キャッシュフロー経営とは?メリット・デメリットを解説
更新日: 2024.1.16
公開日: 2023.3.23
jinjer Blog 編集部
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1. キャッシュフロー経営とは
キャッシュフロー経営とは、現金を重視した経営手法です。発生した利益と手元現金の把握を目的としており、キャッシュフローの最大化を目指します。
たとえば、1995年にキャノンの社長に就任した御手洗氏は、米国で取り組んだキャッシュフロー経営を導入しました。不採算部門の閉鎖やセル生産方式・カンバン方式の導入などにより大幅なコスト削減を実現。7年間で累計3,000億円以上のキャッシュを創出しています。
出典:「【コラム】東芝は見習うべき!? キヤノンの「キャッシュフロー経営」成功事例」|KAIKEI FAN
1-1. 売上重視・利益重視との違い
売上を重視した経営では、商品の販売などにより売掛金が発生したタイミングで収益を計上します。ただし、売掛金の回収までは入金されないため資金が増えることはありません。
その結果「収益はあるのに現金が無い」状態となり、最悪の場合には黒字倒産となる可能性もあります。
さらに利益重視の経営では、仕入れや製造コストなどを削減することで過剰在庫を抱えるリスクが考えられるでしょう。投入資金を回収できない場合、運転資金が足りなくなり資金ショートを起こす恐れがあります。
一方、キャッシュフロー経営では債権回収時や仕入れ時ごとに経営判断を行うため、キャッシュフローの動きや現金不足に気づきやすく、安定した事業継続を図れます。倒産リスクを避けるためにも、キャッシュを十分に確保した経営が必須といえるでしょう。
1-2. キャッシュフローのタイプは3種類
キャッシュフローには営業・投資・財務の3種類があります。それぞれについて説明します。
① 営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローは、営業活動による現金の流れを表すものです。営業活動には仕入れ代金や人件費が含まれ、販売代金などの回収によりキャッシュの流入・流出が生じます。営業キャッシュフローの金額が大きいほどプラスとなり、事業が好調な証拠です。
② 投資キャッシュフロー
投資キャッシュフローは、投資によって生じたキャッシュの増減を表すものです。投資活動は固定資産や設備が対象となり、購入や売却によってキャッシュが増減します。
投資キャッシュフローはマイナスであるのが一般的です。少ないほどよいとされていますが、車両や事務所など円滑な営業活動への投資であるためゼロになることはありません。
③ 財務キャッシュフロー
財務キャッシュフローは、営業活動や投資活動維持のための資金調達や借入金の返済を把握するものです。借入金や株式・社債発行などによる資金調達がプラス、借入金返済や配当金の支払いなどがマイナスとなります。
どちらが多いほうがよいとは一概にいえず、経営状態や他のキャッシュフローとのバランスを見て判断します。
2. キャッシュフロー経営のメリット
キャッシュフロー経営では、どのようなメリットが得られるのでしょうか。考えられる3つのメリットについて解説します。
2-1. 経営の安定化が図れる
キャッシュフロー経営は、経営の安定化が図れるメリットがあります。事業継続のためには、仕入れ・給与・税金などの支払いが不可欠です。
手元に資金を十分に備えておくことは、経営に必要な運転資金の確保につながります。たとえ、売掛金が回収できないなど不測の事態が起こったとしても、資金ショートのリスクを軽減できるでしょう。
2-2. 信用力が向上する
キャッシュフロー経営によって十分な資金が確保でき、資金ショートのリスクも軽減されることで対外的な信用力が高まります。たとえば、設備投資や事業拡大などの際にまとまった資金調達が必要になることもあるでしょう。資金調達には金融機関からの融資などが考えられます。
その際、審査が必要になりますが、キャッシュフロー経営ではキャッシュフロー計画書や資金繰り表を作成するため、根拠のある借り入れの必要性を説明できます。また、支払いが滞るリスクも低いため取引先からの信頼獲得にもつながる点もメリットです。
2-3. 企業の成長を促す
キャッシュフロー経営は、企業の成長に必要な資金確保にもつながります。新規事業の立ち上げや事業拡大による設備投資、人材確保などには多額の資金が必要です。
資金が乏しければ選択肢は少なくなりますが、投入できる資金が潤沢であれば自由度の高い経営施策を実行できます。企業の成長機会を失うことなく、重要な意思決定を行えるでしょう。
