住民税の控除とは?控除の流れや項目・種類をわかりやすく解説
更新日: 2025.6.11
公開日: 2025.5.31
jinjer Blog 編集部
「住民税の控除とは?」
「住民税の控除の流れが知りたい」
「住民税の控除項目には何がある?」
住民税の控除について、上記の疑問をもつ人事労務の担当者もいるのではないでしょうか。
住民税の控除とは、扶養家族の有無や支出内容など、従業員の状況に応じて一定の税額を差し引き、住民税の算出額を軽減する仕組みです。
企業は、自治体の通知に基づいて代行納付する流れですが、間違いがないか確認するために、正しい計算方法を把握しておくことが大切です。
本記事では、住民税の控除の仕組みについて解説します。控除の計算方法や控除項目についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 住民税は控除を加味して計算される
従業員が居住する自治体に納める住民税は、所得や個人の状況に応じた控除を加味して計算します。例えば、扶養家族の有無や医療費の支出などに応じて、住民税の課税額が軽減される仕組みです。
こうした控除の仕組みを正しく理解するには、住民税の構成や控除が反映される対象をあらかじめ把握しておくことが重要です。
住民税は、以下の2つの要素から構成されています。
区分 | 所得割 | 均等割 |
内容 | 課税所得に税率(10%)をかけて計算 | 所得に関係なく一律の金額が課される |
控除の影響 | あり | 原則なし |
なお、控除の計算や税額の決定は市区町村がおこないます。企業は、自治体から届く「住民税決定通知書」に基づいて、住民税を正しく天引き・納付する役割を担います。
通知内容を正しく理解するためにも、控除と計算の仕組みを把握しておくことが重要です。
2. 住民税の控除対象となる項目
住民税の控除対象となる項目は、大きく分けて以下の2つです。
- 所得控除
- 税額控除
両者のおもな違いは、控除を所得からおこなうか、課税額から直接おこなうかです。具体的な内容は以下のとおりです。
2-1. 所得控除
住民税の所得控除とは、課税所得金額を算出する際に、所得金額から差し引かれる控除です。
住民税の所得割額は、以下のような流れで計算されます。
- 給与所得や事業所得などの収入から必要経費を差し引いて所得金額を算出
- 所得金額から各種控除を適用して「課税所得金額」を算出
- 課税所得金額に10%の税率をかけ「所得割額」を算出
所得控除が多くなるほど課税所得が減るため、結果として住民税の金額も軽減されます。
2-2. 税額控除
住民税の税額控除とは、算出された住民税額から一定額を差し引く控除です。
税額控除は、課税所得に税率をかけて求めた「所得割額」から適用されます。控除が反映される流れは、以下のとおりです。
- 所得控除を適用して課税所得金額を算出
- 課税所得金額に10%の税率をかけて住民税の「所得割額」を算出
- 所得割額から、配当控除やふるさと納税などの税額控除を差し引く
税額控除は税金そのものを直接軽減できるため、同じ金額の控除であれば所得控除より節税効果が高くなります。
なお、上記の計算はすべて市区町村がおこないますが、企業としても控除の流れを把握しておくことで、通知書の内容確認や従業員への対応に役立ちます。
3. 住民税の所得控除の種類
住民税の所得控除の種類と概要は以下のとおりです。
所得控除の種類 | 概要 |
基礎控除 | 所得の合計が2,500万円以下の従業員が対象となる控除 |
配偶者控除 | 所得の合計が1,000万円以下の従業員のうち、生計を一にする配偶者の合計所得が48万円以下のときに受けられる控除 |
配偶者特別控除 | 所得の合計が1,000万円以下の従業員のうち、生計を一にする配偶者の合計所得が48万円を超え、かつ133万円以下のときに受けられる控除 |
扶養控除 | 生計を一にする扶養親族のうち、合計所得が48万円以下の人がいる従業員が受けられる控除 |
医療費控除 | 従業員自身と、生計を一にする家族のために支払った医療費に関する控除総所得金額の5%または10万円を超える部分が対象(上限200万円、保険金で補填された額は除く) |
社会保険料控除 | 従業員自身と、生計を一にする家族のために支払った社会保険料(健康保険料、年金保険料、介護保険料、雇用保険料など)に関する控除 |
雑損控除 | 盗難・災害・横領などによる資産損害に対して適用される控除。損失額から所得の10%を引いた額、または災害関連支出−5万円のいずれか多い方が適用される |
