育児休業中は社会保険料免除?期間や申請手続きを詳しく解説

従業員から育児休業の申し出があったとき、人事担当者は育児休業給付金の申請など、いくつかの手続きを進める必要があります。その1つが、社会保険料免除の手続きです。
この手続きを忘れてしまうと、本来は免除されるべき保険料を従業員・会社双方が負担し続けることになり、後々の精算や従業員とのトラブルの原因となるおそれがあります。
本記事では、育児休業期間中の社会保険料免除の概要と手続きについて、2022年10月からの最新法改正に対応した実務上のポイントを詳しく解説します。
関連記事:産休中の社会保険料免除の期間を事例別で解説!出産日がずれた場合の対応方法
育児・介護休業に関する法改正が2025年4月と10月の2段階で施行されました。特に、育休取得率の公表義務拡大など、担当者が押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
本資料では、最新の法改正にスムーズに対応するための実務ポイントを網羅的に解説します。
◆この資料でわかること
- 育児・介護休業法の基本と最新の法改正について
- 給付金・社会保険料の申請手続きと注意点
- 法律で義務付けられた従業員への個別周知・意向確認の進め方
- 子の看護休暇や時短勤務など、各種両立支援制度の概要
2025年10月施行の改正内容も詳しく解説しています。「このケース、どう対応すれば?」といった実務のお悩みをお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 育児休業中は社会保険料免除になる?


育児休業中は、従業員と会社負担分ともに社会保険料が免除されます。ただし、自動的に免除にならず、従業員ごとに申請が必要です。
育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等期間について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者が育児休業の期間中に事業主が年金事務所に申し出ることにより被保険者・事業主の両方の負担が免除されます。
育児・介護休業法に基づき、事業主が年金事務所へ「育児休業等取得者申出書」を提出することで、従業員負担分だけでなく事業主負担分も含めて、健康保険・厚生年金保険の保険料が免除されます。
必ず事業主からの届出が必要となるため、対象となる従業員から申し出があった際には、速やかに手続きを進めなくてはなりません。
また、近年取得が増加している出生時育児休業(産後パパ育休)も、通常の育児休業と同様に社会保険料免除の対象です。短期間の休業であっても手続きの対象として確実に把握し、対応漏れがないよう注意しましょう。
1-1. 2022年10月法改正で免除制度が見直しに
2022年10月の育児・介護休業法改正に伴い、育児休業中の社会保険料免除のルールが変更されました。改正前の保険料免除ルールには2つの課題がありました。
1つ目は、「月末に育児休業をしているかどうか」だけで免除の可否が決まっていたことです。このルールにより、同じ期間休んでいても月をまたがない場合は社会保険料が免除されず、不公平だという声がありました。
2つ目は、賞与支給月の月末に数日だけ育休を取得すれば、社会保険料が免除される状態だったことです。実際に、賞与の社会保険料を免除するためだけに短期間の育休を取得するケースも見られました。これは、賞与にかかる保険料についても給与と同じ仕組みで免除が適用されていたためです。
2つの課題を是正し、より公平で実態に即した制度とするために、2022年10月の法改正で次の2つの要件が追加されました。
(4)毎月の報酬にかかる保険料免除期間は育児休業等を開始した日の属する月から育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までです。また、開始日の属する月と終了日の翌日が属する月が同一の場合でも、育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合は免除となります(令和4年10月1日以降に開始した育児休業等に限る)。
(5)賞与にかかる保険料(育児休業等期間に月末が含まれる月に支給された賞与にかかる保険料)についても免除されます。ただし、令和4年10月1日以降に開始した育児休業等については、当該賞与月の末日を含んだ連続した1カ月を超える育児休業等を取得した場合に限り免除となります。
1つ目の追加要件が、「その月内に14日以上の育児休業を取得した場合でも免除される」です。これにより、月をまたがない短期間の育休も免除の対象になりました。改正前は、「月末時点で育休中であること」が必須でしたが、今は月末時点で必ずしも育休を取得している必要はありません。
例えば、12月2日から12月15日まで育児休暇を取得する場合、改正前は免除対象月となりませんでしたが、改正後は14日以上の取得となるため社会保険料は免除になります。


