昇給とは?設計ルールやメリット・デメリット、計算方法・相場を解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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昇給とは?設計ルールやメリット・デメリット、計算方法・相場を解説

給与

昇給とは、従業員の基本給の金額が上がることです。日本労働組合総連合会の調査によると、令和7年度(2025年度)の春闘(第2回)での昇給率は、全体5.4%との結果が出ています。企業が適切に昇給を実施することは、優秀な人材の確保や人材流出の防止に直結します。

本記事では、昇給の仕組みや種類、ベースアップ(ベア)との違い、メリット・デメリットについて詳しく解説します。また、昇給率の計算方法や、最新の昇給率(昇給額)の相場についても紹介します。

参考:2025 春季生活闘争 第2回回答集計結果について|日本労働組合総連合会

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1. 昇給とは従業員の基本給が上がること

給与

昇給とは、従業員の基本給が上がることです。基本給は、毎月企業から支払われる給与のことで、ボーナスは含みません。

昇給を決める要因は、大きく分けて以下の3つがあります。

  • 業績
  • 勤続年数
  • スキル・能力

一般的なのは、年に1度のタイミングで昇給する定期昇給です。また、特定の成果を上げたときや資格を取得したときなどに、特別昇給が実施されることもあります。

1-1. 昇給と昇格の違い

昇給と昇格の違いは、以下のとおりです。

昇給 従業員の業績や勤続年数に基づいて基本給が上がること
昇格 従業員の役職や職位が上がること

昇給は給与面の変化、昇格は地位や役割の変化といえます。昇給は昇格にともなうことが一般的ですが、必ずしもセットではありません。

1-2. 昇給とベースアップ(ベア)の違い

昇給とベースアップ(ベア)の違いは、以下のとおりです。

昇給 ベースアップ(ベア)
対象 従業員ごと 従業員全員
要因 本人のスキルや勤続年数など インフレ対策や生活水準の向上など

昇給は従業員の個別の評価により実施するもので、一人ひとりのスキルや勤続年数にもとづき実施することが一般的です。

一方で、ベースアップ(ベア)は、従業員全員の基本給が一律に引き上げられます。インフレ対策や生活水準の向上が目的です。一般的に、毎年の春季闘争(春闘)において、労働組合と企業間の賃金交渉で決まります。

関連記事:ベースアップとは?昇給との違いやメリットを徹底解説

2. 昇給制度の種類

カレンダー

昇給制度は企業ごとにさまざまな形で運営されていますが、大きく分けると6つの種類があります。

種類 特徴
定期昇給 ・一定の期間ごとに自動的に基本給が引き上げられる

・一般的に年1回実施される

・昇給額は勤続年数に応じて決まる

臨時昇給 ・一時的に基本給が引き上げられる

・資格取得や特別な業績を上げた場合などに適用される

自動昇給 ・一定の基準を満たすと自動的に基本給が引き上げられる

・従業員の評価に関係なく実施される

考課昇給 ・業績評価や勤務態度に基づいて個別に評価される

・企業ごとに昇給条件や昇給率が大きく異なる

普通昇給 ・一般的に年次ベースでおこなわれる

・スキルや職務能力の向上により基本給が引き上げられる

・特別昇給と対になって使用されることが多い

特別昇給 ・特殊な状況下で基本給が引き上げられる

・昇格に伴う昇給や特別な業績を達成した場合に適用される

・普通昇給と対になって使用されることが多い

昇給制度は、企業の方針や従業員の役割によっても異なります。企業経営者は、それぞれの特徴を理解し、自社に適した昇給方法を選択しましょう。

3. 昇給制度の具体的な設計ルール(仕組み)

給料日

昇給制度は、あらかじめ仕組みを理解しておくと、スムーズに設計しやすくなります。ここでは、昇給制度の具体的な設計ルールについて詳しく紹介します。

3-1. 昇給の基準となる賃金

昇給の基準となる部分は「基本給」です。残業代や割増賃金は、基本給をもとに計算されます。そのため、昇給によって基本給が増加すると、残業や休日出勤があった場合の賃金も上昇することになります。企業側は人件費全体への影響を見越した制度設計が求められます。

