育児休業申出書の書き方や記入例・提出手続きの流れを詳しく解説
出産を予定している従業員から育児休業取得の申し出があった場合、会社は本人に代わってさまざまな手続きをする必要があります。手続きを行うためには「育児休業申出書」という書類を従業員に提出してもらわなければなりません。
この記事では、育児休業取得に必要な、育児休業申出書の書き方や記入例、手続きの流れについて詳しく解説しています。
目次
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会社として、育休や介護休業の制度導入には対応はしてはいるものの 「取得できる期間は?」「取得中の給与の正しい支給方法は?」このようなより具体的な内容を正しく理解できていますか?
働く環境に関する法律は改正も多く、最新情報をキャッチアップすることは人事労務担当者によって業務負担になりがちです。
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1. 育児休業申出書とは?
育児休業申出書は、育児・介護休業法に基づき、労働者がその1歳に満たない子を養育するために育児休業を取得する意向を事業主に伝えるための書類です。原則として、この申出は書面で行われることが求められています(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則 第7条第2項第1号)。
育児休業は、本人が希望した場合において取得できるものですが、実際に取得するまでにはさまざまな手続きが必要です。
そこで最初に必要になるのが「育児休業申出書」になります。育児休業申出書は、行政に提出する書類ではなく社内で保管するものです。
様式に指定はありませんので、会社が自由に用意して構いません。
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則|e-GOV法令検索
1-1. 従業員からの申請はいつまでに必要?
育児休業申出書は社内用の書類なので、厳密な申請期限はありませんが、育児休業開始日の1か月前までには提出してもらうようにしましょう。
しかし、1か月前ではすでに産前休業に入っているケースが多く、書類を回収するのが難しくなってしまう可能性があります。従業員が出社している間に回収するのであれば、遅くても産前休業前には申請してもらう必要があるでしょう。
従業員から妊娠の報告を受けたら、早めに育児休業申出書を渡すことをおすすめします。さらに、両親ともに育児休業を取得する場合には、育休期間を子が1歳2か月に達するまで延長することができる制度(パパ・ママ育休プラス)もあります。加えて、保育所への入所ができないなどの特定の状況においては、育児休業の期間が子が1歳6か月、または2歳に達するまで延長されることもあります。
申請期限を守り、早めに申請することで、企業と従業員双方にとってスムーズな育児休業取得が可能となり、企業内の調整も円滑に進められます。従業員には早めの申請を促すことが望まれます。
1-2. 育児休業申出書の提出先
育児休業申出書は、所属する部署や人事部など、事業主が指定した窓口に提出します。事前に提出先を確認しておくことが重要です。これにより、必要な書類を適切に処理し、育児休業の手続きを円滑に進めることができます。企業側も従業員側も、提出先を誤ることなくスムーズに進行するために、日頃から情報を共有し、周知徹底を図ることが求められます。
1-3. 育児休業申出書の提出期限
原則として1か月前までに育児休業申請書を提出することが必要です。また、1歳から1歳6か月までの育児休業及び1歳6か月から2歳までの育児休業については、休業開始予定日(1歳の誕生日またはパパ・ママ育休プラスの終了予定日の翌日)の2週間前までに提出しなければなりません。ただし、出産予定日前に子が出生した場合など一定の事由がある場合は、1週間前の提出でも構いません。
2. 育児休業申出書の書き方・記入例
産前休業に入る前に育児休業申出書を提出してもらう場合、出産前であるため書き方に迷ってしまう人もいるでしょう。担当者は従業員から書き方について質問された際、答えられるようにしておきましょう。
2-1. 育児休業申出書の書き方
育児休業申出書には、次の事項を記載する必要があります。
- 申し出の年月日
