労働保険の保険関係成立届とは?記入例・提出方法・注意点など手続き方法を詳しく解説
更新日: 2026.5.29 公開日: 2025.7.2 jinjer Blog 編集部

労働保険の保険関係成立届とは、企業が従業員を雇用した際、労働保険が成立したことを行政に届け出るための書類です。労働保険の手続きは「労働保険保険関係成立届(以降、「保険関係成立届」と表記)」を提出することからはじまります。
本記事では、労働保険の保険関係成立届の書き方や提出先、作成時の注意点などを解説します。ぜひ最後までご覧ください。
入退社のたびに発生する書類作成、行政機関への提出…。
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1. 労働保険の保険関係成立届とは


労働保険の保険関係成立届とは、企業が従業員を雇用した際、労働保険が成立したことを行政に届け出るための書類です。労働保険とは労災保険と雇用保険の総称であり、労災保険は1人でも従業員が雇用されていれば成立します。つまり、従業員が1人でもいれば労働保険の保険関係成立届の提出が必要です。
なお、労働保険は適用事業単位ごとに成立します。そのため、企業がひとつしか存在しなくても、支店や営業所ごとに保険関係成立届の提出が必要です。新たな事業所を設置した場合には、保険関係成立届の提出を忘れないように気を付けましょう。
ただし、一定の要件を満たす場合には、本社で各事業所分をまとめて手続きする「継続事業の一括」を利用することも可能です。詳しくは労働基準監督署の資料をご覧ください。
1-1. 労働保険の保険関係成立届の書き方・記入例
労働保険の保険関係成立届の主な記入事項は、次のとおりです。
| 項目 | 記載方法 |
| 事業主 | 法人名(個人事業主は個人名) |
| 住所 | 実際に事業をおこなっている所在地を記入 |
| 事業名 | 屋号や事業所名などを記入 |
| 事業内容 | 飲食店の運営建築工事など簡潔に記入 |
| 業種 | 飲食業建設業などを記入 |
| 保険関係成立年月日 | 労働保険の適用事業となった年月日を記入 |
| 加入済の労働保険 | すでに加入している場合のみ記入 |
| 雇用保険被保険者数 | 雇用保険の適用対象となる人数を記入 |
| 賃金総額の見込額 | 保険関係が成立した日から年度末(3月31日)までの基本給・手当・賞与を含めた年間見込み額を記入 |
1-2. 保険関係成立届に必要な添付書類
労働保険の保険関係成立届の提出には、事業主確認書類とあわせて、事業所が実在することや事業実態を確認できる書類が必要です。
事業主確認書類
- 法人登記簿謄本
- 個人事業主の場合は住民票など
事業所の実在と事業実態を確認できる書類(例)
- 賃貸借契約書
- 公共料金の領収書
- 事業所宛ての郵便物
- 開業届
- 営業許可証
事業所の実在と事業実態を確認できる書類は場合によって変わります。どの書類で証明できるか、事前に労働基準監督署などに確認するとよいでしょう。
1-3. 提出期限と届出先
保険関係成立届の提出期限は、労働保険の保険関係が成立した翌日から10日以内です。初めて従業員を雇用した日が労働保険の保険関係が成立した日となります。従業員を雇用したらなるべく早く提出しましょう。
保険関係設立届の届出先は、労災保険と雇用保険の保険料の申告納付を一元的に管理する「一元適用事業」と、労災保険と雇用保険の保険料の申告納付を別々におこなう「二元適用事業」で異なります。
| 届け出先 | 一元適用事業 | 二元適用事業(建設業、農林水産業など) |
| 労働基準監督署 | 労災保険と雇用保険を一括し保険関係成立届を提出する | 労災保険のみの保険関係成立届を提出する |
| 公共職業安定所(ハローワーク) | – | 雇用保険のみの保険関係成立届を提出する |
建設の事業や農林水産の事業などが二元適用事業であり、二元適用事業に該当しない業種はすべて一元適用事業です。保険関係成立届を提出する際は、一元適用事業か二元適用事業なのかを確認したうえで提出しましょう。
関連記事:労働保険の加入条件・成立手続き・年度更新と計算方法をわかりやすく解説
2. 労働保険の保険関係成立届とあわせて必要な書類


