所得税における通勤手当の課税・非課税ルールとは?交通費のとの違いも解説
更新日: 2024.11.15
公開日: 2022.3.27
OHSUGI
会社勤めをしている方は毎月お給料をもらっていますが、そのお給料からは所得税が源泉徴収という形で差し引かれています。お給料には固定給だけでなく、各種手当ても含まれているのが一般的です。手当にはいろいろな種類がありますが、その中のひとつに「通勤手当」があります。
あまり意識しないかもしれませんが、この通勤手当が所得税の課税対象になるかどうかで、納税金額に大きな差が出てきます。また、課税対象かどうかを考えるうえでは「通勤手当」と「交通費」の違いについても、明確に理解しておかなければなりません。
本記事では、通勤手当と交通費の違いや、所得税における通勤手当の課税ルールおよび非課税ルールについて、説明します。
関連記事:所得税とは?納税方法や確定申告が必要な人・不要な人について解説
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目次
1. 通勤手当と交通費の違い
通勤手当も交通費も、「仕事のために電車などの公共交通機関を利用する際に発生する費用」に関わるものですが、両者は異なるものなので、それぞれの定義をきちんと把握しておく必要があります。
通勤手当は、「通勤するためにかかる費用を従業員に対して手当として支給すること、および支給される手当そのもの」を指し、通勤にかかる費用の一部または全部が支給されるのが一般的です。ただし、通勤手当の支給は法律による定めがなく、企業にとっては義務ではないので、通勤手当を導入していない場合もあります。
一方、交通費は「業務中の移動にかかる費用」のことを指します。例えば営業職などの場合は、営業や出張・接待などのために電車やタクシー・新幹線などを利用する必要がありますが、これらを利用したときに発生する費用はすべて交通費となります。
また、遠方への出張の場合は現地で宿泊することもありますが、その際の宿泊費も交通費に含まれるケースが多いです。交通費は一度従業員自身が立て替えておいて、運賃の領収書や経費精算書を提出し、月末締めで請求・精算する形が一般的です。
2. 所得税における通勤手当の課税ルール
通勤手当が課税になるか非課税になるかは、利用している交通手段およびその金額によって決まります。ここでは、所得税における通勤手当の課税ルールを、以下の3つのパターンに分けて説明します。
- 電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤する場合
- マイカーや自転車・バイクを利用して通勤する場合
- マイカーや自転車・バイクと公共交通機関を併用して通勤する場合
2-1. 電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤する場合
電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤する場合は、1ヵ月あたり15万円を超えた金額については所得税の課税対象となります。
なお、通勤経路として考えられる経路がいくつかある場合は、「もっとも経済的かつ合理的と認められる経路」での運賃でなければなりません。「経済的」には「費用のかからないさま。安あがりなさま。」という意味があるので、出来るかぎり通勤費用を安く抑えることが求められます。また、「合理的」には「むだを省いて能率よく物事をおこなうさま。」という意味があるので、効率的で無駄のない通勤経路であることが求められます。
たとえば通勤に新幹線を利用する必要がある場合は、新幹線の運賃自体は「経済的かつ合理的」として認められますが、グリーン車の利用は「経済的かつ合理的」としては認められない点には注意が必要です。
参考:経済的|コトバンク
参考:合理的|コトバンク
2-2. マイカーや自転車・バイクを利用して通勤する場合
マイカーや自転車・バイクを利用して通勤する場合は、通勤距離に応じて一定の金額を超えた分に関しては、所得税の課税対象となります。
通勤距離ごとの非課税上限額は以下の表の通りです。
通勤距離(片道) | 1ヵ月当たりの限度額 |
片道55km以上 | 31,600円 |
片道45km以上~55km未満 | 28,000円 |
片道35km以上~45km未満 | 24,400円 |
片道25km以上~35km未満 | 18,700円 |
片道15km以上~25km未満 | 12,900円 |
片道10km以上~15km未満 | 7,100円 |
片道2km以上~10km未満 | 4,200円 |
片道2km未満 | 全額 |
たとえば通勤距離が片道40kmという場合には、「片道35km以上~45km未満」に当てはまるので、24,400円を超す通勤手当に関しては所得税の課税対象となります。
参考:No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当|国税庁
2-3. マイカーや自転車・バイクと公共交通機関を併用して通勤する場合
マイカーや自転車・バイクと公共交通機関を併用して通勤する場合は、公共交通機関の利用金額と、マイカーや自転車・バイクでの通勤にかかる費用を合算した金額に関して、1ヵ月あたり15万円を超す分に関しては、所得税の課税対象となります。
ケースによって課税対象となる金額に関する考え方は異なりますが、基本的に公共交通機関を利用する場合は、1ヵ月当たり15万円を超す金額に関しては所得税の課税対象となると考えておくと、わかりやすいでしょう。
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3. 所得税における通勤手当の非課税ルール
マイカーや自転車・バイクと公共交通機関を併用して通勤する場合に関しても、同様です。マイカーや自転車・バイクを利用して通勤する場合は、先ほど触れた非課税上限額以下の金額であれば、すべて非課税となります。
課税か非課税かのラインをきちんと把握できているかどうかで、支払わなければならない所得税の金額は大きく変わります。通勤手当に関しては全額を支払わなければならないわけではないので、あらかじめ、就業規則に通勤手当の上限について明記しておくというのも、従業員が支払う所得税を抑えるためのひとつの方法と言えるでしょう。
4. 課税と非課税を間違えた場合の対処法
本来であれば課税しなければならない通勤手当を非課税にしていた場合、所得税の未納分が発生することになります。何らかの原因で課税・非課税を間違えてしまったとしても、未納分の発生を放置するのは厳禁です。そのため、課税が判明したらすぐに税理士もしくは税務署に相談をして必要な処理をおこないましょう。
また、通勤手当の計算を間違っていた場合は、健康保険や厚生年金保険の標準報酬月額計算でも修正が必要になることがあります。健康保険法や厚生年金保険法上の報酬には通勤手当全額が含まれるので、報酬月額の計算を間違えると社会保険料が変わってしまう可能性があるため注意が必要です。
5. 通勤手当は課税・非課税の条件をきちんと把握しておこう
通勤手当は一定金額までは非課税で受け取ることができますが、一定以上の金額に関しては所得税の課税対象となります。
課税対象となるラインは、通勤に利用している交通手段や片道の距離などによって変わるので、そのラインをきちんと把握しておくことで、支払わなければならない所得税を抑えられる可能性もあります。
新型コロナウイルスの影響によって在宅勤務やテレワークという働き方が増えた影響で、通勤手当を廃止する方向に動く企業も増えていますが、今一度通勤手当について見直してみるとよいでしょう。
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