深夜残業が多い人に必要な健康診断とは?診断項目や基準、回数を解説
更新日: 2024.9.26
公開日: 2021.11.15
OHSUGI
健康診断というと、年に1回おこなわれる「定期健康診断」を思い浮かべるかもしれませんが、労働安全衛生規則によってさまざまな健康診断が義務付けられています。その1つが、深夜残業をする従業員が対象となる「特定業務従事者の健康診断」です。
深夜残業というのは、午後10時から翌日午前5時までの時間帯の労働を指します。この時間帯に「週1回以上、または月4回以上」働く従業員は、健康管理に特に留意しなければならないため、6ヵ月に1回の健康診断が必要です。
この記事では、深夜残業が多い人に必要な健康診断や項目、健康診断を受ける頻度、目安となる深夜残業の回数などを解説します。
深夜労働では健康診断が必要と知っていても、「どれくらいで必要になるの?」「深夜労働がメインではなく、残業が深夜帯に及んでしまった場合も必要?」など、具体的な基準を把握できていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは深夜労働・深夜残業で健康診断が必要になる基準や、受けさせるべき健康診断の項目について、本記事の内容をまとめた資料を無料で配布しております。
深夜労働に対する健康診断の扱いに不安のある方は、こちらからダウンロードしてご確認ください。
目次
1. 深夜残業が多い人に健康診断が必要な理由
そもそも深夜残業とは、「深夜業」に分類される、午後10時から翌日午前5時までの時間帯(厚生労働大臣が必要であると認める場合は、午後11時から午前6時まで)におこなう残業のことを指します。
「深夜業」は労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務であるため、事業者は、深夜労働(夜勤)や深夜残業に一定基準以上従事する従業員に対して、「特定業務従事者健康診断」の実施が必要です。
深夜業であっても、「法定労働時間を守っていれば問題ないのでは?」と思うかもしれませんが、深夜だからこその理由があるので担当者の方は確認しておきましょう。
*「特定業務従事者」とは水銀やヒ素など危険物を取り扱う作業に従事するものや、坑内での業務に従事するものなども含まれます。[注1]
[注1]厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」(参照 2021-10-18)
1-1. 生活リズムの乱れによる体調悪化が懸念されるため
通常とは異なる生活リズムで労働することは、心身の調子を崩しやすいです。そのため、深夜業は「特定業務従事者」に含まれています。
2019年、国際がん研究機関(IARC)は「サーカディアンリズムを乱す交代勤務」を、「おそらく発がん性がある」行為として挙げています。深夜業は、4段階中2番目に高い行為となるので6ヵ月に1回の健康診断が必要となるのです。
また、夜勤勤務のある職業では睡眠障害やメタボリックシンドローム、生活習慣病、自律神経の乱れなどのリスクが高まるとされています。そのため、深夜業では、一般的な労働時間で勤務する従業員以上に、健康状態を適切に把握しなければなりません。
「特定業務従事者健康診断」は、シフト制で深夜業に従事する従業員や、夜勤のある業種だけが対象となる訳ではありません。例えば、深夜残業で毎日のように23時頃まで働いている従業員がいれば、その従業員も健康診断の対象となると考えらるので、該当する従業員がいる場合は健康診断の必要性を確認しましょう。
参考:公益社団法人 日本看護協会「国際がん研究機関(IARC)による発がん性リスク」(参照 2021-10-18)
1-2. 過重労働者には医師による面接指導も必要
月80時間を超える時間外・休日労働をおこない、さらに疲労の強い従業員から申し出があれば、産業医の面接指導を実施します。
また、月80時間を超えた場合、事業者は下記の処理もおこなわなければなりません。
- 労働者本人に通知する
- 産業医に作業環境・労働時間・深夜業の回数・時間数等の情報を提供する
その際、企業側が健康管理を適切におこなっているかも重要な情報となります。
1-3. 深夜残業が多い人は「時間外労働の上限規制」にも留意
2019年4月施行(※1)の「時間外労働の上限規制」により、原則「月45時間・年360時間以上」の残業はできません。
また、特別な事情があり、労使の合意があっても年720時間以内、複数月平均80時間以内(※2)、月100時間未満(※2)の残業しか認められません。
しかし、いくら労働基準法を遵守した労働時間であっても、深夜残業を完全になくすというのは難しい企業もあるでしょう。そのため、深夜残業が多い従業員に対しては、労働時間での健康管理に加え、年2回の健康診断をおこなうことも適切な管理方法になるのです。
※1:中小企業は2020年4月から
※2:休日労働を含む
2. 深夜残業が多い人の健康診断の内容11項目
深夜残業が多い従業員であっても、「一般定期健康診断」の内容と同じものを受ければ問題ありません。(労働安全衛生規則第44条)
具体的な検査項目は下記のとおりです。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長(※)、体重、腹囲(※)、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査(※) 及び喀痰(かくたん)検査(※)
- 血圧測定
- 貧血検査(血色素量、赤血球数)(※)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)(※)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※)
