在籍出向者の給与の扱いは?雇用関係や制度のポイントを解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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在籍出向者の給与の扱いは?雇用関係や制度のポイントを解説

階段を上る男性

「在籍出向の給与は、どのように決める?」

「残業代や退職金の取り扱いは?」

上記の疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

在籍型出向は、従業員が雇用契約を維持したまま出向できる制度です。うまく利用すれば人材活用の幅が広がり、企業間の関係強化にもつながります。

しかし、給与の負担や税務上の処理など複雑な面もあり、トラブルを避けるためにも十分な理解が必要です。

この記事では、在籍型出向の仕組みや給与の取り決め方、税務処理のポイントを解説します。

記事を読んで、出向制度をスムーズに運用するためのポイントを理解しましょう。

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1. そもそも在籍型出向とは

電卓で計算する人

在籍型出向とは、在籍中の企業と雇用契約を継続しつつ、出向先企業とも新たに雇用契約を結んで働くことです。

労働者は出向元と出向先の双方と雇用関係を持ち、出向先で業務を一定期間おこなった後、出向元に復帰できます。

企業 雇用関係
出向元企業 従業員としての雇用契約を継続する

給与や福利厚生も継続される場合が多い

出向先企業 新たに雇用契約を締結する

業務内容や指揮命令は出向先の管理下でおこなう

なお、在籍型出向の期間には法的な制限がありません。そのため、以下のような柔軟な設定が可能です。

設定 期間
有期の場合 3年、5年など期間を明確に定める
無期の場合 業務の必要性に応じて期間を定めない

ただし、業務の必要性がない無期限の出向や、不当に長期間の出向は「権利の濫用」とみなされる可能性があるため注意が必要です。

1-2. 出向には主に2つの種類がある

出向には、在籍型出向のほかに転籍型出向があります。両者を混同しないためにも、違いを押さえておきましょう。

在籍型出向とは、先に解説したとおり、出向元との雇用契約を維持した状態で、出向先で働く形態のことです。一方、転籍型出向は、出向元との雇用契約を終了し、新たに出向先との雇用契約を結んだ上で働く形態を指します。

両者の大きな違いは、出向元との雇用契約があるか否かです。在籍型出向の場合は、出向期間が終了すれば出向元で再び働くことになりますが、転籍型出向の場合は、出向先に移籍したままとなり出向元には戻りません。同じ出向でも仕組みが異なるため、正しく理解しておきましょう。

2. 在籍型出向の給与の取り決め方

tax

在籍型出向の給与は、出向元と出向先の協議で決定されます。

出向元と出向先での給与の扱いが異なる場合は、以下の3つのケースに対応が分かれます。

  • 出向元と出向先がそれぞれ支払う
  • 出向先が支払い、出向元が給与相当額を出向先に支払う
  • 出向元が支払い、出向先が給与相当額を出向元に支払う

出向先と出向元で給与水準が高い方が、差額分を支払うパターンが多いです。

例えば、出向元の給与の水準が出向先よりも高い際には、出向元から出向先に差額分か給与相当額が支払われます。

支払いをおこなう企業に応じて、源泉所得税や社会保険料の徴収・納付をおこなう義務が発生します。

いずれの場合も、給与支給に関する取り決めは契約書に明記し、役割を明確にすることが重要です。

3. 在籍出向の給与の負担先

男性のイラスト

在籍出向には主に以下の4つのタイプがあり、目的や給与の負担先が異なります。

  1. 要員調整型
  2. 業務提携型
  3. 実習型
  4. 人事交流型

それぞれの出向形態について、特徴や具体例を見ていきましょう。

3-1. 要員調整型

要員調整型は、過剰な人員を抱える企業が、人手不足の企業へ従業員を派遣する出向形態です。

主に経営難や需要減少に直面した企業が、従業員の雇用確保を目的におこないます。出向先は人手不足が解消されるため、双方にメリットがある出向形態です。

例えば、コロナ禍で需要が激減した航空会社が、需要が増えた物流業界へ従業員を出向させたケースが該当します。

要員調整型では、労務提供を受ける出向先が給与を負担するケースが多いです。

3-2. 業務提携型

業務提携型は、企業同士が協力して事業を発展させるために、従業員を派遣する出向形態です。

主な目的は、技術指導やノウハウの共有、経営支援などになります。出向元は自社のスキルを活かし、出向先は新たな知見を得て事業を強化することが可能です。

例えば、製造業の企業が提携先の工場に従業員を派遣し、生産効率を上げるための技術指導をおこなうケースが挙げられます。

出向先は技術を習得できるため、業務提携型では出向先が給与を負担することが一般的です。

3-3. 実習型

実習型は、従業員が出向先で新しいスキルや知識を学び、成長することを目的とした出向形態です。

若手社員の育成や専門技術の習得が主な目的で、出向先で得た経験やノウハウを出向元での業務に活かすことを目指します。

中小建設会社の若手社員が、大手建設会社の現場に出向し、最新の工法や管理技術を学ぶケースがよくある例です。

一般的に、実習型では従業員の成長を目的とするため、給与は出向元が全額負担します。出向先は教育の場を提供する形となり、指導の負担を負うものの、直接的な給与負担は生じません。

