人的資本経営とは?注目される背景や今後の企業価値を高めるポイントを解説 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

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人的資本経営とは?注目される背景や今後の企業価値を高めるポイントを解説

多種多様な人たちと協力する

近年、人的資本に関する情報開示が進み、企業には経営戦略と人材戦略を連動させ、具体的な取り組みを進めることが求められています。

そのうえで、持続的な企業成長につなげるには、開示を目的化するのではなく、経営層と現場が連携し、人事データを活用しながら施策の実行と改善を進めることが重要です。

本記事では、人的資本経営の基本概念や注目される背景、国内外の動向から、具体的な実践ステップや事例までわかりやすく解説します。

人的資本経営って結局なにをすべき? 企業の対応状況や取り組みが知りたい方へ

人的資本の情報開示が義務化されたことで人的資本経営への注目が高まっており、今後はより一層、人的資本への投資が必要になるでしょう。
こういった背景の一方で、「人的資本投資にはどんな効果があるのかわからない」「実際に人的資本経営を取り入れるために何をしたらいいの?」とお悩みの方も、多くいらっしゃるのが事実です。

そのような方に向けて、当サイトでは人的資本経営に関する実際調査の調査レポートを無料配布しています。
資料では、実際に人事担当者にインタビューした現状の人的資本経営のための取り組みから、現在抱えている課題までわかりやすくレポートしています。
自社運用の参考にしたいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。

1. 人的資本経営とは

一人ひとりにフォーカスする

人的資本経営とは、人材を企業価値の創出につながる重要な「資本」と捉え、その価値を最大限に引き出す経営のあり方です。教育・研修やキャリア形成などへの投資を通じて、従業員の知識やスキルを高め、事業上の価値創造につなげることを目指します。

1-1. 人的資本の特徴

人的資本は、学習や経験によって変化し、人材自身の意思で企業間を移動できる点が特徴です。こうした性質は「頭・心・足」の3つの観点から捉えると理解しやすくなります。

  • 頭:学習や経験によって知識・スキルを高められる
  • 心:意欲や心身の状態が仕事のパフォーマンスに影響する
  • 足:人材自身の意思で企業間を移動できる

例えば、成長機会がない、働く意欲を失うといった状況では、人材が自らの「足」で企業を離れていく可能性があります。そのため、企業は人材の「頭」と「心」に働きかけ、人材の能力や意欲を高め、人的資本の価値を引き出すことが求められるのです。

関連記事:人的資源とは?意味や管理の重要性・メリットを解説!企業の活用事例あり

1-2. 人的資本経営と従来の経営方法の違い

人的資本経営と従来の経営方法との大きな違いは、人材を「コスト」として捉えるか、「企業価値を生み出す資本」として捉えるかという点にあります。主な違いを表にまとめると、次のとおりです。

人的資本経営 人的資源経営(従来型)
人材とは 資本(投資対象):将来的なリターンを生むもの 資源(経営資源):適切に活用・配分するもの
人材マネジメントの目的 人材価値を高め、企業価値向上につなげる 労働力を安定確保し、効率的に運用する
人事の位置づけ 経営戦略と連動し、経営層が深く関与する 人事部主導で運用されやすい
雇用の特徴 企業と人材が相互に選び合う関係 長期雇用を前提に企業内で育成する
外部への情報発信 人材投資や育成方針を積極的に開示する 社外発信は限定的になりやすい

つまり、人的資本経営では「人を管理する」という視点から「人の価値を高め、その価値を経営に活かす」という視点への転換が求められます。

関連記事:人的資源管理(HRM)とは?5つの機能モデルと課題・企業の事例を解説

1-3. 人的資本経営の現状と今後

人的資本経営が注目されてから数年が経ち、企業の取り組みにも進展がみられます。2024年に人的資本経営コンソーシアムが実施した調査では、2022年と比べて多くの項目で取り組みが進んでいることが示されています。

一方で「取締役会の役割」「KPIと現状とのギャップの把握」「人事部門のケイパビリティ向上」などには、さらなる取り組みの余地があります。人材戦略の議論やKPIの設定が進む一方で、施策の実行・改善や成果につなげることが今後の課題といえるでしょう。

