住民税の扶養控除とは?適用条件・控除額・所得税との違いを解説
更新日: 2025.6.11
公開日: 2025.6.2
jinjer Blog 編集部
「住民税の扶養控除とは?」
「住民税の扶養控除の条件が知りたい。」
上記のような疑問をお持ちではありませんか。
住民税の扶養控除は、生計を一にする親族を扶養している場合に、税負担を軽減できる制度です。
本記事では、住民税の扶養控除について、適用条件や控除額、所得税との違いまでわかりやすく解説します。住民税の扶養控除について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1. 住民税の扶養控除とは|生計を一にする親族がいる場合に税負担を軽減できる制度
住民税の扶養控除とは、同じ生活費で生計を立てている親族を扶養している場合に、課税所得から一定額が差し引かれる制度です。
子どもや親などを扶養している人は、単身者と比べて生活費や教育費などの支出が多くなります。住民税の扶養控除は、こうした家計の負担に配慮し、課税所得から一定額を差し引けるよう設けられた制度です。
例えば、要件を満たす親族を扶養している場合、住民税が年間で数万円ほど軽減されます。
扶養控除は、家族を支える納税者の経済的な負担を軽減するための制度です。
2. 住民税の扶養控除が適用される条件
住民税の扶養控除を受けるためには、以下のすべての条件を満たす必要があります。
条件 | 説明 |
扶養親族の所得が48万円以下であること(令和3年度分以降) | 給与収入のみの場合は、年収103万円以下で判定される。 |
ほかの人の扶養親族になっていないこと | 扶養控除は重複して適用できない。一人の扶養親族に対して複数人が同時に扶養控除を受けることは不可。 |
控除を受ける納税者との間に親族関係があること | 対象となるのは、配偶者を除く6親等内の血族、3親等内の姻族など。配偶者は扶養控除ではなく、配偶者控除・配偶者特別控除の対象。 |
納税者と生計を一にしていること | 同居している必要はなく生活費の援助や仕送りを継続していれば認められる |
上記の「生計を一にする」とは、生活費を共通の資金でまかない、実質的に生活を支えている関係のことです。例えば、別居中の大学生の子どもや、単身赴任中の家族に仕送りをしている場合なども、条件を満たせば扶養親族として認められます。
参考:生計を一にする|国税庁
3. 住民税の扶養控除額はいくら?対象区分ごとに解説
住民税の扶養控除額を、以下の対象区分ごとに解説します。
- 一般の扶養親族|控除額:33万円
- 特定扶養親族|控除額:45万円
- 老人扶養親族|控除額:38万円・45万円
- 配偶者は扶養控除の対象外
3-1. 一般の扶養親族|控除額:33万円
住民税における一般の扶養親族の控除額は、33万円です。
一般の扶養親族とは、16歳以上19歳未満、および23歳以上70歳未満の親族で、特定扶養親族や老人扶養親族に該当しない扶養親族を指します。
例えば、17歳の高校生や、大学卒業後に就職して実家で暮らしている25歳の子どもなどが、一般の扶養親族の該当者です。
3-2. 特定扶養親族|控除額:45万円
特定扶養親族に該当する場合、住民税における扶養控除額は45万円です。
特定扶養親族とは、19歳以上23歳未満(その年の12月31日時点)の扶養親族を指します。
上記の年代は大学や専門学校に通っているケースが多く、学費や生活費の支援が必要です。そのため、一般の扶養親族よりも控除額が高く設定されています。
教育にかかる経済的な負担を軽減する観点からも、特定扶養親族に対する控除は重要な制度といえるでしょう。
3-3. 老人扶養親族|控除額:38万円・45万円
老人扶養親族に該当する場合、住民税の扶養控除額は以下のとおりです。
同居していない場合 | 38万円 |
同居している直系尊属(親・祖父母など) | 45万円 |
老人扶養親族とは、その年の12月31日時点で70歳以上の親族を指します。同居の有無により控除額が異なるのが特徴です。
申告内容を確認する際は、年齢や親族関係だけでなく、同居の有無も必ずチェックしましょう。
3-4. 配偶者は住民税の扶養控除の対象外
配偶者は住民税の扶養控除の対象外です。ただし、別途「配偶者控除」または「配偶者特別控除」が設けられています。
区分 | 所得要件(配偶者) | 控除額(住民税) |
配偶者控除(一般) | 所得48万円以下 | 最大33万円 |
配偶者控除(老人) | 所得48万円以下・70歳以上 | 最大38万円 |
配偶者特別控除 | 所得48万円超〜133万円未満 | 所得に応じて段階的に減額(最大33万円) |
