退職金は年末調整の対象となる?かかる税金や退職金を受け取った際の手続きを解説
更新日: 2025.5.27 公開日: 2024.7.3 jinjer Blog 編集部

「退職金を年末調整しないとどうなる?」
「退職金にかかる税金は?」
「退職金を受け取った際の手続きは?」
上記のように悩んでいる方もいるでしょう。
退職金は年末調整の対象外です。また、退職金にかかる税金は受け取り方など諸条件によって異なります。
本記事では、退職金にかかる税金や計算方法、確定申告が必要なケースなどについて解説します。従業員が退職金を受け取った際に適切なアドバイスができるよう、経理・労務担当の方はぜひ参考にしてください。
目次
「特定親族特別控除」が新設されるなど、例年以上に複雑になる令和7年の年末調整。
従業員からの問い合わせが増える年末に、最新の制度をどう案内すればいいか、不安に感じていませんか?
◆よくある質問
Q. 大学生などのアルバイト収入が増えても、親の控除額は減らない?
Q. 年末調整の対象者は?
Q. 退職者や二か所で働く従業員の年末調整は必要?
このようなよくある疑問から、記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法まで年末調整のあらゆる疑問をまとめた「年末調整と源泉徴収Q&A」を無料配布しています。
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1. 退職金は年末調整の対象外


退職金は退職所得として分離課税されるため、年末調整の対象になりません。従業員が退職金を受け取る際に、課税関係が終了します。
従業員に毎月支払う給与は年末調整の対象となるので、混同する方も多いでしょう。
年末調整とは、従業員へ給料を支払った際に源泉徴収した税金の合計額と、実際に納めるべき税金額の差額を調整することです。
給与から源泉徴収する金額は、毎月の給与額に変動がないものとして計算された概算金額になります。しかし、実際は給与に変動が生じるケースが多く、年末調整によって還付もしくは追加徴収が必要となるわけです。
2. 退職金にかかる税金と計算方法


退職金にかかる税金と計算方法について、以下の流れで詳しく解説します。
- 退職金にかかる税金
- 退職金にかかる税金の計算方法
2-1. 退職金にかかる税金
退職金には以下の3つの税金がかかります。
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
所得税は、毎年1月1日~12月31日までの所得に対し課税されます。国税庁が発表した令和6年分所得税の税額表は以下の通りです。
| 課税退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
| 1,000円~1,949,000円までの場合 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円~3,299,000円までの場合 | 10% | 975,000円 |
| 3,300,000円~6,949,000円までの場合 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円~8,999,000円までの場合 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円~17,999,000円までの場合 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円~39,999,000円までの場合 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上の場合 | 45% | 4,796,000円 |
住民税は、1月1日時点で住んでいる都道府県と市町村に対し納めて納める税金です。退職金にかかる住民税は一律10%と定められており、課税退職所得の金額は関係ありません。
復興特別所得税は、東日本大震災の復興に向けた財源を確保するための税金です。平成25年1月1日~令和19年12月31日までの間に支給する退職金には復興特別所得税が課税されます。復興特別所得税の税率は一律2.1%です。
参照:退職金と税|国税庁
2-2. 退職金にかかる税金の計算方法
退職金にかかる税金の計算方法を、以下の受け取り方ごとに解説します。
| 所得の種類 | 課税方法 | 課税対象となる所得額の計算方法 | |
| 一時金で受け取る場合 | 退職所得 | 分離課税 | (退職金額-退職所得控除額)×1/2 |
| 年金で受け取る場合 | 雑所得 | 総合課税 | 退職金による年金や公的年金などの所得金額-公的年金等控除額 |
一時金で受け取る場合
一時金で受け取る場合の税金の計算方法は、以下のとおりです。
| 所得税額 | 課税退職所得額×所得税率-控除額 |
| 住民税額 | 課税退職所得額×住民税率(10%) |
| 復興特別所得税額 | 所得税額×復興特別所得税の税率(2.1%) |
計算に必要な数値の求め方は以下となります。
| 課税退職所得額 | (退職金額-退職所得控除額)×1/2 |
| 退職所得控除額 | ・勤続年数が20年以下の場合
40万円×勤続年数(ただし、80万円に満たなければ80万円) ・勤続年数が20年超の場合 800万円+70万円×(勤続年数‐20年) |
所得税率と控除額、住民税は前述の通りです。
退職金を一時金で受け取る場合は「退職所得」となり、その所得のみを対象に独自の税率や控除が適用される課税方法(分離課税)の扱いになります。退職金は一度に入る金額が大きく、ほかの所得と合算すると税金の負担が大きくなるためです。
退職金は長年勤務した感謝の意味を込めた支給であり、老後の生活に必要なお金であることから、退職所得控除が適用されます。退職所得控除は勤続年数が長いほど税金の負担が低くなるように定められています。
参照:退職金と税|国税庁
参照:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
年金で受け取る場合
年金で受け取る場合の税金の計算方法は、以下のとおりです。
| 所得税額 | 課税所得額×所得税率 |
| 住民税額 | 課税所得額×住民税率(10%) |
| 復興特別所得税額 | 所得税額×復興特別所得税の税率(2.1%) |
計算に必要な数値の求め方は、以下となります。
| 課税所得額 | 課税対象となる公的年金等にかかる雑所得額+そのほかの所得額 |
| 課税対象となる公的年金等にかかる雑所得額 | 退職金による年金や公的年金などの収入金額-公的年金等控除額 |
退職金を年金として受け取る場合は総合課税扱いになります。所得金額を合算して税額を計算する方法で、以下の所得が対象です。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
退職金を年金で受け取ると雑所得に分類され、ほかの公的年金収入などと合算した金額が収入合計額となります。
公的年金等にかかる雑所得の金額は、上記の表のとおり、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算する仕組みです。ただし、具体的には下記の表の計算式を使用して算出します。
【公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合】
| 年金を受け取る年齢 | 公的年金などの収入合計額 | 課税対象となる公的年金等にかかる雑所得の合計額 |
| 65歳未満の場合 | 60万円以下 | 0円 |
| 60万円超130万円未満 | 収入金額の合計額‐60万円 | |
| 130万円以上410万円未満 | 収入金額の合計額×0.75‐27万5千円 | |
| 410万円以上770万円未満 | 収入金額の合計額×0.85‐68万5千円 | |
| 770万円以上1,000万円未満 | 収入金額の合計額×0.95‐145万5千円 | |
| 1,000万円以上 | 収入金額の合計額‐195万5千円 | |
| 65歳以上の場合 | 110万円以下 | 0円 |
| 110万円超330万円未満 | 収入金額の合計額-110万円 | |
| 330万円以上410万円未満 | 収入金額の合計額×0.75‐27万5千円 | |
| 410万円以上770万円未満 | 収入金額の合計額×0.85‐68万5千円 | |
| 770万円以上1,000万円未満 | 収入金額の合計額×0.95‐145万5千円 | |
| 1,000万円以上 | 収入金額の合計額‐195万5千円 |
課税対象となる雑所得は年金を受け取る年齢や収入合計額によって異なるため、参考にしてください。
なお、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が「1,000万円超2,000万円以下」と「2,000万円超」の場合、計算に使用する表が上記とは異なります。詳しくは国税庁のホームページを参照ください。
3. 退職金の受け取り後に確定申告が必須となるケース