今後は、人的資本経営を形式的な取り組みにとどめず、自社の経営課題や人材課題に応じて施策の効果を検証し、継続的に改善していくことが重要です。

参考:人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組|経済産業省

2. 人的資本経営が必要とされる理由

複数の的から適切な的を選ぶ

近年、人的資本経営が必要とされている理由は次のとおりです。

  • 労働人口減少に伴う人材不足と働き手からの注目
  • ステークホルダーは持続可能性を重視へシフト
  • 技術進歩と差別化の難しさ(第四次産業革命)

それぞれの理由を詳しく解説していきます。

2-1. 労働人口減少に伴う人材不足と働き手からの注目

日本でも生産年齢人口の減少が続き、企業が必要な人材を確保することは難しくなっています。こうした状況では新たな人材を採用するだけでなく、既存の従業員が能力を十分に発揮し、長く活躍できる環境を整えることが重要です。

また、働き手の価値観や働き方も多様化しており、給与や待遇だけでなく、仕事のやりがいや柔軟な働き方などを重視する人も増えています。そのため、画一的な人材マネジメントでは、従業員一人ひとりのニーズに対応することが難しくなっています。

こうした背景から、企業は従業員の能力開発やキャリア形成を支援し、それぞれの人材が持つ能力を最大限に発揮できる環境を整えることが求められているのです。

2-2. ステークホルダーは持続可能性を重視する方向へシフト

近年、投資家や顧客、取引先などのステークホルダーは、サステナビリティやESGの観点から、企業の中長期的な価値や持続可能性を重視する傾向にあります。

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」では、働きがいのある人間らしい仕事の実現と持続的な経済成長が掲げられています。また、ESGの「S(社会)」には、従業員の労働環境や人権、人材育成など、人的資本に関わる要素も含まれます。

こうした背景から、企業価値を生み出す要素として無形資産の重要性が高まっています。なかでも、知識やスキル、経験などを持つ人材は、企業の競争力や持続的な成長を支える重要な経営資源として捉えられています。

2-3. 技術進歩と差別化の難しさ(第四次産業革命)

AI、ビッグデータ、IoTなどの技術革新の進展により、企業を取り巻く競争環境は大きく変化しています。これらの技術は多くの企業が利用可能なので、技術そのものだけで持続的な競争優位を確立することは容易ではありません。

そのため、企業の競争力の源泉として、従業員の知識や創造性、問題解決能力といった人的資本の重要性が一層高まっています。新しい技術を活用して価値を創出するためには、従業員が継続的にスキルを習得し、変化に柔軟に対応できる組織を構築することが不可欠です。

このような背景から、企業は人材育成やリスキリングを積極的に推進し、従業員の能力を最大限に引き出すことによって、技術革新の時代においても競争優位を維持することが求められています。

3. 人的資本経営を実現するメリット

メリットのブロック

人的資本経営を実現するメリットは、次の3つです。

  • 人材を有効活用できる
  • 社会的信用を得られる
  • 従業員エンゲージメントの向上

それぞれを詳しく解説します。

3-1. 人材を有効活用できる

人的資本経営のメリットのひとつは、現在企業に所属している人材の能力を引き出し、効果的に活用できることです。

技術革新が進むなかで企業が持続的に成長するには、人材を重要な資本と捉え、経営戦略に必要なスキルの習得や能力開発を促すことが重要です。

人的資本経営を通じて、従業員一人ひとりの知識や経験、創造性を最大限に生かすことで、新たなアイデアやイノベーションの創出など、企業の新たな価値につながることが期待できます。

3-2. 社会的信用を得られる

投資家やステークホルダーは企業の将来性を予測する材料として、無形資産、特に人的資本に関する情報を重視します。そのため、人的資本経営をおこない積極的に情報開示をする企業は、社会的信用を得やすいでしょう。

企業イメージがアップすれば、投資対象として選ばれやすくなるほか、クライアントにも注目され人材が集まりやすくなることが考えられます。

3-3. 従業員エンゲージメントの向上

人的資本経営に取り組む企業では、従業員が自身の能力を発揮できる環境が整うことで、仕事へのやりがいや成長実感を得やすくなります。

また、企業が従業員の成長に積極的に投資する姿勢は「自分の成長を大切にしてくれる企業」という印象にもつながります。その結果、従業員の自社に対するエンゲージメントの向上が期待できます。

