有給休暇取得日の賃金計算方法と正しく計算するための注意点を解説
更新日: 2026.1.29 公開日: 2020.4.24 jinjer Blog 編集部

従業員が有給休暇を取得した際の賃金計算方法は、労働基準法で規定されています。規定されている以外の、企業独自で定めた賃金計算方法は認められていないため、法律に則った方法で賃金計算をおこないましょう。
また、有給休暇取得の際の賃金計算方法は、就業規則へ記載しておく必要があります。
賃金計算方法は3つありますが、従業員ごとや収益の増減などによって変えることができないため、自社の状況に合わせて統一しなくてはなりません。
本記事では、有給休暇中の賃金計算の方法や注意点を解説します。
関連記事:有給休暇に関する計算を具体例付きで解説!出勤率、日数、金額の計算方法とは?
有給休暇では給与が発生するため、適切な方法で計算して従業員に支給する必要があります。
当サイトでは、本記事でご紹介している有休取得時の給与計算方法3つに加え、計算例つきでよりわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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目次
1. 有給休暇取得日の賃金計算方法


有給休暇の取得日の賃金計算は、労働基準法第39条第9項にて、次の3つの方法が認められています。
- 有給休暇の取得日も通常通り勤務したとみなす方法
- 直近3ヵ月の平均賃金を求める方法
- 標準報酬月額から算出する方法
ここでは、それぞれの計算方法について具体的に解説します。
1-1. 通常勤務と同じ賃金を支払う
有給休暇の賃金計算の手法の中で、もっとも一般的かつ計算が簡単なのが、有給休暇を取得した日も通常勤務と同じ金額の賃金を支払うものです。
月給制のフルタイムの従業員の場合、何日有給休暇を取得したとしても、その期間を通常通り出勤したとみなして給与計算すればよいため、事務処理が大きく簡略化される点がメリットです。
また、一定の所定労働時間で働く時給制のパートやアルバイトに対しても、通常の勤務と同様に「所定労働時間×時給」で有給休暇の計算がおこなえます。
1-2. 平均賃金を求めて支払う
平均賃金を有給分の給与として支給する場合には、次の2通りの計算をして、金額が大きい方を使用します。
【計算方法】
- 直近3ヵ月の賃金の総額 ÷ 休日を含んだ全日数
- 直近3ヵ月の賃金の総額 ÷ 労働日数で割った額 × 0.6
例えば、2022年4月から6月までの賃金総額が100万円だとすると、歴日は91日、労働日数は61日のため、①で計算すると10,989円、②で計算すると9,836円です。このうち、金額が大きい①の10,989円が有給休暇分として支給される給与となります。
有給休暇の取得日数にこの平均賃金を掛け算することで、支払額が求められます。
月給制、週休制、日給制を問わず、すべての従業員に適用できる賃金計算方法であるため、給与の支給形態が従業員ごとに異なる企業では、この方法を取ることで管理が楽になる場合があります。
一方で、平均賃金を用いる計算方法では、土日・祝日などが多く歴日数に対して給与が少ない場合は、支払い額が減る可能性があります。給与の支払い金額を抑えるという点では魅力的かもしれませんが、従業員のモチベーション低下や不満を招きかねないため、注意が必要です。
また、平均賃金には最低保障額が設けられていることにも注意しましょう。平均賃金の計算では②で求めた金額を最低保証として定めているため、①で計算した額が②よりも下回る場合は、①ではなく②の額を支払う必要があります。
関連記事:労働基準法の平均賃金とは?必要になるケースや計算方法を解説
1-3. 標準報酬月額を基準に支払う
健康保険料の算定に使う「標準報酬月額」を用いて有給休暇の賃金計算をするのもひとつの方法です。
【計算方法】
標準報酬月額 ÷ 30
すでに算出済みの標準報酬月額を用いて計算すればよいため、平均賃金を計算する方法よりも簡単です。
ただし、社会保険の対象外となっているパートやアルバイトなどの従業員には標準報酬月額が算出されていないので、標準報酬月額に相当する額を算出しなければなりません。そのため、かえって計算が複雑になる場合があります。
また、標準報酬月額には金額の上限が設けられています。有給休暇中の給与が少なくなるケースがあることから、この計算方法を選択する場合は、従業員との間に労使協定を締結したうえで就業規則に記載しなければなりません。
1-4. 【結論】どの賃金計算方法を採用すべき?
有給休暇を取得した際の賃金計算方法には、次のようにそれぞれメリットとデメリットがあり、企業の状況や従業員構成によって適した方法は異なります。
| 賃金計算方法 | メリット | デメリット | 採用に適した業種・職場 |
| 通常勤務と同じ賃金を支払う |
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| 平均賃金を算出して支払う |
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| 標準報酬月額を基準に支払う |
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自社の従業員の声や運用のしやすさも踏まえ、最適な賃金計算方法を選択することが重要です。なお、2026年以降の労働基準法改正に向けた検討項目のひとつとして、有給休暇取得時の賃金計算方法の見直しが挙げられています。
現行の「平均賃金」や「標準報酬月額」を用いる方法では、日給制・時給制の労働者ほど有給取得時の支給額が下がりやすいという課題を抱えているのです。労働基準関係法制研究会の報告書では、この点を踏まえつつ、原則として「通常勤務と同じ賃金を支払う方式」へと統一していくべきという方向性が示されています。
参考:「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します|厚生労働省
2. 有給休暇は年5日の消化が義務化

