契約成立の要件とは?成立のタイミングや改正民法の内容も詳しく紹介
更新日: 2023.1.11
公開日: 2022.9.16
MEGURO
契約をおこなう際には、契約の成立要件について理解し、法的に有効な契約を結ぶ必要があります。そこで今回は、契約成立の意味や要件について解説していきます。また、契約違反や、契約違反により発生する違約金についても紹介します。
目次
「どのタイミングで契約は締結されたことになる?」
「契約書に署名しても無効になることはある?」
「契約書はいつまで保管すればいいの?」
契約書にはそれぞれ目的があり、締結はその目的が果たされる前におこなわなければなりません。
ですが中には「過去の取引内容を契約書に残したい」や「先日取り交わした契約書の内容で認識の相違があった」など、法務担当者が頭を抱えたくなる事案が発生することもあるでしょう。
これらの事象は、取引を担当している従業員自身が締結期限や契約の重要性について理解していないため発生します。
そこで今回、契約や契約締結の意味や契約の有効要件、主な契約書の使用目的などをまとめた資料を用意しました。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員周知用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
1. 契約成立とは?
契約が成立するのは、当事者間の意思表示の合致がある場合に限られます。
当事者間の意思表示の合致は、「申込み」と「承諾」という意思表示によるものです。「申込み」「承諾」の双方がおこなわれない限りは、契約は成立しないと考えてよいでしょう。
1-1. 「申込み」と「承諾」の要件
「申込み」はあくまで取引の意思表示であるといえます。
例えば、見積書を送付したり、注文書を受け取った段階はあくまで「この程度の金額が想定されます」という情報の提示や「この商品を購入したい」という意思を取引先に示したことにすぎませんので、これらは契約における「申込み」に該当するといえるでしょう。
一方で「承諾」とは、この取引に合意するという意思表示です。
例えば上記の例では、送付された見積もり書の内容で合意する意思を表示したり、受け取った注文書を受領すると「承諾」ということになります。
1-2. 契約成立と判断されるタイミングはいつなのか
契約において、契約書を交わさなければいけないというような規定は存在しません。従って、契約の意思表示である「申込み」と契約の合意の意思表示である「承諾」の両方がそろった段階で契約は成立したと判断されます。
なお、契約の形式については、特に法令に定めがない限り、形式を問わないものとなります。そのため、正式な契約書だけでなく、口約束だけでも契約は成立することになります。
2. 契約の種類
「契約」とは法的拘束力が発生している約束のことをさします。つまり、もし約束が守られなかった場合に、法律に則って契約の保守を強制することができる約束が契約であるといえます。
契約には、典型契約と非典型契約の2つがあります。典型契約とは、民法上で規定されている契約パターンの事です。
具体的にどのような契約があるのか確認していきましょう。
2-1. 典型契約
典型契約は、民法で定められている次の13種類の契約を指します。それぞれの契約について、簡単に確認しておきましょう。
売買契約:一方がお金を払って財産を移転する
贈与契約:一方がお金を払わず財産を移転する
交換契約:当事者間でお金に当たらない財産権を移動し合う
消費者貸借契約:一方が何かを借り受けて使ったあと同程度のもので返す
賃貸借契約:一方が賃料を払ってなにかを借り受ける
使用貸借契約:一方がお金を払ってなにかを借り受け、使用後に返す
雇用契約:一方が働き、もう一方が労働への報酬を支払う
請負契約:一方が仕事を完成し、もう一方が仕事の結果への報酬を支払う
委任契約:一方がもう一方に対して法律行為を委託し、承諾する
寄託契約:一方がもう一方の物を預かる
組合契約:複数がお金を出し合って共同事業を経営する
終身定期金契約:一方が対象者死亡まで、もう一方もしくは第三者に定期的にお金を払う
和解契約:当事者間の争いをお互いの譲歩で解決する
2-2. 非典型契約
非典型契約とは、民法に定められていない契約の種類を指します。
具体例としては、次のような契約が該当します。
リース契約:企業の設備投資の際、物件を購入せずリース会社から借りて利用する
ライセンス契約:自社の知的財産(特許や商標、著作権など)を他社に使用させる
フランチャイズ契約:本部が加盟店に対し商標や商号の使用権、商品やサービスの販売権、経営ノウハウの指導などを提供し、対価として加盟店からロイヤリティを得る
秘密保持契約:自社の情報を他社が外部へ漏洩したり、不正利用したりしないよう守秘義務を課する
3. 契約成立の要件が民法改正で変更に
契約が成立するには、契約成立の要件について確認しておく必要があります。2022年4月の民法改正で「契約の成立」に関する項目が120年ぶりに変更になりました。
改正された新しい内容について詳しく確認していきましょう。
3-1. 民法522条「契約の成立と方式」
契約の成立は、民法522条で次のように定められました。
第522条(契約の成立と方式)
1.契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2.契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。引用:民法|e-Gov
522条第1項では、契約は締結の申し入れをおこない、相手方が承諾した際に成立するものであると定めています。