4. 人的資本経営に関する国内・海外での動き

選択に悩んでいる

人的資本経営は、日本だけでなく世界的にも注目されています。欧米では、日本よりも早い時期から人的資本経営が広がりました。ここからは、人的資本経営に関する国内・海外での動きを紹介します。

4-1. 【国内】人材版伊藤レポート

日本では、2020年に経済産業省が公開した「人材版伊藤レポート」により、人的資本経営に注目が集まりました。当レポートでは、社会環境の変化から人的資本経営への変革が重要であることと、そのフレームワークが提唱されています。

人材の捉え方を反転させた「人材版伊藤レポート」の社会的な影響力は大きく、政府内でも人的資本に関する情報開示のあり方が検討されるようになりました。

その後2022年に公開された「人材版伊藤レポート2.0」は、人的資本経営の実践的な取り組みのポイントや事例を深堀りした内容です。翌年には人的資本経営コンソーシアムが設立され、人的資本経営の導入を推進しています。

関連記事:人材版伊藤レポート2.0とは?3つの視点と5つの共通要素から人的資本経営を実現しよう

4-1-1. 3P・5Fモデルのフレームワーク

人材版伊藤レポート2.0では、人的資本経営を実践するための基本フレームワークとして「3つの視点(3P)」と「5つの要素(5F)」が提示されています。これは、企業が人材戦略を立案・実行する際の指針を体系的に整理したものです。

まず、人材戦略や経営戦略を検討する際には、次の3つの視点から全体を俯瞰することが推奨されています。

  1. 経営戦略と人材戦略は連動しているか
  2. 目標としているビジネスモデルと現時点でのギャップを把握しているか
  3. 人材戦略が企業文化として定着しているか

さらに、策定した人材戦略を具体的な施策として実行する段階では、次の5つの要素を取り入れることで、人的資本経営の実現につながりやすくなるとされています。

  1. 多様な人材が活躍できるポートフォリオを構築する
  2. 人材の多様性を企業の戦略のなかにうまく取り込む
  3. 学ぶ環境を整え、従業員への教育をおこなう
  4. 従業員がやりがいを感じられる職場を目指す
  5. 時間や場所にとらわれずに働ける環境を整備する

これらの「3つの視点」と「5つの要素」を組み合わせて活用することで、企業は人的資本を重要な経営資源として最大限に活かし、持続的な企業価値の向上を効率的に目指せるでしょう。

参考:人材版伊藤レポート2.0|経済産業省

4-2. 【国内】コーポレートガバナンス・コード

2021年に「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」からの提言を基にコーポレートガバナンス・コードが改訂され、人的資本に関する情報開示が求められるようになりました。

改訂の背景には、コロナ禍による社会情勢の変化や、東京証券取引所の上場区分の再編があります。2021年の改訂では、持続的な成長に向けた経営戦略において、人的資本が経営資源のひとつとして位置付けられました。そのうえで新たに、①取締役会の機能強化、②人材の多様性の確保、③サステナビリティ課題への取り組み、④その他に関する開示が求められました。

特に東証プライム上場企業は、より厳格なコーポレートガバナンスが必要です。こうした背景から、プライム上場企業を中心に人的資本に関する情報開示が本格化していきました。

4-3. 【国内】人的資本可視化指針

内閣官房が策定した「人的資本可視化指針」は、人的資本の情報開示のフレームワークを包括的に整理した手引きです。「人材版伊藤レポート」並びに「人材版伊藤レポート2.0」と併用することで、実践と可視化の相乗効果をもたらします。

「人的資本可視化指針」で示された開示項目は、7分野19項目です。企業はこれらの項目を参考に、自社の経営戦略やビジネスモデルと統合できる開示項目を選定します。

開示事項の階層引用:非財務情報可視化研究会|人的資本可視化指針

4-4. 【国内】有価証券報告書開示義務化

コーポレートガバナンス・コードの改訂を受け、2023年に「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」が発令され、人的資本の情報開示が初めて義務化されました。