2019年4月の働き方改革関連法案の施行にともない、年5日の有給休暇消化が企業に義務付けられ、有給休暇取得日の賃金計算もより重要になりました。有給休暇の基本を再確認しておきましょう。
【労働基準法第39条】
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
関連記事:有給休暇年5日の取得義務化とは?企業がおこなうべき対応を解説
2-1. 2019年4月から年5日分の取得が義務になった
年間10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者は、1年間で5日分の有給休暇を確実に取得しなければなりません。
有給休暇の取得は任意ではなく企業の義務となったことから、最低でも毎年1人あたり5日分の賃金計算が発生します。つまり、有給休暇の取得義務化によって、有給休暇の賃金計算もより重要になったので、賃金計算の方法や仕組みを学んでおきましょう。
有給休暇の法律に違反した場合は罰金が科される可能性もあるため、今のうちに法改正内容と有給休暇の効率的な管理方法を理解しておくことが大切です。
当サイトでは、有給休暇の正しい知識(取得条件や付与日数など)をまとめた資料を無料で配布しております。自社の有給管理が違反していないかを確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
パート・アルバイトでも有給休暇を付与しなければならない
有給休暇は、労働基準法で定められている条件を満たしていれば、パート・アルバイトに対しても付与しなければなりません。
有給休暇が発生する条件の1つ目は、入社日から継続的に働き始めて半年以上経つことです。2つ目は、雇用契約書などで交わした所定労働日の8割以上の出勤を満たすこととされています。
有給休暇の取得日数は、契約している労働日数や労働時間によって変わりますが、例えば週1回のシフトであっても入社後半年以上過ぎれば、パートでもアルバイトでも有給休暇を与えることが義務付けられています。
関連記事:有給休暇の日数を雇用形態別に解説!発生条件や付与タイミング、最大日数は?
2-2. 有給休暇取得義務を果たさないとどうなる?
企業が有給休暇取得義務を果たさなかった場合、30万円以下の罰金を科される可能性があります。
この罰金は、従業員1人当たりで計算されます。そのため、7人の従業員に年5日の有給休暇取得義務を果たしていない場合は、7人×30万円、つまり210万円の罰金が発生する計算です。
義務を果たしていない企業に対して即座に発生する罰則ではありませんが、是正に向けた指導は入る可能性があります。
労働基準法違反というのは企業イメージの低下や、従業員との信頼関係に影響することも多いので、有給休暇取得義務は軽視せずに守るように環境を整えましょう。
関連記事:年次有給休暇の基本をわかりやすく解説!付与日数や取得時期も紹介
3. 有給休暇取得日の賃金計算に関する注意点

