年俸制の残業代は支払い義務がある?不要なケースや計算方法を解説
更新日: 2025.4.11
公開日: 2025.4.11
OHSUGI
「年俸制の場合、残業代がなしだと違法?」
「残業代を支払わなくて良いケースや、計算方法を知りたい」
上記のように疑問を抱えている方はいるのではないでしょうか。
労働基準法第36条(36協定)によって、原則、年俸制でも残業代を含む支払いが義務付けられているのが一般的です。
本記事では、どのような場合に年俸制の残業代の支払い義務はあるか、不要なケースなどを解説します。残業代の計算方法や支払い方も紹介するため、残業代を支払う際の参考にしてください。
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1. 36協定|年俸制は残業代の支払い義務がある
労働基準法第37条により、年俸制でも時間外労働に対し、残業代の支払いが義務付けられています。
36協定とは労働基準法第36条に基づき、1日8時間・週40時間を超える時間外や休日の労働を可能にするための労使協定です。
しかし、36協定はあくまで時間外労働を可能にするだけであり、残業代の支払い義務を免除するものではありません。会社が36協定を締結していても、時間外労働をおこなった場合、残業代を支払う必要があります。
参考:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針|厚生労働省
2. 年俸制でも残業代が出ない役職・雇用形態とは
以下の役職・雇用形態に当てはまる場合、年俸制でも残業代は出ません。
- 管理監督者の場合
- 個人事業主の場合
- 裁量労働制で勤務している場合
- 固定残業代(みなし残業代)制度がある場合
2-1. 管理監督者の場合
管理監督者は、労働基準法第41条により、残業代の支払い対象から除外されています。管理監督者とは、経営者と同じような立場で業務する人のことです。
しかし、役職名が「課長」「部長」などの管理職だけでは、除外の対象になりません。管理監督者と認められるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 経営者と一体的な立場で仕事をしている
- 労働時間・休憩・休日などに関して裁量がある
- 地位にふさわしい給料面での待遇を受けている
上記の条件を満たさない場合、年俸制であっても残業代の支払い義務があります。
参考:管理監督者の範囲(労働時間の例外)|厚生労働省OSAKA
2-2. 個人事業主の場合
個人事業主と企業が業務委託契約を結んでいる場合、残業代の支払い責務はありません。個人事業主は雇用関係ではなく委託関係になり、労働基準法の適用対象外のためです。
例えば、フリーランスライターやプログラマーなどが該当します。企業向けに成果物を納品する場合、納期さえ守れば深夜や休日に作業しても残業代は発生しません。
このように、個人事業主は労働者ではなく事業者として扱われ、労働時間ではなく業務の成果に対して報酬を受け取る関係になります。
2-3. 裁量労働制で勤務している場合
裁量労働制で勤務している場合、基本的に残業代は発生しません。実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定められた時間で働いたものとみなされます。
この制度が適用されるのは、業務の手段や時間配分を、労働者の裁量に委ねる必要がある職種です。専門業務型(研究開発や情報システム開発など)と、企画業務型(本社の企画・立案部門など)の2種類があります。
例えば、新商品開発を担当するデザイナーが、裁量労働制で1日8時間と定められている場合、11時間働いても残業代は発生しません。逆に5時間で業務を終えても、8時間分の賃金を支払うことになります。
ただしあらかじめ定められた労働時間が1日8時間・週40時間を超える場合、割増賃金を支払う必要があるため注意しましょう。原則、裁量労働制での勤務は残業代が発生しません。
2-4. 固定残業代(みなし残業代)制度がある場合
固定残業代(みなし残業代)制度が導入されている年俸制の場合、年俸の範囲内なら追加の残業代は発生しません。あらかじめ定められた時間分の残業代が年俸に含まれます。
例えば従業員の年俸が800万円で、月40時間分の固定残業代を含む場合、40時間以内の残業代の追加支払いは不要です。
しかし、実際の残業時間が固定残業時間を超えた場合、超過分は別途残業代を支払う必要があります。固定残業代が年俸内に収まるかで、残業代の支払いが必要か判断しましょう。
3. 年俸制での残業代の計算方法
ここからは、年俸制の残業代の計算方法を解説します。
- 原則としての計算方法
- 賞与・ボーナスの計算方法
3-1. 原則としての計算方法
残業代の計算式は以下のとおりです。
残業代=年俸額÷12÷1ヵ月の所定労働時間×割増率×残業時間
まず年俸から、1時間あたりの賃金単価を算出する必要があります。「年俸額÷12ヵ月÷1ヵ月の所定労働時間」で計算可能です。
1時間あたりの賃金単価に、法定の割増率と実際の残業時間を掛けると残業代が計算できます。例えば、年俸が600万円で、1ヵ月の所定労働時間が160時間、月に15時間の残業をした場合で考えてみましょう。
残業代=6,000,000円÷12÷160時間×1.25×15時間=58,594円となります。
割増率は、法定労働時間を超える通常の残業の場合、1.25(25%増)です。深夜(22時~5時)の場合は1.25、法定休日労働の場合は1.35がそれぞれ適用されます。
上記の計算方法に従って残業代を算出し、従業員へ支払いましょう。
3-2. 賞与・ボーナスの計算方法
労働基準法施行規則第21条により、賞与やボーナスは残業代に含まれません。「臨時に支払われる賃金」や「1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金」は、算入する必要がないと定められています。
例えば年俸総額が600万円で、そのうち賞与・ボーナスが120万円の場合で考えてみましょう。賞与分を除外して計算する必要があるため、残業代計算に使用する年俸基礎額は、480万円になります。
ただし金額があらかじめ確定した賞与やボーナスを支払う場合、残業代の計算に含める必要があるため注意してください。年俸を14等分し、そのうち12回を月給、残り2回分を定期賞与として固定額で支給するなどの場合、残業代の計算に含めましょう。
4. 残業代を含む年俸の支払い方
「賃金支払いの5原則」により、年俸制を採用している企業でも、労働基準法に定められた賃金の支払い方に従う必要があります。年俸は一括払いではなく、分割して支払わなければなりません。
労働基準法第24条では、賃金は「期日を設定し毎月1回以上支払う必要がある」と規定されています。年俸制でも、通常は12分割して毎月支給するのが一般的です。
年俸に固定残業代が含まれる場合、給与明細などに基本給と固定残業代の内訳を記載する必要があります。従業員は給与の内訳を理解でき、企業側も後の労務トラブルを防止できるでしょう。
固定残業代を超える残業が発生した場合、超過分を翌月の給与に追加で支払う必要があります。給与明細に「時間外手当(超過分)」などと記載するのが望ましいでしょう。このように労働基準法に従い、残業代を支払ってください。
5. 年俸制の残業代ルールを理解して労務リスクを回避しよう
年俸制だとしても、残業代の支払い義務は免除されません。雇用契約書や給与明細には、年俸の内訳を記載しましょう。
固定残業代を含める場合も、その金額と対象時間数を記載してください。労働時間を適切に管理・記録し、みなし残業時間を超過した残業代の支払いが重要です。
上記のポイントを押さえておくと、未払い残業代の請求や是正勧告などの労務リスクを回避できるでしょう。
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