労働保険の成立手続きでは、保険関係成立届とあわせて概算保険料申告書、さらに雇用保険の加入者がいる場合は雇用保険関係の書類も提出が必要です。それぞれの提出先と提出期限を解説します。
2-1. 概算保険料申告書
概算保険料申告書とは、労働保険の保険料を申告するための書類です。
労働保険は1年分の保険料の概算額を計算し、あらかじめ納付します。保険料納付の際は、従業員の年間の賃金総額から労働保険料を算定して概算保険料申告書を作成します。提出先と期限は次のとおりです。
| 提出先 | 期限 | |
| 一元適用事業の概算保険料申告書
二元適用事業の労災保険の概算保険料申告書 |
労働基準監督署・都道府県労働局・日本銀行(代理店や歳入代理店も可能)のいずれか | 保険関係成立日の翌日から50日以内 |
| 二元適用事業の雇用保険の概算保険料申告書 | 都道府県労働局・日本銀行(代理店や歳入代理店も可能)のいずれか | 保険関係成立日の翌日から50日以内 |
一元適用事業の概算保険料申告書は労災保険分と雇用保険分をまとめて提出できます。二元適用事業の場合、労災保険分と雇用保険分それぞれの概算保険料申告書の提出が必要です。
2-2. 雇用保険適用事業所設置届
労働保険の保険関係成立届を手続きする際、雇用した従業員が雇用保険の加入対象者となる場合は、事業所と従業員それぞれの雇用保険手続きも必要です。
雇用保険適用事業所設置届は、初めて雇用保険の対象になる従業員を雇った際に、雇用保険の適用事業所となるために提出する書類です。
届出によって、事業所が雇用保険の適用対象として正式に登録され、雇用保険への加入手続きが可能になります。提出先と期限は次のとおりです。
| 提出先 | 期限 | |
| 雇用保険適用事業所設置届 | 公共職業安定所(ハローワーク) | 設置日の翌日から10日以内 |
2-3. 雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険被保険者資格取得届は、雇用保険の対象となる従業員を新たに雇用した際に提出が必要な書類です。
この手続きは、雇用保険の対象となる従業員ごとにおこなう必要があります。提出先と期限は次のとおりです。
| 書類名 | 提出先 | 期限 |
| 雇用保険被保険者資格取得届 | 公共職業安定所(ハローワーク) | 資格取得の事実があった日の属する月の翌月10日まで |
関連記事:雇用保険被保険者資格取得届は郵送できる?提出先や添付書類など方法を解説
3.労働保険の保険関係成立届でおさえたい基礎知識


労働保険の手続きを進める際には、いくつか注意すべき点があります。この章では、保険関係成立届でおさえておきたい基礎知識をわかりやすく解説します。
3-1. 紙または電子手続きが選べる
労働保険の手続きは、書面による提出だけでなく、電子申請(e-Gov)でもおこなうことが可能です。ただし、電子申請の場合は注意点があります。
一般的な一元適用事業の企業が、書面で労働保険を成立させる際の手続きの流れは次のとおりです。
- 労働基準監督署に保険関係成立届と概算保険料申告書を提出する。
- 公共職業安定所(ハローワーク)に保険関係成立届の控えと雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格取得届を提出する。
このように書面提出であれば、労働基準監督署での手続き後、同日中にハローワークでの手続きまで進められるケースも多いです。
一方、電子申請では、保険関係成立届の申請後、労働保険番号の付番を確認してから次の手続きに進むことになるため、書面提出と比べて手続きに時間を要する場合があります。
電子申請には、窓口へ出向く手間を省けるメリットがありますが、労働保険の手続きでは、こうしたデメリットも踏まえて、どちらの方法で手続きをするか判断するとよいでしょう。
3-2. 労働保険事務組合や社労士事務所への委託も可能
保険関係成立届をはじめとする労働保険の手続きは、労働保険事務組合や社会保険労務士事務所へ委託することも可能です。労働保険事務組合とは、中小企業の事業主などに代わって労働保険の事務処理をおこなう団体で、一定の要件を満たせば労働保険の事務委託ができます。
労働保険の手続きを外部に委託することで担当者のリソースの削減が可能です。手続きに時間を割けない場合には、専門家への委託も検討するとよいでしょう。
労働保険は一元適用事業や二元適用事業の違いや、労災保険と雇用保険で書類の提出先が変わることを理解していないと、ミスが起きやすい手続きです。特に保険関係成立届は労働保険の一番初めにおこなう手続きのため、ミスや内容の不備があると後続の手続きに影響を与えてしまいます。事前に必要情報や添付書類を確認したうえで手続きを進めましょう。
また、自社での対応に不安がある場合や、本業が忙しく手続きに時間を割けない場合は、労働保険事務組合や社会保険労務士へのアウトソーシングが有効です。専門家を活用することで、手続き漏れやミスを防ぎ、スムーズに対応しやすくなります。
3-3. 一元適用事業と二元適用事業の違いに注意
労働保険には労災保険と雇用保険の保険料の申告納付を一元的に管理する一元適用事業と労災保険と雇用保険の保険料を別々に申告納付する二元適用事業があります。二元適用事業に該当する業種は次のとおりです。
- 建設業
- 農林水産業
- 港湾運送事業
- 地方公共団体およびそれに準ずる団体の事業
これらの業種に該当しない企業は一元適用事業となります。労働保険の手続きは、事業が一元適用事業か二元適用事業かによって異なるので、事前に提出方法や提出先を確認しましょう。
4. 労働保険の保険関係成立届を提出しないリスク


