年末調整を2か所でしてしまった場合の対応について解説
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.9.13
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近年は、副業やパート・アルバイトの掛け持ちなどで、2箇所の勤務先から給与を受け取っているという人も増加している傾向にあります。
通常は、2箇所から給与を受け取っている場合、年末調整だけではなく、確定申告の処理も必要です。そのため、年末調整書類として提出する扶養控除申告書を、2箇所の勤務先に提出してはいけません。今回は、年末調整を2箇所の会社で行ってしまった場合の対応方法について解説します。
1. 年末調整を2箇所でしてしまったらどうなるか
年末調整を2箇所でしてしまった場合、どのような対応となるのでしょうか。所得税の算出を行うために必要な年末調整ですが、基本的には1箇所の勤務先のみの提出となります。
2箇所に同時に提出してしまった場合、一方の勤務先に事情を説明し、扶養控除申告書の取り下げを行ってもらう必要があります。
2. 2箇所分の正しい所得税の算出を行う場合にはどうするか
では、1箇所の勤務先でのみ年末調整書類の提出が可能であるとするならば、所得税の算出を合算して正しく行うためにどのような方法をとればよいのでしょうか。ここでは、2箇所分の所得税を正確に算出する手順について紹介します。
- 勤務先の収入に応じて、「主たる給与」「従たる給与」の勤務先を決める
- 「主たる給与」の勤務先で年末調整、「従たる給与」の勤務先で確定申告を行う
以下、2箇所分の所得税を正確に算出する手順について説明します。
2-1. 勤務先の収入に応じて「主たる給与」「従たる給与」の勤務先を決める
2箇所から収入を受け取っている場合、どちらの給与を年末調整するのか、または確定申告する必要があるのかについては、収入の多い・少ないに応じて決めるところから始めなければなりません。
基本的には、収入が多い勤務先については「主たる給与」の勤務先、少ない勤務先を「従たる給与」の勤務先、と考えます。
メインで働いている勤務先を「主たる給与」の勤務先、副業などで働いている勤務先を「従たる給与」の勤務先とみるとわかりやすいかもしれません。
2-2. 「主たる給与」の勤務先で年末調整、「従たる給与」の勤務先で確定申告を行う
勤務先が2箇所あり、両方で受け取った給与を合算して正確な所得税の算出を行いたい場合は、年末調整で「主たる給与」の勤務先に申告します。そして、「従たる給与」の勤務先に対しては、確定申告で申告を行います。
「従たる給与」の勤務先で行う確定申告は、受け取っている収入(所得)が20万を超える場合に限り、従業員が住所地の税務署まで出向いて、指定された期日までに必ず行わなければなりません。
3. 年末調整を2箇所でしてしまった際にやり直しは可能?
従業員がうっかり年末調整を2箇所の勤務先でしてしまった際、やり直しをすることは可能なのでしょうか。厳密にいうと、やり直しは可能です。
しかし、やり直しをするのであれば、先述のとおり、従業員側で「従たる給与」の勤務先に事情を説明し、扶養控除申告書の取り下げを行うところから始める必要があります。その後、従業員側で各自確定申告をしてもらえば、正しい所得税が計算されます。
4. 年末調整を2箇所でしてしまった場合の正しい対応
年末調整を2箇所の勤務先でしてしまったという場合には、通常、「従たる給与」の勤務先での確定申告をする必要が生じます。
ここからは、年末調整を2箇所でしてしまった場合の正しい対応方法について紹介します。
4-1. 年末調整を2箇所でしてしまった場合の対応法
年末調整書類を2箇所でしてしまった場合の対応法は、「従たる給与」の勤務先で受けっとった収入(所得)が20万円未満か、もしくは20万円超えかにより異なります。
以下、それぞれの対応法について説明します。
1. 「従たる給与」の勤務先で受け取った収入(所得)が20万円未満の場合
「従たる給与」の勤務先での収入(所得)が20万円未満であり、なおかつ「主たる給与」の勤務先で扶養控除申告書を提出し、年末調整を行っている場合は別途確定申告を行う必要はありません。
もし、「従たる給与」の勤務先に扶養控除申告書が提出されてしまっている場合には、期限までに取り下げておきましょう。
なお、確定申告をしない場合でも、住民税については別途申告が必要となるので忘れずに申告を行いましょう。
2. 「従たる給与」の勤務先で受け取った収入(所得)が20万円超の場合
「従たる給与」の勤務先での収入(所得)が20万円超の場合、期限内に確定申告を行わなければなりません。
確定申告を行う際には、「主たる給与」の勤務先から受け取った「源泉徴収票」を添付し、提出しなければならないため、申請まではきちんと保管しておきましょう。確定申告は、翌年の2月16日から3月15日が申請期日となっていますので、期限内には申告するようにしましょう。
5. 確定申告を忘れてしまったらどうなるか
従業員が年末調整を2箇所で行ってしまい、なおかつ「従たる給与」の勤務先での収入(所得)についての確定申告を期限までに行わなかった場合には、ペナルティが課されることがあります。
どのようなペナルティが課されるのかについても、ここで確認しておきましょう。
- 無申告加算税の発生
- 延滞税の発生
以下、確定申告を忘れてしまった場合のペナルティについて説明します。
5-1. 無申告加算税の発生
無申告加算税は、期限である3月15日までに確定申告を行わなかった場合、追加で課されるペナルティです。基本的に、正規の税額に対し、50万円までは15%、50万円超の場合は20%の割合を掛けて計算した金額が課税されます。
なお、自主的に期限後申告をした場合には、5%の割合を掛けて計算した金額となります。
5-2. 延滞税の発生
延滞税は、確定申告の期限である3月15日までに支払うはずの税金を納めていない場合に課されるペナルティです。法で定められた納付期限翌日から実際に納付された日までの日数に応じ、利息分相当の延滞税が課される形となります。
通常、納付期限から2ヶ月を経過するまでに納付が行われた場合は低い税率で、2ヶ月を経過した場合には税率が高くなる仕組みとなっています。また、自主的に期限後申告を行った場合は、修正申告を行う日までは低い税率での計算となります。
▼企業側が負うリスクや罰則について知りたい方はこちら
・年末調整しないことによる罰則内容を詳しく紹介
・年末調整をしないとどうなる?考えられる5つのリスクを解説
6. 2箇所での年末調整は不可!間違いに気付いたら早めの対応を
今回は、年末調整を2箇所の会社で行ってしまった場合の対応を中心に紹介しました。原則、2箇所同時の年末調整は不可となっており、間違いに気付いたら早めの対応を行わなければなりません。
基本的には収入の多い「主たる給与」の勤務先では、扶養控除申告書を提出する年末調整の申請を行って問題ありませんが、収入の少ない「従たる給与」の勤務先では、確定申告を行う必要があります。
従業員が「従たる給与」の勤務先で受け取った額が20万円を超える場合には、必ず確定申告を行うように伝えるとよいでしょう。
人事労務管理のペーパーレス化には、以下のメリットがあります。
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・システム上で年末調整の書類提出ができ、提出漏れや確認にかかる工数を削減できる
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