退職金の受け取り後に確定申告が必要になるのは以下のケースです。
- 公的年金などの収入合計額が400万円を超える
- 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない
3-1. 公的年金などの収入合計額が400万円を超える
退職金を受け取る従業員が年金受給者で、公的年金などの収入合計金額が400万円を超える場合は確定申告が必要です。確定申告をする際に、受け取った退職金の金額も確定申告書に記載しなければいけません。
公的年金は国民年金や厚生年金などを意味するため、生命保険会社や損害保険会社などで加入している個人年金保険は対象外です。
3-2. 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない
企業に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない従業員には確定申告を勧めましょう。申告書を提出していないと退職所得控除額が適用されず、企業が支払った退職金に対し20.42%の税金が徴収されるためです。
確定申告することで多く払い過ぎた税金の還付を受けられます。
参照:A2-29 退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)|国税庁
4. 退職金の受け取り後に確定申告するとよいケース


退職金の受け取り後に確定申告するとよいケースは以下の2つです。
- 年の途中で退職した人
- 各種控除を受けたい人
退職金の確定申告は原則不要ですが、確定申告をすることで税金の一部が還付されるケースがあります。それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
4-1. 年の途中の場合で退職した人
年の途中で退職して年末調整を受けていない場合は、従業員自身で確定申告することをおすすめしましょう。毎月支払う給与から源泉徴収される金額は概算額に過ぎず、本来であれば年末調整で還付もしくは追加徴収されるためです。
4-2. 各種控除を受けたい人
医療費控除や寄附金控除などの所得控除を受けたい場合は、確定申告が必要です。生命保険料控除や地震保険料控除は年末調整で申告できますが、申告を失念した場合も確定申告で控除を受けられます。
5. 退職金は年末調整の対象外だが必要に応じて確定申告を勧めよう


退職金は従業員に支給する時点で課税関係が終了しているため、年末調整の対象外です。ただし、確定申告することで多く払い過ぎた税金の還付を受けられるケースもあります。
経理・労務担当者の方は、対象となる従業員の状況に応じて確定申告することを勧めるようにしましょう。



「特定親族特別控除」が新設されるなど、例年以上に複雑になる令和7年の年末調整。
従業員からの問い合わせが増える年末に、最新の制度をどう案内すればいいか、不安に感じていませんか?
◆よくある質問
Q. 大学生などのアルバイト収入が増えても、親の控除額は減らない?
Q. 年末調整の対象者は?
Q. 退職者や二か所で働く従業員の年末調整は必要?
このようなよくある疑問から、記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法まで年末調整のあらゆる疑問をまとめた「年末調整と源泉徴収Q&A」を無料配布しています。
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