扶養控除等(異動)申告書の書き方や注意事項について解説
更新日: 2024.4.15
公開日: 2022.8.26
OHSUGI
扶養控除等(異動)申告書は年末調整に必要な書類ですが、慣れていないと何を書けばいいか迷ってしまいます。
故に、提出期日になっても従業員から書類が提出されないといったケースも少なくありません
そのような事態を改善するには、まずは人事担当者が扶養控除等(異動)申告書について理解することが大切です。この記事で、扶養控除等(異動)申告書の書き方をマスターしておきましょう。
目次
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1. 扶養控除等(異動)申告書とは?
扶養控除等(異動)申告書とは、給与の支払を受けている人が、扶養控除、障害者控除などの所得控除を受けるために、会社を経由して税務署や市区町村に提出する書類です。「扶養控除申告書」と省略されることもありますが、同じ書類を指します。
扶養控除等(異動)申告書の内容を基に年末調整をおこなうため、扶養控除などの対象となる家族がいない従業員からも回収しなくてはいけません。
扶養控除等(異動)申告書は当年分と翌年分の2枚を従業員に渡します。当年分は前年の年末調整時に従業員が記入したものです。結婚や出産等を機に扶養家族の増減があれば修正してもらい、その年の年末調整で差額分を調整します。翌年分に関しては、翌年1月以降の所得税の概算額を算出するために使用します。
1-1. 1番の目的は所得控除
扶養控除等(異動)申告書を提出してもらう1番の目的は、年末調整で扶養控除などの所得控除を受けるためです。
所得税には、給与を受け取っている人が扶養している家族の年齢や収入、生活状況などを考慮して、標準から控除して税負担を調整する制度があります。
控除の内容は
- 配偶者控除
- 扶養控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
などがあり、配偶者や子どもに加え、親を扶養している場合も対象です。
会社は、回収した扶養控除等(異動)申告書を基に年末調整をおこない、その年に納めるべき税額を計算し、既に徴収した税額との過不足を計算します。その結果、払いすぎていれば還付され、足りない場合は徴収されます。
1-2. 扶養控除等(異動)申告書の提出は義務
扶養控除等(異動)申告書は所得税の控除に必要な書類ですが、控除項目に当てはまる家族がいない従業員にも提出してもらう必要があります。
これは扶養控除等(異動)申告書の提出がすべての給与所得者の義務だからです。
また、控除項目に当てはまらなくても、扶養控除等(異動)申告書を提出してもらうことで「控除が必要ない」という確認ができるため、人事業務もスムーズになります。
必ず期限を守って提出してもらうように準備しましょう。
2. 扶養控除等(異動)申告書の書き方
扶養控除等(異動)申告書は慣れていないと書き方に迷うことが多いです。注意点と合わせて書き方を解説します。
なお、こちらの情報は国税庁の情報を元に記載しています。
参照:給与所得者の扶養控除等申告書の記載例|国税庁
2-1. 基本情報
扶養控除等(異動)申告書の一番上の欄には以下の事項を記載します。
所轄税務署長等 | 会社の所在地を管轄する税務署長と、給与所得者住所の市町村長を記載します。 |
給与の支払者の基本情報 (名称・法人(個人)番号・所在地) |
こちらの欄は会社が記載します。 |
申請者の基本情報 | 申請者の氏名・個人番号・生年月日・世帯主・世帯主との続柄・住所・配偶者の有無を記載します。 |
従たる給与についての扶養控除等 申告書の提出 |
2か所以上から給与を受け取っている場合で、他の給与支払者に「従たる給与についての扶養控除等申告書」をすでに提出している場合は〇を記します。 |
2-2. 源泉控除対象配偶者・控除対象扶養親族
以下の条件を満たす場合、その家族の情報を記載します。
源泉控除対象配偶者 | 本人の所得見積もり額が900万円以下 【給与収入額からの換算】 所得金額調整控除を受ける場合:1,100万円以下 所得金額調整控除を受けない場合:1,095万円以下 |
配偶者の所得見積もり額が95万円以下 【所得額からの換算】 給与収入のみの場合:給与収入が150万円以下 65歳未満で収入が公的年金などのみの場合:公的年金などの収入が1,633,334円以下 65歳以上で収入が公的年金などのみの場合:公的年金などの収入が2,050,000円以下 |
|
控除対象扶養親族 | 以下の条件をすべて満たす家族がいる場合に記載します。 ・年末(12月31日)の時点16歳以上(令和6年度の場合は2009年1月1日以前に生まれた人)である ・その親族と本人が生計を一にしている ・その親族の所得見積もり額が48万円以下(給与収入103万円以下)である |
老人扶養親族 | 年末(12月31日)の時点で70歳以上(令和6年度の場合は1955年1月1日以前に生まれた人)である場合。 |
特定扶養親族 | 扶養親族が年末(12月31日)の時点で19歳以上23歳未満(令和6年度の場合は2002年1月2日~2006年1月1日の間に産まれた人)である場合。 |
上記の老人扶養親族と特定扶養親族の条件に該当する場合は、該当する家族にチェックも合わせて入れましょう。
2-3. 障害者・寡婦・ひとり親又は勤労学生
以下の条件に該当する場合は、各欄にチェックを入れ「障害者又は勤労学生の内容」に必要事項を記入します。
障害者 | 本人 | 本人が障害者または特別障害者に該当する場合 |
同一生計 配偶者 |