有給休暇の賃金計算では、3つの計算方法を正しく理解するだけでなく、就業規則への明記方法など、押さえておくべきポイントがさまざまあります。ここでは、有給休暇取得時の賃金計算に関連して注意すべき点を解説します。
3-1. 賃金計算の方法は就業規則に記載する
労働基準法第89条に基づき、就業規則の絶対的必要記載事項として「休暇」や「賃金」が定められています。そのため、年次有給休暇の賃金の計算方法については、「年次有給休暇を取得した日は、所定労働時間どおりに勤務した場合と同じ額の通常賃金を支払う」などと、就業規則に明記しなければなりません。
有給休暇の取得で発生する賃金は、就業規則に記載した計算方法にもとづき、従業員や状況にかかわらず常に同一の賃金計算の方法を取る必要があります。当然ですが、就業規則に記載されていることを守らないのは違法となるため、企業側には行政指導を受けたり、ペナルティが科されたりする可能性があります。
また、就業規則を破るというのは従業員からの信頼を失うことになるので注意しましょう。
関連記事:有給休暇の義務化で就業規則を変更する場合の注意点と記載例
3-2. 有給休暇取得日の通勤手当の取り扱いに気を付ける
通勤手当は、従業員が出勤する際にかかる通勤費用を補填するためのものです。従業員が有給休暇を取得する日は実際に通勤が発生しないので、原則として通勤手当を支給する必要はありません。
ただし、就業規則に「有給休暇取得日は通勤手当を支給しない」とだけ記載している場合、定期券代を1ヵ月単位や6ヵ月単位で支給している企業では、従業員が支給の有無について混乱する可能性があります。
そのため、実務上は企業の通勤手当の支給形態に合わせて、具体的に取り決めておくことが望ましいです。例えば「定期代は有給取得に関わらず全額支給する」などと就業規則や給与規程に明記しておくことで、トラブルを未然に防止できます。
3-3. 有給休暇を時間単位で取得した場合の対応
労使協定を締結することで、有給休暇は1日単位のほかに、時間単位で取得することも可能です(ただし、年5日を超える取得はできません)。
この場合、1時間あたりの賃金は、前述で紹介した3つの計算方法のうちいずれかの方法で算出した1日あたりの賃金を、所定の労働時間で割った金額となります。そのため、計算方法によっては時間単位の賃金算出が複雑になることがあり、企業は正確に計算できるよう注意が必要です。
また、従業員は時給を把握していないこともあるので、有給を時間単位で取得する従業員に対しては時給額を事前に伝えておくとよいでしょう。
3-4. 最低賃金の改定にともない賃金計算の方法の見直しが必要
有給休暇の賃金計算は、前述の3つの方法のいずれかでおこなうことが認められています。ただし、算出した賃金が、各都道府県で定める最低賃金を下回っていた場合、故意ではなくとも労働基準法上は違法となります。
賃金トラブルを避けるためには、有給休暇の賃金計算方法を見直し、最低賃金を下回らないようにすることが大切です。さらに、最低賃金は毎年改定されるので、一度見直しただけでは将来的に下回る可能性もあります。そのため、常に最新の情報を確認しながら適切に管理することが重要です。
3-5. 有給休暇の賃金計算は業務負担になることがある
有給休暇の賃金計算は、思わぬ業務負担になります。有給休暇の賃金は、取得した日数分だけ発生するため、まずは従業員ごとの有給休暇の消化状況を正確に把握することが大切です。そのうえで、就業規則で定められた計算方法に従い、通常勤務の賃金を基準にしたり、過去3ヵ月分の平均賃金を算出したりして支払額を算定します。
この作業は通常の給与計算に加えておこなう業務となるので、担当者の負担に配慮することが重要です。とくに人員が限られる中小企業では、有給休暇の賃金計算に多くのリソースを割くのが難しいケースもあります。そのため、給与計算システムなどの業務効率化ツールの導入を検討してみるのがおすすめです。
4. 有給休暇取得日の賃金計算をスムーズにする方法


