賃金台帳の保存期間や違反した際の罰則・保存方法を解説
更新日: 2023.3.8
公開日: 2021.11.12
YOSHIDA
賃金台帳とは、企業が従業員に対して支払った給与を記録しておく帳簿のことです。賃金台帳は労働基準法の第108条で作成が義務づけられている書類で、作成したものは一定期間保存しておくことが求められています。
この記事では、賃金台帳の保存期間と保存方法について紹介します。保存期間や保存方法に気をつけないと、労働基準監督署から指摘を受けたり罰金が科されたりする恐れがありますので、正しい知識を身につけておきましょう。
▼賃金台帳とは?という方はまずはこちら
賃金台帳とは?基本的な作成方法と知っておきたい法的ルール
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法定三帳簿とは、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類の帳簿のことです。
いずれも、雇用形態に限らず、従業員を雇用する際には必要となるうえ、労働基準法で保存期間や記載事項などが決められているため、適切に調製しなければなりません。
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1.賃金台帳の保存期間は何年?
賃金台帳は、事業所ごとに作成が義務づけられている帳簿で、1人でも従業員を雇い入れている企業や個人事業主であれば必ず作成しなくてはいけません。加えて、賃金台帳は作成して終わりではなく、労働基準法によって一定期間保存しておくことが求められています。
まずは、賃金台帳の保存期間について詳しく解説します。
1-1.賃金台帳の保存期間は5年間
労働基準法の第109条と労働基準法施行規則の第56条では、賃金台帳は最後に書き入れた日から起算して5年間保管することが義務づけられています。この期間が経過するまでは、どのような理由があっても従業員の台帳を処分してはいけません。
企業のなかには、賃金台帳と源泉徴収簿を兼ねて運用をしているところもあるでしょう。賃金台帳を源泉徴収簿として取り扱うことは法的に何の問題もありませんが、源泉徴収簿は「その申告書等の提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間」まで保存する必要があるため、保存期間が5年から7年に延びるということを理解しておきましょう。[注1]
[注1]国税庁|No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間
1-2.賃金台帳のほかにも!法定三帳簿の保存期間
労働基準法もしくは労働基準法施行規則で保管が定められている帳簿は、決して賃金台帳だけではありません。ほかにも、以下の2つの帳簿作成が義務づけられており、この3つの帳簿をまとめて「法定三帳簿」と呼ばれています。
- 労働者名簿:事業場ごとに労働者の氏名や生年月日、履歴などを記入した帳簿
- 出勤簿:労働者の始業や終業時刻、労働時間を把握するための帳簿
法定三帳簿はすべて起算日から5年間の保管が必要ですが、それぞれで起算日が異なる点に注意しましょう。労働基準法施行規則の第56条によると、帳簿ごとの起算日は以下のとおりです。
保存期間は同じですが、起算日が全く異なる点に注意して管理するようにしてください。
2.賃金台帳の保存期間に違反するとどうなる?