配偶者の所得見積もり額が48万円以下(給与収入103万円以下)で、障害者・特別障害者・同居障害者に該当する場合 | |
扶養親族 | 扶養している親族が障害者・特別障害者・同居障害者に該当する場合 | |
寡婦 (女性のみ) |
本人 | 以下の条件をすべて満たす必要があります。 ・所得見積もり額が500万円以下(給与収入6,777,778円以下) ・内縁の夫がいない ・ひとり親に該当していない ・「夫と離婚後に婚姻をしておらず、扶養家族がいる」または「夫と死別、または生死が明らかでない状態で婚姻をしていない」 |
ひとり親 (性別不問) |
本人 | 以下の条件をすべて満たす必要があります。 ・所得見積もり額が500万円以下(給与収入6,777,778円以下) ・内縁の夫がいない ・「現在婚姻していない」、あるいは「配偶者の生死が不明」 ・生計を一にする子がいる ※子の条件:所得見積もり額が48万円以下(給与収入103万円以下)で他人の同一生計配偶者や扶養親族ではない |
勤労学生 | 本人 | 以下の条件をすべて満たす必要があります。 ・大学・高校・一定の要件を満たした専修学校の生徒、または職業訓練生 ・勤労に基づいて得られる所得がある ・所得見積もり額が75万円以下(給与収入130万円以下) ・給与所得以外の所得が10万円以下 |
2-4. 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
1つの生計内に、給与所得者が複数名いる場合、扶養親族等を誰の扶養にするか任意で決めたり、分けて控除を受けたりすることが可能です。
例えば、共働きの世帯で長男は本人の扶養親族とし、長女は妻の扶養親族とすることなども可能です。
この欄には、そのような状況で子を扶養親族にしなかった場合に記入します。
2-5. 住民税に関する事項
16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象にはなりません。
しかし、住民税の対象になるため、16歳未満(令和5年度の場合は2008年1月2日以降に産まれた人)の扶養親族がいる場合は記載します。
3. 扶養控除等(異動)申告書の注意事項
扶養控除等(異動)申告書を取り扱う上で、いくつか注意事項があります。取り扱いを誤ると従業員が不利益を被ることがあるため、ここでしっかり扶養控除等(異動)申告書の取り扱いについてのポイントを押さえておきましょう。
3-1. 扶養控除等(異動)申告書の提出時期
扶養控除等(異動)申告書の提出時期は、基本的には12月の中旬頃に設定することが多いです。もちろん、従業員から回収できればもっと早くても問題ありません。
年末調整をおこなう上で必要な書類なので、年末調整の計算を考慮して提出期限を設けておくとよいでしょう。
不備があった場合は再提出が必要ですので、少し余裕を持って提出してもらうと安心です。
また、新しく入社した人がいる場合は、その年の最初の給料を受け取る前に提出してもらう必要があります。忘れやすいので注意しましょう。
3-2. 提出しないと所得税が上がる
毎月の給与から源泉徴収する所得税は、源泉徴収税額表に基づいて計算します。源泉徴収税額表には「甲」欄と「乙」欄があり、「甲」欄の方が「乙」欄よりも税額が低く設定されています。
どちらが適用になるかは、扶養控除等(異動)申告書の有無によって決まります。提出した場合は「甲」欄、未提出の場合は「乙」欄が適用となる仕組みです。
つまり、扶養控除等(異動)申告書の提出をしないと所得税が割高となるので、従業員にはこの仕組みについても説明しておき、期日までに提出を促すようにしましょう。
3-3. ダブルワークの場合は1カ所に提出
扶養控除等(異動)申告書は、1カ所にしか提出ができません。ダブルワークをしている従業員が、他の会社へ扶養控除等(異動)申告書を提出している場合は、自社での回収は不要です。
なお、扶養控除等(異動)申告書を1カ所の勤務先に提出していたとしても、提出していない勤務先で20万円を超える給与を受け取っている時は確定申告をしなくてはいけません。ダブルワークをしている従業員から年末調整について相談を受けた際は、その旨も合わせて伝えておきましょう。
4. 扶養控除等(異動)申告書の記入ミスを減らす方法
紙で提出する場合、適用できる控除が多くなると記載する内容や計算が多くなってくるため、ミスがどうしても起こりやすくなってしまいます。
扶養控除等(異動)申告書を記入してもらう際は、扶養親族の条件と年収を確認することについて予め周知しておくことが望ましいでしょう。
その点、年末調整に対応したクラウドシステムであれば、アンケート形式で回答を入れるだけで年末調整の書類が作成できるものもあり、ミスが起こりにくい設計となっているのが特徴です。
また、従業員が金額を入力するだけで自動計算してくれるので、計算ミスによる差し戻しも減らすことができるでしょう。
年末調整の業務効率化を図りたいのであれば、システムの導入を検討してみるのも一つの手段です。
5. 扶養控除等(異動)申告書は正しく記入して提出してもらおう
扶養控除等(異動)申告書は年末調整に必要な重要な書類です。慣れていないと書き方が分からず、なかなか提出してくれない従業員もいます。
スムーズに回収できるように、まずは人事担当者が書き方を理解することが大切です。
その上で記入例を配布したり、提出期限を設定したりすれば、扶養控除等(異動)申告書の回収で困ることは減るでしょう。
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