3. キャッシュフロー経営のデメリット
キャッシュフロー経営のメリットをお伝えしましたが、デメリットも確認しておきましょう。
3-1. 収益面で機会損失の可能性がある
キャッシュフロー経営はキャッシュフロー内で活動するため、収益面で機会損失の可能性があります。例えば、銀行からの融資で資本を増やす資金調達では、レバレッジ効果(少額で大きなリターンを得ること)が期待できます。しかし、キャッシュフロー経営ではリスクを負ってまで借入はしないため、収益を得る機会を逃していると考えられるでしょう。
安定経営につながる点はメリットですが、堅実すぎると企業成長のチャンスを逃がしてしまうかもしれません。また、インフレの状況下では現金の価値が下がる点もデメリットといえるでしょう。
3-2. 株主から配当を求められる場合がある
資金を確保していることで、株主から配当圧力を受ける可能性があります。株式会社の多くは利益を株主に配当として還元しますが、キャッシュフロー経営では現金を配当せずに備えておくケースがあります。
しかし、株主には利益配当請求権があるため、株主総会で配当を決議されれば会社は従わなければなりません。
4. キャッシュフロー経営を重視すべき企業
安定性や信用力の向上が期待できるキャッシュフロー経営ですが、どのような企業が取り入れるべきなのでしょうか。ここでは、キャッシュフロー経営を重視すべき企業をお伝えします。
4-1. スタートアップ企業
実績が乏しく、運転資金も十分とはいえないスタートアップ企業こそ、キャッシュフロー経営を重視すべきといえます。
創業間もないことから信用力も低いため、金融機関などの融資審査も通りにくいでしょう。キャッシュフローを管理・コントロールすることで安定経営の基盤を作れ、黒字倒産を回避できます。
4-2. 掛取引が多い・資金繰りが厳しい企業
掛取引が多く、売上の発生から入金までに時間がかかる企業はキャッシュフロー経営を導入するとよいでしょう。売掛金の回収が遅くなると帳簿と現金額が乖離し、キャッシュフロー悪化により資金ショートのリスクが高まります。
売掛金の回収はできるだけ早いほうが望ましく、反対に買掛金の支払いは遅くするのが理想です。会社に資金を長く留まらせることでキャッシュフローの改善につながります。
また、資金繰りが厳しい企業は、キャッシュフロー経営で現金の把握・コントロールをすることにより資金不足を回避できます。
4-3. 事業拡大を目指している企業
事業拡大を目指し、設備投資などを視野に入れている企業もキャッシュフロー経営がおすすめです。設備投資をしてから収益に反映されるまでは時間がかかります。その間にも運転資金は必要となり、資金繰りが悪化することも考えられるでしょう。
キャッシュフロー経営を意識することで、多額の資金を投入しても資金ショートのリスクを削減できます。ただし、設備投資などを行う際には、採算性やキャッシュフローの回収期間を考慮することが大切です。
5. キャッシュフロー経営の進め方のコツ
キャッシュフロー経営を導入するには現状を把握したうえで、キャッシュフローの改善が必要です。ここからは、キャッシュフロー経営の進め方について解説します。
5-1. 現在のキャッシュフローを把握し、目標を立てる
まずは、自社における現在のキャッシュフローを把握しましょう。キャッシュフロー計算書・資金繰り表を作成して現金の流れを確認します。前述した営業・投資・財務のキャッシュフロー過去3期分の推移をしっかりと分析することが大切です。
現状の把握ができたら、目標とするキャッシュフロー計画書を作成します。月別の計画を展開し、検証しながら改善策を立案していきましょう。なお、中小企業にキャッシュフロー計算書の作成義務はありませんが、キャッシュフロー経営を行う際には不可欠となります。
5-2. キャッシュフローを改善する
目標となるキャッシュフロー計画書を作成したら、毎月検証を繰り返しながらキャッシュフローの改善をします。次の点を意識して進めるとよいでしょう。
- 売掛金回収の早期化・管理徹底
- 在庫・経費削減
- クレジットカードの活用
キャッシュフロー改善には「入金サイクルを短く、支払いサイクルは長く」が理想です。取引先との交渉が必要ですが試してみましょう。
また、売掛金の回収は管理を徹底させ、期日までに入金されていない場合はすぐに督促することが大切です。時間が経つほど回収が難しくなります。
在庫や経費の削減は「使えない資金」を減らし、支出を抑えることでキャッシュフローの改善につながります。その他、支払いサイトを長くするためにクレジットカードの活用も1つの方法です。
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