有給休暇の事前申請は義務化可能?有給申請は何日前まで?ルールも紹介
更新日: 2025.12.24 公開日: 2020.4.23 jinjer Blog 編集部

人事・労務管理の現場の悩みの種の一つが、有給休暇の当日申請や事後申請です。急病・忌引きなどの場合はともかく、当日に従業員が突然欠勤してしまうと業務がうまく回らなくなる可能性があります。
こうした事態を防ぐために、有給休暇の事前申請を義務づけることは可能なのでしょうか。また、当日申請や事後申請には、会社としてどのようなルールを設けるのがベストなのでしょうか。
本記事では、有給休暇の事前申請を義務付ける方法から、有給申請のルール、就業規則に定めたルールを周知する方法まで、労働基準法に基づき解説します。
有休取得のルールがしっかりと社内で整備されていないため、人や部署によって申告のタイミングや内容がまちまちで管理が大変といったお悩みはありませんか?
そのような方に向け、当サイトでは有休の申請ルールで決めるべきことや決めた後の適切な周知方法まで、本記事の内容をわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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目次
1. 有給休暇の事前申請は義務付けやルール化ができる?


年次有給休暇の事前申請を制度化・義務付けることは可能なのか、まずは原則や制度化する場合に必要な手順を把握しておきましょう。
1-1. 労働基準法上は事前申請が原則
年次有給休暇の事前申請制は制度化・義務付けることが可能です。
労働基準法第39条第5項には次の規定が存在します。
【労働基準法第39条第5項】
使用者は、前各項による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
有給休暇は、本来「労働者の請求する時季」に応じて与えられる休暇です。つまり、あらかじめ時季を指定し、〇月〇日に取得したいと申し出ることによって、労働者は有給休暇を取得できます。これを「時季指定権」といいます。
一方、使用者は「事業の正常な運営を妨げる場合」があれば、労働者の指定した時季ではなく、別の時期に有給休暇を取得させることができます。この権利を「時季変更権」といいます。
事前申請ではなく事後申請がなされた場合、従業員はすでに休暇をとってしまっているため、使用者は事前に「事業の正常な運営を妨げる場合」の検討および判断ができません。つまり、時季変更権を実質的に行使し、時季を変更させることが困難となるということになります。そのため、使用者が時季変更権を行使して「事業の正常な運営を妨げる場合」かどうか判断できるようにするために、有給休暇は「事前申請」が原則だと考えられています。
この他にも有給休暇については付与の要件や日数について労働基準法で定めています。労働基準法に定められた有給のルールを網羅的に確認しておきたい方は、以下の記事をご覧ください。
▶有給休暇の労働基準法における定義|付与日数や取得義務化など法律を解説
1-2. 有給休暇の事前申請を制度化するためには
有給休暇の事前申請を制度化する場合、就業規則に記載するのが一般的です。
就業規則でルールを設けていない場合は、有給休暇を確実に事前申請してもらうのは難しくなるでしょう。
事後申請に期限を設ける場合は、労働者にとって不利益とならぬよう、合理的な範囲でおこなう必要があります。就業規則の申請期限を過ぎたからといって、有休の取得を拒むことはできないため注意が必要です。
また、急病や忌引などやむを得ない事情がある場合、慣例上事後申請を認める企業も多いでしょう。そうした例外についても就業規則で明文化するとトラブルを防止できます。
2. 有給休暇の申請ルールで決めるべきこと