労働保険の保険関係成立届は、従業員を雇用する事業主に義務付けられた重要な手続きです。これを怠ると、法律上のリスクだけでなく、経営や従業員との関係にも影響が及ぶ可能性があります。この章では具体的なリスクを詳しく解説します。
4-1. 是正指導を受ける可能性がある
労働者を雇用しているにもかかわらず、労働保険の保険関係成立届を提出しないことは、法令違反に該当します。労働保険徴収法では、労働保険関係の成立に必要があると判断した場合、行政が事業主に対して報告や資料の提出を求め、立入検査をおこなうことが認められています。
行政指導や是正勧告に適切に対応しない場合は、労働保険徴収法に基づき、6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の罰則が科されるおそれもあるので注意が必要です。
参考:労働保険徴収法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律)|e-Gov法令検索
4-2. 遡って保険料を徴収される可能性がある
労働保険の保険関係成立届を提出し忘れると、過去最大2年間分の保険料が遡って徴収され、さらに10%の追徴金が加算される可能性があります。また、届出をおこなっていなかった期間に労災が発生した場合には、国が支給した労災保険給付額の一部または全額が企業に請求されるおそれもあります。
そのため、必要な手続きを怠ると短期間で予想外のコスト負担が発生し、経営に影響を及ぼすことも考えられるでしょう。労働保険の制度内容を正しく理解し、必要な手続きを速やかにおこなうことが重要です。
4-3. 従業員からの信頼を損なうおそれがある
労働保険は従業員を守る重要な制度です。加入手続きの遅延やいつまでも労働保険が未加入のままでは従業員から企業が労働者を守る意識が低いと受け取られ、信頼関係が損なわれる可能性があります。
また、手続きを怠ることで、従業員退職や休職時に必要な給付を受けられず、トラブルにつながる可能性もあるため正しく労働保険について理解し適切に加入しましょう。
5. 労働保険はいつ成立?間違えやすい労働保険適用の考え方


労働保険は従業員を雇用した日に成立します。なぜなら、すべての労働者に対して労働保険のひとつである労災保険が適用されるからです。ただし労働者の定義を誤ってしまうと、手続きのミスにつながります。この章では労働者の定義から労災保険と雇用保険の違いについて解説します。
5-1. 労働者を使用した時点で労災保険が適用
労災保険はすべての労働者に適用されます。正社員やパート・アルバイトといった雇用形態の区別なく適用されるため、どれだけ労働時間が短くても適用される点に注意が必要です。
5-2. 判断に迷いやすい労働者に注意
労災保険はすべての労働者に適用されますが、ここで注意が必要なのは労働者の定義です。
労働基準法上の労働者の定義は、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者です。
つまり、使用される立場でない役員や業務委託は労働者に該当しないので原則、労働保険の対象外となります。
| 対象者 | 労災保険 |
| 役員 | 原則対象外、ただし実態として労働者と同じように働いていれば適用可能 |
| 管理監督者 | 労災保険は対象、ただし労基法上の労働時間規制(休憩・休日)の対象からは除外される |
| 派遣社員 | 派遣元の会社で適用される |
| 業務委託 | 雇用契約ではないため労働基準法上の労働者に該当せず対象外 |
ただし、労働者に該当しているかどうかは、契約内容だけではなく実態で判断されます。仮に契約内容が業務委託であっても、実態が労働者であると判断されれば労災保険の対象となります。
5-3. 労災保険と雇用保険では考え方が違う
すべての労働者に適用される労災保険とは異なり、雇用保険には加入条件が存在します。
雇用保険の加入条件は次のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
- 学生ではない(夜間、通信制の学生は対象外)
つまり、この3つの条件を満たす従業員を雇用する場合は企業に雇用保険を適用させ、対象の従業員を雇用保険に加入させる必要があります。
労災保険は雇用条件にかかわらずすべての労働者に適用されますが、雇用保険には加入条件が存在します。そのため従業員を雇用しているが雇用保険の加入対象者がいない場合、雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格取得届の提出は不要です。ただし、保険関係成立届と概算保険料申告書の提出は必要なので注意しましょう。
関連記事:雇用保険の加入条件とは?雇用形態ごとの条件や手続き方法を解説
6. 労働保険は保険関係成立届の提出から始まる


保険関係成立届は企業に労働保険が成立したら必ず提出しなければならない書類です。保険関係成立届の提出を怠ると、その後の労働保険の手続きができず、従業員が労災保険や雇用保険に加入することができません。
また、保険料が遡りで徴収され、場合によっては追徴金も発生します。労働保険に未加入のままでは、労災事故の発生時に必要な給付がされず、トラブルに発展するおそれもあります。
労働保険の保険関係成立届をミスなく提出し、適切な雇用管理を進めましょう。



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