評価制引当金とは?基礎知識と具体的な処理・計算方法を紹介
更新日: 2024.7.19
公開日: 2023.4.14
jinjer Blog 編集部
会社を倒産させないためには、将来の支出や損失を予測し、リスクに備えておくことが欠かせません。順調に経営できることに越したことはありませんが、時には取引先の倒産などで債権が回収できないなどのトラブルが発生することも十分考えられます。そういった事態に備えるために重要なのが評価性引当金です。
決算書などで勘定科目を目にしたことはあっても、その詳細を知らないという方も多いのではないでしょうか。ここでは、評価引当金について、引当金の基礎知識や仕訳方法を合わせて解説します。
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1. 引当金とは
引当金とは、将来的に発生することが予測される支出や損失に備えて、その金額を予測して当期の費用・損失として経費処理する勘定科目です。「確定していない負債を計上する」というのは一見適切ではないように思えますが、期間損益計算をより適正化するために重要な役割を果たします。
ただし、引当金は確定していない負債なので、一部を除いて税務上で損金に算入することはできません。また、引当金はどのような費用でも計上できるわけではなく、上場企業は商法、中小企業は商法と法人税法にのっとって引当金を設定しなければいけない点にも注意が必要です。
●引当金に計上するための要件
引当金を計上するためには以下の4つの要件を全て満たしている必要があります。
|
1-1. 引当金は「評価性引当金」と「負債性引当金」に分けられる
引当金は「評価性引当金」と「負債性引当金」の2つに大別されます。将来発生しうる「損失」に備えるものが評価性引当金、将来の費用(支出)に備えるものが負債性引当金です。
評価性引当金とは
将来に発生しうる損失に備えるために資産から控除される引当金です。貸借対照表では、資産の運用形態を示す欄にマイナスの値で表示されます。評価性引当金に分類されるものには「貸倒引当金」「投資損失引当金」などがあります。
●貸倒引当金とは
将来的に発生するおそれがある貸し倒しに備えて、損失金額を予測し計上するマイナスの資産です。 ●投資損失引当金とは 子会社などに対して行った投資にかかわる損失に備えて計上する勘定科目です。「減損処理の対象ではないものの株式の実質価額が低下している」または「回復の可能性を見込んで現存処理を行わなかったがリスクに備える必要がある」などのケースでは投資損失引当金として計上できます。 ただし、投資損失引当金を計上した場合は、計上基準を重要な会計方針に記載しなければいけません。また、税務上の損金として算入できない点にも注意が必要です。 |
関連記事:貸倒引当金の計算方法を一括評価・個別評価それぞれ徹底解説
負債性引当金とは
負債性引当金とは、将来に発生する支出や費用に備えるために計上する引当金です。負債引当金は、評価性引当金よりも数多くの勘定科目があり、以下のように負債性の有無で分類されています。
負債性のある負債性引当金 | 負債性のない負債性引当金 |
賞与引当金 | 修繕引当金 |
役員賞与引当金 | 損害補償損失引当金 |
売上割戻引当金 | 債務保証損失引当金 |
製品保証引当金 | – |
特別修繕引当金 | – |
完成工事補償引当金 | – |
工事損失引当金 | – |
債務保証損失引当金 | – |
1-2. 引当金は基本的に損金に算入されない
引当金は将来の損失リスクに備えるうえで重要ではあるものの、確定している債務ではありません。そのため、恣意的な計上を避け課税の公平性を保つために、税法においては基本的に損金として算入することができなくなっています。
ただし、「資本金1億円以下で大企業の完全子会社ではない中小法人」「青色申告をしている個人事業主」「金融機関」などは貸倒引当金の損金算入が可能です。ただし、貸倒引当金以外を計上している場合は、法人税の申告書を調整しなければいけないほか、確定申告書への明細貼付が必要です。
●税制改正で廃止された「返品調整引当金」とは
