給与のデジタル払いとは?銀行振込との違いとメリット・デメリットを解
更新日: 2025.2.4
公開日: 2025.1.31
OHSUGI
「給与のデジタル払いとは?」
「給与のデジタル払いを導入するには?」
上記のように疑問をお持ちではありませんか。
給与デジタル払い制度は、従業員の利便性を高める制度です。導入すれば、企業のイメージアップにもつながるでしょう。
この記事では、給与デジタル払い制度の基本情報と銀行振込との違い、メリットやデメリットを紹介します。
キャッシュレス決済を利用している従業員が多い企業の方は、ぜひ参考にしてください。
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
・勤怠情報から給与を自動計算
・標準報酬月額の算定や月変にも対応しており、計算ミスを減らせる
・Web給与明細の発行で封入や郵送の工数を削減し、確実に明細を従業員へ渡せる
システムを利用した給与計算についてさらに詳しく知りたい方は、こちらからクラウド型給与計算システム「ジンジャー給与」の紹介ページをご覧ください。

1. 給与デジタル払い制度とは
給与デジタル払い制度とは、企業から従業員に支払う賃金をデジタルマネーで支払う制度です。
従来の労働基準法では、給与は現金払いが原則となっており、銀行口座への給与振り込みは、従業員が希望した場合のみ認められていました。
しかし、キャッシュレス決済の普及により、令和5年4月に労働基準法の一部が改正され、デジタル払いが可能となりました。
従業員は、給与の支払い方法として銀行振り込みとデジタルマネーを選べます。一部だけをデジタルマネーで受け取ったり、受け取った給与を現金化したりすることも可能です。
ただし、給与デジタル払いに利用できるのは、厚生労働省が認めた資金移動業者だけとされています。口座の上限額は100万円以下です。上回った金額は指定した口座へ出金されます。
参考:資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について|厚生労働省
2. 給与デジタル払いが認められた資金移動業者
給与デジタル払いが認められた資金業者は、令和6年12月時点では「PayPay株式会社」のみとなっています。
PayPay株式会社の場合、キャッシュレス口座の上限額は20万円です。もし資金移動業者が破綻するようなことになっても、保証機関が口座残高の全額を保証します。
現在までで、累計4社が資金移動業者の指定申請をおこなっており、3社が審査中です。
これから、給与のデジタル払いを認められた資金移動業者は増えていくことが予想されます。より利便性が高くなり、利用者も増えていくことでしょう。
参考:資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について|厚生労働省
3. 給与デジタル払いと銀行振込の違い
給与デジタル払いと銀行振込の違いを以下の表にまとめました。
受取方法 | 給与デジタル払い | 銀行振込 |
受取先 | 銀行口座 | 決済アプリ口座 |
口座の上限金額 | 100万円 | なし |
破綻した場合の保証金額 | 100万円まで | 1000万円 |
払い戻し時の手数料 | 従業員が自己負担(ATM手数料) | 払い戻さずにそのまま使用可能
現金化は月1回まで無料 |
資金の使い道 | 支払い・送金 | 支払い・送金・預金など |
給与デジタル払いで使用する決済アプリ口座は、銀行に比べて口座の上限金額が低く設定されています。あくまで支払いや送金のための資金を管理するものとされており、貯蓄には向きません。
給料をデジタル払いで受け取る方は、使う見込みのある金額のみをデジタルマネーで受け取ることが求められます。
4. 給与デジタル払いが推進されている理由
給与のデジタル払いが推進されている理由は以下のとおりです。
- 給与のデジタル払いを希望する人が増えた
- 社会のデジタル化を実現するため
- 外国人労働者の働きやすさを向上するため
昨今ではキャッシュレス決済の普及が進み、さらなる利便性を求めて給与のデジタル払いを希望する方が増えました。
また、経済産業省でもキャッシュレス決済の普及に向けた取組みがおこなわれており、将来的な目標は世界最高水準の80%です。給与デジタル払いの推進は、キャッシュレス決済のさらなる普及のためでもあります。
加えて、給与デジタル払いは、外国人労働者の働きやすさの向上にも関わっています。外国人労働者は言語や滞在期間、信用情報の不足などの理由で、給与振込用の銀行口座を開設するのが難しい場合が多いです。
しかし、多言語に対応しているキャッスレス口座なら容易に開設できます。母国への送金もスムーズにおこなえるでしょう。
参考:キャッシュレス決済の普及に向けた取組について|経済産業省
5. 給与デジタル払いの3つのメリット
給与デジタル払いで得られるメリットは以下のとおりです。
- 支払いの業務は今までと変わらない
- 企業イメージがアップする
- キャッシュレス決済がより便利になる
