法定調書の書き方は?種類や提出方法などわかりやすく解説
更新日: 2024.12.24
公開日: 2022.8.24
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法定調書は、毎年税務署に提出しなければならない書類の総称で、税務署に提出しなければならない法定調書の合計が書かれたものを「法定調書合計表」といいます。
これらの書類は企業や個人のお金、税金の動きを把握するために利用されます。主な法定調書は60種類ありますが、条件によって提出しなければならない調書には違いがあるので注意しましょう。
ここでは、法定調書合計表に必要となる法定調書の種類や書き方、訂正方法などを解説します。
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1. 法定調書とは?
法定調書とは、所得税法や相続税法、租税特別措置法、国外送金等調書法によって税務署への提出が義務付けられている書類の総称です。全部で60種類ほどありますが、大半が所得税法に関するものとなっています。
年末調整に関係する法定調書の種類は主に6つで、提出期限がその年の翌1月31日までと決められています。法定調書を提出期限までに提出しなかった場合は、法律で罰せられる可能性があるため注意が必要です。
1-1. 法定調書の役割
法定調書の主な役割は、金銭の流れを明確にし脱税を防ぐことです。
例えば、フリーランスのプログラマーAさんに100万円の報酬を支払い所得税も源泉徴収したとします。この際、報酬を支払った企業が所定の法定調書を提出しなければ、Aさんに100万円支払った事実や所得税を徴収した事実を税務署側で把握できないことになります。そのため、仮にAさんが確定申告で報酬50万円と虚偽の報告をおこなっても、税務署側では不正と見抜くことができません。
しかし、法定調書を作成して税務署に提出していれば、Aさんが確定申告で50万円と報告しても法定調書の内容と合致しないため、不正と見抜くことができるようになるわけです。
このように、法定調書は適切な納税を図る上で、非常に重要な役割を担っています。
1-2. 法定調書合計表との違い
法定調書に似ている言葉で、「法定調書合計表」というものがあります。
法定調書は、法定調書合計表を短縮した言葉と思うかもしれませんが、まったくの別物です。税務署に提出しなければならないというのは共通していますが、「法定調書合計表」は源泉徴収票や支払調書など法定調書の人数と合計金額を記載している書類です。法定調書は給与所得や退職所得、不動産使用料などの金額を記載するものなので、人数や合計金額を記載する法定調書合計表とは内容が異なるということを覚えておきましょう。
2. 法定調書の主な種類と書き方
先に法定調書は60種類ほどあると述べましたが、主に使われているのは次の6種類です。
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
- 報酬、料金、契約金および賞金の支払調書
- 不動産の使用料等の支払調書
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書
- 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
ここでは、それぞれの法定調書の特徴や書き方のポイントについて解説します。
なお、各法定調書の様式については、国税庁のホームページで確認することができます。
参照:F 法定調書関係|国税庁
2-1. 給与所得の源泉徴収票
給与所得の源泉徴収票は、従業員を雇用する事業主が発行する法定調書です。従業員へ年間に支払った給与や賞与の総額、社会保険料の総額、年末調整で適用した控除の種類と金額、源泉徴収税額などを記載します。
この法定調書は、年末調整のタイミングで給与を支払ったすべての従業員に対して交付しなければなりません。パートやアルバイトであっても交付は必要です。退職者がいる場合は、退職したタイミングで交付します。
また、500万円を超える支払い総額がある場合など一定の条件を満たす際には、従業員本人だけでなく税務署への提出も必須です。
2-2. 退職所得の源泉徴収票
退職所得の源泉徴収票は、従業員が退職をするときに退職金を支払う際に作成する法定調書です。この調書を作成する際には、退職金の支払金額だけではなく勤続年数、源泉徴収税額などの記入も必要です。そのため、事前にすぐわかるようデータを用意しておきましょう。
また、役員への退職金を支払った場合には、退職所得の源泉徴収票・特別徴収票を税務署に提出しなければなりません。
ただし、死亡退職により退職手当等を支払った場合には、相続税法の規定による退職手当金等受給者別支払調書を提出することになるので、源泉徴収票・特別徴収票の提出は不要です。
関連記事:退職所得の源泉徴収票を作成するときのポイントを徹底解説
2-3. 報酬、料金、契約金および賞金の支払調書