具体的には、「従業員の状況」において、新たに女性管理職比率、男性の育休取得率、男女間賃金差異の3項目が追加されました。さらに「サステナビリティに関する考え方及び取組」の見出しが新設され、人材育成方針と社内環境整備の方針に関する指標と目標、実績の明示が義務化されました。

人的資本の情報開示の義務化は、投資家などのステークホルダーは他社比較を可能にしました。その結果、企業はステークホルダーからの信頼や評価を得るためにも、人的資本経営を推進する必要に迫られています。

関連記事:人的資本開示とは?情報開示が義務化された項目や対象企業への指針を解説

4-5. 【海外】ISO30414

人的資本経営は世界各国で注目されており、2018年12月には人的資本の情報開示ガイドラインである「ISO30414」が登場しました。

ISO30414(2018年版)では次の11の領域に対して49項目58指標が設定され、国際的なガイドラインとして活用されています。

  1. コンプライアンスと倫理
  2. コスト
  3. ダイバーシティ
  4. リーダーシップ
  5. 組織文化
  6. 健康、安全
  7. 生産性
  8. 採用・異動・離職
  9. スキルと能力
  10. 後継者計画
  11. 労働力

なお、ISO 30414は2025年に改訂され、2025年版では人的資本の報告・開示について「要求事項」と「推奨事項」が明確に区分されました。これに伴い、測定指標も従来の58指標から69指標へ拡充され、そのうち14指標が要求事項として位置付けられています。

参考:ISO 30414:2025 – Human resource management|ISO

4-6. 【海外】欧州非財務情報開示指令と米SEC開示義務化

欧米では非財務情報として人的資本が重視されており、情報開示の義務化が進んでいます。

ヨーロッパでは2014年にNFRD(非財務情報開示指令/2018年施行)が発令され、ESGの観点から、従業員の待遇や取締役の多様性といった人的資本の開示義務が課されました。

その後2023年にはCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive/企業のサステナビリティ情報開示を義務付けるEU指令)が発効され、より詳細な報告要件の設定や、外部機関による保証義務、外部への影響だけでなく業績への影響の検討などの開示が定められました。対象企業もNFRDの1.1万社から5万社へと拡大予定です。

一方アメリカでは、2020年、米国証券取引委員会(SEC)により上場企業の人的資本に関する情報開示が義務化されました。現在は労働者数以外は「重要性を軸に」各企業が任意に開示内容を決めます。

SECでは他の指標例として、人の採用、育成、リテンションなどを挙げています。また、2021年から2023年頃まで、さらに詳細な人的資本経営の情報開示を定めた法案が審議されており、今後は開示義務が強化される可能性があります。

こうした背景から、世界的に認められる企業を目指すなら人的資本経営を積極的に取り入れ、人的資本に関する開示をおこなう必要があるでしょう。

5. 人的資本経営を実践するときの流れ

歯車を組み合わせる

人的資本経営を実践する際には、次の流れを意識しておこないましょう。

  1. 経営戦略と連動した人材戦略を設計する
  2. 実現に向けた具体的なKPIを設定する
  3. ギャップを埋める施策を考案する
  4. 施策の実行と効果測定(PDCA)
  5. 開示方法を検討する

人的資本経営の実践は長期間に渡ります。計画・実行・評価・改善を繰り替えすPDCAサイクルを回し、目標の達成を目指しましょう。

5-1. 経営戦略と連動した人材戦略を設計する

まず最初に、企業の経営戦略と人材戦略を連動させることが重要です。経営戦略と人材戦略が整合していなければ、事業の実現に必要な人材を適切に確保・育成できず、人材施策の効果も十分に発揮できないからです。

そのため、企業がどのような成長を目指しているのか、どの市場で競争力を高めていくのかといった経営の方向性を明確にしたうえで、その実現に必要となる人材像を具体的に整理していく必要があります。

5-2. 実現に向けた具体的なKPIを設定する

次に、人材戦略の進捗を把握するため、具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定します。

人的資本に関する代表的なKPIとしては、従業員エンゲージメントスコア、離職率、女性管理職比率、研修受講率、特定のスキルを持つ従業員数などが挙げられるでしょう。

さらに、適切なKPIを設定することで、取引先や投資家などのステークホルダーに対して、人材戦略の取り組みや成果を説明する際にも活用できます。

関連記事:人的資本経営で重視すべきKPIは?設定方法と事例をわかりやすく解説

5-3. ギャップを埋める施策を考案する

KPIを設定した後は、KPIの達成状況や関連する人材データを確認し、現状と目標とのギャップを明確にすることが重要です。そのうえで、ギャップが生じている原因を分析し、解消に向けた具体的な施策を検討します。