参考:令和4年10月から育児休業等期間中の社会保険料免除要件が見直されます|日本年金機構
2つ目の追加要件は、賞与に関する要件です。賞与の社会保険料は、育児休業の期間が連続して1ヵ月を超える場合に免除の対象となります。
例えば、12月30日から1月1日の場合は、1ヵ月を超える取得期間とならないため、賞与における社会保険料の免除は対象外となります。


参考:令和4年10月から育児休業等期間中の社会保険料免除要件が見直されます|日本年金機構
これらの改正によって、本来の趣旨から外れた利用を防止し、育児休業を取得する従業員にとっては、より柔軟に育休を取得しやすくなりました。
2. 社会保険料が免除になる期間はいつまで?


育児休業期間中の社会保険料の免除期間は、育児休業を開始した月から始まります。そして、育児休業が終了した翌日が属する月の前月までが対象です。
特に「翌日が属する月の前月」箇所のイメージがつきにくいので、3つの具体例で解説します。
- (原則)月をまたぐ育休の場合
8月10日から3月20日まで育児休業を取得した場合、開始月は8月、育休終了日の翌日(3月21日)が属する月の前月は2月となります。そのため免除期間は、8月分から2月分までです。
- 月末に終了する育休の場合
8月10日から3月31日まで育児休業を取得した場合、開始月は8月、育休終了日の翌日(4月1日)が属する月の前月は3月となります。そのため免除期間は、8月分から3月分までです。
- 月をまたがず、月末前に終了するが、育休期間が14日以上の場合
8月10日から8月25日まで育児休業を取得した場合、育休期間は16日間となり「14日以上」の条件を満たすため、8月分の保険料が免除されます。2022年10月の法改正によって、社会保険料免除の対象となったパターンです。
人事担当者は、これら免除期間の3つのパターンを把握し、従業員に説明できるようにしましょう。
2-1. 子が3歳まで免除になる?
子どもが3歳になるまでの育児休業期間中も、社会保険料の免除対象です。この免除対象となる「育児休業等」には、法律で定められた休業のほか、会社独自の制度も含まれます。具体的には、就業規則などで法定基準を上回る休業を定めている場合、その休業も3歳までなら同様に免除対象となります。
いずれの休業においても、保険料免除の適用を受けるためには、休業開始にあたり事業主が管轄の年金事務所または健康保険組合へ「育児休業等取得者申出書」の提出が必須です。
特に2歳を超える休業は、自社の育児休業規程が社会保険料免除の対象となる制度として適切に整備されているか確認しましょう。
3. 社会保険料免除のための申請手続き


社会保険料免除の手続きは、事業主がおこないます。手続きの流れは次の通りです。
- 従業員からの育児休業申出の受理
- 「育児休業等取得者申出書」の作成・届出
- 育児休業期間が変更となった場合の届出
順を追って、解説します。
3-1. 従業員からの育児休業申出の受理
まずは従業員から「育児休業申出書」を受理します。育児休業申出書は、法律で定められた書式がなく、企業が任意で作成する書類です。申出年月日、従業員本人の氏名、子どもの氏名、カナ、生年月日、性別、続柄(出産前の場合は、予定情報)、育児休業開始日、育児休業終了日を基本情報として記載するとよいでしょう。この申出書により休業期間(開始日・終了予定日)を正確に確認します。
3-2. 「育児休業等取得者申出書」の作成・届出
次に、育児休業等取得者申出書を作成し、管轄の年金事務所または加入している健康保険組合へ届け出ます。協会けんぽ加入事業所の場合は、年金事務所への届出のみで健康保険・厚生年金双方の手続きが完了します。
なお、育児休業等取得者申出書の書き方は3-4章で解説しているので、そちらをご覧ください。
届出にあたり、原則として添付書類は不要です。提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参の3種類あります。
提出の期限は、育児休業等が終了してから1ヵ月以内です。この期間中に提出ができなかった場合には、理由書および被保険者が休業していることの事実確認ができる書類(例:出勤簿、賃金台帳等)の添付が必要となります。
3-3. 育児休業期間が変更となった場合の届出
さらに、元々の予定から休業期間が変更となった場合には次の手続きが必要です。
- 育児休業を予定より早く終了する場合:「育児休業等取得者終了届」の作成・届出
- 育児休業を予定より延長する場合:「育児休業等取得者申出書」の作成・届出
1. 当初の予定より早く育休を終了する場合
早く終了する場合、事業主は「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者終了届」を提出する必要があります。この届出をしないと、社会保険料の免除が継続してしまい、復職後の保険料が正しく徴収されません。
2. 育児休業を予定より延長する場合
保育所に入所できないなどの理由で育児休業を延長する場合、社会保険料の免除期間も延長するための手続きが都度必要です。
例えば、当初の「1歳まで」の休業を「1歳6ヵ月まで」に、さらに「2歳まで」へと再延長する場合には、それぞれの延長が確定した時点で申出書の提出が求められます。
最初の申請だけで免除期間が自動的に延長されることはありません。従業員から延長の申し出を受けた際は、その都度手続きが必要なので注意しましょう。
3−4. 育児休業等取得者申出書/終了届の書き方
「育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」は一枚の書類です。休業を開始する時(新規)、延長する時、終了する時の3つの手続きすべてに使用します。