「報酬、料金、契約金および賞金の支払調書」は、税理士やフリーランスなどへ、源泉徴収の対象となる報酬や原稿料などを支払った事業者が発行する法定調書です。支払先の名称や住所、個人番号(または法人番号)、支払区分、金額、源泉徴収税額などを記載します。
なお、この報酬、料金、契約金および賞金の支払調書は、基本的に年間5万円を超える支払いがある場合に作成・提出が必要ですが、報酬の種類によっては金額が異なる場合があるので、事前に国税庁のホームページで確認しましょう。
参照:No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等|国税庁
2-4. 不動産の使用料等の支払調書
「不動産の使用料等の支払調書」は、不動産の使用料等の支払調書は事務所などの家賃、地代、更新料が発生した際に作成する法定調書です。ただし、作成するには条件があり、同一の企業もしくは大家さんに対する年間15万円を超える支払いが発生した場合は提出しなければならないとされています。
この調書では支払先の住所、マイナンバー又は法人番号が必要になるため、提出期限に遅れないよう早めに情報を提供してもらう必要があります。
参照:No.7441 「不動産の使用料等の支払調書」の提出範囲等|国税庁
2-5. 不動産等の譲受けの対価の支払調書
「不動産等の譲受けの対価の支払調書」は、不動産や建物の売買の際に発生した金銭を記入する法定調書です。
同一の取引相手に対して、年間を通して100万円を超える支払額がある場合は作成・提出が必要です。一度に100万円ではなく、合計して100万円を越える場合に作成しなければならないため、月9万円以上の支払い額がある場合は注意しましょう。
参照:No.7442 「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の提出範囲等|国税庁
2-6. 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」は、不動産の売買や貸付であっせんをおこなった際に発生したあっせん手数料を記載する法定調書です。
年間で15万円を超える手数料が発生した場合には、不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書を作成し提出しなければなりません。
参照:No.7443 「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の提出範囲等|国税庁
3. 法定調書合計表の書き方・作成方法
法定調書合計表とは、先で紹介した6種類の法定調書を取りまとめた書類のことです。税務署へ法定調書を提出する際には、一緒に添えて提出しなくてはならないので忘れないように注意しましょう。
法定調書合計表は記入項目が多く、従業員が多ければその分作業量も多くなりますが、計算した結果を記入すればいいので書き方自体は難しくありません。とはいえ、ミスをしてしまうと後々修正が必要になるので、ここではそれぞれの項目の書き方や作成方法を解説します。
関連記事:法定調書合計表とは?|まとめ方や提出方法を徹底解説
3-1. 給与所得の源泉徴収票
俸給、給与、賞与等の総額の人員の欄には、1年間に実際に給与の支払をした人数を記載します。
源泉徴収税額がない人数は、隣の欄に記入しますが、この欄は記載漏れが多い項目なので注意してください。
俸給、給与、賞与等の総額の支払金額と源泉徴収税額の欄には、給与の支払金額の合計と源泉徴収税額の合計を記載します。ただし、年の中途で就職した方が前職で支払受けた給与等の金額などは含めません。
丙欄適用の日雇労務者の賃金の欄には、該当する給与の支払金額の合計と源泉徴収税額の合計を記載します。源泉徴収税額は、給与所得の源泉徴収税額表(日額表)を基に算出します。
源泉徴収票を提出するものの人員の欄には、源泉徴収票を税務署に提出する人数を記入しましょう。なお、この欄には、年の中途で就職した方が就職前に他の支払者から受けた給与等についても含めてください。
3-2. 退職所得の源泉徴収票
1年間で退職手当を支払った人数を記入します。1年間に、退職手当の支払った人数、支払金額の合計金額、源泉徴収税額を記載してください。
さらに、税務署に退職所得の源泉徴収票を提出した人数、退職手当等の支払金額の合計金額と源泉徴収税の合計額を記載します。
3-3. 報酬、料金、契約金および賞金の支払調書
人員欄には、個人と法人を区別して記載してください。
支払金額欄と源泉徴収税額欄には、該当する区分ごとに、それぞれ1年間の合計金額を記載してください。(*1)
支払調書を提出するものの欄には、それぞれの区分ごとに記載した人数のうち、税務署に支払調書を提出する人数の合計を記載してください。
*1 災害被害者が徴収の猶予を受けた源泉徴収税額は含みません
3-4. 不動産の使用料等の支払調書合計表
1年間の支払の確定した不動産の使用料等の支払先の人数と、その総額を記載します。
支払調書を提出するものの欄には、上記で記載した人員の中から不動産の使用料等の支払調書を提出する人数の合計と、その総額を記載してください。
