年俸制はボーナスなし??税金や社会保険料なども解説
更新日: 2025.8.4 公開日: 2025.4.11 jinjer Blog 編集部

年俸制とは、従業員の1年間の報酬額をあらかじめ決めて支給するという給与の支払い方法です。ここで迷ってしまうのが、「年俸制でもボーナスを支給しなければいけないのか」ということではないでしょうか。
ボーナスは企業の業績や従業員の評価によって決まるため、原則的に支給義務はありません。しかし、契約によっては支給義務が発生するケースもあります。従業員との金銭的なトラブルを防ぐために、年俸制におけるボーナスの取扱いについて理解しておきましょう。
本記事では、年俸制におけるボーナスについて支給の義務や注意点、税金や社会保険料の取扱いについて解説しています。年俸制でのボーナスについて知っておくべき情報を網羅的にまとめているので、ぜひ最後までお読みください。
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1.年俸制とは?


年俸制とは、従業員の1年間の報酬額をあらかじめ決めて契約し、月ごとにその年俸を分割して支払う給与制度です。
年俸には基本給だけでなく、賞与や手当を含める場合もあります。特に、専門職や管理職などの成果を重視する職種で採用されることが多く、能力や業績に応じた報酬体系を実現できるのが特徴です。
ただし、導入時には契約内容の明確化や労働基準法への適合などに注意が必要です。年俸制はすべての企業に適しているわけではないため、自社の人事制度との整合性を確認して導入を検討することが重要です。
1-1. 年俸制の決め方
年俸制の報酬額は、基本的に従業員の役職や業績、職務内容などをもとに個別に設定されます。業績の評価基準は、過去の成果やスキル、将来の貢献度などを加味することが一般的です。また、企業によっては、業界の相場や同職種の水準を参考にするケースもあります。
年俸を決める際には賞与分を含めることがあるかもしれませんが、含む場合はその内訳をしっかり明示すること重要です。例えば、「年俸600万円のうち、賞与分として120万円を含む」というように明確に記載をしましょう。また、契約期間や見直し時期を明示しておくことも重要です。
年俸制には法の規定はありませんが、納得感のある報酬にすることで、従業員のモチベーションを維持しやすくなります。
1-2. 年俸制の給与の支払い方
年俸制の給与の支払い方は、年俸額を12分割または14分割し、毎月定額で支払うというのが一般的です。例えば、年俸600万円を12分割する場合、月額50万円が毎月支給されるという形式です。一方、14分割方式の場合は、毎月の給与に加えて、賞与として夏・冬に1か月分ずつ支給するパターンもあります。
給与の支払いでどの分割方法を採用する場合でも、労働契約書や就業規則に明確な記載が必要です。また、毎月の給与に賞与分が含まれる場合は、従業員が誤解しないよう丁寧な説明が欠かせません。支払い方に関するルールが曖昧だと、後々トラブルの原因になりやすいため、導入時にしっかり制度設計をしておきましょう。
1-3. 年俸制と月給制の違い
年俸制と月給制の最大の違いは、報酬の決定単位にあります。
年俸制は年間単位で報酬額を決め、その総額を月ごとに分割して支給する仕組みですが、月給制は月ごとに基本給を定めて支給する仕組みです。年俸制は成果や役割に応じた報酬設定がしやすく、管理職や専門職などの高度な職務に向いています。一方、月給制は安定性があり、評価や業績に左右されにくいのが特徴です。
また、賞与の扱いにも違いがあります。月給制では、通常の給与とは別に業績や評価に応じたボーナスが支給されますが、年俸制では賞与をあらかじめ年俸に含めるケースが多くなっています。
どちらの制度にもメリット・デメリットがあるため、職種や業務内容に応じて選択することが大切です。
2. 年俸制でもボーナス(賞与)支給の義務はない


原則として、年俸制ではボーナスの支給義務はありません。
ボーナスは、一般的に企業の業績や従業員の貢献具合などに応じて決定されます。そのため、ボーナスの有無や支給する際の条件や方法については、企業の裁量次第です。
業績が著しく悪化した場合などには、ボーナスを減額したり支給を取りやめたりしても法的には問題ありません。
しかし、年俸の一部を形式的にボーナスとする場合は支給義務があります。年俸の一部を分割して支払う形となるため、業績や貢献具合を問わず全額を支払わなければなりません。年俸にボーナスを含むかどうかで、法的な取扱いが異なる点には注意してください。
2-1. 年俸制でも残業代は支払わなければならない
年俸制でボーナスを支給しないと決めているとしても、残業代の支払わなければなりません。
労働基準法では、実労働時間が法定労働時間を超えた場合には、割増賃金(残業代)を支払う必要があると定められています。これは年俸制にも適用されるので、労働時間の管理を適切におこなって、超過勤務があった場合は賃金を別途支給しなければなりません。
ただし、年俸額にあらかじめ一定時間分の残業代を「みなし」として含めることは可能です。その場合は、「月◯時間分の残業代として◯万円を含む」など、契約書や就業規則に具体的な記載をしておく必要があります。
年俸制の内訳が曖昧だったり説明不足だったりすると、労使トラブルの原因となります。また、年俸制=残業代不要と誤解して制度を運用すると、後に未払い賃金の請求を受けるリスクがあるため注意してください。
3. 年俸制でボーナス(賞与)を支給する方法