参考:健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書|日本年金機構
【提出者記入欄】
まず、提出者記入欄に事業所の情報を記載しましょう。
【共通記載欄(新規申出)】
新規申出の場合は「共通記載欄」に必要事項を記入します。特に注意が必要な記入欄について解説します。
⑫育児休業等取得日数
「育児休業等開始年月日」と「育児休業等終了(予定)年月日の翌日」が同月内の場合のみ記入します。⑰⑲も同様です。
育児休業開始年月日から終了(予定)年月日までの日数で、出生時育児休業の場合は就業予定日数を差し引いた日数を記載します。同月内に複数回育児休業を取得した場合は、その月の合計日数を記入しましょう。開始日と終了日が同月内であっても取得日数が14日以上である場合はその月の保険料が免除されます。
⑬就業予定日数
「育児休業等開始年月日」と「育児休業等終了(予定)年月日の翌日」が同月内の場合のみ記入します。出生時育児休業の場合は、休業期間中の就業予定日数を記入します。出生時育児休業ではない同月内の休業の場合は「0日」と記入してください。
⑭パパママ育休プラス該当区分
パパママ育休プラスに該当する場合はチェックを入れます。パパママ育休プラスは、父母ともに育児休業を取得する場合に、育児休業取得可能期間を子が1歳2ヵ月に達するまでに延長する制度です。
関連記事:パパ・ママ育休プラスとは?条件や給付金、出生時育児休業との違いを解説
【A. 延長 B. 終了】
育児休業の終了予定日を延長する場合や、予定より早く育児休業を終了した場合に記入する欄です。育児休業取得時に提出した内容を共通記載欄に記入し、「A.延長」または「B.終了」の必要項目を記入します。⑰⑲は、⑫と同様に、「育児休業等開始年月日」と「育児休業等終了(予定)年月日の翌日」が同月内の場合のみ記入しましょう。
【C. 育休等取得内訳】
育休等取得内訳の記入は、「育児休業等開始年月日」と「育児休業等終了(予定)年月日の翌日」が同月内で、かつ複数回に分割して育児休業等を取得する場合のみ、この欄に内訳を記入します。
より詳細な申出書の記入方法は、次の記事をご覧ください。
関連記事:育児休業等取得者申出書の書き方・記入例や提出期限・方法をわかりやすく解説
4. 育児休業中は被保険者も事業主も社会保険料が免除される


育児休業期間中、従業員と事業主、双方の社会保険料が、免除対象となります。ただし、この免除制度は自動で適用されるわけではありません。適用には、事業主によって「育児休業等取得者申出書」を年金事務所または加入している健康保険組合へ提出する必要があります。
従業員から申し出があった際のため、本制度の趣旨をよく理解し、迅速かつ正確な手続きができるよう、手続きの手順を整備しておきましょう。



育児・介護休業に関する法改正が2025年4月と10月の2段階で施行されました。特に、育休取得率の公表義務拡大など、担当者が押さえておくべきポイントは多岐にわたります。
本資料では、最新の法改正にスムーズに対応するための実務ポイントを網羅的に解説します。
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