遅刻の始末書とは?従業員に書かせる効果や注意点を解説
更新日: 2024.9.26
公開日: 2024.5.8
OHSUGI
遅刻をした従業員に対して、始末書を書かせる企業は珍しくありません。
始末書を書かせることで、反省を芽生えさせられるうえ、企業・組織の風土を是正できます。しかし、書き方や取り扱い方を間違えるとモチベーションの低下やトラブルを招くこともあります。
本記事では、従業員が遅刻した際に始末書を用いる効果や書かせ方について詳しく解説します。
目次
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1. 遅刻した際に用いる始末書とは
企業内における始末書がどのようなものか、よく似ている顛末書との違いとあわせてみていきましょう。
1-1. 不祥事やミスを起こした従業員が書く社内文書
始末書は、従業員が不祥事やミスをした際に、経緯・理由・反省の意などを記す社内文書のことです。
遅刻だけでなく、業務命令に背いた場合や情報漏洩をした場合、ミスにより顧客や自社に損失を与えた場合など、さまざまなケースで始末書を書かせることがあります。
一般的にはミスが発生した日時や内容を記載し、それらをもとに反省の言葉や再発防止策の説明などを従業員本人の考えで書かせます。
遅刻の場合は、遅刻した日時と状況や遅刻の原因を記載します。また、会社や関係者に迷惑をかけたことへの謝罪や、遅刻を繰り返さないための具体的な対策も記載されることが一般的です。
1-2. 顛末書や反省文との違い
始末書と似た言葉に顛末書や反省文がありますが、それぞれ目的や記述する内容が異なります。
どのような違いがあるのか、それぞれの文書の目的や提出されるタイミングなどを確認しておきましょう。
始末書 | ・反省を促すことが目的
・従業員が犯した不祥事や違反の事実関係を明らかにする ・トラブル発生後速やかに提出される傾向がある |
顛末書 | ・再発防止や改善につなげることが目的
・業務上に起きたミスやトラブルについての経緯を会社に報告する ・事態収束後に提出される傾向がある |
反省文 | ・反省文は軽微なミスや失敗に対し、反省の気持ちを表明することが目的 |
始末書は従業員の反省を促すことが大きな目的であることにたいし、顛末書は再発防止を重視している点が大きく違います。
この違いが分かっていると従業員に書かせるべき文書で迷わなくなり、より効果的な再発防止や反省につながります。
なお、反省文は始末書や顛末書よりも軽いミスに対して書かせるもので、個人の反省を促してメリハリをつけることが主な目的です。
2. 遅刻した従業員に始末書を書かせる3つの効果
遅刻した従業員に始末書を書かせることで、以下の3つの効果が期待できます。
- 従業員の反省を促す
- 企業・組織の風土を是正できる
- 証拠の記録につながる
それぞれの効果を具体的に確認していきましょう。
2-1. 従業員の反省を促す
遅刻した従業員に始末書を書かせることで、従業員の反省を促す効果があります。
始末書を書く過程で、従業員は自身の行動を振り返り、遅刻の事実と原因を明確にできるためです。自らの過ちに対する責任を認識し、同様の問題を繰り返さないようにする意識が高まります。
また、始末書では再発防止策を記述することも一般的です。具体的な改善策を考えることで反省の向上につながるでしょう。
2-2. 企業・組織の風土を是正できる
遅刻した従業員に始末書を書かせることで、企業や組織の風土を是正する効果が期待できます。
始末書が従業員の行動や態度に対するフィードバックとして機能し、組織の規範やルールの重要性を再認識させられるためです。
従業員の自分勝手な行動が一度でも見過ごされると、ほかの人も「大したことではないのだろう」と考えます。結果、企業・組織の風土が乱れてチームワークが乱れ、好き勝手に行動する従業員が増えることになりかねません。
始末書によって遅刻という行為が組織の規範に反することを周知することで、企業・組織の風土の是正につながるでしょう。
2-3. 証拠の記録につながる
遅刻した従業員に始末書を書かせることで、証拠の記録にもつながります。
始末書には、従業員のミスや不祥事が発生した日時や事実関係、自らのミスや行為を反省する文章などが明確に記述されているためです。
万が一従業員が企業の処分に不満を感じて裁判を起こした場合であっても、事実の有無を提示する重要な証拠になります。
3. 遅刻による始末書の適切な書かせ方
従業員が遅刻した際の始末書の書かせ方は以下のとおりです。
- 始末書を書く目的を明確に伝える
- 書き方を指導する
- 提出期限・提出方法を伝える
- 始末書の構成について指導する
- 提出後のフォローアップを実施する
始末書はただ書かせるだけでは無駄になってしまったり、マイナス面だけが強調されたりしてしまいます。効果的な書かせ方を知り、実践しましょう。
3-1. 始末書を書く目的を明確に伝える
始末書を書かせる前に、目的を従業員に明確に伝えることが重要です。