逆に言うと、申し込みおよび承諾がおこなわれない場合には、契約は成立しないことになります。
なお、契約が成立することにより、「債権」と「債務」が発生するため、契約から一方的に逃れることはできません。契約内容を実現させるため、契約に拘束されることとなります(契約の拘束力)。
また、522条第2項では、契約の成立は特に法律で定めがない限り、形式を問わないものとしており、仮に口約束による契約でも成立するとしています(契約方式自由の原則)
契約の成立において形式よりも意思表示の有無に重きを置くことが明記された点が2020年の民法改正のポイントです。
しかしながら、言った・言わないのトラブルに発展する懸念もおおいにあるため、企業間契約では書面や電子データなどなんらかの契約成立の証拠を残しておくことが引き続き重要です。申込みや承諾の事実が書面で残っていれば万一トラブルに発展した際のリスクを低減することができます。
4. 契約の成立における有効要件
契約の成立における有効要件は、契約内容と契約当事者において次に挙げる要件を満たしていなければなりません。
4-1. 契約内容の有効性
契約は、確定性・適法性・社会的妥当性の3つの要件を満たす場合に有効となります。ここでは、これら3つの要件について確認します。
4-1-1. 確定性
契約では、契約の当事者同士が確実に理解できる契約内容としなければなりません。
4-1-2. 適法性
契約をする場合、「強行規定(法律において、強制的に守ることが定められた規定)」と「取締規定(行政上の取締の観点から、違反に対し刑罰を課す規定)」に違反しない内容としなければなりません。
4-1-3. 社会的妥当性
契約の内容は、社会の一般秩序や道徳観念に適合している必要があります。
4-2. 契約当事者の有効性
契約をする際には、当事者の間でも有効性がなければなりません。意思能力や行為能力、意思に瑕疵がないかについて、確認をおこなう必要があります。
4-2-1. 意思能力がある
当事者が契約内容に対して意思表示をする能力がある状態を、契約の「意思能力がある」状態といいます。
もし、契約の当事者に意思能力がないと認められた場合には、契約は無効となります。
一般的に子どもや泥酔者などは、意思能力がないとみなされます。
4-2-2. 行為能力がある
契約における行為能力とは、当事者が一人で契約行為をおこなうことができる能力を指します。
一人で契約行為をおこなえないとされる「制限行為能力者」は民法で定められており、未成年者や成年被後見人、被保佐人、被補助人などがあたります。
4-2-3. 意思に瑕疵がない
契約は通常、当事者同士の合意によって成立しますが、当事者が正しく意思表示できない状態にある場合は、意思に瑕疵があるとし、契約の無効化が可能です。
このように、契約書は当事者同士が合意するだけでなく、契約の有効性を認められる必要があります。たとえ担当者間で合意を取り付けていたとしても、有効性の認められない契約を締結した場合は、契約が無効になるだけでなく信用低下につながりかねません。問題が発生しかねない契約は結ばないためにも、法務部門以外従業員も契約についての知識をもつ必要があるでしょう。
当サイトで無料配布している「【従業員周知用】ビジネスにおける契約マニュアル」では、契約の定義や契約が有効または無効になる条件、契約に関するよくある質問をまとめています。ほか従業員の勉強用資料として活用できるので、気になる方はこちらからダウンロードしてご覧ください。
5. 契約違反や違約金について
万が一契約における違反が発生した場合には、違約金の請求が可能です。違約金は、相手から受けた損害に対して補填する意味合いを持つ金銭となります。
違約金の金額に決まりはありませんが、契約内容や職種で相場となっている金額があるため、取り決めをおこなう際にはあらかじめ確認をしておくと安心です。
なお、通常、違約金を請求できるのは、債務不履行や不法行為責任といったケースとなります。
後々の違約金によるトラブルを防ぐためには、契約書を取り交わす際のルールとして前もって決めておくとよいでしょう。
6. 契約成立の意味を理解して成立要件を満たした契約書の作成を
契約の成立は、契約をおこなう当事者間に「申込み」と「承諾」といった意思表示の合致がある場合のみに限られます。これら双方がおこなわれていない場合、契約の成立はないと考えてよいでしょう。
また、契約は形式を問わず成立します。契約書以外にも、口約束だけでも契約の成立は可能です。なお、成立した契約には法的な拘束力が生じるため、契約違反があった場合には、違約金の請求対象となります。
トラブル防止のためにも、契約の成立要件を満たした契約書の作成をおこない、証拠となる書類を残しておくとよいでしょう。
「どのタイミングで契約は締結されたことになる?」
「契約書に署名しても無効になることはある?」
「契約書はいつまで保管すればいいの?」
契約書にはそれぞれ目的があり、締結はその目的が果たされる前におこなわなければなりません。
ですが中には「過去の取引内容を契約書に残したい」や「先日取り交わした契約書の内容で認識の相違があった」など、法務担当者が頭を抱えたくなる事案が発生することもあるでしょう。
これらの事象は、取引を担当している従業員自身が締結期限や契約の重要性について理解していないため発生します。
そこで今回、契約や契約締結の意味や契約の有効要件、主な契約書の使用目的などをまとめた資料を用意しました。
また契約に関して従業員から上がってくる質問集や、リーガルチェックを円滑にすすめるためのチェックシートも付いているので、従業員周知用資料としてもご利用いただけます。ぜひご活用ください。
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