年末調整の障害者控除とは?対象範囲やいくら戻るのか、書類の書き方を解説
年末調整や確定申告で「障害者控除」を申請することで、所得税や住民税の納付額を減少させることができます。この障害者控除とは、納税者自身、同一生計配偶者、扶養親族が障害者である場合に受けられる所得控除のことです。
本記事では、障害者控除の基礎概要や対象範囲、記入方法について解説します。最後までご覧になれば障害者控除の理解が深まるため、年末調整でスムーズに申請できるはずです。
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目次
1. 年末調整の障害者控除とは
年末調整の障害者控除とは、納税者自身、同一生計配偶者、扶養親族が障害者である場合に受けられる所得控除のことです。所得控除を受けることにより、所得税や住民税の納付額が減少します。
なお「同一生計配偶者」は国税庁で以下のように定められています。
「同一生計配偶者とは、納税者の配偶者でその納税者と生計を一にするもののうち、合計所得金額が48万円以下である人」
障害者控除の扶養親族には年齢制限が設けられておらず、16歳未満の扶養親族でも障害者控除を受けられます。また、この障害者控除の区分は「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の3つに分けられています。それぞれ対象となる範囲や控除される金額が異なるため、事前に確認しておきましょう。
2. 年末調整の障害者控除の対象範囲
年末調整の障害者控除を受けられる対象範囲をみていきましょう。障害者控除の対象となる範囲は以下をご参考ください。
|
以上のいずれかに当てはまる人が障害者控除の対象になります。
2-1. 障害者手帳がなくても障害者控除は受けられる?
障害者控除の対象となるのは、原則として障害者手帳を持っている方に限られます。
つまり、納税者自身が要介護状態であっても、障害者手帳等が交付されていなければ対象になりません。障害者控除を適用させたい場合は、まずは障害者手帳の手続きからおこないましょう。
3. 年末調整の障害者控除で控除額はいくら戻る?
年末調整の障害者控除で受けられる金額は障害の等級によって異なります。それぞれの金額は下記の表をご覧ください。
区分 | 控除額(所得税) |
一般の障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
障害が重いと判断された場合は控除額も増加していきます。なお、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族で、納税者自身、配偶者、生計を一にする親族のいずれかと同居している場合は、同居特別障害者に該当します。
このように、年末調整をする際には、従業員がどの控除の対象者となるかを確認する必要があります。対象者の確認方法としては、従業員から提出された控除の申請書の内容を確認します。そのため、年末調整の担当者は、控除の種類や書類の記載方法を確認しておく必要があるでしょう。当サイトでは、年末調整に適用される控除があいまいだという方に向け、年末調整の控除の種類や申請方法をまとめた資料を無料で配布しています。年末調整業務に不安のある方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードして、ご確認ください。
4. 年末調整での障害者控除の書き方
最後に、年末調整での障害者控除の書き方を解説します。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」における「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の箇所に記入します。
4-1. 本人が障害者控除を受ける場合
まずは「障害者」にチェックを入れます。次に「本人・一般の障害者」もしくは「本人・特別障害者」に丸をつけます。最後に「障害者又は勤労学生の内容」の箇所に障害者手帳の交付日時と障害の等級を記入します。
特に、「特別障害者」のチェックを入れる場合は、その障害の程度が重いことを証明する必要がありますので、該当する書類を忘れずに添付してください。
申請後には、控除額が正確に適用されるよう、確認を怠らないようにしましょう。
この手続きによって、適切な控除が受けられることが期待できますので、丁寧に記入し、必要書類を揃えることが大切です。
4-2. 配偶者が障害者控除を受ける場合
まずは「障害者」にチェックを入れます。続いて「同一生計配偶者・一般の障害者」もしくは「同一生計配偶者・同居特別障害者(同居している場合)」に丸をつけます。
最後に「障害者又は勤労学生の内容」の箇所に以下の内容を記載します。
- 配偶者の氏名(同居特別障害者の場合は同居中だとわかるように記載)
- 障害者手帳の交付日時
- 障害の等級
なお、同居していない場合に特別障害者を申請する方法は以下をご覧ください。
