復職とは?判断基準・タイミングや手続きの流れについて解説!
更新日: 2025.6.13 公開日: 2024.11.11 jinjer Blog 編集部

復職とは、法律や企業独自で定められた休業や休職の制度を利用した従業員が元の職場で働くことです。従業員を復職させるには、条件やタイミングを理解したうえで、適切な手続きをおこなわなければなりません。
本記事では、従業員を復職させる条件や手続きについて詳しく解説します。また、従業員が復職する際の注意点についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
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勤怠、給与、評価…それぞれのシステムに散在する従業員データを一つに集約し、「戦略人事」に活用する企業が増えています。
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1. 復職とは


復職とは、法律や企業独自で定められた休業や休職を経た従業員が再び勤務を開始することです。主に以下の理由で休業や休職をしたのちに、復職するケースが一般的です。
- 病気や怪我など健康上の理由
- 出産
- 育児
- 介護
- 留学
出産や育児のように、一定期間休職(休業)させて復職させることが法律で義務づけられているものもあります。
企業は従業員がスムーズに復職できるよう体制を整えることが大切です。
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律|e-Gov 法令検索
1-1. 復職と復帰の違い
復職と復帰に大きな意味の違いはありません。企業によっては「復職」を「職場復帰」と呼ぶケースもあり、同じ意味合いで用いられることも少なくないようです。
しかし、保育園の継続利用手続きなどで提出が求められる「復職証明書」という自治体の公的な書類があるように、ビジネスでは「復職」が使われるケースが多いかもしれません。
参考:復職証明書|墨田区
2. 企業の復職率(産休・育休)


企業の復職率は、休業や休職の取得理由によって異なります。それぞれの復職率について、以下の表にまとめました。
| 休業や休職の取得理由 | 復職率 |
| 介護休業 |
|
| 育児休業 |
|
| 病気休職 |
|
介護休業や育児休業の復職率は90%を超える一方、病気休職による復職率は51.9%です。
参考:「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」調査結果|独立行政法人労働政策研究・研修機構
3. 従業員を復職させる判断基準・条件


従業員を復職させる判断基準や条件は、以下のとおりです。
- 従業員が復職したい意思をもっているか
- 保育所の入所が決まっているか
- 業務できるまで病状が回復しているか
従業員を復職させるためには、働く意思をもっているか確認することが大切です。従業員から復職を希望された場合は、面談などを通して復職する理由や働ける環境が整っているか確認しましょう。
育児休業から復職を希望する従業員がいる場合は、子どもの保育所が決まっているか確認することも必要です。もし保育所が決まっていなければ、1歳6ヵ月もしくは2歳になるまで育児休業を延長できる旨をアナウンスしてください。
病気休職から復職を希望する従業員の場合は、業務が遂行できるまで病状が回復しているか確認しましょう。病状が改善しないまま復職させると、病状の悪化や再休職につながる可能性もあります。
主治医からの診断書や従業員との面談をおこなって、復職させるか慎重に判断してください。
4. 従業員を復職させるタイミング


従業員を復職させるタイミングは、休業や休職の理由によって異なります。それぞれのタイミングについて、以下の表にまとめました。
| 休業や休職の理由 | 復職のタイミング |
| 育児休業 |
|
| 病気休職(傷病休職) |
|
| 介護休業 |
|
介護休業の期間は、法律により93日間と定められています。従業員より延長などの申し出がなければ、書面にて休業終了の通知をしたうえで、復職の手続きをおこないましょう。
育児休業の場合は、法律に基づいて子どもが1歳を迎えるまでに保育所が決まっていれば復職手続きをおこないます。育児休業を延長した場合は、保育所が決まったタイミングで復職手続きをおこなってください。
病気休職の場合は、法律上の休職期間は定められていません。主治医や産業医による判断をふまえて、復職させる時期を検討してください。
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律|e-Gov 法令検索
5. 従業員が復職する際の手続きの流れ


