人的資本経営コンソーシアムとは?基本情報と入会方法を紹介
更新日: 2025.10.21 公開日: 2024.4.3 jinjer Blog 編集部

人的資本経営コンソーシアムとは、企業が人的資本経営を進めるためのサポートや、より効果的な非財務情報の開示を検討する組織です。人的資本経営の実践に難しさを感じており「具体的な活動内容を知りたい」と考えている方が多いのではないでしょうか。
本記事で紹介するのは、人的資本経営コンソーシアムの基本情報や設立の背景、活動内容や入会方法です。入会を検討されている経営者の方は、ぜひご一読ください。
目次
人的資本の情報開示が義務化されたことで人的資本経営への注目が高まっており、今後はより一層、人的資本への投資が必要になるでしょう。
こういった背景の一方で、「人的資本投資にはどんな効果があるのかわからない」「実際に人的資本経営を取り入れるために何をしたらいいの?」とお悩みの方も、多くいらっしゃるのが事実です。
そのような方に向けて、当サイトでは人的資本経営に関する実際調査の調査レポートを無料配布しています。
資料では、実際に人事担当者にインタビューした現状の人的資本経営のための取り組みから、現在抱えている課題までわかりやすくレポートしています。
自社運用の参考にしたいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
1. 人的資本経営とは

人的資本経営とは、人材を資本と捉え、より多くの能力を引き出し活用する経営手段です。
人的資本経営では、人材にかかる資金をコストではなく投資と考えます。従業員が育ち高い生産性を発揮すれば「企業は投資に対するリターンを得られた」となるでしょう。
投資であるかぎり、マイナスに変動する場合があることがポイントです。リスクを最小化するためには人材情報をデータ化し、公正で客観的な意思決定をおこなわなければなりません。
経済産業省では、人的資本経営の重要性や実践方法を記載した「人材版伊藤レポート2.0」を公にしています。人材や働き方が多様化している現在では、一人ひとりの状況に合わせた人材管理が不可欠です。
世界的に見て、人的資本経営の重要性は年々高まっています。成功すれば、企業価値の中長期的な向上につながるでしょう。
関連記事:なぜ人的資本経営が注目されているのか?注目されている背景をわかりやすく解説!
2. 人的資本経営コンソーシアムの概要

人的資本経営コンソーシアムとは、昨今必要とされている人的資本経営の実施や情報の開示のサポートをするために設立された団体です。2022年8月に設立以来、会員数は648(2025年9月1日時点)となっており、経済産業省と金融庁がオブザーバーとして参加しています。
人的資本経営コンソーシアムの主な活動は、好事例の共有や企業同士で協力する方法、より効果的な情報開示の仕方を検討することです。
人的資本経営の実践にはわかりやすい解答がありません。事例や国際的ガイドラインを参考にしながら、各企業に当てはめていく難しさがあります。
人的資本経営は、実践だけでなく情報開示が重要です。投資家や取引先をはじめとしたステークホルダーに企業の無形資産を知ってもらうことで、はじめて企業価値の向上が見込めます。
経営方針や人材情報などの非財務情報の開示が必須となりますが、効果的な情報開示についてもまだ模索段階といえるでしょう。
コンソーシアムは、自社における人的資本経営のあり方を検討するために役立ちます。
参考:人的資本経営コンソーシアムWEBサイト|人的資本経営コンソーシアム
2-1. 人的資本経営コンソーシアムの参加企業一覧
人的資本経営コンソーシアムの参加企業は、公式ホームページで一覧として公開されています。建設業、製造業、情報通信業、卸売業・小売業、金融業、保険業、不動産業など、多岐にわたる業種の企業が名を連ねています。さらに、投資機関や有識者も参画している点が大きな特徴です。
3. 人的資本経営コンソーシアムが設立された背景

設立の背景には、ESGに配慮した企業に投資をすることが世界的に進んでいる現状があげられます。
ESGの意味は、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の3つです。社会(S)のカテゴリーには人的資本の項目が含まれています。ESGの観点は、2015年に国連で採択されたSDGsのゴールと近いこともポイントです。
ESGでは不正や不祥事がおこらないよう監視・統制する仕組み「コーポレートガバナンス」の開示が求められています。設立された背景には、このような流れが関係しているといって良いでしょう。
設立の際に経済産業省と金融庁がオブザーバーとして参加した背景と流れを紹介します。
| 経済産業省 | 2014年 | 経済の停滞状態を改善するためには、人的資本経営による人材の活用が重要と考え、検討会にて「伊藤レポート」を作成 |
| 2020年 | 人的資本経営の実現に向けた検討会の内容を取りまとめた「人材版伊藤レポート」を公表 | |
| 2022年 | 「人材版伊藤レポート2.0」を公表 | |
| 2022年 | 人的資本経営コンソーシアムにオブザーバーとして参加 | |
| 金融庁 | 2022年 | 「サステナビリティ全般に関する開示」「人的資本、多様性に関する開示」などの改正案をまとめる |
| 2022年 | 人的資本経営コンソーシアムにオブザーバーとして参加 | |
| 2023年 | 2023年3月期の有価証券報告書から従業員の状況の記載を義務付ける |
改正案では、有価証券報告書に従業員の状況やサステナビリティに関する取組み、コーポレート・ガバナンスの状況を記載することの義務化が示されました。
人的資本コンソーシアムの設立により、人への投資をおこなう企業が世界から注目され、成長・発展につながることが期待されています。
参考:人的資本経営コンソーシアムが設立されます|経済産業省
参考:「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表について|金融庁
関連記事:人材版伊藤レポートとは?3つの視点と5つの共通要素から人的資本経営を実現しよう
4. 人的資本経営コンソーシアムの活動内容

