債務不履行とは?種類や対応方法を詳しく紹介
更新日: 2023.6.6
公開日: 2023.4.12
jinjer Blog 編集部
債務不履行とは、契約によって負っている義務を債務者が果たさない状況のことです。債務不履行が起きたときには履行を求める催告や損害賠償請求などの形で対処します。
本記事では、債務不履行について詳しく解説します。
目次
1. 債務不履行とは契約した義務が果たされないケースのこと
契約によって生じた法的な義務が果たされることを履行といいます。債務不履行とは、何らかの原因で契約上の義務が果たされなかったケースのことです。
従来の契約は債権者と債務者の間で締結されます。契約においてなんらかの行為をしたり給付をしたりする法的な義務のことを債務と呼びます。契約上の債務を背負っている人は債務者ということになります。
これに対し、債権を保有している人は債権者と呼ばれます。債権とは、相手に対して行為や支払いを請求できる権利のことをいいます。
例えば債務者がお金を借りるケースでは、お金を貸す貸金業者が債権者ということになります。契約によって取り決めた期日までに返済が行われなかった場合には債務不履行になってしまいます。
また、注文された商品を引き渡さなかったときや、製品が破損していて引き渡しができなかったときなどにも、契約上の債務が果たされないため債務不履行という扱いになります。
2. 債務不履行の種類
債務不履行は大きく、履行遅滞と履行不能、不完全履行、履行拒絶の4つに分けられます。
まずは、それぞれの債務不履行の状況についてみていきましょう。
2-1. 履行遅滞
履行遅滞とは、契約時に取り決めた期日までに義務が果たされないことをいいます。借りたお金を期日までに返済しなかったケースや、注文商品を期日までに納品しなかったケースなどが履行遅滞に該当します。
契約の段階で特定の期限を定めることを確定期限と呼びます。確定期限を定めた場合には、その期限を過ぎた段階で履行遅滞となります。
将来発生することは確実であるものの明確な日時がわからない期限は不確定期限と呼ばれます。例えば遺言は遺言者の死亡以降に有効になりますが、これは不確定期限にあたります。
明確な日時が定められていない場合でも、期限の到来を把握しているときや請求を受けているときには速やかな履行が必要です。履行がなかったときには履行遅滞として扱われることになるので気をつけましょう。
2-2. 履行不能
履行不能とは、契約の履行が不可能になってしまった状況のことです。
例えば注文を受けた商品を引き渡す予定だったにもかかわらず、商品がなくなり引き渡せなくなった状況は履行不能に該当します。
履行不能は、引き渡すつもりだった骨董品が破損した場合や、売買予定の商品を置いた倉庫が火事に遭ったなど、やむを得ないケースに限り適用されます。
お金が足りず返済できないようなケースは、履行不能ではなく履行遅滞として扱われます。
2-3. 不完全履行
不完全履行とは、契約内容の一部分のみが履行されているケースや履行の内容が不完全なケースのことです。引き渡した商品が不良品だった場合や数量が足りなかった場合、商品の取り違いが起きているときなどには不完全履行として対処することになります。
2-4. 履行拒絶
債務者が債務の履行を明確に拒絶している状態を履行拒絶といいます。
履行拒絶は、履行自体は不可能ではないものの、債務者に履行する意思が一切ないことを示している場合に適用されます。また、あとあと判断が覆る見込みがないことも、履行拒絶が適用される条件です。
3. 債務不履行と不法行為の違い
債務不履行と不法行為は同じようなものとして考えられることがあります。しかし法律上、債務不履行と不法行為には明確な違いがあります。
民法709条に記載されている不法行為とは、故意または過失により他人の権利を侵害することです。違法性がある場合には損害賠償請求などの方法で対処します。
不法行為は債務不履行とは異なり、契約上の義務に限らずすべての問題に適用されます。トラブルが起きた際には、債務不履行と不法行為のどちらに該当するのかを把握した上で、しかるべき対処を行いましょう。
4. 債務不履行への対応方法
不法行為が起きたときには損害賠償請求をするのが一般的ですが、債務不履行に対してはさまざまな手段で対応することが可能です。
ここからは、債務不履行が起きたときの対処法について紹介します。
4-1. 損害賠償請求
債務不履行が起きたときには、民法第415条2項の定めに従って損害賠償請求が行われます。ただし、損害賠償請求できるのは債務不履行によってなんらかの損害が起きている場合に限られます。
民法416条1項には、損害賠償請求の対象となるのは原則として債務不履行により通常生ずべき損害のみと定められています。ただし、特別な事情により損害が生じたケースでは、債務者がその事情を予見すべきだったと認められるときに損害賠償請求の対象となります。
例えば債務不履行の原因が天変地異など不可抗力であった場合には、原則として損害賠償請求はできません。この場合には、債務者に落ち度がないことを債務者自身が証明する必要があります。
4-2. 契約の解除
債務不履行が起きたときには、民法541条の定めに従って契約の解除を行うこともあります。
契約は双方の合意に基づいて行われ、締結後には法的な拘束力が生じます。通常であれば契約の解除には双方の同意が必要です。しかし、債務不履行が起きたときには債務者の同意を得ることなく契約の解除を行うことが可能となります。
債務不履行の契約解除では、あらかじめ相手方に催告を行います。催告とは、一定期限内に履行するよう相手に求めることです。催告をしたにもかかわらず履行がなかったときや、相手方が拒絶の意思を明確に示したときには契約の解除に踏み切ることができます。
なお、契約を解除するときには既に相手に引き渡した商品や代金の返還請求を行うことも可能となります。
4-3. 履行の追完請求
追完請求とは、不完全履行が起きているときに完全な形での履行を求めることです。履行不能になっていないときには、契約に適合するよう追完という形で請求を行いましょう。
追完請求では不足分の引き渡しや代替物の引き渡しを求めることができます。また、商品の修理や補修という形で追完してもらうこともできます。
4-4. 代金減額請求
履行の追完請求ののち、期限内に履行の追完がされなかったときには代金の減額請求という形で処理することがあります。
代金減額請求のルールは民法563条1項に定められています。履行の追完が不可能なときや履行の追完を拒絶されたとき、履行の追完ができないことが明らかなときなどには、催告なしで代金減額請求を行えます。
4-5. 強制執行
損害賠償請求や履行の追完請求、代金減額請求などに相手が応じなかったときには、強制執行の申し立てを行うことがあります。また、契約解除を行った際に商品やお金が変換されなかった際にも強制執行で処理することがあります。
裁判所に強制執行を申し立てれば、強制的に債務の履行を実現できる可能性があります。
5. 債務不履行のトラブルが起きたときには状況に応じた適切な対処をしよう
契約によって生じた債務が果たされないことを債務不履行といいます。債務不履行に対しては、損害賠償請求や契約解除、追完請求といった対処ができます。
債務不履行はビジネスのさまざまなシーンで生じる可能性があります。問題が起きたときには状況に応じた適切な判断を行いましょう。
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