3-4. 人事交流型

人事交流型は、企業間の相互理解や連携強化を目的として、従業員を派遣する出向形態です。

主にグループ企業や提携企業間でおこなわれることが多く、人材交流を通じて新しい視点やスキルを取り入れることを目指します。派遣される従業員にとっても、キャリアの幅を広げる機会となる出向形態です。

例えば、親会社がグループ会社の現場を理解するために、管理職候補者を派遣するケースが挙げられます。

人事交流型では、給与は出向元が全額負担する場合が多いです。特に親会社から子会社への出向では、子会社の負担を軽減するため、親会社が費用を負担するケースが多く見られます。

4. 在籍型出向の給与の税務上での扱い

はてなをたくさん浮かべる女性

在籍型出向の給与の税務処理で重要なポイントは、以下の3つです。

  1. 給与負担者は原則出向先とする
  2. 給与負担金は消費税非課税となる
  3. 源泉所得税や社会保険料は支給企業が対応する

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

4-1. 給与負担者は原則出向先とする

原則として出向者の給与を負担するのは、労務提供を受ける企業(出向先)です。労働力を享受した人や企業が対価を支払うという「応益負担の原則」に基づくのが原則です。

在籍出向だと労働力を提供されているのは出向先になるため、給与負担者は原則出向先になります。

ただ、先に述べたように出向元が出向先に支払うケースや、それぞれが支払うケースもあります。

税務上は出向者がどこで働いているかが基準となります。出向元と出向先でしっかりとした取り決めをしておくのが重要です。

出向元が負担する場合、合理的な理由(出向先の経営不振など)がなければ寄付金とみなされ、課税対象となる場合があるため注意しましょう。

出向元が負担する場合は、契約書や覚書などで給与負担の理由を明記し、税務当局に対して合理性を示す準備が必要です。

4-2. 給与負担金は消費税非課税となる

給与負担金は、税務上の取り扱いとして消費税非課税となります。給与負担金はサービスや商品の対価ではなく、労務提供に対する支払いであるためです。

なお、出向元に支払う給与負担金は「支払手数料」など、「給与」以外の勘定科目が推奨されます

給与負担金を「給与」として仕訳すると、実際の給与支払い額と負担金が混同され、誤解やトラブルを招く可能性があるためです。

出向元が受け取る給与負担金についても、同じ理由で仕訳の際には「受取手数料」や「雑収入」などの勘定科目が推奨されます。

4-3. 源泉所得税や社会保険料は支給企業が対応する

源泉所得税や社会保険料は、実際に給与を支給する企業が対応します。

ケース 源泉所得税や社会保険料の処理
出向元が直接給与を支給する 出向元が対応
出向先が給与負担額を出向元に支払い、出向元が支給する 出向元が対応
出向先が直接給与を支給する 出向先が対応

なお、労災保険料は給与を支払う企業とは関係なく、労務提供を受ける企業(出向先)が負担する必要があります。

出向元が給与を支払う場合でも、労災保険料は出向先が負担しなければならない点に注意しましょう。

5. 在籍出向の諸手当の扱い

はてなを二つ持つ男性

在籍型出向における諸手当の扱いは、以下のとおりです。

諸手当 扱い
残業代 ・出向先の36協定が適用される

・出向先は労働時間の情報を出向元に提供する必要がある

賞与 ・出向先が支給するのが一般的

・出向元の基準を適用する場合は、差額補填が必要

・査定期間や支給時期が異なる場合は、契約書で取り決める

退職金 ・出向元が支給し、出向期間を勤続年数に含む

・出向期間中の退職金負担は、出向元・出向先での取り決めが必要

・出向者に十分な説明をおこなう

昇給・ベースアップ ・出向元・出向先の協議で基準を決定する

上記の諸手当については事前に出向契約書で取り決め、出向者に十分説明することが大切です。

6. 在籍出向者の給与が下がるのは問題ない?

やじるし

在籍出向者について一つ注意を要するのが、給与面における取り扱いです。

出向元より出向先の給与が低い場合、そのまま従業員を出向させると、不利益変更に該当する恐れがあります。不利益変更とは、労働条件が労働者にとって不利に変更されることを指し、労働契約法上、労働者の同意なしにおこなうことは認められていません。特に、給与の引き下げは生活に直結するため、慎重な対応が必要です。

そのため、出向元より出向先の給与が低い場合は、出向元が差額分を負担するのが望ましいでしょう。実務上は、あらかじめ出向契約や就業規則に補填の有無や方法を明記し、従業員本人とも十分に協議したうえで同意を得ることが重要です。トラブルを防ぐためにも、丁寧な説明と文書での対応が求められます。

7. 在籍型出向の給与の扱い方を理解して適切な額を支給しよう

オフィス

在籍型出向では、給与や諸手当の取り決めが複雑になることがあります。出向元と出向先の間で十分に協議し、それぞれの役割を明確にすることが大切です。

給与の取り決めや税務処理、社会保険の対応を適切におこなうことでトラブルを防ぎ、制度を効果的に活用できます。

在籍型出向の給与について詳しく理解し、出向者と企業の双方にメリットのある運用を目指しましょう。

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jinjer Blog 編集部

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