始末書の主な目的は、従業員に自身の行動を反省させ、再発の防止を約束させることにあります。目的を理解させることで、始末書を単なる罰としてではなく、自己改善の機会と捉えてもらうことが大切です。
3-2. 書き方を指導する
目的を伝えたら、次は始末書の書き方について具体的な指導をおこなうことが望ましいです。書き方のポイントを押さえることで、従業員は自身の過ちを正確に反映した文書を作成できます。
例えば、以下のことを伝えましょう。
- 事実を正直に書く
- 年月日・日時を明確にする
- 簡潔にまとめる
手書きとパソコンで迷う従業員もいる恐れがあるため、どちらで作成するのかも指導しておくとよいでしょう。
3-3. 提出期限・提出方法を伝える
書き方について指導したら、次に提出期限・提出方法についても事前に従業員に伝えることが重要です。
企業の提出期限や提出方法を事前に明確に伝えておくことで、従業員は始末書を迷うことなく適切に提出できます。
提出期限は、基本的に当日または翌日に設定するとよいでしょう。遅刻の経緯や状況を鮮明に記憶しているうちに作成させることが大切です。
提出先は、基本的には直属の上司になります。ただ、会社によっては提出方法に独自のルールを設けていることがあるため、従業員には事前に伝えておくと親切です。
3-4. 始末書の構成について指導する
自社で始末書のテンプレートを用意していない場合は、始末書の構成についても伝えておくとよいでしょう。どのような構成で記載すればよいかわからず、迷う可能性があるためです。
以下の項目について記載するべきである旨を伝えましょう。
- タイトル
- 提出先
- 日付
- 所属
- 氏名
- 本文(事実関係・反省・謝罪・再発防止のための施策など)
事前に社内でフォーマットを作成しておくことで、手順を省略可能です。フォーマットがあることで、従業員は、構成についての指導を受けることなく始末書を作成できます。
3-5. 提出後のフォローアップを実施する
始末書の提出後には、従業員との面談を実施して書面に記載された内容について話し合うことが重要です。従業員の反省を深められるうえ、再発防止策の実行を確認できます。
また、始末書を記述した後の従業員は、反省のあまり落ち込んでいる場合が多いです。業務に支障をきたす可能性もあるため、モチベーションが低下しないようにケアしましょう。
4. 遅刻した従業員に始末書を書かせる際の注意点
遅刻した従業員に始末書を書かせる際の注意点は以下のとおりです。
- 始末書の作成を強制しない
- 遅刻1回目の始末書では評価に反映させない
- 従業員は公平に処分する
効果的な反省や再発防止につなげるために、遅刻に限らずすべてのミスに対して意識するようにしましょう。
4-1. 始末書の作成を強制しない
遅刻した従業員に始末書を書かせる際は、作成・提出を強制してはいけません。反省や謝罪の意をあらわす始末書の提出を強制することは、憲法で保障されている思想・良心の自由に反すると考えられるためです。
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
従業員は、始末書の記述・提出を求められても拒否できます。始末書を拒否したことについて就業規則に違反しているとして懲戒処分にすることもできません。
また、就業規則に始末書の提出に関する記載がない限り、始末書を労働者に書かせられない点にも注意が必要です。
4-2. 遅刻1回目の始末書では評価に反映させない
遅刻1回目で直ちに評価に反映させることは避けましょう。従業員にとって不当に厳しいと判断される可能性があるためです。
過度に厳しい評価をすると、従業員の士気を下げる可能性があります。従業員のモチベーションを維持するためには、過度に厳しい対応を避け、改善の余地を与えることが重要です。
従業員が遅刻をした際は、まず指導や改善の機会を提供し、問題が改善されない場合に評価に反映させるようにしましょう。
4-3. 処分内容は就業規則に則って公平におこなう
遅刻した従業員に始末書を書かせる際は、一部の従業員を贔屓(ひいき)せず、公平に処分する必要があります。
従業員が「自分だけ不当に厳しい処分を受けている」と感じると、仕事へのモチベーションが低下するためです。
始末書などの懲戒処分を実施する際は、就業規則にもとづいて一貫した対応を取りましょう。
5. 遅刻に対する始末書は再発防止に役立たせることを意識しよう
今回は、従業員が遅刻した際の処分として用いられる始末書について解説しました。書かせることで得られる効果や書かせ方などを理解しておきましょう。
ただ、始末書に強制力はないうえ、評価に反映する際は慎重にならなければいけない点には注意が必要です。
始末書を強制したり、評価を下げすぎてしまったりすると、その従業員のモチベーションは下がり、ミスの増加や生産性の低下につながります。
従業員の自主性を重視して運用するようにしましょう。
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