- 「障害者」にチェックを入れる
- 「同一生計配偶者・特別障害者」に丸をつける
- 「障害者又は勤労学生の内容」の箇所に「配偶者の氏名(別居)」「障害者手帳の交付日時」「障害の等級」を記載する
4-3. 親や子供の扶養家族が障害者控除を受ける場合
まずは「障害者」にチェックを入れます。次に「扶養家族・一般の障害者」もしくは「扶養家族・同居特別障害者(同居している場合)」に丸をつけ、横に扶養家族の人数を記入します。
最後に「障害者又は勤労学生の内容」の箇所に以下の内容を記載します。
- 控除を受ける扶養家族の氏名(同居特別障害者の場合は同居中だとわかるように記載)
- 障害者手帳の交付日時
- 障害の等級
同居していない場合に特別障害者を申請する方法は以下をご覧ください。
- 「障害者」にチェックを入れる
- 「扶養家族・特別障害者」に丸をつけ、横に扶養家族の人数を記入する
- 「障害者又は勤労学生の内容」の箇所に「控除を受ける扶養家族の氏名(別居)」「障害者手帳の交付日時」「障害の等級」を記載する
親や子供が障害者控除の対象となる場合、同様の手続きを行います。しかし、親や子供に関しては、年齢や生計を一にする条件が異なる点に留意が必要です。特に、親や子供の場合、63歳未満であることが控除を受ける際の重要な要素となります。これらの基準を確認しながら、適切に申請が行えるよう心掛けましょう。
5.年末調整での障害者控除は申請しないと適用されない
所得控除が受けられる障害者控除ですが、納税者が自ら申請しないと適用されません。障害者控除を受けなければ必要以上に納税することになるため、障害者控除の対象である場合は年末調整のときに必ず申請しましょう。
ただし、年末調整で障害者控除を申請しない場合でも、自身の所得税を確定申告すれば障害者控除が適用されます。会社員と個人事業主それぞれの申請方法は下記のとおりです。
5-1. 会社員の場合
会社員の場合、年末調整の手続きでは、勤務先に必要書類を提出することが重要です。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に障害者控除の対象者やその情報を正確に記入することが求められます。正しく記入することで、必要な控除が受けられ、課税対象所得が軽減します。もし年末調整で申請し忘れた場合でも安心してください。その場合は、確定申告を通じて障害者控除を適用することが可能です。
確定申告の際は、必要な証明書類、例えば障害者手帳や医師の診断書を準備し、正確な情報を記載して提出することが大切です。これにより、適切な控除を受けることができ、税負担を軽減することが期待できます。
5-2. 個人事業主の場合
個人事業主は基本的に年末調整をおこなう必要がありません。そのため、確定申告のときに障害者控除を申請しましょう。確定申告書に対象者の氏名や障害の状況などを記入します。
また、申請する際には障害者手帳のコピーや医師の診断書など必要な書類を添付することが求められます。これにより、自身や扶養親族が障害者である場合に、適切な控除を受けることが可能となります。確定申告を通じて、税負担を軽減するためにも、正確に手続きを行うことが重要です。万が一、必要な書類を揃え忘れた場合、控除の対象から外れてしまう可能性があるため、注意が必要です。
このように、個人事業主の場合は事前の準備が大切ですので、あらかじめ十分に確認を行っておきましょう。
5-3. 年末調整での障害者控除の対応を忘れた場合は?
年末調整での障害者控除の対応を忘れた場合でも、確定申告を利用することで修正が可能です。
正しい情報をもとに申告し直すことで、障害者控除を受けられ、過剰に支払った所得税が還付されます。確定申告は毎年2月16日から3月15日まで行われますが、還付申告は2月16日以前でも受け付けられます。また、年末調整の書類に記入し忘れた場合でも、会社が前年のデータを基に対応していることもあるため、源泉徴収票を確認し、控除の有無について会社に問い合わせることをおすすめします。
6. 障害者控除の対象者は年末調整で所得控除を受けよう
ここまで、障害者控除の基礎概要や対象範囲、記入方法について解説しました。年末調整の障害者控除は、納税者自身、同一生計配偶者、扶養親族が障害者である場合に受けられる所得控除であり、所得税や住民税の納付額を減少させることが可能です。
対象範囲や控除される金額は細かく分類されているため、本記事の内容をぜひご参考ください。もし障害者控除の対象者であっても、年末調整か確定申告で申請しなければ適用されません。
対象者であれば本記事で申請方法を理解した上で、年末調整か確定申告で必ず申請しましょう。
▼その他の年末調整における控除について知りたい方はこちら
・年末調整の社会保険料控除とは?対象となる保険の種類まとめ
・年末調整における「ひとり親控除」の対象や寡婦控除の違い
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