」のルールが改正されました。そのため、企業には労働条件明示のルール改正への適切な対応が求められています。
労働条件の明示は労働基準法で義務付けられており、違反すると罰則が科される可能性があるので正確に把握しておく必要があります。
しかし、「改正で何が変わるのかわからない」「何をすればいいのかわからない」と悩んでいる方も、多いのではないでしょうか。
本記事では、労働条件明示の改正について、また企業がおこなうべき対応や注意点など具体的な内容を解説します。
目次
雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
いざという時に慌てないためにも、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 2024年4月の労働条件明示のルール改正とは


2024年(令和6年)の4月1日に労働条件明示のルールが改正されました。労働条件の明示の目的は、雇用契約締結後の労使トラブルを防ぎ、・労働者を保護することです
労働基準法第15条第1項「労働条件の明示」により、企業は従業員を雇用する際の労働条件の明示を義務付けられています。雇入れの際には「労働条件通知書」の交付が必要です。明示された労働条件と事実が異なる場合、労働者は労働契約の解除を求めることができるので、正確に作成しましょう。
「労働条件の明示」の項目は、書類による明示が必要な項目と、口頭の明示で問題ない項目に分類されます。
| 書面の交付が必要な明示事項 | 口頭での明示が認められている事項 |
| ・労働契約の期間
・就業場所、従事する業務内容 ・始業、終業の時刻 ・所定労働時間を超過した労働の有無 ・休憩時間 ・休日、休暇 ・交代制勤務の際の就業時転換に関する事項 ・賃金の決定や計算、支払いの方法 ・賃金の締切・支払時期に関する事項 ・解雇の理由を含む退職に関する事項 |
・昇給に関する事項
・退職手当の適用範囲に関する事項 ・退職手当の支払い方法、時期に関する事項 ・臨時で支払われる賃金、賞与に関する事項 ・労働者負担に関する事項 ・衛生、安全に関する事項 ・職業訓練に関する事項 ・災害補償、業務外傷病扶助に関する事項 ・制裁、表彰に関する事項 ・休職に関する事項 |
労働条件明示の改正により、新しい項目が4つ追加されます。企業は、新しい明示項目を正確に把握して、適切に対応することが求められるでしょう。
参照:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます|厚生労働省
2. 労働条件明示のルール改正で追加される4つの項目と改正内容


労働条件明示の改正で追加される項目は以下の通りです。
- 就業場所・業務の変更の範囲更新上限の明示
- 無期転換の申し込み機会の明示
- 無期転換後の労働条件の明示
ここでは、追加される項目の具体的な内容について解説します。
2-1.就業場所・業務の変更の範囲
すべての労働者に「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になります。改正前に義務付けられていた「就業場所」「業務の内容」の明示に、「範囲」が加わると考えればわかりやすいでしょう。
「就業場所・業務の変更の範囲」は、労働契約の締結・有期雇用契約の更新のタイミングで示すことが求められます。
変更の範囲とは、将来の配置転換によって変更が予想される就業場所・業務の範囲のことです。しかし、長期雇用が前提である正社員の場合は、労働契約の締結時点だと変更の範囲を明確にすることが難しいケースがあるでしょう。そのため、雇用後に事実と差がでることも考えられるので注意が必要です。
想定が難しいケースでは、就業場所・業務の変更の範囲をなるべく広く記載します。そのうえで就業規則における配置転換に関する条文と、人事権によって命じる権利があることを明記しておくと労使双方の認識が合わせやすくなります。
2-2.更新上限の明示
労働条件明示ルールの改正後は、有期契約労働者に対する「更新上限の明示」が必要です。更新上限とは、有期契約の通算契約期間もしくは更新回数上限のことを指します。
更新上限は、有期労働契約の締結と更新のタイミングで、更新上限の有無と詳しい内容を明示することが重要です。さらに以下のケースでは有期契約労働者への説明が必要とされます。
- 最初の契約締結のあとに、更新上限を新しく設けるとき
- 最初の契約締結の際に設けた更新上限を、短縮するとき
更新上限を新設・短縮するときは、事前に詳しい理由を丁寧に説明しなければなりません。説明時には理由をスムーズに伝えられるように、あらかじめ準備しておきましょう。
2-3.無期転換申込機会の明示
労働条件明示の改正後は、有期契約労働者に対して「無期転換への申し込みが可能であること」の書面での明示が必要です。無期転換申込機会の明示は、「無期転換ルール」に則り、「無期転換申込権」が発生するタイミングでおこないましょう
無期転換ルールとは、有期雇用労働者の申し込みによって無期労働契約(期間を定めない労働契約)に転換できる権利が発生することです。有期労働契約の期間が合計で5年を超える契約がなされたときに、無期転換の申込権が発生します。
例えば契約期間が1年なら5回目更新後から、契約期間が3年のケースなら1回目更新後から申し込みが可能です。申し込みがあれば無期労働契約が成立します。
2-4.無期転換後の労働条件の明示
労働条件明示の改正によって、「無期転換後の労働条件」の明示が求められます。労働条件は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を禁止する「同一労働同一賃金」を踏まえたうえで決めましょう。
「無期転換後の労働条件の明示」は、無期転換申込機会のタイミングごとに書面でおこなわなければなりません。。
労働条件の内容は、正規雇用労働者とのバランスに考慮したうえで決定し、有期契約労働者に丁寧に説明することも忘れないでください。
3. 労働条件明示のルール改正で企業がすべき3つの対応