例えば、離職率が高い場合には、従業員アンケートや面談などを通じて、離職につながっている要因を適切に把握します。そのうえで、原因に応じて管理職のマネジメント力向上やキャリア支援などの対策を講じます。

なお、企業を取り巻く環境は、技術革新や社会的価値観の変化などによって常に変化しています。そのため、人材戦略やKPIを固定せず、環境や状況に応じて定期的に見直すことが大切です。

5-4. 施策の実行と効果測定(PDCA)

考案した施策は、実際に組織の中で着実に実行していくことが重要です。また、施策は実行して終わりではなく、その効果を定期的に測定・検証することも欠かせません。

取り組みを進める際には、PDCAサイクルを回しながら継続的な改善を図ります。施策の成果をKPIなどの指標に基づいて評価し、当初想定していた効果が得られているかを確認しましょう。

もし十分な成果が見られない場合には、施策の内容や運用方法を見直し、必要な改善をおこないます。このようにPDCAサイクルを継続的に回すことで、施策の精度を高め、人材戦略の実効性を高められます。

5-5. 開示方法を検討する

情報開示を検討する際には、法令などに基づく開示と、企業が自主的におこなう任意開示の両面を意識することが重要です。

任意開示では、過去から現在までの推移だけでなく、将来の目標や取り組み方針なども示し、人的資本への取り組みが企業価値の向上にどのようにつながるのかをわかりやすく伝えることが求められます。

さらに、適切な情報開示を継続するためには、人的資本に関するデータを継続的に収集・管理できる体制の整備も重要です。人事管理システムを活用すれば、人材に関する情報を一元管理し、データの集計や分析を効率化できます。

関連記事:クラウド型人事管理システムの機能やメリット、選び方を徹底解説

6. 人的資本経営の実効性を高めるためのポイント

はてなと電球

人的資本経営を効果的に推進するには、制度を整えるだけでなく、その理念や取り組み方を正しく理解することが不可欠です。

ここでは、人的資本経営の実効性を高めるための考え方の要点を整理します。

6-1. 経営層と現場が一体となって推進する

昨今の課題のひとつとして、経営層と現場の認識の食い違いにより、人材戦略と現場の実態が一致しないことが挙げられます。

そのため、経営層が示す方針を現場に一方的に浸透させるだけでなく、現場の意見やデータを人材戦略や施策の改善に活かすことも重要です。

経営層と現場が対話を重ね、相互に連携しながら施策を進めることで、現場の実態に即した人的資本経営を実現しやすくなります。人事部門には経営と現場をつなぎ、双方の情報や意見を施策に反映する役割も期待されるでしょう。

6-2. 開示は「結果」であり「目的ではない」

人的資本に関する情報開示は重要ですが、開示そのものが目的になると、人的資本経営が形式的な取り組みにとどまるおそれがあります。

本来は、経営戦略の実現に必要な人材や組織の課題を明確にし、その解決に向けた施策を実行することが重要です。情報開示は、こうした取り組みの進捗や成果、今後の方針をステークホルダーに伝える手段のひとつです。

そのため、開示するKPIを起点に施策を決めるのではなく、経営戦略や人材戦略に基づいて施策とKPIを設定し、その進捗や成果、課題を適切に開示することが重要です。

6-3. 人事情報を効率よく収集・活用できる基盤の整備が重要

人的資本経営を推進するには、経験や勘だけに頼るのではなく、従業員に関するデータを活用することが重要です。そのためには、人事データを効率的に集約し、活用できる仕組みやシステムを整備することが不可欠です。