人的資本経営コンソーシアムの活動は、次の5つに分けておこなわれています。
| 1.総会 |
|
| 2.企画委員会 |
|
| 3.実践分科会 |
|
| 4.開示分科会 |
|
| 5.会員と投資家の対話の場 |
|
総会は1年に1回、または会長が必要と判断したタイミングで開催されます。また企画委員会は、事業計画・報告や全体の予算と決算がおこなわれる場です。
会員と投資家の対話の場では、会員が投資家からのフィードバックを受け、戦略の改善・情報開示の向上に役立てます。
5. 人的資本コンソーシアムの構成

人的資本コンソーシアムの構成は次のとおりです。
人的資本コンソーシアムの構成は、総会の下に企画委員会があり、その下に実践分科会と開示分科会が分かれて設置されています。会員と投資家の対話の場は、分科会とは別枠で設置されているのがポイントです。
総会が統括し、それぞれの分科会の設置・運営を取りまとめるのは企画委員会です。企画委員会・実践分科会・開示分科会ではスムーズに活動を図るために、方針や規定の決定ができるよう定められています。
6. 人的資本コンソーシアムの発起人

人的資本コンソーシアムの発起人は、次の7名です。なお、発起人代表は「伊藤邦雄氏」です。
| 一橋大学 | CFO教育研究センター長 伊藤邦雄氏 |
| キリンホールディングス株式会社 | 代表取締役会長CEO 最高経営責任者 グループ経営責任者 磯崎功典氏 |
| 株式会社リクルート | 代表取締役社長 北村吉弘氏 |
| SOMPOホールディングス株式会社 | 元グループCEO 取締役代表執行役会長 櫻田謙悟氏 |
| 株式会社日立製作所 | 取締役会長 代表執行役 東原敏昭氏 |
| ソニーグループ株式会社 | 取締役 代表執行役 会長 CEO 吉田憲一郎氏 |
| アセットマネジメントOne株式会社 | 取締役社長 杉原規之氏 |
※2025年9月12日時点の情報です
それぞれの企業では、従業員の幸福度や多様性、女性が活躍できる職場環境の整備などに取り組んでいます。
7. 人的資本経営コンソーシアムへの入会方法

人的資本経営コンソーシアムへの入会申し込みは、常時受け付けています。入会までの流れはこちらです。
- 公式ホームページにて、設立趣意書・規約・会員一覧をチェックする
- 公式ホームページのリンクにて事務局に入会希望を伝える
- 入会申込書が送付される
入会の際に規約に同意したものとみなされるので、規約の内容を必ずチェックしましょう。入会する企業は、次の3点を満たしていることが期待されています。
- 国内に事業所を有し、現に事業活動をおこなっている法人
- 相当数の従業員を対象に人的資本に関する取組をおこなっている
- 有価証券報告書や統合報告書などで人的資本情報の開示をおこなっている
自社が該当しているかを確認し、入会手続きをおこないましょう。
8. 人的資本経営コンソーシアムへ入会するメリット

ここでは、人的資本経営コンソーシアムへ入会するメリットについて詳しく紹介します。
8-1. 最新情報・事例へアクセスできる
人的資本経営コンソーシアムに入会することで、人的資本経営の実践に関する先進的な事例を共有し、常に最新の情報を得ることができます。少子高齢化やグローバル化、デジタル技術の進展など、社会環境の変化は日々加速しており、人的資本経営のあり方も絶えず見直しが求められています。そのため、最新の知見や事例に触れ、自社の人的資本経営を継続的に改善していくことが重要です。
8-2. 他社との連携・交流が広がる
人的資本経営コンソーシアムには、多様な業種・規模の企業や投資機関が参加しています。同じ課題意識を持つ企業や専門家と交流することで、課題解決に向けた新しい取り組みが生まれることも期待できます。このように、他社との連携や交流の機会を得られる点も、入会する大きなメリットのひとつです。
8-3. 企業価値向上や信頼獲得につながる
人的資本経営コンソーシアムでは、会員企業と投資家が意見交換できる場を提供しています。これにより、投資家の関心や期待を的確に把握し、その情報を経営改善に活かすことで、企業価値の向上につなげられます。
また、コンソーシアムでは、会員企業の人的資本経営の取り組みをまとめた「好事例集」を作成しています。公式ホームページでの紹介に加え、自社の取り組みが好事例集に掲載されると、社外のステークホルダーに対して、人的資本経営に積極的に取り組む企業であることを示すことができ、信頼獲得にも寄与します。
9. 人的資本経営コンソーシアムでは最新情報を経営に活かせる

人的資本経営コンソーシアムでは、会員同士の議論や投資家との対話を通して各企業の後押しをしています。経営をどのように進めたらよいかヒントが得られるでしょう。
人的資本経営が成功すれば業績アップが見込め、企業の価値が上がることで投資家からも注目される可能性が高まります。
企業価値を持続的に向上させるため、いま経営者はじめ多くの企業から注目されている「人的資本経営」。
今後より一層、人的資本への投資が必要になることが想定される一方で、「そもそもなぜ人的資本経営が注目されているのか、その背景が知りたい」「人的資本投資でどんな効果が得られるのか知りたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて、当サイトでは「人的資本経営はなぜ経営者から注目を集めるのか?」というテーマで、人的資本経営が注目を集める理由を解説した資料を無料配布しています。
資料では、欧州欧米の動向や企業価値を高める観点から、人的資本経営が注目される理由を簡単に解説しています。「人的資本経営への理解を深めたい」という方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
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