関連記事:基本給とは?基本給の平均や決め方、決める際の注意点を解説

3-2. 昇給の実施タイミング

昇給の実施タイミングに、法律上の明確な規定はありません。企業ごとの方針や制度に基づいて自由に設定することが可能です。一般的には、年に1回または2回、年度初めの4月や半期の10月に昇給を実施する企業が多く見られます。これは人事評価や事業年度の切り替えとタイミングを合わせやすいためです。

一方で、四半期ごと(3ヵ月ごと)に昇給を実施する企業もあり、とくに成果主義を重視する企業では柔軟な昇給サイクルを採用しているケースもあります。自社の評価制度や経営スケジュールに合わせて、最適な昇給タイミングを設定することが大切です。

3-3. 昇給の上限・下限に決まりはある?

昇給額には、法律上、上限や下限の明確な定めはありません。実務では、企業ごとの人事制度に基づき、等級や職種に応じた昇給の範囲(上限・下限)を設けているケースが一般的です。

また、昇給は必ずしも実施しなければならないものではありません。そのため、昇給の下限として「昇給なし」と設定していても違法とはなりません。ただし、就業規則や雇用契約書に「毎年昇給する」と明記されている場合は、その内容に従う必要があります。

昇給制度を設計する際は、会社の財務状況に無理のない範囲で、従業員の意欲を高められるよう、昇給額の上限・下限を適切に設定することが求められます。

3-4. 昇給は何歳までが対象になる?

何歳までを昇給の対象にするのかは、会社によって異なります。過去に公益財団法人日本生産性本部が実施した調査によると、定昇(定期昇給)制度があると回答した割合は67.6%(「定年まで定昇あり」は17.6%、「一定年齢まで定昇あり」は50.0%)でした。また、定昇停止年齢の平均は48.9歳という結果も報告されています。

このように、多くの企業では一定年齢で昇給を止める傾向がある一方、近年では年功序列型の運用から能力や成果に応じた処遇を重視する「成果主義」への移行が進んでいます。年齢にかかわらず実力に応じて昇給できる制度は、従業員のモチベーション向上にもつながるので、自社の人事方針や組織の方向性に合わせて導入を検討してみると良いでしょう。

参考:第14回 日本的雇用・人事の変容に関する調査結果|公益財団法人 日本生産性本部

3-5. 【ポイント】昇給制度は就業規則に明記する

労働基準法第89条に基づき、常時10人以上の労働者を雇用している企業は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署へ届け出る義務があります。就業規則には、賃金の決定・計算・支払方法などを明記する必要があるため、昇給制度についても具体的に定めることが求められます。

なお、従業員にとって不利益となるような昇給制度の変更をおこなう場合は、原則として個別に同意を得なければなりません。また、就業規則を変更した際には、再度労働基準監督署に届け出るとともに、従業員に対して適切に周知する必要があります。

(作成及び届出の義務)

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

(省略)

二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

(省略)

引用:労働基準法第89条一部抜粋|e-Gov法令検索

関連記事:就業規則に賃金規程は必須ではない?必要になるケースや定める事項とは

4. 昇給制度のメリット

メリット

昇給制度を正しく整備することで、企業はさまざまなメリットが得られます。ここでは、昇給制度を整えるメリットについて詳しく紹介します。

4-1. 従業員の人件費を予測できる

昇給制度を整備することで、将来的な人件費を予測しやすくなるというメリットがあります。これは、昇給のタイミングや金額が制度として明確になるためです。

例えば、定期昇給を導入している企業では、毎年の昇給額がほぼ一定であるので、年次ごとの人件費総額を計算しやすくなります。このように、将来的な人件費の見通しが立てられることで、企業は中長期の資金計画や設備投資計画をより詳細に立てることが可能になるでしょう。

4-2. 従業員の定着率が高まる

昇給制度の整備は、従業員の定着率向上に貢献するメリットがあります。例えば、勤続年数に応じて基本給が徐々に上がる仕組みであれば、従業員は「この会社で長く働き続けることで将来の収入が安定する」と感じやすくなります。

また、仮に転職を検討している従業員であっても、「来年には昇給がある」「昇給を受け取ってから次のステップを考えよう」と判断し、退職の先延ばしや再考につながる可能性もあるでしょう。このように、昇給制度を整備することは、従業員が長期的に働き続けるためのモチベーション維持や、組織へのロイヤルティ向上に寄与します。

