103万円の壁は撤廃へ|178万円への引き上げや年収の壁について解説
更新日: 2026.6.10 公開日: 2025.3.25 jinjer Blog 編集部

年収103万円は、2025年度の税制改正がされるまでの、所得税が課税される年収のラインでした。
令和7年度の税制改正によりこの103万円が160万円に引き上げられ、更に2026年度の税制改正で160万円から178万円(令和8年・9年度の2年間の時限的な措置)に引き上げられました。
この記事では、所得税の壁が引き上げられたことによる影響や、さまざまな年収の壁を詳しく解説します。
目次
2026年4月から「年収の壁」が178万円へと引き上げられました。さらに、社会保険の加入対象が大幅に広がる「106万円の壁の撤廃」も可決・成立しており、企業への影響は必至です。
対象となるパート・アルバイト従業員の労働時間増加による人手不足の緩和が期待できる一方、社会保険手続きの急増など、労務担当者の実務負担は増すばかりです。この大きな制度変化を、企業の成長機会へと変えるための準備はできていますか?
▼この資料でわかること
- 結局どう変わる?複雑な制度改正のタイムラインと企業への影響
- 今後急増する社会保険手続きへの具体的な備え
- 法改正対応で想定される、システム更新のコストと実務の盲点
複雑化する「年収の壁」問題について、2026年の最新動向を図表でわかりやすく解説しました。ぜひこちらから資料をダウンロードのうえ、貴社のスムーズな法改正対応にお役立てください。
※本資料は、2025年6月時点の法令・成立法案 に基づき作成されたものです。2026年度以降の最新改正(178万円へのスライド等)については、本資料で実務の「土台」を確認した上で、現行の政府ガイドラインと併せてご参照ください。1. 所得税の壁とは


103万円の壁とは、従来の「所得税の壁」を意味する言葉です。所得税の壁とは、所得税が課税される年収ラインのことです。
所得税は、年収の全額に対して課税されるわけではなく、年収から一定の金額を差し引き、残った金額に税率をかけて算出されます。この差し引かれる金額を「控除」とよびます。
所得の種類にかかわらず適用される「基礎控除」と、給与所得に適用される「給与所得控除」を合計した金額が、所得税の壁とされています。
1-1. 103万円の壁とは
2025年度におこなわれた税制改正前は、基礎控除の48万円と給与所得控除の最低額55万円を合計した103万円が所得税の壁でした。2020年に基礎控除と給与所得控除の金額が改定されたものの、合計額の103万円は変わらなかったため、今まで所得税の壁に変化はありませんでした。
しかし、近年の物価上昇などに対応するため、2025年から基礎控除と給与所得控除が引き上げられ、それに伴い所得税の壁が変動しています。
また、103万円は所得税法上の「扶養の壁」でもありました。扶養される側の年収が103万円を超えると、扶養する側が配偶者控除や扶養控除を受けられず、世帯での税負担が増加します。つまり、従来の「103万円の壁」とは非課税枠の壁と、扶養内の壁の2つの意味をもっていました。
1-2.【2026年から】所得税の壁は160万円から178万円へ
長年、所得税がかかり始める目安とされてきた103万円の壁は、2025年の税制改正で基礎控除と給与所得控除が引き上げられたことにより見直されました。2025年は、基礎控除の95万円と給与所得控除の最低保証額65万円を合計した160万円が、給与収入のみの人にとって所得税がかかり始める一つの目安となっています。
一方で、基礎控除は所得が高くなるほど控除額が小さくなる仕組みです。そのため、すべての人が一律で年収160万円まで所得税がかからないという意味ではありません。
さらに、令和8年度税制改正では、基礎控除や給与所得控除の特例を組み合わせ、所得税の課税最低限が178万円まで特例的に引き上げられました。したがって、給与収入のみの場合は、令和8年以後、所得税が課税されるかどうかの目安は年収178万円となる見込みです。
なお、この特例は主に中低所得者を対象としているため、すべての給与所得者に178万円の壁が適用されるわけではありません。
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
2. 年収の壁の引き上げによる影響