生命保険料控除 | 生命保険料や個人年金保険料を対象に受けられる控除。旧契約・新契約ごとに計算して加算し、上限12万円までが控除可能 |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払った従業員が受けられる控除。上限5万円までが控除可能 |
障害者控除 | 従業員自身と、生計を一にする配偶者や扶養親族がいるときに受けられる控除
以下が控除可能 ・障害者:26万円 ・特別障害者:30万円 ・同居特別障害者:53万円 |
ひとり親控除 | 前年の合計所得が500万円以下の従業員のうち、ひとり親に該当する人が受けられる控除 |
寡婦控除 | 前年の合計所得が500万円以下の従業員のうち、ひとり親控除の対象とならず、かつ以下のいずれかに該当する女性が受けられる控除
・夫と離婚後に結婚せず、かつ扶養親族がいる ・夫と死別後に結婚していない、もしくは夫の生死が不明 ※事実婚に該当する場合は対象外 控除額は26万円 |
勤労学生控除 | 勤労学生の従業員が受けられる控除。控除額は26万円 |
小規模企業共済等掛金控除 | 以下を支払った従業員が受けられる控除
・小規模企業共済の掛金 ・確定拠出年金の掛金 ・個人型年金加入者掛金 ・心身障害者扶養共済掛金 控除額は、上記の金額分が対象 |
上記の控除は、原則として1年間に実際に支払った金額をもとに適用されます。
年末調整や確定申告の際には、必要な証明書類の提出が求められる場合もあるため、控除内容とあわせて確認しておくことが重要です。
4. 住民税の税額控除の種類
住民税の税額控除のおもな種類は以下のとおりです。
税額控除の種類 | 概要 |
寄附金税額控除 | 特定の団体に対し、2,000円を超過する寄附(ふるさと納税、赤い羽根共同募金など)をした際に受けられる控除 |
住宅借入金等特別税額控除 | 住宅ローン控除の適用を受けている人が、所得税から控除しきれない額を住民税から控除 |
配当控除 | 株式をはじめとした一定の配当所得がある従業員が受けられる控除(外国株、申告分離課税の選択時を除く) |
外国税額控除 | 日本国外で所得税や県民税、市民税に該当する税を支払った従業員が、二重課税を避ける目的で受けられる控除 |
調整控除 | 合計所得が2,500万円以下の従業員を対象に、所得税と住民税の控除額の差による負担を軽減するための控除 |
税額控除は、確定申告や年末調整をおこなう際に申告が必要なものも多いため、従業員からの申告内容や提出書類に基づいて正しく判断することが重要です。
5. 住民税の控除に関するよくある質問
住民税の控除に関するよくある質問について、以下の2つを紹介します。
- 住民税は企業側が支払うもの?
- 住民税は年末調整で還付する必要がある?
回答は次のとおりです。
5-1. 住民税は企業側が支払うもの?
住民税は、従業員本人に代わり企業が納めるのが基本です。企業が給与天引きの形で納める住民税を「特別徴収」と呼びます。
従業員の居住地の自治体から送付される「特別徴収税額通知」をもとに企業が毎月の給与から住民税を差し引き、年12回に分けて納付する仕組みです。
一方で、個人ごとに納付をおこなう「普通徴収」も存在します。退職後に就職していない人や、給与所得以外の所得がある人などが、確定申告を通じて申請するのが一般的です。
企業が住民税を「代わりに払っている」わけではなく、あくまで自治体の制度に従って納付を代行している点に注意が必要です。
5-2. 住民税は年末調整で還付する必要がある?
住民税には年末調整による還付はありません。
年末調整は、あらかじめ見込み額で計算・徴収していた所得税を、年末に実際の所得額で精算するものです。一方、住民税は見込み額ではなく、前年の確定した所得をもとに後から計算して徴収します。
このように住民税は後払い方式のため、基本的には還付や調整が発生することはありません。
6. 住民税の控除について理解し企業運営に役立てよう
住民税の控除は、従業員一人ひとりの状況を加味して税額を調整するための仕組みです。
控除には、所得から差し引く「所得控除」と、算出された税額から直接差し引く「税額控除」の2種類があります。
所得控除の代表的な項目には、基礎控除や配偶者控除、扶養控除、医療費控除は、住民税の所得控除などが挙げられます一方、住民税の税額控除には、ふるさと納税をはじめとした寄附金税額控除や配当控除、住宅ローン控除などがあります。
住民税は、各自治体が計算した特別徴収税額通知をもとに、企業が従業員の給与から天引きする特別徴収が基本です。仕組みを理解したうえで遅滞なく適切に対応し、健全な企業運営に役立てましょう。
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