一度仕事から離れていた従業員が復職する際は、業務内容や職場環境の変化、心身の負担などによりストレスを感じやすくなります。職場からの十分な支援がない場合、それが原因で再休職や離職につながることもあります。
ここでは、復職する際の手続きの流れについて詳しく紹介します。
5-1. 産業医面談を実施する
とくに病気休職の場合、本人から復職の申し出があっても、すぐに復職させると心身に大きな負担がかかり、結果として再休職や離職のリスクが高まる可能性があります。まずは本人の意思を確認し、主治医の意見をふまえたうえで復職の可否を慎重に判断します。
復職手続きにあたっては、当該従業員と産業医による面談を実施し、医学的見地からの助言をもとに適切な対応を検討しましょう。これにより、復職者が円滑に職場へ戻れるよう、必要な環境整備をおこなうことができます。
関連記事:ストレスチェック後の産業医面談の内容とは?流れ・目的・拒否された場合の対応を解説
5-2. 会社側と従業員で復職面談をおこなう
主治医や産業医から復職可能との判断が示されたら、会社側と従業員で復職面談を実施しましょう。復職前に従業員とコミュニケーションを図ることで、働き方や配慮してほしい内容などを具体的に確認できます。
面談の際にヒアリングする内容は以下のとおりです。
- 復職する具体的な理由
- 復職日
- 勤務時間や雇用形態の希望
- 勤務で配慮してほしい内容など
病気休暇から復職する場合は、現在の健康状態や通院の頻度なども確認しましょう。介護休業・育児休業から復職する場合は、仕事と介護・育児を両立できるように、希望する支援について把握することも大切です。
5-3. 復職支援プランを作成する
従業員と復職面談をおこなったあとは、ヒアリングした内容をふまえて復職支援プランを作成しましょう。復職支援プランを作成することで、従業員の要望に沿ったサポートを実施できます。
復職支援プランは、介護休業・育児休業・メンタルヘルスによる病気休職の理由によって、策定方法が異なります。以下の厚生労働省の資料を参考に、従業員に合う支援プランを検討してください。
参考:~介護に直面した従業員への支援~「介護支援プラン」策定マニュアル|厚生労働省
参考:~円滑な育休取得から職場復帰に向けて~中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル |厚生労働省
参考:〜メンタルヘルス対策における職場復帰支援〜心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き|厚生労働省
5-4. 試し出勤制度を採用してみる
復職可能との判断があった場合でも、すぐに元の業務へ復帰することに不安や負担を感じる従業員も少なくありません。このようなケースに対応するため、「試し出勤(リハビリ出勤)制度」を導入することも有効な手段の一つです。
例えば、実際の勤務時間と同じ時間帯に軽作業をしてみる「模擬出勤」や、自宅と職場を往復してみる「通勤訓練」など、段階的な復職支援をおこなうことで、従業員が自信を取り戻しやすくなり、スムーズな職場復帰につながります。
ただし、試し出勤制度を導入する際は、給与・手当の取り扱いや労災発生時の対応などについてあらかじめルールを明確に定め、トラブル防止に努めることが重要です。
参考:〜メンタルヘルス対策における職場復帰支援〜心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き|厚生労働省
5-5. 復職後のフォローアップをおこなう
実際に従業員が復職したあとは、定期的にフォローアップをおこないましょう。業務に支障が生じていないか、ほかの従業員とコミュニケーションが図れているかなどを確認し、状況に応じてフォローします。
6. 従業員が復職する際の注意点