3-5. 不動産等の譲受けの対価の支払調書合計表
譲受けの対価の総額の欄には、不動産の譲受の対価として支払の確定した金額(未払の金額を含む)の総額を記載します。不動産等の移転に伴って生じた損失の補償金などを支払った場合にも、その譲受けの対価の総額に含めて記載しましょう。
支払調書を提出するものの欄には、上記のうち支払調書を提出する人数の合計を記載します。
3-6. 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書合計表
あっせん手数料の総額の欄には、不動産売買や貸付けのあっせんで支払の確定した手数料の総額(未払の金額を含む)を記載します。
支払調書を提出するものの欄には、上記のうち支払調書を提出する人数の合計を記載します。
(摘要)欄には、あっせん手数料に関する事項を、別の支払調書の(摘要)欄に記載して、この支払調書の作成と提出を省略したものについて、支払先の人員と支払金額の合計を記載します。
4. 法定調書の提出方法について
法定調書の提出方法は、書面を税務署へ郵送または直接持ち込む以外にも、下記のような方法があります。
- e-Tax
- 光ディスク
- 認定クラウド
e-Taxや光ディスクで提出する際は、事前に税務署への申請が必要となります。また、認定クラウドは国税庁長官の認定を受けているクラウドサービスと契約してから、利用開始の届出をしなければなりません。いずれにしても、すぐに承認が受けられるとは限らないので、提出期限に間に合うよう、余裕を持って申請をおこなうようにしましょう。
また、前々年の法定調書の提出枚数が100枚以上であった場合、その年の法定調書は紙での提出ができません。そのため、提出方法はe-Taxか光ディスク、認定クラウドとなるので注意しましょう。
参照:No.7455 法定調書の提出枚数が100枚以上の場合のe-Tax、光ディスク等又はクラウド等による提出義務|国税庁
5. 法定調書の訂正方法
法定調書の内容が間違っていたことが提出後に発覚した場合は、速やかに訂正をおこなう必要があります。
訂正をする場合は以前に提出した法定調書を無効にしなければならないため、以前提出した法定調書と合計表、正しく作成した法定調書と合計表の計4点を提出する必要があります。
また、訂正の期限も翌1月31日までなので、ギリギリに提出して不備に気付くことがないよう、余裕を持って法定調書の準備ができるように訂正方法をチェックしておきましょう。
参照:提出した法定調書に記載誤りを発見した場合の訂正方法|国税庁
5-1. 法定調書と法定調書合計表の写しを持参する
まずは、最初に提出した法定調書と法定調書合計表の写しを用意してください。
写しを用意していない場合は、前回提出したものと同じ内容の法定調書と法定調書合計表を作成します。
同じ物を作成したら、記載ミスをした法定調書の右上に赤で「無効」と記載し、法定調書合計表には「調書の提出区分」の欄に無効である「4」(無効)を記載します。
5-2. 正しい法定調書と法定調書合計表を作成する
間違ってしまった法定調書と法定調書合計表が用意できたら、次はミスを訂正した調書を作成します。
正しい内容で再度法定調書を作成し、右上に「訂正分」と赤書きしましょう。法定調書合計表も正しい数字を記入して作成し、「調書の提出区分」の欄には訂正である「3」(訂正)を記載してください。
5-3. すでに源泉徴収票などを交付している場合
法定調書や法定調書合計表に記載ミスがあった場合は、交付した源泉徴収票も記載ミスがあるので正しいものを作成しなければなりません。
正しい法定調書を作成した後に、内容を確認して正しい源泉徴収票を作成しましょう。再度交付した場合は、「再交付」とわかるように明記することも忘れないでください。
5-4. 提出期限が過ぎている場合
法定調書の提出期限が過ぎてから不備が発覚した場合は、翌年の確定申告で再計算するという訂正方法が有効です。
この場合は、扶養控除などで追加分の税金を算出し、個人で納付してもらうという流れになります。
この訂正方法は、修正作業をおこなうより負担が少ないというメリットがあるものの、個人で納税してもらわなければならないため、理由や不備の内容をきちんと説明して納得してもらう必要があります。
6. 法定調書の書き方や訂正方法を確認しよう
法定調書は毎年作成するもので、税務署への提出が必要な書類です。主な法定調書は6種類ありますが、それぞれに書き方も違いますし、作成しなければいけないものも異なります。
そのため、その年にどの法定調書を作成しなければならないのかは、必ず確認をしておきましょう。
また、6種類の法定調書はいずれも提出期限は翌年の1月31日までとなっており、この期間を過ぎると罰せられる可能性があるので注意が必要です。訂正も1月31日までしか受け付けていないので、間違いがないように正しい書き方をしっかりと覚えておきましょう。
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