- 労働者の氏名、申し出に係る子の氏名
- 生年月日及び労働者との続柄
- 休業に係る子の状況
出産後であれば、1の欄に子どもの名前・生年月日・続柄を記入します。 - 1の子が生まれていない場合の出産予定者の状況
出産前であれば、2の欄に申請者の名前と出産予定日、生まれる子どもとの続柄を記入します。 - 休業期間
育児休業の開始日から終了日、復職予定日を記載します。この項目は必須です。なお産前産後休業は含みません。 - 申出に係る状況
4に関しては(1)~(5)まで項目があるので、実態に応じて○を付けます。
また期間においては、必ずしも予定日通りに出産できるわけではありませんので、産休期間がずれるとそれに伴い育休期間も前後するでしょう。そのため、3に関しては記入した期間と実際の期間がずれる可能性があります。
しかし、記入する際は予定の休業期間で構いません。もしも休業期間に変更があった場合は、「休業期間変更申出書」を提出してもらいます。
2-2. 育児休業申出書の記入例
様式は任意ですが、書き方については厚生労働省のテンプレートが参考になります。
このテンプレートをもとに記入例を用意し、社内で展開しておくと記入ミスがなく業務効率がいいでしょう。
3. 育児休業申出書における提出手続きの流れ
育児休業申出書の手続き方法や前後の流れについて詳しく解説します。
3-1. 育休取得の意向を確認する
育児介護休業法が改正され、2022年4月より育児休業取得に関する周知と意向確認を個別に行うことが義務化されました。
そのため、従業員から妊娠の報告があった際は、制度についての説明をしたり育児休業を取得するかどうかの確認をしたりする必要があります。
本人が育児休業を希望している場合は、休業開始と終了予定日を確認しましょう。育児休業取得を希望していることが確認できたら、育児休業申出書を用意して従業員に渡します。
3-2. 育児休業申出書を提出してもらう
個別の周知と意向確認を経て、従業員に育児休業申請書を提出してもらいます。申請書を受理した際には、事業主は従業員に対して申し出に係る子の出生等を証明する書類の提出を求めることができます(施行規則第5条第7項)。
3-3. 育児休業申出書受理の通知をする
従業員から記入済みの育児休業申出書を提出してもらったら、会社は「育児休業取扱通知書」を交付しなければなりません。
申出日から約2週間以内を目安に、交付するのが望ましいでしょう。育児休業取扱通知書の発行は、育児介護休業法において努力義務とされています。
しかし、同法律内において育児休業申出がされたときは、以下3点の内容を通知することが義務化されているのです。
- 育児休業申出を受けた旨
- 育児休業開始予定日と終了日
- 育児休業の申し出を拒む場合はその旨及びその理由
そのため、育児休業取扱通知書を発行して確実に通知できる方が好ましいでしょう。
また、記載する項目については上記の内容だけでなく、休業中の給与に関することや休業後の労働条件などをあわせて記載していても問題ありません。通知方法は従業員が希望する場合に限り、メールやファックスでも可能です。
4. 育児休業申出書に変更があった場合はどうする?
育児休業申請書を提出した後でも、育児休業期間の延長や短縮、開始日付の繰上げや繰下げが可能です。このような変更が必要になる場合として、家庭の状況が変化したり、健康上の理由が考えられます。いずれの場合も、従業員は上司や人事担当者に状況を詳しく説明し、新たな日程や条件について合意を得ることが不可欠です。詳しくみていきましょう。
4-1. 育児休業の申し出を変更できるケース
育児休業申請書を提出後、育児休業を開始しようとした日の前日までに、出産予定日よりも早く子が出生することもあります。また、配偶者が病気や負傷、さらには死亡する可能性も考慮する必要があります。こうした場合でも、育児・介護休業法に基づき、従業員は育児休業を開始する日の繰上げ変更をすることができます(法第7条第1項、施行規則第9条)。
変更するためには、変更後の休業開始希望日の1週間前までに変更の申し出を行わなければなりません。申し出が遅れた場合、事業主は従業員が変更後の休業開始希望日以降の変更の申し出日の翌日から1週間経過する日までの間で、休業開始日を指定することができます。