上記の控除は、住民税の扶養控除とは別枠で運用されています。そのため「住民税の扶養親族の対象外といって不利になる」わけではありません。
なお、納税者の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除・配偶者特別控除いずれも適用対象外となります。
4. 住民税の扶養控除と所得税の扶養控除の違い
住民税の扶養控除と所得税の扶養控除の違いを、以下の流れで解説します。
- 扶養控除の控除額の違い
- 扶養控除が適用される年度の違い
4-1. 扶養控除の控除額の違い
住民税の扶養控除と所得税の扶養控除の違いは、以下のとおりです。
区分 | 住民税 | 所得税 | 差額 |
一般扶養(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満) | 33万円 | 38万円 | 5万円 |
特定扶養(19歳以上23歳未満) | 45万円 | 63万円 | 18万円 |
老人扶養(70歳以上で同居していない場合) | 38万円 | 48万円 | 10万円 |
老人扶養(70歳以上で同居している場合) | 45万円 | 58万円 | 13万円 |
扶養親族の区分ごとに、住民税と所得税で適用される控除額は異なります。扶養控除の金額は住民税の方が所得税よりも少なく設定されているのが特徴です。
そのため、所得税の課税額が控除によりゼロになるケースでも、住民税は課税される場合があります。
4-2. 扶養控除が適用される年度の違い
扶養控除が適用される年度の違いは、以下のとおりです。
扶養状況の判定基準年 | 反映される年 | |
住民税 | 前年 | 翌年度分の住民税 |
所得税 | 当年(申告した年) | 当年分の所得税 |
所得税は、その年の扶養状況に基づいて課税額が決まるため、申告した年の所得税に直接反映されます。一方、住民税は前年の所得や扶養状況をもとに計算されるため、扶養控除が適用されるのは翌年度です。
例えば、令和6年(2024年)の年末調整で扶養親族を申告した場合、その情報は令和6年分の「所得税」に適用されますが、「住民税」に反映されるのは令和7年度(2025年度)になります。
控除額だけでなく、扶養控除が適用される年度が異なる点も押さえておきましょう。
5. 住民税の扶養控除と16歳未満の子どもの取り扱い
住民税では、16歳未満の子どもは扶養控除の対象外です。ただし、申告は必要となります。住民税の均等割や所得割の非課税限度額の判定に、扶養親族の人数が関係しているためです。
申告がなければ「扶養親族がいない」とみなされ、本来は非課税となるはずの方が課税対象になる可能性があります。また、ひとり親控除や障害者控除、寡婦(寡夫)控除など、ほかの控除の適用にも影響を及ぼす場合があるため、注意が必要です。
16歳未満の子どもに住民税の扶養控除はありませんが、非課税判定などの重要な情報となるため、申告書への記載が求められます。
6. 住民税の扶養控除がある場合とない場合の違い
住民税の扶養控除がある場合とない場合の違いは、以下のとおりです。(所得金額350万円の場合)
扶養控除なしの場合 | 扶養控除あり(1人) | |
所得金額 | 350万円 | 350万円 |
基礎控除 | ▲43万円 | ▲43万円 |
扶養控除 | − | ▲33万円 |
課税所得額 | 307万円 | 274万円 |
住民税(所得割10%) | 30万7,000円 | 27万4,000円 |
住民税差額 | − | 3万3,000円 |
上記のように、扶養控除が一人分あるだけでも、住民税が年間で3万円以上軽減される可能性があります。
子どもや親などを扶養している家庭では、扶養控除を正しく適用することで、税負担を効果的に軽減できるでしょう。
7. 住民税の扶養控除を正しく理解して従業員対応に活かそう
住民税の扶養控除は、納税者が扶養親族を支えている場合に、税負担を軽減するための制度です。適用を受けるには、扶養親族の所得が48万円以下であることや、生計を一にしていることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。
控除額は、扶養親族の区分に応じて異なるのが特徴です。一般扶養親族は33万円、特定扶養親族は45万円、老人扶養親族は38万円または45万円が課税所得から控除されます。
扶養控除の制度や注意点を正しく理解しておくことで、従業員からの申告内容を正確に確認できるでしょう。また、質問にも自信を持って対応できるようになります。
住民税の扶養控除を正しく理解して、従業員対応に活かしてください。
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