残存価額とは何か?減価償却における残存価額を解説
更新日: 2024.7.2
公開日: 2022.7.6
jinjer Blog 編集部
残存価額とは何か、聞き慣れない言葉に違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。 残存価額とは、減価償却をする際に使われる会計用語のひとつで、耐用年数を過ぎた資産に残る価値のことを指しています。ただ、平成19年に制度改正が実施されたことで、残存価額は残存簿価へと名称変更されました。名称変更にともない計算方法も変化したため、 制度改正前に取得した資産の処理方法について頭を悩ませる経理担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、減価償却における残存価額について詳しく解説していきます。 記事内では、例を用いて具体的な計算方法もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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1. 残存価額とは何か
残存価額とは、リース資産などの法定耐用年数が過ぎた後に残る資産価値のことを指しています。時間が経つにつれて価値が減少していく資産は、資産の種類によって使用可能期間が決められています。その使用可能期間のことを法定耐用年数と呼びます。
法定耐用年数を経過した資産は 、資産としての価値が税法上なくなってしまうわけですが、実物はまだ存在しています。そういった状況を加味して、帳簿上でも資産の価値が残るように、0%〜10%の残存価格が規定されていました。 特許権、商標権、ソフトウェア、漁業権などの無形固定資産については残存価格が0%と定められ、店舗、建物、産業機械、 車両、工具、などの有形固定資産については残存価格が10%と定められていました。
特許権やソフトウェアなどの無形固定資産については期限が切れれば使い道が無くなりますので、使用価値としてもゼロになることが分かります。 ただし、建物や店舗であれば、たとえ耐用年数が過ぎたとしても実物は残っており、改装、リフォームすればまた使えるようになりますし、価値を感じてもらえれば他人に譲ることもできるでしょう。
また、車両や産業機械においても、耐用年数を経過していたとしても、メンテナンスをしていれば中古品として再販して、利益を得られる可能性もあります。そのため、平成19年の制度改正前までは、 有形固定資産の残存価格について一律で10%の価値が残ると定められていました。
関連記事:ソフトウェアは減価償却できる?区分から耐用年数まで解説
2. 減価償却における残存価額とは
平成19年に制度改正がおこなわれ、その中でも減価償却制度の改正に注目が集まりました。 なぜなら、残存価額が撤廃され新しく、残存簿価が誕生したからです。平成18年以前の減価償却制度では残存価額が10%に設定されていたため、 減価償却できる割合は最高でも資産の95%までが限界でした。
ですが、制度改正により残存簿価1円になるまで減価償却ができるようになりました。つまり、 減価償却できる割合が100%に到達したというわけです。 減価償却制度の改正に至った背景としては、海外における国際競争力の低下が懸念されていたことがあげられます。
資産の残り5%を減価償却できないことが、企業の設備投資への足かせになっているのではと指摘されていたのです。 当時の状況としては、アメリカ・イギリス・ドイツ・ フランス・韓国において、資産の100%の減価償却が認められていました。資産の 5%減価償却ができないと、どのような違いが出てくるのかを解説します。
例えば、日本の会社が1億円の機会を取得したとします。それまでの日本の制度では95%までしか減価償却できませんので5%の500万円は帳簿上に残ってしまいます。一方、アメリカの会社が同じ1億円の機械を取得すると、100%減価償却ができますので帳簿上に残る価格はゼロ円になります。法人税を仮に50%とすると日本の会社は250万円の税金を納めることになりますが、アメリカの会社は法人税を1円も払うことはありません。
国全体として考えれば、この差が膨大なものになることが予想できます。日本の会社が技術力以外のところで負担を強いられていたため、国際競争力の低下が懸念されていたのです。 平成19年の制度改正において、10%の残存価額を廃止して残存簿価が1円に設定されたので、日本の減価償却制度でも資産の100%を減価償却できるようになりました。
3. 残存価額・残存簿価の計算方法
平成19年4月1日前後で取得した資産の減価償却の計算をそれぞれ解説していきます。
まずは平成19年4月1日より前に購入した資産についての計算方法です。 こちらの資産について、まずは10%の残存価額を超えて減価償却の限度額である資産の95%まで償却をおこない、残りの5%については95%の減価償却が完了した後の5年間で残存簿価1円を残す形で均等に減価償却をおこないます。計算方法の例として、取得価額1,000万円・法定耐用年数5年の資産でシミュレーションをしてみましょう。
関連記事:減価償却費の計算方法とは?「定率法・定額法」など計算方法を詳しく解説
3-1. 旧定額法・償却率0.200で計算した場合
- 1年目:180万円・・・1,000万円×0.9(残存価額)×0.2(償却率)
- 2〜5年目:180万円・・・1,000万円×0.9(残存価額)×0.2(償却率)
- 5年目終了時の残存価額は100万円
- 6年目:50万円・・・1,000万円×0.05(償却可能限度額95%)
- 7〜10年目:10万円・・・50万円×0.2
- 11年目:9万9,999円・・・50万円×0.2-1円
3-2. 旧定率法・償却率0.369で計算した場合
- 1年目:369万円・・・1,000万円×0.369(償却率)
- 2〜5年目:・・・(1,000万円-前年までの累計償却額)×0.369(償却率)
- 5年目終了時の残存価額は100万333円
- 6年目:36万9,125円・・・(1,000万円-前年までの累計償却額)×0.369(償却率)=36万9,125円
- 7年目:13万0,875円・・・償却可能限度額950万円になるように調整
- 8〜11年目:100,000・・・50万円×0.2
- 12年目:9万9,999円・・・50万円×0.2-1円
続いて、平成19年4月1日以降に購入した資産についての計算方法です。こちらの資産については、残存簿価1円を残して通常の減価償却をおこないます。計算方法の例として、上記と同様に取得価額1,000万円・法定耐用年数5年の資産でシミュレーションをしてみましょう。
3-3. 定額法・償却率0.200で計算した場合
- 1〜4年目:200万円・・・1,000万円×0.2(償却率)
- 5年目:199万9,999円・・・1,000万円×0.2(償却率)-1円
3-4. 定率法・償却率0.400・改定償却率0.500・保証率0.108で計算した場合
- 1年目:400万円・・・1,000万円×0.4(償却率)=400万円
- 2〜3年目:・・・(1,000万円-前年までの累計償却額)×0.4
- 4年目は86万4,000円になり保証額108万円より小さくなるため償却率を改定
- 4年目:108万円・・・(1,000万円-前年までの累計償却額)×0.5
- 5年目:107万9,999円・・・108万円-1円
4. 計算方法を把握して減価償却をスムーズに進めよう
残存価額について解説しました。平成19年4月1日前後で減価償却の計算方法が煩雑化しておりますが、一つずつ丁寧に進めることで確実に会計処理を進めることができます。本記事を参考に適切な会計処理の実現につなげましょう。
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