また、人事情報が部門やシステムごとに分散していると、組織全体の人材状況を把握したり、複数のデータを組み合わせて分析したりすることが難しくなります。

人事データを一元的に管理・活用できる環境を整えることで、組織全体の人材状況を可視化し、データに基づく分析や意思決定を進めやすくなります。

関連記事:PDP(People Data Platform)とは?人的資本経営に「人事データの統合」が必要な理由

関連記事:タレントマネジメントとは?目的やメリット、導入方法まで徹底解説

7. 人的資本経営の具体的な実践事例

はてなと虫眼鏡

人的資本経営では、他社事例を参考にすると、自社では気づきにくい課題や取り組みのヒントを得られます。ただし、他社の取り組みをそのまま取り入れるのではなく、自社に合わせて活用することが求められます。

ここでは、経済産業省が公表する資料をもとに、実際に人的資本経営を推進している企業の取り組み事例を紹介します。

参考:人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集|経済産業省

7-1. 卸売小売業I社|働きがいと労働生産性を高める人材戦略と明確なKPI設計

卸売小売業I社では、限られた従業員数でも競争力を維持・向上させるためには、労働生産性を高めることが不可欠であると考えています。そのためには、従業員一人ひとりが健康を保ち、やりがいを感じながら、持てる能力を十分に発揮できる職場環境を整えることが重要です。

この考え方を踏まえ、同社では企業価値の向上につながる人材戦略を整理し、戦略ごとに期待される成果を社外に向けて開示しています。こうした情報開示を通じて、投資家などのステークホルダーの理解を促すとともに、学生をはじめとする労働市場に対しても積極的に情報発信をおこない、外部からの評価向上にもつなげています。

また、人的資本の強化に向けた施策や投資によって向上を目指すKPIを明確に示し、その進捗を継続的に把握しながら定期的に見直しをおこなっている点も特徴です。さらに、定性的な長期目標として「日本一良い会社」という企業像を掲げ、その実現に向けて取り組みを続けています。

7-2. 通信業K社|人財ポートフォリオに基づく適所適材と専門人材の増強

通信業K社では、通信市場の成長鈍化という環境変化に対応するため、既存事業の深化と新たな成長領域の拡大を両立できる体制づくりを進めています。その一環として、高度専門人材の獲得・育成・活躍を促進する人材戦略を推進しています。

具体的には、事業部門で経験を積んだ人材を人事部門に登用し、経営層・各事業部門・人事部門が対話を通じて密接に連携する体制を構築しています。こうした連携により相互の信頼関係を深め、事業戦略と連動した人材戦略を実行しています。

また、将来の事業戦略を踏まえて目指す人材像を明確化し、現状の人材とのギャップを分析したうえで、採用・育成・配置の各施策を通じて不足する人材の補完を図っています。社内の人材ポートフォリオを基に、事業ニーズに応じた多様な人材の確保と適材適所の配置を進めています。

さらに、高度専門人材の確保とエンゲージメント向上を目的に、新卒採用では初期配属を確約する「WILLコース」と、配属を確約しない「OPENコース」を導入しました。加えて、キャリア採用人数も約10年間で10倍に増やすなど、専門人材の強化を進めています。

関連記事:人的資本経営コンソーシアムとは?基本情報と入会方法を紹介

8. 人的資本経営を実践し人材を有効活用しよう

新人と親しげに挨拶する先輩

人的資本経営に取り組むことで、人材不足への対応力を高めるとともに、従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体の生産性向上につなげることが期待できます。

今後も人的資本経営を取り巻く制度や開示の動向、企業の取り組みは変化していくと考えられます。最新の情報を把握しながら、自社の経営戦略に合った人材への投資や施策を進め、企業価値の向上につなげていきましょう。

なぜ人的資本経営は注目されている? 人材に投資すべき理由を経営者目線で解説

企業価値を持続的に向上させるため、いま経営者はじめ多くの企業から注目されている「人的資本経営」。
今後より一層、人的資本への投資が必要になることが想定される一方で、「そもそもなぜ人的資本経営が注目されているのか、その背景が知りたい」「人的資本投資でどんな効果が得られるのか知りたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて、当サイトでは「人的資本経営はなぜ経営者から注目を集めるのか?」というテーマで、人的資本経営が注目を集める理由を解説した資料を無料配布しています。

資料では、欧州欧米の動向や企業価値を高める観点から、人的資本経営が注目される理由を簡単に解説しています。「人的資本経営への理解を深めたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。

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