例えば、従業員が4月1日に「5月1日に育児休業を開始する」と申し出た後、出産予定日よりも早く子が生まれたため「4月10日から育児休業を開始する」と4月9日に変更の申し出をした場合、事業主は4月10日から1週間以内(具体的には4月16日まで)に休業開始日を指定できます。事業主は原則として、変更の申し出があった日の翌日から3日以内に指定日を通知する義務があります。
また、繰上げ変更ではなく、従業員の子が1歳になる前に育児休業を終了したい場合もあります。この場合、従業員は当初の育児休業終了日から逆算して1か月前までに変更の申し出を行う必要があります。
4-2. 育児休業の申し出を変更する手続き手順
育児休業申出書の変更手続きは、まず従業員が上司に変更の意向を伝えることから始まります。その後、変更希望内容を具体的に記載した新たな申出書を作成します。これには、元の申出書の内容および変更理由を明確に記載し、新たな開始日や終了日などの詳細も含めます。提出された新しい申出書は、上司や人事担当者が内容を確認し、承認を得る流れとなります。承認が得られた後、正式に変更が適用される旨を通知し、必要な業務調整を行います。変更手続きの流れを理解し、スムーズに対応できる体制を整えておくことが重要です。
5. 育児休業等取得者申出書との違い
育児休業申出書と混同しやすい「育児休業等取得者申出書」は、社内用の書類ではなく日本年金機構に提出しなければならないものです。
育児休業等取得者申出書を提出することで、育児休業中の従業員と事業主の社会保険が免除されます。
従業員の被保険者資格は継続されたままであり、免除期間中は休業前の標準報酬月額に応じた保険料を支払っているとみなされ、将来受け取る年金額にも影響が出ません。
これまでは、月末時点で育児休業を取得している月のみ社会保険料が免除されていましたが、2022年10月以降は変更になります。
今後は、育児休業開始日を含む月に14日以上休業を取得していれば、その月の社会保険料は免除されるようになるのです。
育児休業等取得者申出書の手続きはとても重要なので、担当者は忘れずに行いましょう。
5-1. 育児休業等取得者申出書の手続き方法
育児休業等取得者申出書は、会社の担当者が作成して申請をおこないます。
以下は、申出書に記載する主な内容です。
- 提出者である事業所情報(所在地・事業所名・事業主名など)
- 従業員情報(被保険者整理番号・マイナンバー・本人氏名・子の氏名など)
- 育児休業の開始日と終了日
- 延長の場合は変更後の終了予定日
- 予定より早く休業を終了する場合は実際の終了日
申出書以外に必要な添付書類はなく、育児休業等取得者申出書のみ日本年金機構に提出すれば、手続きは完了します。
育児休業等取得者申出書の用紙は、日本年金機構のサイトでダウンロード可能です。
参考:育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届|日本年金機構
5-2. 申請のタイミング
まずは、従業員が育児休業を取得するときに初回の申請が必要です。
育児休業は、原則子どもが1歳になるまでを期限としていますが、保育所が見つからなかった場合などにおいて延長が認められています。
延長をすることになった場合、その都度、育児休業等取得者申出書の提出が必要になるため、申請忘れに注意しましょう。
逆に、申請していた期間よりも早く復帰することになった場合は、「育児休業取得者終了届」の提出が必要です。
従業員の育児休業中に提出が必要な書類ですが、もし出し忘れにより提出期限を過ぎてしまった場合は、遅延の申立書を作成して日本年金機構に提出する必要があります。
6. 育休取得の申し出を受けたら育児休業申出書を提出してもらおう
育児休業取得のためには多くの手続きが必要になりますが、まずは育児休業申出書を従業員から提出してもらい、出産予定日や休業期間の確認を行いましょう。
育児休業申出書は、なるべく育児休業開始日の1か月前までに回収し、その後に必要な会社が行わなければならない手続きを進めていく必要があります。
共働き家庭が増加している現代において、育児休業の取りやすさは重要視されるポイントです。出産後も仕事と子育てが両立できるよう、会社は育休取得のための環境整備を行い、働きやすい職場作りを目指していくことが求められます。
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