有給休暇の事前申請を制度化するには、申請のルールや取得方法を就業規則に記載する必要があります。
有給休暇の申請ルールを作成する際は、「申請方法」「申請期限」「当日申請・事後申請」「時季変更権の行使」などについてルールを定めると良いでしょう。一つずつ解説していきます。
2-1. 申請方法
有給休暇の申請を何によって、誰におこなうかを定めましょう。有給休暇の申請方法は
- 口頭
- 申請書
- コミュニケーションツール(社内メールやチャットなど)
- クラウドサービス
これらが考えられますが、口頭のみの申請だと日付の勘違いや申請を受けた人のうっかり忘れなどが考えられます。形に残る申請書やコミュニケーションツールを活用するようにしましょう。
なお、いずれの場合も申請する際は有給休暇を取得する日や時間(時間単位の取得を認めている場合)の記載を必須とし、誰に申請するかまでを決めましょう。
2-2. 申請期限
有給休暇を取得する何日前までに申請すればよいか、申請期限を決めます。
法的には具体的に日数は定められておらず、会社ごとに規則を設けます。
もし従業員が希望している有給取得日が繁忙期と重なっている場合、代わりの人材確保や業務量配分調整などをしなければなりません。そのことを考慮すると前日の申請では間に合わないでしょう。
逆に、使用者側が前もって業務の調整をしたいからといって1ヵ月前までの申請とした場合、従業員は有給休暇を使いにくくなってしまいます。どうしても業務調整が難しい場合を除き、合理的な理由がない限り不当な取得妨害とみなされ、労働基準法違反となる場合もあります。
このようなことを踏まえて、一般的には取得日の3日~1週間前までとしていることが多いようです。
2-3. 当日申請・事後申請の扱い
申請期限と一緒に考えておきたいのが、当日申請と事後申請の扱いです。
有給休暇は事前申請が前提ですが、当日申請と事後申請を認めても違法ではありません。ただし、従業員とのトラブルを避けるため、きちんとルールを設けて就業規則に記載しておくことをおすすめします。
当日申請については、いつまでに、誰に、どのような方法で申請するのかをあらかじめ決めておきましょう。事後申請も基本は当日申請と同様ですが、どのような場合に事後申請を認めるかを決めておくと良いでしょう。
2-4. 時季変更をする場合
どのような場合に時季変更権を行使する可能性があるかを具体的にしておくことをおすすめします。
労働基準法では「事業の正当な運営を妨げる場合」としています。しかし、より具体的に「繁忙期・決算期である〇月」「退職者がでており、一時的に業務がひっ迫している場合」など、時季変更権を行使する可能性がある状況を示しておきましょう。
2-5. 【注意】有給申請時に理由は必要ない
有給休暇は労働者の心身のリフレッシュやワークライフバランスの確保を目的に労働基準法で取得が定められている休暇です。有給休暇を取得することは労働者の権利であるため、企業はいかなる理由であっても労働者から請求された有給取得を拒むことはできません。
したがって、有給休暇を取得する際に理由を申告させる必要はありません。もし申告させるとしても、その理由によって有給取得を拒むことはできないため、注意しましょう。
有給休暇は取得だけでなく、適切な方法で申請してもらわなければ、従業員とのトラブルになりかねません。当サイトでは、有給休暇の申請ルールを整えたいという人事担当者様に向けて、本記事の内容をわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。気になった方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
3. 有給休暇のルールを変更するには


有給休暇に関連するルールは、会社側の独断で急に変更すべきではありません。どのような手順が必要なのか、トラブル回避のために把握しておきましょう。
3-1. 従業員に周知しなくてはいけない
就業規則を変更する場合は、労働基準法第106条により、従業員に周知することが求められます。これを就業規則の周知義務といいます。
従業員に周知する具体的な方法は、労働基準法施行規則第52条において規定されています。
【就業規則の周知義務】労働基準法施行規則第52条
一 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は掲げる方法とする
二 書面を労働者に交付すること
三 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
上記を踏まえて、ポスターや張り紙での掲示や書面での交付をおこない、業務に使うコンピューターやタブレットなどで、いつでも就業規則を閲覧できる状態にしておきましょう。
判例上、周知徹底をおこなっていない就業規則は効力を持たず、従業員を拘束することはできません。余計なトラブルを避けるためにも、有給休暇の管理に関するルールを設ける場合は必ず従業員に周知しましょう。また、自社のルールを新しく作る場合には、法令に違反していないか確認しておくようにしましょう。
3-2. 就業規則にも明記しておく
有給休暇に関するルールは、就業規則に記載しておくことをおすすめします。
就業規則によって明確に制度化されていれば、従業員はその内容を理解した上で計画的に休みを取ったり、業務を前倒ししたりできます。
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4. 有給休暇の当日申請・事後申請への企業の2つの対応