賃金台帳は起算日から5年間の保存が法令で義務づけられていますが、万が一期間中に台帳を破棄してしまい、保存期間に違反してしまうとどうなるのでしょうか。
この章では、賃金台帳の保存期間に違反したときの罰則について説明します。
2-1.賃金台帳の保存期間に違反すると罰則がある
賃金台帳の作成は雇用主の義務であり、法令にもその必要性について明記されています。したがって、賃金台帳が適切に作成・保存されていない場合は労働基準法違反となり、同法の第120条に定められている30万円以下の罰金刑に処されるおそれがあるのです。
この帳簿は、労働基準監督署や年金事務所などの調査で必要になるため、提出を求められた際にいつでも見せられるようにしておかなければいけません。必ず、不備がないようにしっかりと備え付けておきましょう。
2-2.悪質でない限りは是正勧告書の交付が一般的
賃金台帳の保存期間に違反すると罰金刑に処されると紹介しましたが、実際に罰則が適用されるケースはそこまで多くありません。よほど悪質でない限りは、労働基準監督署から是正勧告書が交付され、自ら是正することが求められるだけであることが一般的です。
ただし、この是正勧告に応じない場合、更に厳しい指導や罰則の適用に発展するおそれがあります。そうならないようにするためには、期日までに適切な賃金台帳を作成し、是正報告書と一緒に労働基準監督書署に提出する必要があります。
3.賃金台帳の保存方法
5年間もしくは7年間の長期間にわたる保存が必要な賃金台帳は、どのように保存したらいいのでしょうか。最後に、賃金台帳の適切な保存方法について紹介します。
3-1.賃金台帳の保存方法は紙媒体でも電子媒体でも可
帳簿というと紙媒体での保存をイメージする人が多いかもしれませんが、実は賃金台帳の保存方法に指定はありません。そのため、紙媒体はもちろん電子データによる保存も可能なのです。
ただし電子データで保存する場合は、労働基準監督署から提出を求められたときにすぐ見せられるようにしておくことが条件となります。すぐに表示できるだけではなく、即時印刷ができるデータ形式で保存しておくことが重要です。
関連記事:賃金台帳の提出が必要な状況や提出方法をわかりやすく解説
3-2.事業所ごとに保存する
賃金台帳は、事業所ごとに保存する必要があります。また、事業部や事業内容が異なる会社の場合も、部署ごとに作成と保存をしておかなければいけません。
したがって、本社で賃金台帳を一括作成する場合でも、事業所ごとに帳簿を備え付けておかなくてはいけません。本社だけに帳簿やデータを保管するのではなく、各事業所には所属する従業員に関する帳簿やデータを配布しておくようにしてください。
3-3.データで賃金台帳を保存するときの注意点
賃金台帳はデータで保存することが可能ですが、一定の要件を満たした状況で保存することが求められています。平成8年6月27日基発第411号によれば、以下の状態で保存されている賃金台帳であれば、保存義務が満たされると言及されています。[注2]
画像情報の安全性が確保されている
- 記録された保存義務のある画像情報について、故意または過失による消去や書き換え、混同ができないこと。
- 画像情報を記録した日付や時刻、媒体の製造番号などの固有標識が同一電子媒体上に記録され、参照が可能であること。
- 保存義務のある画像情報と保存義務のない画像情報を同一機器上で扱う場合、それぞれを明確に区別できること。
画像情報を正確に記録し、かつ長期的にわたって復元できる
- 電子媒体やドライブ、その他の画像関連機器について、保存義務のある画像情報を正確に記録できること。
- 電子媒体に記録された保存義務のある画像情報を、法令によって定められた期間中に損なわれることなく保存できること。
- 電子媒体やドライブ、媒体フォーマットやデータ保管システムについて、記録された画像情報を正確に復元できること。
- 労働基準監督官の調査時など必要なときに、すぐ必要事項が明らかになり、写しを提出できるシステムになっていること。
このように、電子媒体で賃金台帳を保管するときは、一定の要件が設けられています。必ず、上記の要件を満たせる状態で保管することを意識してください。
関連記事:賃金台帳の写しが必要な場面や作成時の注意点を解説
[注2]厚生労働省労働基準局長|基発第0331014号
4.賃金台帳は保存期間を守って適切に運用しよう
従業員へ支払った給与を管理するための帳簿である賃金台帳は、1人でも従業員を雇い入れている企業や個人事業主であれば、必ず備えつけておかなくてはいけないものです。帳簿を作成するだけではなく、最後に記載した日から5年間の保存が求められるため、不注意で廃棄しないように十分に気をつけましょう。
賃金台帳は紙媒体でも電子媒体でも保存することが可能ですが、データで保存する際はいくつかの要件を満たす必要がある点に注意が必要です。労働基準監督署から指摘を受けたり罰金刑に処されたりすることがないよう、適切に保管することを心がけてください。
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