労働条件明示の改正までに、企業がおこなうべき対応は下記の3つになります。
- 労働条件通知書の見直し
- 有期契約労働者の更新上限の再確認
- 無期転換ルールが適用される有期契約労働者の把握
具体的に何をすべきなのかチェックして、準備を整えておきましょう。
3-1.労働条件通知書の見直し
労働条件明示の改正に対応するためには、労働条件通知書の見直しが必要です。4つの追加項目をふまえたうえで、新しく作成する必要があります。
厚生労働省のホームページでは「労働条件通知書の改正イメージ」が公開されているので、参考にしてください。労働条件通知書への記載が難しい条項は、就業規則の条文で明示することを検討しましょう。
参照:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます|厚生労働省
また当サイトでも、労働条件通知書を作成する際に参考にできる労働条件通知書のフォーマットを無料配布しています。
社労士の監修付きで、令和6年に労働条件の明示ルールが変更された点も反映した最新のフォーマットです。雇用契約書として兼用することもできる雛形ですので、「これから作る雇用契約書の土台にしたい」「労働条件通知書を更新する際の参考にしたい」という方は、ぜひこちらからダウンロードの上、お役立てください。
3-2.有期契約労働者の更新上限の再確認
更新上限の明示に対応するために、有期契約労働者の契約更新回数・通算期間などの確認をおこないます。その際には、現状の労働条件をチェックすることが重要です。
有期労働契約の締結と更新の際に、更新上限の有無と詳しい内容を明示できるように準備を整えておきましょう。
また、更新上限の新設・短縮をおこなう場合は、従業員に対する説明のために詳しい理由をまとめておくことが大切です。特に、新設する場合は、従業員に納得してもらえるようにしなければなりません。
3-3.無期転換ルールが適用される有期契約労働者の把握
労働条件明示の改正までには、無期転換ルールが適用される有期契約労働者をリストアップすることも重要です。それぞれの無期転換申し込み権が発生するタイミングを明確にしておきましょう。
リストアップに加え、社内の仕事を整理したうえで、無期転換後の労働条件を検討しておくことが大事です。無期転換後の労働条件の明示は書面による交付が必要であるため、準備をしっかり整えておきましょう。
4. 労働条件明示のルール改正に関する2つの注意点