従業員が復職する際には、手続き以外にも気を付けるべき点がいくつかあります。ここでは、従業員が復職する際の注意点について詳しく紹介します。
6-1. 復職後の労働条件や賃金・手当のルールを明確に伝える
従業員が復職する際は、復職後の労働条件や賃金について明確に伝えましょう。復職前と復職後で、雇用条件の変更が必要になるケースもあります。
また、介護や育児を理由に時短勤務制度を利用する場合は、賃金が減る可能性があります。従業員が企業に対して不満をもつことがないように、減額率などを就業規則に記載することが大切です。
なお、2025年4月より、時短勤務制度の活用を促すための「育児時短就業給付」が新設されることが決定されました。対象者は、時短勤務制度を利用している2歳未満の子どもをもつ従業員です。
育児時短就業給付に関する詳しい概要は、以下の厚生労働省の資料をご確認ください。
6-2. 復職した従業員と積極的にコミュニケーションを図る
従業員の復職が決定したら、積極的にコミュニケーションを図りましょう。復職後は介護や育児との両立がうまくいかなかったり、慣れない業務で体調を崩したりする可能性があります。
積極的にコミュニケーションを図れると、従業員の不安や悩みを聞き出すことで、改善策を検討することも可能です。
6-3. 産業医や上司と連携してサポートをおこなう
病気休職から復職する従業員がいる場合は、産業医や上司と連携してサポートすることが大切です。再休職することがないように、産業医や上司と定期的に面談を設けて、従業員の状態を把握することが大切です。
もし業務上の問題点がある場合は、産業医などに相談したうえで、職場復帰支援プランを見直しましょう。
6-4. プライバシー保護に努める
従業員の健康情報は、個人情報保護法に基づく「要配慮個人情報」に該当し、とくに慎重な取り扱いが求められます。企業が従業員の健康情報を取得する際は、収集目的を明確にしたうえで、必要最小限の範囲にとどめ、事前に本人の同意を得ることが原則です。
また、健康情報をデータとして保管する場合、取扱責任者を明確にしたうえで、アクセス権限やパスワードなどの管理措置を講じる必要があります。加えて、外部への漏えい防止の観点から、情報管理システムの安全対策を徹底することが重要です。
さらに、プライバシー保護に関する社内規程の整備や、従業員に対して継続的に教育・研修を実施するなど、組織全体の情報リテラシー向上が望まれます。
6-5. 退職勧奨は慎重に実施する
病気からの回復が長引いている従業員や、育児・介護などとの両立が困難で復職の見込みが立たない従業員に対しては、企業として退職勧奨を検討するケースもあります。
休職中の従業員に対して、退職勧奨をおこなうこと自体は違法ではありません。しかし、強引な説得や圧力、繰り返しの勧奨により、退職を強要したとなれば、民法上の不法行為(第709条)や刑法に定める脅迫罪(第222条)・強要罪(第223条)などに該当し、損害賠償を請求されたり、懲役・罰金などの罰則が課せられたりする恐れもあります。
退職勧奨をする際は、その理由を明確に整理し、従業員の自由な意思に基づいて判断を仰ぐことが重要です。あくまで「任意の合意」に基づく手続きである必要があります。不当な退職勧奨は企業の信頼を大きく損なうリスクもあるため、慎重かつ誠実に対応をしましょう。
関連記事:休職期間満了後に解雇や退職勧奨はできる?不当解雇とならない注意点を解説
7. 復職に関連するよくある質問


ここでは、復職に関連するよくある質問への回答を紹介します。
7-1. 復職には医師の診断書が必要?
復職に際して医師の診断書の提出を求めることについて、労働基準法などの法律上に明確な規定はありません。そのため、医師の診断書がなくとも、復職は可能です。
しかし、復職の可否を見極めるには、健康状態や職務遂行能力を企業が適切に判断する必要があります。診断書を取得せずに復職させることは、再休職や安全配慮義務違反につながる恐れもあります。
もしも、企業が診断書の提出を義務付けたい場合は、あらかじめ就業規則や休職規程などにその旨を明記し、従業員にきちんと周知しておくことが大切です。
関連記事:復職時に診断書は必要?意見書との違いや判断基準を解説
7-2. 休職から復職までの期間は決められている?
育児休業や介護休業には、法律上の期間が定められています。一方、私傷病による休職については、法律に明確な期間の規定はありません。そのため、会社が規定する就業規則に従うことが一般的です。例えば、勤続年数に応じて休職期間を6ヵ月、1年、3年と段階的に設定している企業も見られます。
なお、会社が定める休職期間を経過しても回復せず復職できない場合は、就業規則に基づき自然退職(退職扱い)や解雇となることもあります。ただし、主治医が復職可能と判断しているにもかかわらず、正当な理由なく復職を認めずに休職期間満了を理由に解雇した場合、不当解雇と判断される可能性があるため注意が必要です。
参考:メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査|独立行政法人労働政策研究・研修機構
8. 復職への知識を深めて従業員を適切にサポートしよう


復職とは、法律や企業独自で定められた休業や休職制度を利用した従業員が元の職場に復帰することです。
従業員を復職させるタイミングは、休業や休職を取得した理由によって異なります。介護・育児休業の場合は、法律で定められた期間を超えた際や保育所が決まってから復職の手続きをおこないましょう。
病気休職の場合は、主治医や産業医の判断をふまえて、適切な時期を検討してください。復職への知識を深めて、従業員を適切にサポートしましょう。



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