近年、税制改正が相次ぎ、年収の壁が複雑化しています。この章では年収の壁の引き上げによる影響を、従業員と会社側に分けて解説します。
2-1. 従業員の労働時間が増える
年収の壁の引き上げの目的の一つは「働き控え」を解消することです。年収の壁を超える働き方をすると扶養から外れ、自身も所得税を納める必要があります。そのため、扶養内で働くパート・アルバイト従業員は、年末にシフトを減らすなど、年収の壁を超えないように調整することも多くあります。
年収の壁が引き上げられれば、従来よりも非課税かつ扶養内で働ける範囲が広がるため、従業員の働き控えを抑えられ、労働時間が増えることが期待されています。
2-2. 従業員の手取りが増える
年収の壁の引き上げによって、非課税枠が拡大するため従業員の手取りが増えます。所得税の壁が103万円から178万円に上がった場合、手取り額のシミュレーションは次のようになります。
| 年収 | 103万円の壁 | 178万円の壁 |
| 400万円 | 約315万円 | 約318.8万円 |
| 500万円 | 約385万円 | 約388.8万円 |
| 600万円 | 約450万円 | 約455.3万円 |
ただし、こちらはあくまでシミュレーションです。扶養の有無や社会保険料は個人によって異なるのでそれに伴い手取り金額は変化するため、金額は参考に留めましょう。
2-3. 給与計算の業務負担が増える
年収の壁が見直されることで、給与計算担当者の負担は増加するでしょう。過去にjinjerが実施した調査では、年収の壁の見直しによって「業務負担が増える」と回答した労務担当者の割合が過半数を占めています。
確かに、従業員からの問い合わせ対応や年末調整の書類チェックなど業務負担は増えます。しかし、年収の壁の見直しは労務担当者にとってデメリットだけではありません。年収の壁改正に伴い、従業員からの疑問や不安に、正確かつスピーディに回答できる体制が構築されれば、業務効率化が進むよい機会となるでしょう。
改正による収入基準を適切に計算するには、クラウドサービスの活用が有効です。年収の壁の変動タイミングで、クラウドサービスの導入検討をするのも有用でしょう。
3. 103万円以外にもある!税制改正で変わったさまざまな「年収の壁」


2025年以降の税制改正では、103万円の壁だけでなく、扶養控除や配偶者控除などに関係する複数の年収基準も見直されています。
さまざまな改正に伴い、現在は「136万円の壁」「159万円の壁」「169万円の壁」など、制度ごとに異なる年収ラインが存在しています。扶養控除や配偶者控除が適用される年収、大学生世代向けの特定親族特別控除が満額適用される年収、配偶者特別控除が段階的に減少する年収など、それぞれ基準が異なるため注意が必要です。
ここからは、103万円の壁とあわせて押さえておきたい、税制度上のさまざまな年収の壁について解説します。
3-1. 136万円の壁
136万円の壁とは、扶養家族がいる場合、配偶者控除と扶養控除が適用されるかの年収ラインです。原則扶養される側の年収が136万円を超えると、扶養する側が控除を受けられなくなります。ただし、配偶者特別控除や特定親族特別控除など、一定の条件を満たした場合に、扶養される側の年収が136万円を超えていても、受けられる控除があるので確認しておきましょう。
3-2. 159万円の壁
159万円の壁とは、満額の特定親族特別控除が受けられる年収ラインです。
特定親族特別控除とは、大学生世代の働き控えを解消するために2025年に新設された控除です。通常、扶養される側の年収が136万円を超える場合、扶養控除が受けられなくなりますが、扶養親族が19歳以上23歳未満の場合「特定親族特別控除」が適用され、扶養される側の年収が159万円までは扶養控除と同じ金額が控除されます。
扶養される側の年収が159万円を超えた場合、控除額が段階的に縮小され197万円を超えると特定親族特別控除の適用は完全になくなります。
関連記事:2025年新設!特定親族特別控除の概要や控除額・申請方法をわかりやすく解説
3-3. 169万円の壁と207万円の壁
169万円の壁とは、満額の配偶者特別控除が受けられる年収ラインです。
配偶者特別控除とは、配偶者の年収が136万円を超えた場合でも、扶養する側が所得要件を満たしていれば配偶者の年収に応じて段階的に控除が受けられる制度です。配偶者の年収が169万円以下であれば配偶者控除と同じ額の控除が受けられるため169万円の壁とよばれています。
この壁は従来150万円でしたが2025年に160万円、2026年に169万円に引き上げられました。配偶者の年収が169万円を超えた場合、段階的に控除の額が減少していきます。
また、207万円の壁とは、配偶者特別控除が完全に適用されなくなる年収ラインです。配偶者の年収が207万円を超えると、配偶者を扶養する従業員は配偶者特別控除を受けることができません。
4. 社会保険の壁も再確認しよう