労働条件明示のルール改正に対応するために、注意しておきたい2つのポイントは以下の通りです。
- 企業は無期転換の申し込みを断れない
- 無期転換後でも正社員になるわけではない
労働者とのトラブルを避けるためにも、これらのポイントについて正しく理解しておきましょう。
4-1.企業は無期転換の申し込みを断れない
有期契約労働者による無期転換があった場合、企業側は断れません。申し込みがあった時点で、無期労働契約は成立します。
申し込みがあった後の雇止め(雇用期間の更新を拒絶すること)は禁止です。無期転換ルールを避ける目的で無期転換申し込み権が発生する前に雇止めをおこなうことも、望ましくありません。
なお、法律上は申し込みを口頭でおこなっても有効ですが、あとになって申し込みを「した」「してない」のトラブルになる恐れがあるため、申し込みを受けたときは書面を労働者に交付しておくことがおすすめです。
4-2.無期転換後でも正社員になるわけではない
無期労働契約が成立しても、有期契約労働者が正社員になるわけではありません。有期労働契約から無期労働契約に変わり、定年まで契約期間の定めなく働けるようになるだけです。
そのため、正社員と同様の労働条件を適用する必要はないでしょう。無期転換前と同じ労働条件で、雇用期間だけを無期に変更するだけでも問題ありません。
無期転換社員は労働期間の上限に定めがないため、就業規則によって定年を決めます。定年年齢を超えて無期転換社員になるケースに備えて、第二定年を設けておくこともおすすめです。
5. 労働条件明示改正の内容を把握しておこう


2024年4月の労働条件明示の改正によって、4つの明示事項が追加されました。この義務に違反した場合は30万円以下の罰金が科される可能性があるため、企業は適切な対応が求められるでしょう。
労働者とのトラブルを避けるためには、企業がすべき3つの対応と、2つの注意点を把握しておくことが重要です。特に、有期契約労働者は「無期転換ルール」に対して敏感になっているので、新設や変更した場合は理由を説明できるようにしておきましょう。
改正後の労働条件明示を厳守するためにも、担当者の方は労働条件明示改正の内容を正しく把握しておいてください。



雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
いざという時に慌てないためにも、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
人事・労務管理のピックアップ
-


【採用担当者必読】入社手続きのフロー完全マニュアルを公開
人事・労務管理公開日:2020.12.09更新日:2025.10.17
-


人事総務担当がおこなう退職手続きの流れや注意すべきトラブルとは
人事・労務管理公開日:2022.03.12更新日:2025.09.25
-


雇用契約を更新しない場合の正当な理由とは?伝え方・通知方法も紹介!
人事・労務管理公開日:2020.11.18更新日:2025.10.09
-


社会保険適用拡大とは?2024年10月の法改正や今後の動向、50人以下の企業の対応を解説
人事・労務管理公開日:2022.04.14更新日:2025.10.09
-


健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届とは?手続きの流れや注意点
人事・労務管理公開日:2022.01.17更新日:2025.11.21
-


同一労働同一賃金で中小企業が受ける影響や対応しない場合のリスクを解説
人事・労務管理公開日:2022.01.22更新日:2025.08.26
労働条件の関連記事
-


労働条件変更同意書の記載事項や記入のポイントについて
人事・労務管理公開日:2022.01.23更新日:2025.09.29
-


労働条件の明示とは?労働条件の明示義務や法改正による明示ルールの変更内容を解説
人事・労務管理公開日:2022.01.22更新日:2025.09.29
労務管理の関連記事
-


2025年10月施行!柔軟な働き方を実現するための措置の内容と企業の対応事項を解説
人事・労務管理公開日:2025.10.07更新日:2025.10.09
-


育児時短就業給付はいくら支給?対象者・申請方法と注意点を解説
人事・労務管理公開日:2025.10.06更新日:2025.10.02
-


パパ・ママ育休プラスとは?条件や給付金、出生時育児休業との違いを解説
人事・労務管理公開日:2025.10.03更新日:2025.10.02














