給与未払いの状態とは?時効・罰則や発生時の対応・防止策を解説
更新日: 2026.7.2 公開日: 2022.2.14 jinjer Blog 編集部

従業員に本来支払うべき賃金が支払われない「給与未払い」は、労働基準法違反にあたる重大なリスクです。意図的な未払いはもちろん、計算ミスや法改正への対応漏れによっても発生する可能性があります。
本記事では、給与未払いの定義や罰則、時効などの基礎知識から、万が一発生した際の対応手順を解説します。さらに、ダブルチェック体制の構築やシステムの導入といった再発防止策についても紹介します。
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目次
1. 給料未払いの状態とは


従業員に対して、本来支払うべき給与が支払われていない状態を「給与未払い(未払い賃金)」といいます。未払い賃金には、本来支払うべき金額より少ないケースや、給与支払日を過ぎても支給されないケースなども含まれます。
また、支払われた給与額が最低賃金を下回っている場合には、最低賃金との差額について未払い賃金が発生している状態となります。未払いの対象となる賃金には、主に次のようなものがあります。
- 毎月支払われる基本給や各種手当
- 時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金
- 年次有給休暇取得時の賃金
- 休業手当
- 就業規則や労働契約などで支給条件が定められている賞与や退職金
- その他、労働基準法第11条における「賃金」に該当するもの
労働の対価として支払われるものであれば、未払い賃金の対象となる可能性があります。給与は従業員の生活を支える重要な対価であり、会社には法律に基づいて適切に支払う義務があります。
関連記事:労働基準法に定められた賃金とは?定義や給与との違いと5原則を解説
1-1. 会社には「賃金支払いの5原則」に基づき給与を支払う義務がある
会社は、労働基準法第24条で定められている「賃金支払いの5原則」に従って、従業員へ給与を支払わなければなりません。賃金支払いの5原則とは、次の5つです。
- 通貨払いの原則:賃金は通貨で支払うのが原則
- 直接払いの原則:従業員本人へ直接支払う
- 全額払いの原則:賃金を全額支払う
- 毎月1回以上払いの原則:毎月1回以上支払う
- 一定期日払いの原則:あらかじめ定めた一定の期日に支払う
例えば、「会社の資金繰りが厳しいため給与を一部しか支払わない」「今月分の給与を翌月にまとめて支払う」といった対応は、賃金支払いの原則に反する可能性があります。
また、法的根拠なく会社が一方的に給与から費用を差し引く行為も、労働基準法違反となるケースがあります。これらは「給与未払い」として扱われ、会社は是正勧告や罰則の対象となるおそれがあります。
また、未払いの内容が割増賃金や休業手当など特定の項目に該当する場合には、労働者の請求によって、裁判所から付加金の支払いを命じられる可能性もあるため注意しましょう。
関連記事:賃金支払いの5原則とは?例外や守られないときの罰則について
2. 給料未払いは法的措置による罰則もある