4-1. 賃金計算のルールを統一して明確化する
有給休暇を取得した際の賃金は、企業が採用する計算方法によって異なります。そのため、まずは自社でどの計算ルールを適用するかを明確にし、就業規則や給与規程にきちんと記載しておくことが重要です。
正社員と非正規社員(契約社員やパート・アルバイトなど)で異なる計算方法を採用することも可能ですが、計算が複雑になるとミスや管理コストの増加といったリスクが高まります。担当者による計算のばらつきや誤りを防ぐためにも、可能な限り計算方法を統一し、シンプルなルールで運用することが望ましいでしょう。
さらに、通勤手当など、有給休暇取得時に例外的な取り扱いが必要となる手当がある場合は、これも社内規程として明確に定め、トラブルが起きないよう従業員へ周知しておくことが重要です。
4-2. 勤怠管理システムで有給休暇の取得状況を正確に記録する
有給休暇の賃金を正しく計算するためには、従業員の有給取得状況を正確に把握することが不可欠です。従来の手作業での管理では、取得日数の記載漏れや残日数の計算ミスが起こりやすく、結果として賃金過不足や労使トラブルにつながるリスクがあります。
勤怠管理システムを導入すれば、有給取得日を自動でカウントし、残日数をリアルタイムで更新できるようになります。これにより、ヒューマンエラーの発生を大幅に抑え、正確な有給管理が可能です。
4-3. 給与計算ソフトで自動的に賃金を算出する
従業員が有給休暇を取得した際、手作業で賃金を計算すると、端数処理などでミスが起こりやすくなります。とくに従業員が多い企業では、一人ひとりの給与計算を手作業でおこなうことが大きな負担となるでしょう。
給与計算ソフトを活用すれば、事前に計算方法を設定するだけで、有給休暇取得日の賃金計算を自動でおこなえます。さらに、勤怠管理システムと連携させれば、有給の取得状況を取り込むだけで、勤怠の集計から賃金計算までを一括で処理することが可能です。
5. 【こういう場合は?】イレギュラーな有給休暇の賃金計算


5-1. 有給休暇取得日に出勤することになった場合
有給休暇を取得する日に実際に就労した場合、原則としてその日の有給休暇は消化されず、賃金は通常の労働分として計算をおこないます。取得予定日の有給が消化されなかった場合、別の日に有給を取得させるなど、企業は年5日取得義務に違反しないような対応も求められます。
有給休暇は労働者の権利であり、労働者が希望した日に取得させることが原則です。事業の正常な運営を妨げる場合に限り、企業は時季変更権を行使して取得日を変更できます。正当な理由や労働者の同意がないまま出社を強制することは違法となる可能性があるので注意が必要です。
関連記事:有給休暇義務化における「基準日」とは?5日間の取得義務についても解説
関連記事:時季変更権とは?行使するための条件や注意点を徹底解説
5-2. 退職時に未消化の有給休暇を買い取る場合
たとえ従業員が希望しても、原則として有給休暇の買取は認められていません。ただし、退職時に消化しきれなかった有給休暇が残っている場合など、特定のケースに限り買取が可能です。
有給休暇の買取は法律で義務付けられた制度ではないため、未消化分を買い取るかどうかは企業の判断に委ねられます。また、買取時の賃金額について、必ずしも有給取得日と同じ計算方法を適用する必要はなく、企業側で自由に決めることが可能です。
ただし、買取金額を高く設定すると、従業員が意図的に有給を取得せず、買取を待つ可能性もあります。したがって、有給休暇の趣旨に沿った適切なルールを整備したうえで、買取制度を導入することが重要です。
関連記事:有給休暇の買い取りは違法?退職時の対応やトラブル事例を解説
6. 有給休暇取得日の賃金計算は正しく効率的に処理しよう


また、有給休暇取得日の賃金計算は、従業員一人ひとりの有給休暇消化数を把握しなければならないため、思わぬ業務負担になります。負担が大きいとヒューマンエラーを引き起こす可能性もあるので、給与計算システムや勤怠管理システムの導入などによって、賃金計算の効率化に取り組みましょう。
有給休暇では給与が発生するため、適切な方法で計算して従業員に支給する必要があります。
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