- 血糖検査(※)
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査(※)
(※)の項目は、医師が不要と認める場合、省略できます。
また、医師が必要と判断した項目については、追加も可能です。
参考:厚生労働省.「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」(参照 2021-10-18)
3. 年2回の健康診断の対象となる業務
年2回の健康診断の対象者は、「深夜残業」や「夜勤」に携わる従業員のイメージがあるかもしれませんが、労働安全衛生規則の第45条では下記の「特定業務従事者」に対しておこなわなければならないと定められています。
特定業務一覧
1)大量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
2)大量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
3)ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
4)土石、獣毛等の塵埃または粉末を著しく飛散する場所における業務
5)異常気圧化における業務
6)削岩機、鋲打機当の使用によって身体に著しい振動を与える業務
7)重量物の取り扱いに等重激な業務
8)ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
9)坑内における業務
10) 深夜業を含む業務
11) 水銀、ヒ素、黄リン、フツ化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、苛性アルカリ、石炭酸、その他これらに
準ずる有害物を取り扱う業務
12) 鉛、水銀、クロム、ヒ素、黄リン、フツ化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二酸化炭
素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気または粉塵を発散する場所に
おける業務。
13) 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
14) その他労働大臣が定める業務(未制定)
上記のような業務に就いている従業員は、すべて年2回の健康診断の対象となるので、見落としがないように注意しましょう。
また、「10)深夜業務」というのは、夜通し勤務する業務だけでなく、夜10時閉店で退勤が11時になる飲食業や美容業なども対象です。該当する従業員がいる企業は、必ず6ヵ月以内に1回の健康診断を実施しなければなりません。
4. 健康診断が必要となる深夜残業の目安
一口に深夜残業といっても、従業員1人ひとりの残業時間を管理するのは大変な作業です。
しかし、「特殊業務従事者」に該当する場合は6ヵ月に1回の健康診断が義務付けられているので、見落とさないようにする必要があります。
ここでは、健康診断が必要となる深夜残業の目安をわかりやすく紹介するので、管理をする際の参考にしてみてください。
4-1. 恒常的に深夜残業をおこなっているなら健康診断が必要
始業時刻が13時、就業時刻が22時の従業員が毎日30分~1時間程度の残業をしているなど、深夜残業を恒常的におこなっている場合、年2回の健康診断が必要です。
なお、深夜残業はあくまでも「22時を超えた残業」で判断されるため、残業時間の長短では判断されません。
4-2. 「1ヵ月に4回以上」深夜残業があれば対象となる
恒常的に深夜残業をおこなっていなくても、半年に24回以上深夜残業をすれば、「1ヵ月に4回以上の深夜残業があると考えられます。そのため、勤怠管理上は1ヵ月に4回以上の深夜残業をしていないとしても、年2回の健康診断の対象となるため注意しましょう。
例えば、閑散期に深夜残業がなく、繁忙期に毎日のように残業が発生した場合は、半年以内に定期健康診断の受診が必要となります。
4-3. 月3回以内の深夜残業なら健康診断は不要と考えられる
深夜残業の回数が月3回以内に収まっているなら、法律上、年2回の健康診断は不要と考えられます。
ただし、深夜残業が月3回以内でも、同月内に早朝勤務(午前5時以前の始業)が複数回あり、深夜帯の勤務が計4回を超えるという場合は、年2回の健康診断が必要と考えられます。
5. 深夜残業をこなす従業員の健康管理に留意しよう
深夜労働の時間帯に働くと体内時計が狂ってしまうため、通常の労働以上に健康リスクが高まります。
また、深夜労働は「夜勤シフト」だけでなく、残業が深夜に及んだ場合にも当てはまるため、通常勤務の従業員であっても注意しなければなりません。特に、長時間労働が常態化している従業員は、心身に故障を来たす恐れもあります。
健康リスクを脅かさないようにするためにも、深夜労働や残業時間を適切に管理し、従業員の体調管理に努めましょう。
とはいえ、従業員が多い場合は管理が行き届かないこともあるので、健康診断結果の管理や産業医連携もシステム内でおこなえるシステムの導入を検討してみることをおすすめします。
健康管理システム「mediment」は、従業員の健康状態を見える化できるので参考にしてみてください。
深夜労働では健康診断が必要と知っていても、「どれくらいで必要になるの?」「深夜労働がメインではなく、残業が深夜帯に及んでしまった場合も必要?」など、具体的な基準を把握できていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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