給与の未払いは、労働基準法違反に該当し、労働基準監督署による行政指導や是正勧告の対象となる可能性があります。悪質な未払いと判断された場合には、書類送検のうえ刑事手続きへ発展するケースもあります。とくに、賃金支払いの5原則に違反した場合は、労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
また、残業代・休日手当・深夜割増賃金などの「割増賃金」の未払いは、重大な法令違反として厳しく扱われています。これらの未払いが認められた場合には、労働基準法第119条に基づき、6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
さらに、給与未払いは法的リスクだけでなく、従業員との信頼関係の悪化や会社イメージの低下、人材流出といった経営上の問題を招く要因にもなります。状況によっては、事業主だけでなく、給与計算の責任者が処分の対象となるケースもあるので、適切な労務管理体制の整備が重要です。
2-1. 未払いには遅延損害金がプラスされる
給与の未払いが続くと、単に未払い賃金を支払うだけでは済まない場合があります。状況によっては、会社側に遅延損害金(遅延利息)や付加金の支払い義務が生じる可能性もあります。遅延損害金とは、本来支払うべき給与の支払いが遅れたことによって発生する金銭的負担のことです。
また、残業代や休日手当などの未払いについて、悪質性が高いと判断された場合には、裁判所が会社に対して「付加金」の支払いを命じるケースがあります。付加金は、未払い賃金と同額まで認められる可能性があり、会社にとって大きな経済的負担となるおそれがあります。
2-2. 給与未払いにおける遅延損害金の計算方法
給与未払いに対する遅延損害金は、在職中か退職後かによって適用される利率が異なります。在職者の場合、未払い賃金には原則として民法上の法定利率が適用され、現在は年3%となります。
一方、退職者については、退職後も賃金が支払われない場合、「賃金の支払確保等に関する法律第6条」に基づき、年14.6%の遅延損害金が発生します。
【在職者の遅延損害金の計算式】
未払い賃金額 × 年3% × 本来の賃金支払日の翌日から支払日までの日数 ÷ 365日(※)
【退職者の遅延損害金の計算式】
未払い賃金額 × 年14.6% × 退職日の翌日から支払日までの日数 ÷ 365日(※)
なお、退職後に支払期日が到来する賃金については、その支払期日の翌日から起算されます。
※うるう年の場合は、365日ではなく366日で計算します。
参考:賃金の支払の確保等に関する法律第6条|e-Gov法令検索
2-3. 未払い給与の請求には時効がある
未払い給与はいつまでも請求できるわけではなく、法律上の「消滅時効」があります。
|
種類 |
時効 |
|
賃金 |
5年(当分の間は3年) |
|
退職金請求権 |
5年 |
なお、2020年の労働基準法改正により、未払い賃金の消滅時効は従来の2年から5年へ延長されました。ただし、会社への影響を考慮した経過措置が設けられており、現在は「当分の間3年」とされています。
賃金請求権の時効は、「賃金を請求できる時」から進行します。また、従業員が内容証明郵便による請求や、労働審判・訴訟などの法的手続きをおこなった場合には、時効の完成が猶予されたり、更新されたりする可能性があります。
会社としては、「時効が近いから自然に消滅する」と安易に考えるのではなく、未払いリスクを早期に把握し、適切に是正することが重要です。
参考:未払賃金が請求できる期間などが延長されています|厚生労働省
2-4. 倒産時は「未払賃金立替払制度」を活用できる
会社が倒産した場合、従業員へ給与を支払えなくなるケースがあります。そのような場合に活用できるのが「未払賃金立替払制度」です。この制度は、会社の倒産によって賃金が未払いとなったまま退職した労働者に対して、未払い賃金の一定範囲を「独立行政法人労働者健康安全機構」が事業主に代わって立て替えて支払う制度です。
立替払いの対象となるのは、退職日の6ヵ月前の日から、立替払請求日の前日までに支払期日が到来している未払い賃金です。対象となる賃金には定期賃金や退職金が含まれますが、賞与(ボーナス)は対象外となります。
また、立替払いの対象額は未払い賃金の全額ではなく、原則として未払い額の8割です。さらに、支給額には退職時の年齢に応じた上限額が設けられています。会社側としては、経営悪化による資金繰り不足が給与未払いへ発展しないよう、早期の資金管理や専門家への相談をおこない、従業員への賃金支払いを最優先に対応することが重要です。
関連記事:給与計算ミスへの対処法は?責任・リスクや防止策も解説!
3. もしも未払い給与が生じてしまった場合の対応手順


給与の未払いは、従業員の生活に直接影響を与える重大な問題です。未払いが判明した場合は、事実関係を整理したうえで、迅速かつ誠実に対応することが大切です。
3-1. 従業員へ事情を説明して速やかに謝罪する
未払い給与が発生していることに気付いた場合は、まず事実関係を確認したうえで、対象となる従業員へ速やかに説明と謝罪をおこなうことが重要です。
給与の支払いは、労働基準法で定められている会社の重要な義務です。未払いがあるにもかかわらず放置したり、発覚をおそれて十分な説明をおこなわなかったりすると、従業員の不信感を招き、労務トラブルへ発展する可能性があります。
少人数であれば、直接対面で事情を説明する方法が望ましいでしょう。一方で、複数人に影響が及んでいる場合には、メールや書面などを活用して経緯や支払予定日を共有することで、認識の食い違いや二次的なトラブルを防ぎやすくなります。
関連記事:給与計算ミスに気づいた時のお詫びの方法や注意点を文例とともに解説
3-2. 未払い額を正確に算定して迅速に精算をおこなう
謝罪と説明を終えたあとは、未払いとなっている金額を正確に算定し、できるだけ早く支払いをおこないます。
未払いとなっている賃金には、基本給だけでなく、残業代や各種手当などが含まれるケースもあります。そのため、勤怠記録や就業規則などを確認しながら、慎重に精査しなければなりません。
また、未払い分を追加で支給する場合には、税金や社会保険料といった控除額に影響が生じる可能性もあるため、必要に応じて再計算をおこない、税務・社会保険上の処理に誤りがないよう注意が必要です。
支払いについては、通常給与とは別に現金手渡しで速やかに精算する方法が一般的です。ただし、対象となる従業員の個別の同意を得たうえで、指定された口座へ振り込む方法も可能です。あわせて、修正後の給与明細を再発行し、未払い分の内訳や精算内容を従業員へ明確に説明することで、不要なトラブルの防止や信頼回復にもつながります。
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4. 未払い防止!給料計算でミスを起こさないための対策