年俸制でボーナスを支給する方法は、以下の2つです。
- 年俸に含めて支給
- 年俸とは別に支給
ボーナスの支給方法によって取扱いが異なるため、違いを理解しておきましょう。ここでは、2つの支給方法について詳しく解説していきます。
3-1. 年俸に含めて支給
年俸制でボーナス(賞与)を支給する方法として、年俸に含めて支給することが挙げられます。具体的な手順は以下のとおりです。
- 年俸額を決める
- 年俸額を13回以上で分割する
- 12回分を毎月の給与として支払う
- 残りの金額をボーナスとして支払う
例えば、年俸が560万円でボーナスが2回の場合、支給回数は14回となり毎月40万円、2回のボーナス時に40万円ずつ支払う形です。以下に具体例をいくつか紹介します。
| 年俸額 | 支払い回数 | 月給 | ボーナス |
| 500万円 | 13回 | 38万円 | 44万円 |
| 600万円 | 14回 | 42万円 | 96万円 (48万円×2回) |
| 700万円 | 15回 | 46万円 | 148万円
(約49万円×3回) |
あらかじめ支給額を決めるため、資金繰りが悪化したとしても金額は変えられません。
また、ボーナスを年俸に含めて支給すると、労働基準法上では全額が年俸とみなされます。
3-2. 年俸とは別に支給
ボーナスの支給方法として年俸とは別で渡すかたちもあり、以下の手順でおこないます。
- 年俸額を決める
- 業績や従業員の評価に応じてボーナスを支払う
具体的な支給方法としては、銀行振込か手渡しが一般的ですが、ボーナスの金額に合わせるとよいでしょう。
ボーナスを別に支給する場合、企業側に法的な支払い義務はありません。企業の業績や従業員の評価に応じて支給の有無や金額を決められるため、財務面のメリットが大きいといえます。
また、社会保険料を削減できることも利点です。ボーナスのうち、社会保険料の対象になる金額は150万円を上限とされています。超えた分は対象とならないため、年俸を調節してボーナスで150万円以上を支給すれば社会保険料を削減可能です。
4. 年俸制のボーナス(賞与)の扱い方


年俸制でボーナスを支給する際、扱い方には注意が必要です。
- 年俸制のボーナス(賞与)の税金
- 年俸制のボーナス(賞与)の社会保険料
- 年俸制のボーナス(賞与)の途中退職や解雇時の扱い
ここでは、年俸制のボーナスの扱い方について解説します。
4-1. 年俸制のボーナス(賞与)の税金
年俸制でボーナス(賞与)を支給する場合は、通常の月給と同様に所得税が課税されます。所得税や住民税などの各種税金は、給与体系にかかわらず年間の総所得額に応じるためです。
例えば、年俸に賞与分が含まれておらず、別途支給する形式であれば、その支給時に源泉所得税を計算・徴収しなければなりません。税額は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に基づいて、支給月や扶養人数などを考慮して算出します。
一方、年俸にあらかじめ賞与分を組み込んでいて、月割で支給している場合には、各月の給与として所得税を課税する形となります。ただし、源泉徴収額は1ヵ月あたりの支給額に応じて計算するため、一時的に徴収される税額に差異が出る可能性はあることを理解しておきましょう。
税務上の取り扱いに誤りがあると追徴課税のリスクもあるため、年俸制のボーナスに関する税金に関しては税理士など専門家に確認しておくと安心です。
4-2. 年俸制のボーナス(賞与)の社会保険料
年俸制のボーナスに対する社会保険料は、基本的に月給制と同じ仕組みです。社会保険料は、毎月の給与と年間のボーナス額に基づいて計算されるため、どの給与体系でも保険料率は変わりません。
ただし、高額な給与を得ている従業員は社会保険料を削減できる可能性があります。
ボーナスに対する社会保険料のうち、厚生年金保険料を計算する際に使われる標準賞与額は150万円が上限です。できるだけ年俸を減らしてボーナスでまとめて支給すれば、150万円を超えた分の厚生年金保険料を節約できます。
企業が負担する社会保険料も削減できますが、毎月の手取り額や年金額が変動するため、従業員と相談したうえで決めましょう。
4-3. 年俸制のボーナス(賞与)の途中退職や解雇時の扱い
年俸制の従業員が途中退職した場合、退職日にもよりますが基本的にボーナスを支払う必要はありません。
自己都合退職では、年俸にボーナスが含まれる契約であっても未払い分を支払う義務はないとされています。例えば、年俸600万円(賞与含む)で6月末に退職する場合、半期分の300万円を支給済みであれば追加支給は不要です。
ただし、賞与を年俸とは別に支給している場合には、退職時点で未払いの賞与があるかどうかに応じて支払い有無を判断する必要があります。支給条件(在籍要件など)が明確にされていれば、それに基づき支払わないケースも可能ですが、曖昧な契約内容だとトラブルにつながることがあるので注意してください。
解雇時には、就業規則や契約内容に従って適正に精算し、不当な未払いが発生しないようにしましょう。
5. 年俸制のボーナス(賞与)を正しく支給しよう


年俸制でのボーナスの支給方法はさまざまで、企業ごとに異なりますが、原則としてボーナスの支給義務はありません。しかし、ボーナスを年俸に含む契約の場合は、業績や従業員の評価を問わず支払う必要があります。
年俸制の従業員とのトラブルを防ぐためには、自社の給与制度や財務状況に合った支給方法を決め、就業規則や雇用契約書に記載しておくのが重要です。契約前に、ボーナスの支給方法や金額について従業員が納得するかたちで説明し、誤解がないように努めましょう。
また、年俸制やボーナスに関する制度を変更する場合、一方的に決めるのではなく従業員の意見を十分に聞くことも大切です。
透明性の高い評価制度や公平な基準を定めつつ、必要に応じて労務管理の専門家に相談しながら適切な制度設計と運用を心がけましょう。



労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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