それぞれのメリットを詳しく解説します。
5-1. 支払いの業務は今までと変わらない
企業側のメリットとして挙げられるのは、給与支払いの業務が今までとそれほど変わらない点でしょう。現在、資金移動業者として認められているPayPay株式会社における給与払いの仕組みは以下のとおりです。
- 企業はこれまでと同様に従業員が指定する銀行口座に給与を振り込む(振込手数料は企業負担)
- 給与のうち従業員が指定した金額が従業員のアカウントにチャージされる(保有できる残高の上限は20万円)
- 残りは従業員が指定する銀行口座に無料で送金される
今後、ほかの資金移動業者が参入した場合には、PayPay株式会社とは異なったシステムが採用される可能性もあります。資金移動業者を選ぶ際には、支払い業務についても注目しましょう。
5-2. 企業イメージがアップする
給与デジタル払いの導入は、企業のイメージアップにつながるメリットもあるでしょう。対応している企業のことを「新しいことを積極的に取り入れている」「社員のことを考えている」と好意的に受け止める方もいます。
キャッシュレス決済に慣れた若者世代では、給与デジタル払いを活用したいという声も多いようです。
求職者にとって魅力的な企業となるために、給与デジタル払いを導入するのも良い方法でしょう。
5-3. キャッシュレス決済がより便利になる
従業員にとっての給与デジタル払いのメリットは、キャッシュレス決済がより便利になる点です。給与デジタル払いで給与を受け取れば、キャッシュレス決済口座にチャージする手間が省けます。
月1回までなら無料で現金化できるので、現金が必要になった場合でも困ることはないでしょう。
6. 給与デジタル払いの2つのデメリット
給与デジタル払いのデメリットは以下のとおりです。
- 資金移動業者が限られている
- セキュリティリスクが生じる
それぞれのデメリットを詳しく解説します。
6-1. 資金移動業者が限られている
給与デジタル支払いのデメリットは、資金移動業者が限られているところです。キャッシュレス決済を利用している方は、すでに多くのサービスから自分の使いやすいものを選んで使用しています。
しかし、従業員が給与デジタル払いに利用できるのは、企業と従業員のあいだで労使協定を締結した資金移動業者だけです。
従業員が普段使っているキャッシュレス決済サービスと、会社が利用しているものが異なることは多々あります。今まで使っていたキャッシュレス決済にこだわりたい従業員は、メリットを得ることが難しいでしょう。
6-2. セキュリティリスクが生じる
給与デジタル払いのデメリットとして、セキュリティリスクが生じる点が挙げられます。利用する従業員は、スマートフォンの紛失やセキュリティ対策に十分な対策をしなくてはなりません。
日頃から、スマートフォンの紛失時や不正利用時にどのように対処したら良いか、従業員への説明を十分におこないましょう。
7. 給与デジタル払いを導入する手順
給与デジタル支払いを導入する手順は以下のとおりです。
- 利用する資金移動業者を選ぶ
- 従業員との間に労使協定を締結する
- 就業規則を改定する
- 従業員に詳しく説明をする
- 利用したい従業員に同意書を提出してもらう
給与デジタル払いを導入する際には、従業員と企業の間で労使協定を締結する必要があります。また、賃金に関する就業規則の改定も必須です。
必要な手続きが済んだら、従業員に給与デジタル払いの説明をしましょう。上限額や現金化、トラブル時の対応などについても十分に理解してもらってください。
給与デジタル払いは、希望者のみが利用するものです。希望者には、同意書を提出してもらい、給与デジタル払いを開始しましょう。
8. 給与デジタル払いのメリット・デメリットを理解して導入を検討しよう
給与デジタル払い制度とは、賃金をデジタルマネーで支払う制度です。キャッシュレス決済をはじめとした、社会のデジタル化を背景に推進されています。
現在の指定業者のシステムでは、給与デジタル払いを導入したとしても業務に大きな負担が増えることはなさそうです。
給与デジタル払いの導入により従業員はキャッシュレス決済をより効率的に利用できるようになります。企業のイメージアップも期待できるでしょう。
制度が定着するかは、それぞれの企業によって異なります。企業は給与デジタル払いのメリット・デメリットを理解し、自社に合っているかをよく考えて導入を検討しましょう。
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
・勤怠情報から給与を自動計算
・標準報酬月額の算定や月変にも対応しており、計算ミスを減らせる
・Web給与明細の発行で封入や郵送の工数を削減し、確実に明細を従業員へ渡せる
システムを利用した給与計算についてさらに詳しく知りたい方は、こちらからクラウド型給与計算システム「ジンジャー給与」の紹介ページをご覧ください。



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