返品調整引当金とは、納品先で売れ残った商品(医薬品や本・CDなど)の返品に備えて計上する勘定科目であり、税務上でも損金への算入が認められていました。しかし、平成30年度の税制改正で廃止され、現在ではあらかじめ返品される分を考慮して売上から直接控除する方式へと変更されています。 なお、返品調整引当金の廃止にあたって2030年3月31日まで10年間の経過措置が設けられており、旧法人税法による損金算入限度額から1年ごとに1割ずつ限度額が減少するものの損金算入が可能です。 |
2. 引当金を計上するメリット
引当金を計上するメリットとしてまず挙げられるのが、損益をより正確に計算できること。引当金を計上しない場合、貸し倒れや従業員の退職金、オフィスの修繕費などが発生すると、利益が大幅に減少するおそれがあります。そのような状態では、正確な損益計算が難しくなるだけでなく、取引先、投資家、金融機関も正しい経営判断ができません。
また、基本的に引当金は損金算入ができず節税効果を見込めませんが、中小企業や個人事業主などでは貸倒引当金は損金算入が可能です。そのため、初年度には大きな節税効果を見込めるでしょう。
関連記事:貸倒引当金の計上で損金算入によって期待できる節税効果とは
3. 評価性引当金(貸倒引当金)の仕訳方法
ここでは評価性引当金の仕訳について、比較的発生しやすい貸倒引当金を例に解説します。
3-1. 貸倒引当金の対象となる債権
貸し倒れが発生した際の備えとなる貸倒引当金ですが、全ての債権が計上できるわけではありません。まずは、貸倒引当金の対象となる主な債権を紹介します。
売上債権
商品の売買で一般的な売掛金や受取手形などがこれにあたります。回収を約束していたにもかかわらず、取引先の経営悪化や倒産によって回収が難しくなることが考える債権として、貸倒引当金への計上が可能です。
貸付金や立替金
事業の必要経費として生じた企業や個人を対象にした貸し付けは、勘定科目としては貸付金や立替金として仕訳をします。本来回収されるべき債権ですが、貸付先の経営や家計の悪化、倒産などによって回収が難しくなる恐れがあるとして貸倒引当金の対象となります。
未収金
加工費、請負金、益金として算入された損害倍書金など、事業を営むうえで生じた債権も貸倒引当金として計上できます。ただし、未収の預貯金利子や配当などは対象となりません。
3-2. 評価性引当金(貸倒引当金)の仕訳
貸倒引当金を仕訳する方法は、主に「洗替法(あらいがえほう)」と「差額補充法」の2つです。どちらの方法で計上しても貸倒引当金の額は変わりませんが、洗替法は中小企業、差額補充法は上場企業が用いるのが一般的とされています。
では、前期末に10万円の貸倒引当金を計上し、当期は12万円の貸倒引当金を計上するケースで、それぞれの仕訳法についてみていきましょう。
前期末に10万円の貸倒引当金を計上する
借方 | 貸方 | ||
貸倒引当金繰入 | 100,000円 | 貸倒引当金 | 100,000円 |
※評価性引当金(貸倒引当金)を処理する際は、賃借対照表の「資産の部」にマイナスとして記入します。
洗替法
洗替法は、前期分の貸倒引当金の総額を戻し入れ、新たに見積もった金額を計上する方法です。初年度の貸倒引当金を2年目に戻し入れるため、10万円分の収益が発生したことになります。
借方 | 貸方 | ||
貸倒引当金 | 100,000円 | 貸倒引当金戻入 | 100,000円 |
貸倒引当金繰入 | 120,000円 | 貸倒引当金 | 120,000円 |
差額補充法
差額補充法は、前期に計上した貸倒引当金と、当期に設定する貸倒引当金の差額を計上する方法です。今回のケースでは、前期末の引当金10万円と当期の引当金12万円の差額である2万円分を計上します。
借方 | 貸方 | ||
貸倒引当金繰入 | 20,000円 | 貸倒引当金 | 20,000円 |
4. 評価性引当金の正しい知識を持って、将来発生しうる損失を把握しよう
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