税制改正により税制度に関する年収の壁は見直されましたが、年収の壁は税制度だけでなく社会保険にも存在します。税制度における年収の壁と混同しないように社会保険の壁についても確認しましょう。
4-1.106万円・130万円の壁の違い
106万円の壁は従業員本人に社会保険の加入義務が発生する年収のライン、130万円の壁は従業員の家族が被扶養者から外れる年収のラインです。
<106万円の壁>
従業員数が51人以上の企業に勤めている場合、以下の要件をすべて満たした短時間労働者に社会保険への加入義務が発生します。
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2ヵ月を超える雇用見込みがある
- 学生でない
月額8.8万円を年収に換算すると約106万円となるため、こちらの基準は一般的に106万円の壁と呼ばれています。ただし、2026年10月に月額8.8万円という要件が廃止される見込みのため、それに伴い106万円の壁も実質的に消滅する予定です。
関連記事:106万円の壁とは?対象者の条件や130万円の壁との違い、撤廃による影響・対策を解説
<130万円の壁>
130万円の壁は、従業員の扶養家族の年収ラインです。扶養家族の年収が130万円を超える見込みの場合、社会保険の被扶養者要件を満たせなくなります。
被扶養者には健康保険・厚生年金保険ともに保険料がかかりません。扶養から外れた家族は、自身が勤めている企業の健康保険や厚生年金保険、自営業や無職の場合は国民健康保険や国民年金に加入することとなるため、社会保険料が発生します。
関連記事:130万円の壁とは?2026年4月から労働契約ベースに計算方法が変更に!
4-2. 社会保険における年収の壁への対応(年収の壁・支援強化パッケージ)
年収の壁・支援強化パッケージは、社会保険に関する年収の壁の影響を減らすための施策です。106万円の壁、130万円の壁に対して、それぞれ取り組みが用意されています。
<106万円の壁への対応>
従業員の年収が106万円を超えると、社会保険料が発生するため手取りが減少します。この手取り減少を補うために、キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)が新設されました。
社会保険適用促進手当の支給など、手取りの減少を補うための取り組みをおこなった企業に対して、従業員1人あたり最大50万円が支給されます。これにより、従業員・企業ともに社会保険料の費用負担を軽減できるでしょう。
<130万円の壁への対応>
130万円の壁は、社会保険における被扶養者の対象から外れる年収のラインです。収入の増加が残業などによる一時的なものの場合、年収が130万円を超えても被扶養者として認定可能な仕組みが創設されました。この制度を活用すれば、一時的に収入が増えたとしても即時に扶養の対象外とはなりません。ただし、こちらの申請には事業主の証明が必要です。、
5. 「年収の壁」を理解して従業員に周知しよう


令和7年度と令和8年度の税制改正により、年収の壁は大きく変更されました。
従来は年収103万円を超えなければ所得税も課税されず、扶養する側も控除を受けることができました。そのため、非課税枠内や扶養枠内で働く多くの労働者は年収103万円を超えなければ問題ないという認識を持っています。しかし、近年の改定によって103万円の壁は引き上げられました。
また、年収の壁とは税制度だけでなく社会保険にも存在します。本来、税と社会保険は別制度です。しかし、年収の壁を説明する際は税と社会保険を同時に考えなければならず、このことが近年乱立している年収の壁をさらに複雑にさせています。そのため、従業員に「年収の壁」について説明する際は、一度に全ての壁について考えるのではなくひとつひとつの年収の壁を正しく理解し説明することが大切です。
「年収の壁」は、働き方や人材確保にも関わる重要なテーマです。企業と従業員が正しい知識を共有し、安心して働ける環境づくりを進めていきましょう。
関連記事:年収の壁とは?税金や社会保険の負担が生じる103万、106万、130万、150万の壁を解説



2026年4月から「年収の壁」が178万円へと引き上げられました。さらに、社会保険の加入対象が大幅に広がる「106万円の壁の撤廃」も可決・成立しており、企業への影響は必至です。
対象となるパート・アルバイト従業員の労働時間増加による人手不足の緩和が期待できる一方、社会保険手続きの急増など、労務担当者の実務負担は増すばかりです。この大きな制度変化を、企業の成長機会へと変えるための準備はできていますか?
▼この資料でわかること
- 結局どう変わる?複雑な制度改正のタイムラインと企業への影響
- 今後急増する社会保険手続きへの具体的な備え
- 法改正対応で想定される、システム更新のコストと実務の盲点
複雑化する「年収の壁」問題について、2026年の最新動向を図表でわかりやすく解説しました。ぜひこちらから資料をダウンロードのうえ、貴社のスムーズな法改正対応にお役立てください。
※本資料は、2025年6月時点の法令・成立法案 に基づき作成されたものです。2026年度以降の最新改正(178万円へのスライド等)については、本資料で実務の「土台」を確認した上で、現行の政府ガイドラインと併せてご参照ください。勤怠・給与計算のピックアップ
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