4-3. 従業員のモチベーションが向上する

昇給制度は、従業員のモチベーション向上に大きく寄与します。とくに考課昇給や特別昇給など、業績・成果に応じて基本給が上がる仕組みは、従業員にとって大きなインセンティブとなります。

例えば、高い営業目標を達成した従業員に対して特別昇給をおこなえば、「努力が正当に評価された」と感じられ、さらなる成果を目指す意欲につながるでしょう。このように、従業員のモチベーションが高まることで、生産性やエンゲージメントの向上が期待でき、結果として、企業全体の業績向上にもつながります。

5. 昇給制度のデメリット

デメリット

正しく昇給制度を整備しなければ、メリットではなく、デメリットにつながる恐れもあります。ここでは、昇給制度のデメリットについて詳しく紹介します。

5-1. 評価基準をあいまいにすると不満につながる

評価基準があいまいな場合、従業員の不満が高まるリスクがあります。とくに昇給の根拠が不明確であれば、仕事へのモチベーションが低下し、場合によっては離職につながる可能性も否定できません。例えば、同じ部署に所属し、業績が同程度であるにもかかわらず、評価結果や昇給額に大きな差が生じれば、従業員は不公平感を抱きやすくなります。

このように、評価の透明性が確保されていない企業では、昇給制度がかえって逆効果となる恐れがあります。そのため、従業員の納得感を得るには、明確かつ一貫性のある人事考課の仕組みづくりが重要です。

5-2. 人事考課に時間とコストがかかる

昇給制度の導入には、一定の時間とコストがかかるというデメリットがあります。これは、従業員一人ひとりの業績を公平に評価するために、精度の高い人事考課の仕組みが求められるためです。

例えば、評価を担う管理職への研修実施や、評価基準・評価シートの整備といった対応が必要となり、結果として企業の運営コストは増加します。また、人事考課の負担が過大になれば、制度の継続的な運用が困難になる可能性もあります。そのため、時間的・金銭的コストを考慮しつつも、従業員の努力や成果に目を向ける仕組みを適切に設計することが重要です。

関連記事:人事考課とは?書き方や見るべきポイントを詳しく解説

6. 企業の昇給金額の計算方法

お金

企業の昇給金額の計算方法は「基本給 × 昇給率」です。企業の昇給率が決まっている場合、昇給前の基本給の金額から昇給金額を求められます。例えば、昇給前の基本給が250,000円で年間昇給率が5%であれば、昇給金額は以下のとおりです。

250,000円 × 5% = 12,500円

一方で、昇給額があらかじめ金額として決められているケースでは、その金額が基本給に上乗せされます。ここからは、2025年最新の企業の昇給率の平均値(相場)について紹介します。

6-1. 【2025年最新】企業の昇給率の平均値(相場)

企業の昇給率の平均値は5.40%(昨年同時期:5.25%)です。日本労働組合総連合会が発表した2025年の春季闘争(春闘)第2回回答集計結果では、以下となりました。

企業規模 昇給率 昇給額
大企業(従業員数300名以上) 5.41% 17,661円
中小企業(従業員数300名未満) 4.92% 13,288円

昇給率は、一般的に大企業のほうが中小企業よりも高い傾向にあります。このような相場感も踏まえたうえで、自社の昇給率(昇給額)が妥当な水準となるよう、適切に設定することが重要です。

参考:昨年同時期を上回る回答引き出し!中小組合も高水準を維持!~2025 春季生活闘争 第 2 回回答集計結果について~|日本労働組合総連合会

7. 適切な昇給で企業価値を高めよう!

給与

透明性と公正さをもつ昇給制度は、企業の持続的な成長に大きく貢献します。従業員のモチベーション向上や定着率の改善につながり、結果として企業の業績を上げることが可能です。

また、昇給制度を導入することで人件費を予測しやすくなります。固定費のなかでの大きな割合を占める人件費を把握することで、資金計画を立てるときに役立つでしょう。

一方で、評価基準があいまいだと従業員の不満を引き起こし、従業員のモチベーション低下を招くリスクもあります。自社に適した昇給制度を整え、適切に運用しましょう。

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jinjer Blog 編集部

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