給与計算ミスは、法令違反につながり、従業員とのトラブルや未払い賃金の発生につながるおそれがあります。ここでは、給与計算のミスを防止するために押さえておきたい対策を紹介します。
4-1. 計算ルールを明文化する
給与計算のミスを防ぐには、まず「どのような基準で給与を計算するのか」を明文化することが重要です。例えば、残業時間の端数処理方法、欠勤控除の計算方法、交通費や各種手当の支給条件などが担当者ごとに異なっていると、計算結果にばらつきが生じやすくなります。
マニュアルやチェックリストを作成し、誰が担当しても同じ計算結果になる状態を目指しましょう。また、現在の給与計算フローに無駄やリスクがないか定期的に見直し、必要に応じて運用方法を改善することも大切です。
関連記事:給与計算で迷わない端数処理のポイント|小数点以下の計算ルールも解説
4-2. ダブルチェック体制を採用する
給与計算は金額を扱う重要な業務であるため、1人だけで完結させず、複数人で確認する体制を整えることが望ましいでしょう。
例えば、給与データの入力は担当者がおこない、最終確認は別の担当者や上長がおこなう仕組みにすることで、計算ミスに気付きやすくなります。とくに、残業代や控除額などは間違いが発生しやすいため、重点的に確認することが重要です。
また、チェック項目をリスト化しておけば、確認漏れを防止しやすくなります。繁忙期や担当者変更時でも一定の品質を維持できるため、属人化対策としても有効です。
4-3. システム導入で自動化する
手作業による給与計算は、入力ミスや計算漏れが発生しやすいため、給与計算システムの導入も有効な対策のひとつです。
給与計算システムを活用すれば、残業代や休日手当、社会保険料、所得税などを自動計算できるので、人的ミスを大幅に減らせます。また、勤怠管理システムと連携できるタイプであれば、勤務時間データを自動で取り込めるため、転記ミスの防止にもつながります。
さらに、法改正時にシステム側がアップデートされるサービスを利用すれば、制度変更への対応負担を軽減できる点もメリットです。ただし、設定内容に誤りがあるとシステムでもミスが発生するため、導入後も定期的な確認は欠かせません。
関連記事:勤怠管理システムと給与計算を連携させるには?選定ポイントを解説
4-4. 法改正・制度変更に定期的に対応する
給与計算に関係する法律や制度は、最低賃金の改定や社会保険料率の変更、税制改正、雇用保険料率の見直しなど、毎年のように更新されています。こうした法改正へ適切に対応できていないと、給与額や控除額の計算ミスにつながるおそれがあります。
例えば、令和8年度税制改正では、2026年分の所得税計算の仕組みが変更され、年末調整業務にも影響が生じます。また、毎月の給与計算で使用する「源泉徴収税額表」についても、2027年1月以降に新しい内容へ切り替わるので、事前の確認と準備が必要です。
厚生労働省や国税庁などが公表する最新情報を定期的に確認し、法改正に合わせて給与計算ルールやシステム設定を見直すことが重要です。あわせて、担当者向けの研修や勉強会を実施し、制度変更への理解を深めることで、給与計算ミスの防止につながります。
参考:令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について|国税庁
関連記事:給与計算における所得税の計算方法とは?源泉徴収の仕組みも解説
5. 給与未払いを防止するための管理体制を徹底しよう


給与の未払いは、労働基準法違反として行政指導や罰則の対象となるだけでなく、従業員との信頼関係の悪化や人材流出を招く重大な経営リスクです。万が一、計算ミスによる未払いが発生した場合は、速やかに謝罪と説明をおこない、正確な再計算に基づいた迅速な精算が不可欠です。
未払いを未然に防ぐためには、計算ルールの明文化や複数人によるダブルチェック体制の構築が効果的です。また、人的ミスを最小限に抑える給与計算システムの導入や、最新の法改正情報を定期的に確認し、適切に反映し続ける運用体制の整備も重要となります。
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