有給休暇の当日申請・事後申請に対し、企業としてどのような対応がベターなのでしょうか。当日申請であってもあれば、時季変更権の行使が可能です。
事後申請については、就業規則でルールを取り決め、個別対応をおこないましょう。
4-1. 当日申請でも事情に応じてできる限りの対応を検討する
従業員が勤務当日に有給休暇を申請した場合でも、「当日だから」という理由だけで申請を却下することは適切ではありません。体調不良や家庭の事情など、緊急性や配慮が必要なケースも少なくないためです。
また、時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる場合」にのみ行使できるものであり、当日申請であること自体は行使の条件には含まれません。そのため企業としては、代替要員を確保する、業務を調整するなど、可能な範囲で対応する姿勢が求められます。
さらに、当日の申請をどのように扱うのか、申請方法や申請の締め切り時間などを就業規則で明確に定めておくことで、双方のトラブルを未然に防ぐことができます。
4-2. 就業規則で事後申請についてのルールを定めておく
労働基準法上、有給休暇の事後申請を認める義務はありません。しかし、急病・忌引などやむを得ない場合もあるでしょう。そのため、企業の裁量によって、事後申請を部分的に認めることができます。
ただし、明確な許可基準がなければトラブルになりかねません。就業規則に事後申請についてのルールを記載しておくと安心です。たとえば、病欠の場合は病院の診断書、忌引の場合は会葬礼状の写しを提出してもらうといったルールを明文化して、従業員に周知徹底をおこないましょう。
関連記事:有給休暇の義務化で就業規則を変更する場合に注意すべき2つのポイント
5. 有給休暇において事前申請のルールが違法となるケース


有給休暇における事前申請のルールは、企業が自社の就業規則に基づいて制定しますが、場合によってはそのルールが違法となることがあります。具体的には、企業が定めた申請手続きが実質的に有給取得を阻害するような内容である場合です。詳しくみていきましょう。
5-1. 申請方法が分かりづらく事実上取得を妨げている場合
具体的には、次のようなケースが考えられます。
まず、事前申請の方法や申請先が労働者に十分に周知されていない場合です。このような状況では、労働者が正しく申請することができず、実質的に有給休暇を取得する機会が奪われてしまいます。
さらに、手続きがあまりにも複雑で、事前に申請することが事実上不可能である場合も問題です。例えば、多くの書類を用意しなければならない、または複数の承認を得る必要があるといった状況が該当します。
5-2. 会社の休暇取得の承認に不当に長い時間がかかる場合
また、事前申請が求められているにもかかわらず、会社がその申請を一切受理しない場合もあります。このような行為は、労働者の権利を侵害するものであり、法的にも許されません。労働者が有給休暇を取得したいと望む際に、迅速に承認されずに時間がかかると、予定を立てることが難しくなり、実質的な取得が阻害されます。事前申請の期間が不当に長く設定されている場合も法令違反となる可能性があります。
企業は、業務の調整と有給休暇の取得を両立させるために、適切な期間を設定する必要がありますが、あまりにも長い期間前からの申請を要求することは、労働者にとって逆効果です。業務の予定が明瞭でないため、逆に調整が難しくなることが予想されます。
このように、事前申請のルールが実質的に有給休暇の取得を困難にさせている場合は、労働基準法に反することになり、適切な改善が求められます。企業は、労働者が便利に、かつ権利を行使できるような制度の整備に努めるべきです。
5-3. 申請期限を理由に有給取得を認めない場合
就業規則に申請期限を定めていても、それを理由に有給休暇の取得を希望する従業員の申請を拒むことはできません。法律上、有給休暇を希望した日に与えなくても良いとされるのは、「事業の正常な運営を妨げる場合」に他の時季にこれを与えることができる、という時季変更権の行使が認められる場合です。
有給休暇は労働基準法によって認められた労働者の権利であるため、申請期限を過ぎているからといってこれを拒むことは違法とされる可能性が高いでしょう。
申請期限を過ぎてから申請をしてきた従業員に対しては、期限を過ぎた理由を確認した上で希望通りの日に取得できるよう配慮が必要です。理由によっては、申請期限を守るよう本人へ注意を促すことで、事前申請の徹底につなげられるでしょう。
6. 有給休暇の事前申請は義務づけ可能!就業規則に記載して周知しよう


今回は、有給休暇の事前申請を制度化する方法や、当日申請・事後申請への対処法を解説しました。労働基準法上、有給休暇の事前申請を義務付けることは可能です。
有給休暇のルールは就業規則に記載し、労働基準法施行規則に基づき周知徹底をおこないましょう。有給休暇の当日申請においては、業務に大きな支障が出る場合に限って、時季変更権の行使が可能です。
事後申請については、事後申請が認められる条件をあらかじめ就業規則に記載して、トラブルを未然に防ぎましょう。
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